学年別タッグマッチトーナメントもいよいよ明日の決勝戦を残すのみとなり、今日は中日として終日休みとなった。
最も、一夏と箒は明日に備えてアリーナで特訓しており、ラウラと対戦したセシリアと鈴がコーチを務めていた。
俺はというと、既に負けているしラウラとも戦うこともないから、シャルを誘っていつものように構内の実弾射撃場で50mフリーピストルの練習を行っていた。
最も、今回はシャルを誘っただけではなく、彼女に射撃のレクチャーを行っていた。
「う~ん……どうしてもうまくいかないなぁ……」
「肩に力が入りすぎているんじゃないか?」
「肩に?」
「そうだ。もう少し肩の力を抜いて……」
俺はシャルの右腕と肩をほぐしながら構えのレクチャーを行うと、シャルは再び構えると、的に目掛けて撃ち抜いた。
その弾丸は、外縁ではあるが、的を見事に撃ち抜いた。
「やった!ありがとう正一!」
「ま、これぐらいお安い御用さ」
俺は机に置いていたマニューリンMR73を手に持ってシリンダーに弾を込め始めた。
「あら、やってるのね」
そこへ、ベルベットさんが入ってきた。因みにベルベットさんは今回の大会でロランさんと組み、見事に決勝まで上がっていた。
「あ、ベルベットさん。ロランさんと打ち合わせしなくて大丈夫なんですか?」
「あら、それならもうとっくに終わったわよ」
「あ、さいですか……」
ベルベットさんは俺の左隣の場所に入ると、控室で借りたワルサーSSPの弾倉に弾を込めると、そのまま射撃を始めた。
俺もそれに続くかのように、射撃を始めた。
射撃場内から、三つの銃声が轟いた。
一つはシャルのモリーニCM22、もう一つはベルベットさんのワルサーSSP、そして最後の一つは俺のマニューリンMR73であった。
「にしても、正一の腕は凄いね。僕の持っているモリーニよりも反動の大きいマニューリンの357マグナムであそこまで命中させられるなんて」
「はは、まぁ慣れてるからな……」
「ふふ、そうね。あ、そういえば正一、織斑先生が呼んでいたわよ。すぐに寮長室に来なさいって」
「そうですか?すまねえがシャル、俺は先に上がらせてもらうよ」
「うん、わかった」
俺はシリンダーから空薬莢を全て落とすと、そのまま射撃場を後にした……
*
正一が射撃場を後にすると、シャルとベルベットが先程まで正一が撃っていた的を見ていた。
「しかし……いつ見ても正一の射撃って凄いですよね」
「上手過ぎるわね」
「え…………?」
ベルベットの冷たい言い方に、シャルは彼女の方を向いた。
「その様子だと、どうやら貴方はまだ知らないようね…最も、彼が言わないのも無理はないけど」
「ベルベットさん。どういう事ですか?」
シャルの問いに、ベルベットは達観した口調で答えた。
「彼ね…………
一度だけ人を殺したことがあるのよ」
*
寮長室に着いた俺は、千冬さんと束さんと“とある件”で話し合っていた。“とある件”とは、言わずもがなシャルの件である。
「……じゃあ、大会の事後処理が終わり次第マスコミにリークさせる。ということですか」
「そうだ」
「本当は今すぐにでもやりたかったんだけど、折角のいっくんと箒ちゃんの晴れ舞台をぶち壊しちゃうのはちょっとね〜」
なるほど、つまりシスコンとブラコンが発動したんですかそうですか。
「今失礼なこと考えなかったか?」
「ナンノコトカナー」
「なんで片言なんですかねぇ…」
「それより束さん。例の件ですが……」
「あの“紙切れ”のこと?」
「はい」
“紙切れ”とは、以前俺に接触してきたダリル・ケイシーが俺に伝えたあの伝言のことである。
「それらしい動きはまだ感知されてないね。だけど、何らかの動きがあるなら明日の決勝だろうね」
「一応、学園側でもテロ対策や来場者チェックは行ってはいるが、そういった情報は来てないな」
「そうですか…ありがとうございます」
俺は素っ気なく返事を返すと、テーブルに置かれたお茶を啜った。
「しかし正一、仮にもしそういった事態が起きたとしても、対処は私や真耶を始めとした教師陣に任せておけばいい。なにもお前が出張ることは……」
「確かにそうかもしれません。しかし、いざという時もあります。その時は……」
俺は左手に目をやった。
「しょーくん……まさかまだ3年前のことを……」
「…………」
3年前……その言葉の響きは、俺や千冬さん、そして今この場にはいない一夏にとって、暗い思い出を思い起こさせていた……
「…正一、もう部屋に戻っていいぞ。明日は私も早いからな」
「…そうですね。では、おやすみ」
俺は立ち上がると、そのまま寮長室を後にした……
3年前に正一と一夏、そして千冬の身の上に起きた出来事とは……恐らく原作を読んでいた方にはわかると思います。
次回をお楽しみに!