亞愛side
「はっ!!はあっ!!」
「ほっ、よっ」
妹たちにあらぬ勘違いをされ、今日も生暖かい視線を送られながらマーリンとの組手をしている。
「─ガラ空きだよ」
─どむっ!!
「…っけ゛ぽ」
またお腹……ッ!吐きそう…。だけど──!
「…まだ……まだあッ!!」
「おっ、いいねえ」
腹筋…というより内臓が鍛えられてきたのか始めた頃からだいぶ痛みや吐き気にも耐えられるようになってきた。死ぬほど苦しいのは変わらないけど…。
「やあっ!」
「っく!」
まだお腹が痛むけど──今日こそっ!
「はあああ─!」
─ズンッッッ!!!
「く゛っ!?」
初めて…初めてマーリンに攻撃を当てられた…!私は今すぐにでも飛び跳ねて喜びたい衝動に駆られた。けど─。
「…ふう、いい攻撃だ。まったく、本当に磨けば磨くほど輝く─ダイヤの原石だね、キミは」
「…っ!」
マーリンの言葉に、私の顔が熱を帯びる、身体が硬直する。な、なんで照れてるのよ私っ!
「…それじゃ、私も少し
「くっ…!」
そんなことを考えていたけれど、マーリンの言葉に私は気を引き締めざるを得なくなる。手を抜かれていたことはわかってはいたけど…私の全身に緊張が走る。
「…行くよ」
そう告げるとマーリンは一瞬にして消えてしまい、次の瞬間には私の懐に入って腕を引き絞っていた。
「なっ…!?」
「フッ!!!」
─ズドォォォ!!!
「…っお゛ッッ」
みぞ……おち…息が……できな─。
私はあまりの苦しさに動きが完全に止まってしまう。
─ドスッッ!!ドブッッッ!!!
「う゛ぎッッ!?き゛ふ゛ぅ ぅ っ!?」
そこをマーリンは見逃してくれず、すかさずレバーを叩き、胃袋を突き上げた。
─ギチッ…グググッ…!
「…っふ゛ぅ…っ!」
さらにマーリンは私のお腹に埋まっている拳を奥へ奥へと食い込ませる。
「…っう゛あッ!?…はああ…」
もう……やめ…限………界…。
あまりの苦しさに自然と涙が溢れ、視界が滲む。全身に力が入らなくなり、私は縋るようにマーリンに抱きついた。
「おっ、と」
「…はぁ、はぁ……もう……ムリ…やめ……て…」
「…わかった。お疲れ様」
なんとか痛むお腹の力をふりしぼって声を出す。するとマーリンは私の身体を優しく抱きとめてくれた。
「─横になるかい?」
「…う……ん」
そしてマーリンは優しく私の身体を地面に預ける。
「…っふ゛ん゛ッ…!…っく゛ぅぅ……く゛お゛お゛…」
私は抜け出せない苦しみに蹲ってもんどり打つしかなかった。苦しみを和らげようと足をバタつかせたりしたけどまったく意味をなさない。
「…ぅう゛……く゛る……し゛い……」
「すまないね。力加減を誤ったようだ」
そう言うとマーリンはいつかと同じように私の服の中に手を入れ、お腹に直で触れてきた。
「やめ……なさ…」
「じゃあいつまでもその地獄の苦しみを味わうかい?」
私はその処置を拒否しようとしたけれど、マーリンの言葉に返す言葉もなかった。
「…んあっ、はあぁ……あ…は……」
「うーん、今回は本当にやりすぎたようだね。後でロマニのところに行くんだよ?」
以前同様、痛み吐き気は軽くなったが、依然として残ってはいる。ここは言う通りロマニに治してもらおう。説教されそうで気が進まないけど…。
「…んっ?なに?」
お腹を抱えながらロマニの元に向かおうとするとなにやら笑顔の刈愛が私の元にやって来た。
「んふふ、ホントに仲がいいのね。組手の最中に抱き着くなんてっ」
「な、そ、そんなんじゃ─!」
まずい、また私とマーリンの関係が誤解されていくっ!あれはホントに苦し紛れに─!
「ハハハ、いやあホントにね。好きなら素直に好きと言ってくれたらいいのに」
「は、はああ???」
な、何言っちゃってんのこの男はッ!!
「そ、そんなわけないでしょっ!!勘違いすんなっ!!」
「ぶふっ!?」
とりあえずこの開けばトラブルを生むような口は塞いでおく。
「ふふふ、ホント仲良しね」
「ち、違うったらあ!!」
ああ、なんでこうなるの…。
その後ロマニからきっちりお説教を喰らい、余計に気分が下がってしまうのであった。