亞愛side
『好きなら素直に好きと言ってくれたらいいのに』
「…っ!!」
「もらったッ!!」
「しまっ─!」
─ドスッッ!!ズドッッッ!!!
どうしてか萌香との組手の最中、昨日マーリンから言われた言葉が脳内に蘇り、動きが止まった所に萌香のミドルキック、そして後ろ回し蹴りが私の緩み切った腹部に突き刺さった。
「…っがは……はあぁぁ…っ」
お腹から発せられる鈍痛に身体を支配され、背中を丸めて半開きの口からねっとりとしたヨダレが垂れる。
「だ、大丈夫か?姉さん」
「…っぐ……大…丈夫……じゃないかな…」
萌香が心配そうに駆け寄ってくる。力入れてなかったし萌香の攻撃も喰らうとキツい…。
「どうしたんだ?急に動きを止めて…」
「そ、それは…」
マーリンの言葉に惑わされたから、なんて口が裂けても言えるわけなかった。
ロマニside
珍しく萌香が亞愛を連れて僕の元にやって来たと思ったら、なんと萌香が亞愛と組手をして勝ったらしい。悪いけど2人の実力差じゃそんなことめったに起きないはず…。とりあえずしきりに謝罪してくる萌香を落ち着かせて退出させる。
「…とりあえず、診せてもらうよ」
「…おね……がい…っくぅ…」
診てみると亞愛のお腹はひどく痙攣していた。これは─。
「…キミらしくないじゃないか。明らかに油断して緩み切ったところに攻撃をもらっただろう?」
「…っぐ……さすがね……」
辛そうな顔でそう答える亞愛。
「どうしたんだい?何か悩みがあれば聞いてあげるけど…」
おそらく心の中に何か気を散らす物があるのだろう、そう予見して亞愛に尋ねてみる。
「……いいわよ。その前に早く治して……ホント苦しいから…」
その言葉に僕は慌てて治療を始めた。
亞愛side
「ったく、やっぱりアイツはクズ野郎だな」
ロマニと隣同士ソファに座り、私がマーリンにされてきたことを話すとそんな独り言を呟いたロマニ。やっと味方が現れた、と私は心中歓喜していた。
「話はわかった。僕の方からアイツに言っておくから」
「ありがとう、助かるわ」
ロマニの言葉に思わず涙が出そうになる。
「けど──」
「…けど?」
ん?なにやら話の流れが変わりそうな予感…!
「…キミはキミでアイツのこと意識してるのは事実だろう?」
「なっ……!?」
ロマニの言葉に顔が急激に熱くなる、心臓がキュウと締め付けられる気分になる。
「そ、そんなわけッ!!」
「─あるだろう?現に今僕の横には顔を真っ赤にした女の子がいる訳だし」
「〜~~~~~~」
恥ずかしさのあまり私は隣のロマニの肩をぽかぽか叩いた。
「いたたた……まったく、そんなんだからアイツの思う壷なんだぞ?」
「う、うう、うるさいッ!!ロマニだってマーリンにいっつも弄られてるくせにっ!!」
「なっ!?そ、そんなことは…!」
それからしばらく私はロマニと口喧嘩を始めた。
「ふんっ!ロマニに相談した私がバカだったわ!」
「ああ、そうかいっ!じゃあキミがマーリンを意識してること本人にバラしてやるからなっ!」
「ちょ、それはやめなさいよっ!」
状況的にどうしても不利な私は徐々に言い負かされ始める。というか口喧嘩とかしたこともないし苦手なのよ!
「…うぅ……ロマニのオニ…」
「元はと言えばキミが自分の気持ちに素直じゃないからだろ!」
「自分の……気持…ち…?」
そんな…ホントに私はマーリンのことなんて…。
「……とりあえず、まずは意固地にならずに自分の本心に気づくべきだ。それから、また相談したいなら乗ってあげるよ」
その言葉を最後に私は部屋を追い出された。
「なによ……私はマーリンなんて…ブツブツ」
「亞愛?亞愛はいる?」
部屋に戻ってイライラしているとアカーシャさんが部屋にやってきた。
「…何ですか?」
「あら、あんまり顔色良くないけど…」
「…さっき萌香と組手をしてたから疲れてるんだと思います…」
ホントは心の中が滅茶苦茶にされたからだけど…。
「そう……いつも相手してくれてありがとう。とりあえず、私と一緒に一茶さんの部屋に来てくれない?」
お父様の部屋…?滅多な事じゃないと呼ばれないけど─今回は
「分かりました」
私はそう返事してアカーシャさんの後について行った。