亞愛side
「ど...どう.....して...」
先程まで刈愛を滅多打ちにしていたマーリンが急に降参を告げ、刈愛共々私たち全員が困惑していた。
「別にキミ達を痛めつけることが私の本意ではないからね。キミのことはもう十分わかったから『降参』、終わりってことさ」
未だにお腹を抑えて苦しむ刈愛に飄々と言葉を並べるマーリン。けれど言っていることに説得力があり、私は何も返す言葉後なかった。
「...そうだね。刈愛ちゃん、キミはやはり自分の身体を大事にした方がいい」
「...え.....」
「普通ならそこまでボロボロになったらさっきの心愛ちゃんみたいに泣いてみたり、なんなりして勝負を投げるはずだ。なのにキミはまだ私に立ち向かおうとしている。所詮手合わせなのにね。少し物事をリラックスして大きい視点で考えてごらん」
─そうすれば今まで見えてこなかったものが見えてくるから。
マーリンが最後に放った言葉が頭から離れない。
「う.....うぅ...」
「大丈夫?刈愛」
今は刈愛に肩を貸しつつロマニの元にみんなで向かっている。心愛はまだしも萌香と刈愛はダメージが深い。
「ロマニ?いるかしら?」
「いるよ。どうしたんだい?」
「ちょっと私以外のみんながマーリンと─」
「そう言えばそんなこと言ってたなあ。いいよ、みんな入って」
まだ来てから2週間だけど、ロマニの印象は初めからだいぶ変わった。出会った時はのされて最悪な印象だったけど、
「あらら、これはまた...まったくマーリンのやつ。加減ってのを...」
「んっ.....くっ.....」
「ちょぉっと我慢してねー...っと終わったよ」
「くふぅ.....ふぅ...ふぅ...な、治っ...た...?」
「まだ痛むようなら言ってほしいんだけど」
「ん.....いや、大丈夫そうだ。ありがとう、ロマニ」
傍から見ていたらたださっきの私みたいにお腹をこねくり回してるだけなのに...どうしてロマニは治してしまうのだろう。
「じゃあ次は刈愛ちゃんだね」
「...お願い...します」
次は刈愛の番─この2人なんかぎこちないというかなんというか...。
「...まったくまたキミは無茶をして.....どういう原理か知らないけど、キミは痛みを麻痺させてるみたいだね。これだけ内臓にダメージが入ったらとてもじゃないけど戦闘なんてできない。立派なキミの長所だとは思うけどちょっとは控えて─」
「貴方にはっ!.....関係ないから...」
ほらまた始まった。この2人、口を開けば口論になっている気がする。基本ロマニは刈愛のこと気遣ってるんだろうけど─。
─パァンッ!!
「え...」
けれど今回は少しこれまでと違うみたいだ。
「いい加減にしろよ。キミが無茶をして命を落としたら、どれだけの人が悲しむと─」
「わ、わかってるわよ.....そんなの...」
いつもふんわりした感じのロマニの初めて見る剣幕に刈愛の声は震えている。萌香も目を見開いているし心愛なんかは怯えて萌香の後ろに身を隠すようにしている。
「わかってるなら─」
「落ち着いて?ロマニ。ほら、心愛なんて貴方の怒ってるの見て涙目よ?」
するとそこへ
「す、すいません.....つい熱くなって...」
「刈愛のこと気にかけてくれるのは有難いけど程々にお願いね?刈愛も、あんなぶっきらぼうな返事しないで、少しはロマニの言うこと聞いてあげてね?」
「.....はい」
それからロマニはまた刈愛の治療に戻った。