ロマニside
急に身体に触れろと言われてその11歳とは思えない胸部に目がいってしまったのはなんとも情けないと自戒している。けれど実際触れてみると─まるで刈愛ちゃんの身体はジェルのようになっていた。
「
なるほど生きた心地がしないのも頷ける...恐らくだが─。
「もしかして、身体を貫かれるくらいじゃ…」
「ええ、問題ないわ。繋がってさえいれば戻れるから…この身体は」
聞けば聞くほどこの子の規格外さが伝わってくる。母親が英才教育を無理矢理にでも施したくなるわけだ。
「それに、自分の血肉を弾丸のようにして攻撃することも出来るわ」
「……またキミはそうやって自分をすり減らすんだね」
僕がそう返すと刈愛ちゃんは黙り込んでしまった。何か話題を変えなければ…これじゃまたいつもと同じだ。
「…キミはどうして戦いに赴くんだい?」
「…えっ」
僕は知らねばならないと思った。刈愛ちゃんを戦場へと駆り立てるものの正体を。朱染家の者としての自覚なのか、母親の期待に応えるためなのか…それとも─。
「私は……私だってホントは…争いなんて好きじゃない…っ!」
すると刈愛ちゃんは唐突に涙を零しながらそう叫んだ。
「…でもっ!みんなが……それで喜んでくれるなら…っ!」
その言葉に僕は再度車を路肩に停める。
「刈愛ちゃん、僕が思うにキミは周りの目を気にしすぎだと思う」
「う……うぅ…だって……っ!」
その瞬間、僕は刈愛ちゃんを抱き寄せた。
「刈愛ちゃん、キミはもう少しワガママになるべきだ。そんなこといつまでも続けていたらその内キミの身体がもたなくなる。何度も言うようだけど─自分のことを大事にしてくれ」
「う……うぅ……うあ…うああ……」
それからしばらく刈愛ちゃんは僕の胸でワンワンと泣き続けた。
刈愛side
「落ち着いたかい?」
「……うん」
ロマニの優しい言葉に思わず私は大号泣してしまった。そのおかげか私は心の枷がひとつ外れたように晴れやかな気分になった。
「ありがとう、ロマニ。いつも気にかけてくれて」
「いやいや、心のケアも僕の仕事だからね」
そう言ってまた車を発車させるロマニ。
「ちょっと時間に遅れそうだな。少し飛ばすよ」
「お待ちしておりました、ロマニ・アーキマン様御一行2名様ですね?」
あれからロマニが法定速度超過の運転を披露し、何とかギリギリチェックインの時間に間に合った。途中警察に停められたけどロマニが何かしらしたのだろう、あっさり許された。
「お部屋はどちらになさいますか?」
「ツインでお願いします!」
「えっ!?」
カウンターで部屋の種類を聞かれ、私は即答した。横でロマニが驚きの声をあげた。
「それではツインルームの方に…」
「いや待ってくれ!正気かい!?」
「…ダメ?」
「いや、だってほら、一応男と女で…」
「いいのっ!偶にはワガママ言えって言ったの誰だったかしら?」
その言葉にロマニはぐぬぬ、と唸りをあげる。
「決まりましたか?」
すると受付の方が生温い目線を向けてそう割って入ってきた。
「…じゃあ、ツインで」
とうとうロマニは観念したように受付の方にそう告げた。