萌香side
急に現れたもう1人の姉─亞愛姉さんの強さを目の当たりにして驚きを隠せなかった。
「ふ、ふん。あんなの大したことないもんっ。刈愛姉さんはまだ本気出してないしっ」
心愛も動揺したのかそんな強がりを言う。
「それはどうかな?私にはお互い本気を出していなかったように見えたけれど」
するとそこにマーリンが割って入ってきた。
「な、なによっ!そんなの─」
「キミはどう思う?萌香ちゃん」
「私も...あなたと同じ意見だ、マーリン」
それに、亞愛姉さんは刈愛姉さんの本質をほんの数手交わしただけで見抜いてしまうほどの洞察力を持っていた。亞愛姉さんの実力は底が知れない。
「まあ彼女は相当実戦で鍛えられてきたんだろうね。でなきゃあの刈愛ちゃんの一撃を躱すなんてできないさ。いやあなんとも楽しみな子だねえ」
どこか楽しげに語るマーリン。ところでこの男は一体何者なのだろうか。
「..マーリンは一体何者なんだ?急にこの家にやってきて...」
「そうだね...ここに来た理由は
とりあえず敵意はないことが分かっただけ良しとするか...。
「そうそう、私は当分君たち姉妹のお世話係になるからよろしく頼むよ」
「へっ?」
ひとまず安堵した時にマーリンがとんでもない発言を投下してきた。
「ど、どういうことだ?」
「う〜ん、まあとりあえずはキミたちの戦闘能力の底上げが私の至上命題になるんじゃあないかな。いや〜、久々に腕が鳴るねえ」
つまりはなんだ?この男が私たちを指導するということなのか?
「ああ、私の腕が心配なら後日、手合わせをしてあげよう。
その発言に今この場で脚が出そうになったが、大勢の大人の前で粗末な言動をするのは避けるべきと堪えた。後日手合わせの際に痛い目に遭わせてやろう。
「あとこれだけは約束する。私の手にかかればキミ達を将来お父さんやお母さんに並ぶ強さにしてみせよう。これでも『人を育てる』ことは私の唯一の得意分野でね。大船に乗ったつもりでドーンと構えてほしい。あ、人じゃなくて
発言は胡散臭さに溢れていたが、私はどこか信頼出来るような気もしていた。
ロマニside
「あの、ちょっといいかな」
「あなたは...」
亞愛ちゃんお披露目会(勝手に命名)は自由立食となり、僕は一目散に
「1つ...気になったものでね.....外で話さないかい?」
「え、ええ...構わないけど...」
とりあえず2人きりになるため会場の外に出ることにした。
「なにかしら?私に用って...」
「...単刀直入に言う。どうしてキミは
「そ、そんな...すり減らすなんて.....」
「じゃあなんでキミは戦う時、涙を流しているんだ?」
「そ、それは─ホントは...い、嫌だから.....争いなんて...」
最初ははぐらかそうとしていた刈愛さんだったが、あっさりと観念して本音を語ってくれた。
「だったらなんで─」
キミは戦いに赴くんだ?そう問おうとした時─。
「あ、あなたには私のことなんてわからないわっ!!」
刈愛さんはそう言い捨てて走り去ろうとする。
「待ってくれ。まだ話は─」
「もう貴方と話すことなんてないわ!離して!」
会場の入口に戻ったところで腕を掴むと刈愛さんはヒステリックを起こしたようにそう叫ぶ。会場の視線がこちらに集まる。
「いいから一旦落ち着い─」
「─もうやめてあげたらどうだい?」
するとマーリンが刈愛さんの腕を掴む僕の手を半ば強引に引き剥がした。
「邪魔するな。僕は彼女に─」
「別にいいじゃないか。キミは気に食わないかもしれないが彼女が現状を望むならこのままで」
「...!!」
マーリンの言葉に僕は我を忘れかける。
「...じゃあ不幸な目に遭ってても無視しろと?」
「ああ、幸不幸の判断は個人差がある。それを他人がしゃしゃり出るのはただの偽善に過ぎない。違うかい?」
マーリンから告げられる正論に僕は勢いを失う。
「ま、そんな優しいところが私には無いキミの美点かもしれないね。ごめんね刈愛ちゃん、彼もキミを思ってこんな行動を起こしたんだ。許してあげてほしい」
「え、えぇ.....」
「それに、私もキミには自分を大事にしてほしいと思う。見ていてこちらも辛いからね」
「!!」
マーリンの言葉に目を見開く刈愛さん。この言葉で何か変わってくれたら─。マーリンにいいところを取られるのは癪に障るがそう願うばかりだった。