4-1
亞愛side
「よっと、ここまでかな」
「はぁ、はぁ、はぁ…っ」
いつも通りの組手が終わり、一息つこうとした─その時。
「そろそろ頃合だと思うから、今日からメニュー追加しようかな」
「えっ…」
「だってまだ動けるだろう?」
そう言われると──マーリンの指導を受け続けることはや1ヶ月、『まずはスタミナかな』と言われ、ひたすらマーリン相手に長時間攻撃し、躱され続けてきた。最初の頃は終わる頃にはヘロヘロだったが、今ではもう1セット行けるか行けないかくらいの体力はついた。
「まあ…動けるけど……」
「じゃ、次は亞愛の防御面を鍛えるかな。いつも通りの組手だけど、今度からは
「っ!!」
攻撃する、その言葉に一気に緊張が走る。
「時間は前と同じ、ヤバくなったら手は止めるから安心してほしいな」
「……あんまりアテになんない気がするんだけど」
「ハハハ、相変わらず信用されてないね、私は」
分かってるならまずその胡散臭い口調どうにかしなさいよ。
「そろそろ始めてもいいかい?」
「ええ、いつでもいいわ」
そして緊張の組手が始まろうとしている。
「いいよ、キミから─」
マーリンが私から攻めてくるよう促す。私は言葉が終わる前にマーリンに突貫、顔面目がけて掌打を打つっ!
─ビュンッどぼっっ!!!
「お゛……っ!?」
しかし、私の一撃はあえなく空を切り、代わりに私のお腹がマーリンの拳に潰されていた。
「危ない危ない」
「…っげぇ……げふ…っ」
たった一撃で私の内臓は深いダメージを負い、吐き気に苛まれる。
「次は私から行かせてもらうよっ!」
「…っく!?」
そうしていると今度はマーリンが真正面から迫ってくる。私は思わず顔面にガードを集中させてしまった。
─どふっっ!!
「う゛ん゛っっ!!?」
─ずむっっっ!!
「ん゛け゛……っ」
それを見てかマーリンは先ほどと同じ場所に打ち下ろし気味のストレート、そして右脇腹─肝臓にフックを打ち込んできた。
「…んぐぅ……あ゛ぁ…っ……ぐはあぁ…」
先程までの組手で疲弊している中でのボディ責め。あまりの苦しさにガードが下がってしまう。
「ふっ!よっ!」
「あがっ!?がふっっ!?」
その隙は見逃してくれず、右フックから顎にアッパー。
「…う……うあ……」
おかげで脳が揺さぶられ、視界が定まらない。なんとかガードを上げて迫り来るマーリンの攻撃を耐え忍ぼうとしたが─。
─ずどんっ!!
「………ぅふ゛ふっっ!!?」
マーリンの拳は再度私のお腹─それも胃袋を強烈に突き上げた。
「…ん゛っ!?ゲホッゲホッ…う゛あ……っ」
私はなんとか立とうとしたが足に力が入らず、お腹を抱えて地面に蹲った。
「…あ゛……っけ゛あ……」
半開きとなった口からはヨダレがとめどなく垂れてくる。喉が焼ける感覚もするのでおそらく胃液も上ってきているんだろう。
「う~ん、こんなものかな。これからずっとこうだから、早く慣れていってね」
マーリンは呑気にそんなことを告げてくる。こっちは死ぬほど苦しいのに…。
「よっと」
「ちょ、いきなり何…ゲホッゲホッ!?」
突然、マーリンが私の服の中に手を入れてきた。
「いやいや、応急処置というやつを…」
「だからって服の中を…っ!」
そう言っているあいだにマーリンの手はお腹に巻きついた私の腕を強引に避けて私のお腹に到達した。
「哎呀っ、そんなところ…」
「力を抜いて~、息を吸って~」
お腹を直で触られて恥ずかしくなっている私を横目に処置を続けるマーリン。仕方なく言う通りお腹の力を抜くように深呼吸する。その間、マーリンの手は私のお腹をほぐすように軽く押している。
「どうだい?少しは楽になったかい?」
言われてみれば吐き気も痛みも幾分か収まっていた。
「う、うん…」
「さすがロマニだなあ。こんな簡単に治せてしまうなんて」
どうやらロマニが吹き込んだ治療法らしいけど─。
「…亞愛って結構腹筋あるんだね」
「っ!?さ、最低っっ!!」
「ひぶっ!?」
私は怒りと恥ずかしさからマーリンの顔面を思いっきり殴った。