実を言うと、この話は本来前回の話で行う予定だった話です。
では、どうぞ!
職員室前で一悶着の後、俺は千冬さんに連れられて一組の教室に向かっていた。
「ねぇあれ見て!あの子もしかしてあの“ジャパニーズ・キッド”じゃない!?」
「えっ!?どこどこ!?」
「ほらあそこ!千冬様の背後を歩いてるあの小柄な男子!前にテレビのニュースで顔を見たから間違いないわ!」
「ISを動かしたって噂本当だったんだ!」
「どこのクラスかしら!?」
「千冬様と一緒に歩いているってことは、もしかしたらあのクラスよ!」
「いいなぁ~私ももう一回一年からやり直したいなぁ~」
その道中、俺はすれ違う生徒達の注目の的(主に上級生)となった。
ちなみにその中で“ジャパニーズ・キッド”という単語があったが、これは俺がユース五輪で金メダルを獲得した際、アメリカのFOXニュースが俺の身長を引き合いに西部の伝説的アウトローであるビリー・ザ・キッドになぞらえて「日本のビリー・ザ・キッド」と報道したことから、“ジャパニーズ・キッド”という愛称で呼ばれるようになったのである。
俺はそんな生徒達の声を聞きながらも、冷静な顔を保っていた。
そんな俺に、先頭を歩く千冬さんが声をかけた。
「流石はユース五輪の金メダリストだな。こんなに自分が話題にされているのに動じないとは、私もあやかりたいな」
「これでも無茶苦茶緊張してるんですけどね。ま、ユース五輪の出発式に比べれば屁でもないですけど」
「それだけ余裕なら自己紹介も問題なさそうだな……と、ここだ。ここがこれからお前がお世話になるクラスだ」
千冬さんが立ち止まると、俺はクラス表札に目を向けた。表札には「1-1」と記載されていた。
「HRの最後に呼ぶから、今のうちに自己紹介の内容をまとめておけ」
そう言うと、千冬さんは教室に入った。俺は床に鞄を置き廊下の壁によっかかると、遠くから来る視線を感じ取った。
俺は視線を感じた方向を向くと、隣の教室の生徒たちが俺を指差してヒソヒソ話をしていた。
俺はそれに手を振って応えると、その生徒達はまるで有名人を前に興奮するファンの如くはしゃいだ。どこの世界でもミーハーっているんだな。
すると、教卓に立っていた山田先生が俺の方を向いた。どうやら出番のようだ。
さて、行きますか!
「失礼します!」
俺は元気な声と共に扉を開け、堂々とした態度で黒板の前まで歩き、チョークで自分の名前を書き上げてからこれから共に歩むクラスメイトの方を向き、自己紹介を行った。
「本日からこちらにお世話になる雑賀正一です。特技はライフル射撃で、オリンピックメダリストを目指して日夜精進しております。ISは初心者ですので、これから一年間よろしくお願いします!」
俺は自己紹介の最後に、最敬礼で挨拶した。
最初は静まり返っていた教室内だが、俺が顔を上げた次の瞬間、黄色い声援が沸き起こった。
「キャアァァァァァァァ!本物!本物のジャパニーズ・キッドよ!」
「サイン!サイン書いてください!」
「私!あの決勝見てました!」
「一×正?正×一?」
最後の声は明らかにヤベーイこと言ってる気がするのだが、うん。気のせいだ。しかし、すごい歓声だ。まるでプロ野球観戦に来ている気分だ。
「静かにしろ!」
と、そこへ千冬さんの怒声が轟き、教室が静まり返った。すげぇ…まるで鬼軍曹だ。
「だれが鬼軍曹だって?」
…………訂正、俺の担任です。
「さて…山田先生、雑賀に席を教えてやってくれ」
「は、はい!えっと…雑賀君の席は織斑君の後ろの席です」
ん?“織斑”?……俺は山田先生が指さした方向を向いた。
「…………あ」
するとそこには、頭を抱えた
俺は直様殴りかかろうと思ったが、千冬さんの手前、ここは抑えることにした。ッペッ!命拾いしたなタコが……
俺は置いていた鞄を手に持って席に座った。
「よろしくお願いします」
「あ、こちらもよろしくお願いします!」
俺は隣の生徒に軽く挨拶すると、隣の子も挨拶を返した。
「さて……HRはこれで終わるから、ただいまより一限目の授業に入る!」
千冬さんがそう言うと、山田先生が教卓に向かった……
ちなみにビリー・ザ・キッドの実際の身長は160cmくらいだと言われています。
次回をお楽しみに!