「う〜ん…やっぱりブランクがあるのかな…」
六月頭の日曜日、俺は遂に解禁された実弾射撃場で25mラピッドファイアーピストルの練習を行なっていた。
今、一夏をはじめとした多くの生徒や教師が外出届を出して学園の外に出ており、今、学園には数える程度しか人がいない。
俺の場合はそうではなく、日曜日は専ら射撃の練習に明け暮れていたため、日曜日=練習日というイメージが完全に固まってしまった。
まあ、それだからこそユース五輪で金メダルを獲得できたんだが……
「ま、徐々に感を取り戻していくか」
俺は競技用バイザーを外すと、愛銃であるベネリMP95Eからマガジンを取り出してスライドを動かして残弾が無いか確認してからガンケースにしまって更衣室に入った。
ロッカーを開けたのと同時に、ロッカーにしまっていたスマホが鳴り出した(因みに着信音は「続・夕陽のガンマン」のメインテーマ)。
俺はスマホを手に取ると、着信者せずに通話ボタンをタップした。
「はい、もしもし」
『久し振りだな、兄弟』
電話越しに聞こえるこのドイツ訛りの日本語……しかもこの声、まさか……
「その声、ラウラか!」
『おいおい、私の声を忘れていたのか?』
通話の主は、ドイツの友人であるラウラ・ボーデヴィッヒだった。
彼女との付き合いは、昨年秋に行われた
当時、大会会場の警備にあたっていたのが、このラウラが隊長を務める
黒兎隊の隊員達はかつて千冬さんの教鞭を受けていたことを知った俺は、自分は千冬さんの幼馴染だと話すとすぐに打ち解け、ドイツ時代の千冬さんについてよく知ることができた。
最も、黒兎隊のメンバーはラウラ以外全員年上だった為、色々と大変だったが……
そんなこんなで、俺とラウラは今では互いに「兄弟」と呼べるほど仲が良いのだ。
「そんなわけないだろ?で、今をときめく
『ふふ、いきなり皮肉とは貴様らしいな。いやなに、今しがた日本についたからその連絡にな』
「
『ああ、そういえば言い忘れていたな。明日から私はIS学園に転入することになったんだ。無論、クラスは兄弟と同じところだ』
「ファッ!?なんでまたどうして!?」
『それについては軍事機密だ』
「一民間人には話せないことってか?」
『それが“軍人の性”というものだ』
「“性”ねぇ……」
しかし、あのラウラが
『ところで小耳に挟んだんだが、IS学園に実弾射撃可能な室内射撃場が新設されたと聞くが?』
「あぁ、日本ライフル射撃協会からの要請でね。どうだ?放課後に俺とワンゲームするか?」
『いや結構。分の悪い賭けは趣味ではないからな』
「あぁ、そっか。じゃ、明日に会おうぜ」
『楽しみにしていろよ!』
俺はラウラの電話が切れたのを確認すると、スマホの電源を切り、改めて着替え始めた。
*
翌朝、俺は一夏と箒、そしてセシリアさんに“俺の特技”を見せていた。
現在、俺は腰にガンベルトを巻き、両手にコルトSAA(もちろんモデルガン)を人差し指で支えながらクルクル回していた。所謂「ガンスピン」だ。
実を言うと、俺が射撃を始めたきっかけの一つが、祖父が所有していた往年の西部劇のビデオだった。
ジョン・ウェイン、ポール・ニューマン、クリント・イーストウッドetc…
テレビの液晶に映る多くのガンマン達が魅せるファストドロウやガンスピンなどのガンアクションは、幼少の俺に多大な影響を与えたのは言うまでもない。
聞けば祖父が射撃を始めたのも、西部劇の影響らしい。
俺はそういった憧れから、趣味でガンベルトやモデルガンを買っては、練習の合間の暇潰しにガンスピンやファストドロウの練習に熱中していた。
今では高難易度な水平スピンも難なくこなせる程になったくらいだ。
閑話休題。
俺は最後に二挺のSAAをスピンさせながらホルスターに仕舞うと、教室内でスタンディングオベーションが巻き起こった。いつのまにか生徒達が俺のガンスピンに夢中になっていたらしい。
「ブラボー!」
「流石ジャパニーズ・キッド!ガンスピンも金メダル!」
「これが学園の制服じゃなくてカウボーイスタイルだったらなお良しね!」
「今年の文化祭のイメージは決まった!」
なんで半年後のイベントの話が出て来るんですかねぇ……
俺はスタンディングオベーションに手を振って応えると、腰に巻いたガンベルトを外して席に向かった。
「しっかし、いつもながら名人芸のガンスピンだな。お前それでも食ってけるんじゃないか?」
「流石にこれだけで食っていくのは無理があるな。それに俺はあくまで……」
「ロス五輪だろう?」
「その通り。これはあくまで趣味だしな」
「本当にブレねぇなお前……」
「それが男というものさ」
俺はガンベルトとSAAを大きめのバッグにしまって着席すると、真耶さんと千冬さんが入ってきた。
「諸君、おはよう」
『お、おはようございます!』
それまでスタンディングオベーションが巻き起こっていた教室も、千冬さんが入ってくれば一気に静まり返った。流石は千冬さんだ……
「さて、今日から本格的にISを使った実戦訓練に入る。訓練機ではあるがISを使った授業になるので各人気を引き締めるように!各人のISスーツが届くまでは学校指定のISスーツを使うので忘れないようにな。忘れたものは学校指定の水着で訓練を行う。それもなければ下着で受けても構わんがな」
いやおかしいでしょ!ここには一応野郎が二人いるんだから下着はマズイでしょ!
というか今思い出したが、
いや待てよ。つまりベルベットさんはこの二年間その体操着とスク水を着ていることになるではないか!今度ヤる時に頼んでみようかな……
ちなみに専用機持ちは「パーソナライズ」と呼ばれる機能を用いることで着替え無しでISスーツに着替えられる。所謂某メタリックな宇宙の刑事みたく装着できるわけだ。なんでこんな機能があるにも関わらず世の男が動かせないのやら……
「では山田先生、HRを」
あ、いかんいかん。考えてたら連楽事項聞き忘れた。
「ええと、今日はなんと転校生を紹介します!しかも二人です!」
『えええええええ!』
唐突な転校生紹介に教室が騒ついた。まぁ、一人は検討がつくが、なぜこのクラスに二人なんだ?普通分散するのでは?
「失礼します」
そんなことを考えていると、ノックの後に二人の転校生が入ってきた。一人は昨日電話したラウラ・ボーデヴィッヒだ。
もう一人は…………え?野郎?
劇中に登場するベネリMP95Eとは、ベネリ社が25mラピッドファイアピストル競技用に開発した自動拳銃です。