亞愛side
「はい、王手」
「ぐぬぬ…」
マーリンの指導が厳しくなった翌日、私はマーリンと『ショーギ』を指している。
「…そういえば、お腹の調子はもういいのかい?」
「…おかげさまで昨日の夕食全然食欲湧かなかったわよ」
散々ボコボコにされた後、処置はしてくれたけど後から吐き気とかがぶり返して苦しかった。朝起きたら治ってたからよかったけど…。
「ハハハ、だからロマニに治してもらえばよかったんだ」
「…うるさい。はい、次マーリンの番よっ!」
「んっ?そんな手でいいのかい?なら…はいっ、コレでどうかな?」
「あっ…」
怒りに任せた手は見事に悪手だった。もうこれどうしようもないじゃない…!
「……負けました」
「ハハハ、亞愛は単純だから与し易いなあ」
「…言ってくれるわね」
これでも刈愛とかロマニ相手なら互角程度に戦えるのに…っ!なんでマーリン相手だといっっつも負けてばかりなのよ!
「あー!今日も亞愛姉さん負けて─」
「─何か言ったかしら?」
「イ、イエ、ナンデモナイデス」
「次はアナタね。容赦しないから」
腹いせとばかりに心愛を相手にボコボコにした。
「うぅ…亞愛姉さん…強い…」
「ふっふっふ、お姉さんを甘く見ない事ね」
「…最低なお姉さんだな、キミは」
「ぅぐっ!?」
マーリンの一言は私の心を深く抉ったのだった。
「はぁ〜…」
一日が終わり、私はベッドにダイブした。朱染家に来て今までと違う生活を送り、楽しいけれど少し疲れもある。特に勉強とか…。っていうかなんでマーリンが教えてくるのよっ!
「やあ、今、大丈夫かい?」
「ひゃっ!?」
するといきなり部屋にマーリンがやって来て、私は素っ頓狂な声を上げてしまった。
「ハハハ、驚いたかい?」
「な、何しに来たのよ!っていうか、女の子の部屋に無断で入るなっ!」
「ぶっ!?」
とりあえずこのデリカシーの欠片もない男にビンタを一発お見舞いしておいた。
「いたた、乱暴だなキミは。せっかく最近疲れていそうだから癒してあげようかと─」
「だ、誰がアンタに…っ!」
胡散臭さMAXのマーリンの言葉に私は反発しようとしたけど、力で抑え込まれて気づいたらマーリンの膝の上に座っている。
「な、何する気よっ!」
「言ったじゃないか、キミを癒してあげる、って」
そう言うと、マーリンは
「─星の内海 物見の
すると突然目の前世界が崩れて私とマーリンは広大な花畑の中に佇む形になっていた。
「えっ?なに?ここは…」
「大丈夫、暫くしたらキミの部屋に戻るから…今はここでゆっくりしよう」
そう言われても──でも、なぜかこの場所にいると体力、妖力共に満たされていく。ずっとここに居たいと思ってしまうほどの安らぎ…。
「……っん」
「…やっと起きたかい?」
「…あれ?」
どうやら私は眠ってしまったらしい。見渡すと先程の花畑ではなく、私の部屋だ。もしかして…夢?
「なんで私…」
「随分疲れていたんだろう。
そうカラカラと笑いながら教えてくれるマーリン。
「いやあ、やはり女の子の寝顔はいいもんだねえ。眼福眼福」
「っ!?ってかなんでアンタが膝枕してるのよっ!!」
「うげっ!?」
それからいつも通りふざけたこと言ってくれるマーリンの鳩尾を思いっきり殴ってやった。
「かはあ……す、少しくらい手加減してくれても」
「ふんっ!私の寝顔見たんだからそのくらい安いものよ、このスケベ…んっ?」
よく見てみると、部屋の扉が少し開いて─。
「誰っ!?」
「…や、やっほー…亞愛姉さん」
そこには刈愛と萌香の2人がいた。
「ど、どこから見てたのっ!?」
「え、えーと…」
「─姉さんがマーリンの膝で寝てるところからよっ♪」
しどろもどろな萌香と違い、刈愛はどこか楽しそうな様子で教えてくる。─っていうかそれほとんど最初からじゃない!
「まさか姉さんとマーリンが
「ちょっ!?違─」
「あ、ああ……私も今後配慮しなくては…」
「人の話を聞いて!!マーリンとはそんな関係じゃ…っ!」
「あら、あんなイチャイチャしてたのに…ねえ?」
「ああ、隠したい気持ちはわかるが、さすがに無理があると思う…」
そして無事、妹たちに勘違いされてしまったのであった。