淫蕩奉納 作:飯妃旅立
「黒桐。
「……確か、自然界のものにはそれぞれの霊が宿る、という考え方……だったと思いますけど」
「そう。日本の付喪神信仰と酷似するその考え方は、19世紀にイギリスの数学者が定着させたものだ。生きとし生ける者だけでなく、無機物や大気に至るまでアニマ、つまり霊魂が存在している、という話」
「それが、どうかしたんですか?」
「……いや、特に意味は無いよ。強いて言えば、従業員の学力調査と言った所かな」
「はぁ……?」
調査二夜目。
といっても前日の調査一夜目からは二日ほど時間が開いている。
理由は身体の火照りが一日で抜けきらなかったと言う事と、とあるものをとある下等種族使いの先輩に発注してもらっていた、という事に起因する。
そのとあるもの。
「全く……いくら私の家が黄路だからと言って、全て私の思い通りになるというわけではないのですよ?」
「知ってる。けど、黄路先輩は後輩に頼られて無理とは言えないかなって思ったから」
「ぐ……。ま、まぁいいです! ……それで、最近礼園内に蔓延っている神だの魔術だのという噂は……本当にコレがあれば解決できますの?」
「解決はわからないです。けど、とりあえず正体不明の気体相手にコレ無しで行くのは無謀が過ぎると思うので」
「ふむ。まぁ、これ……
そう、ガスマスクである。
それもフルフェイス。口元だけでなく、顔全体をばっちりガード。
礼園の制服にこれをつけると、ミスマッチ過ぎて逆に似合う……ワケがないのだけど、見間違いだと思って一度目をこするぐらいの隙は与えられると思う。
「行動と思考力と集中力を阻害されるだけで、命に係わる毒物ではなさそうなので、これで防げなかったら黄路先輩の部屋に転がり込みますね」
「……? 別に構いませんが……」
「……いえ、やっぱりやめておきます」
一瞬過ったその未来に自分で顔を顰める。
鎮めきったはずの炎がチラりとその赤舌を覗かせるが、無視。
「それで、本当に助力はいりませんの? この下等生物がいれば、別に黒桐さんがいかなくとも問題ないと思うのですが」
「相手は姿も見せずにこちらを洗脳してくる術者ですよ? その下等生物が洗脳されて、わたし達に牙をむいてきたらどうするつもりなんですか」
「む……」
確かにその策は真っ先に考えた策だ。
そして真っ先に却下した策でもある。
「それより、黄路先輩にやってもらいたいことがあるんです」
「ええ、よくってよ」
実はこの人、基本性能は凄く高い。追い詰められなければめちゃくちゃ頭がいいし。
「朝にどこかから帰ってくる生徒。その記憶を一時的に掠め取って欲しいんです」
「……それは。……いえ、黄路に二言はありません。やってあげますわ」
別にその能力を失ったわけではないにも拘らず、下等生物を突撃させる、程度にしか使わなくなった黄路先輩。その理由には、少なからず自身の過ち……そしてトラウマのようなものが関わっているのだと思われる。
でも今は、それが必要なのだ。
「それじゃ、いってきます」
「ええ、健闘を祈りますわ」
ガスマスクを装着する。しゅこー。
……結構重いわね、これ。
さて、例の場所……廊下を曲がって、非常口のあるその付近へとやってきた。
この非常口を出ると、先は林。その奥には夏巳館という迎賓館があるのみだ。
今のところ、体に不調は無い。黄路先輩のガスマスクの性能が良いのか、例の気体の性能がさほど高くないのか、どっちはわからない。けど、好都合だ。
暗い廊下を突き進む。
今のところ、誰ともすれ違っていない。ガスマスクをしているので気配は辿り辛いのだけど、多分大丈夫。
「……やっぱり」
鈴の音が聞こえる。
女学院本館ではなく、外から。
フルフェイスを突きぬけて聞こえる辺り、余程大きい音なのか――匂いを嗅いだ者、全てに聞こえているのか。
非常口のノブを掴む。
やはり、開いている。
わたしはそれを――思いっきり蹴破った。恐る恐るとか、わたしらしくないし。
「ッ……、これ……は」
そしてその光景に、唾を飲んだ。
「――っ! やっぱり、洗脳……!」
脳内に叩き込まれたイメージを振り払う。
まるでファンタジー世界のようなイメージから目を覚ませば、そこは薄桃色の気体が充満するただの林。誤認では済まされない。催眠でもまだ足りない。対象へ無理矢理意思を植え付ける、橙子師の元で習った通りの洗脳魔術の特徴。精神改変、精神改革とかいう魔術を使うメイドもいるらしい。意味が解らない。
ガスマスクで嗅覚は防げているようだけど、本来は視覚と嗅覚の両方から責めたてるもののようだ。効果は半減できている、かな。
「……やっぱりこの方角は、夏巳館の方よね」
非常に厄介なつくりをしているあそこへ無策に入るのは余りにも危険。仕返しはするし怖気づいたつもりはないけれど、蛮勇と無謀を犯すつもりはない。
今日は偵察だけ。
そう決めて、林の奥へと歩き出した。
わたしを監視していた、不可視の下等生物の事になんか、欠片も気付かずに。
「……ん?」
あれ……わたしは確か、夏巳館を調べる為に林の奥へ進んで。
何故、礼拝堂に?
「目が覚めましたか? まったく、あれだけ威勢よく出て行って、これですもの。呆れてしまいますわね」
「黄路先輩……? もしかして、わたしは」
「ええ、非常口の近くで倒れていましたのよ。すぐに起きると思って一度こちらに運びましたのに、なかなか起きないので困っていたところですの」
「ああ、それはご迷惑おかけしました。それで?」
「それで、とは?」
にこにこしている黄路先輩に、失策を悟る。
そうだ、生徒たちが洗脳されているのなら――その記憶を収集してしまった黄路先輩も。
「わかっていることを聞かないでください。何故、わたしは十字架に磔にされているんですか? ……それも、裸で」
「黒桐さんこそ、わかりきっていることを聞かないでくださいな。勿論、気持ちの良いことをするためです。すべては彼身に、淫蕩を捧げるために」
壁に掛かっているものではないようだが、それと同じくらいの大きさの十字架に、私は磔にされていた。
正直、羞恥と屈辱でどうにかなってしまいそうなくらい
黄路先輩は語りが好きだ。なら、そこから情報を引き出せるかもしれない。
「また神。神ってなんなんですか? っていうか、黄路先輩はクリスチャンでしたよね。キリスト教の神は淫蕩なんてものを欲するんですか?」
「神と彼身は違いますわ。そんなこともわからないで、クリスチャンを語らないでくださいます?」
黄路先輩はゆっくりとした足取りでわたしに近づいてきて、縛られて強調されたわたしの胸をたぷたぷと触る。黄路先輩は洗脳されているだけなので燃やす事は出来ないし、なにより火蜥蜴の手袋も無い。文字通り全裸で、十字架に磔にされている。
「ふふ、羨ましいくらいのおっぱい。艶々で張りもあって……美味しそうですわね」
「あぁ、黄路先輩は薄いですもん、イギッ!?」
グイ、と。
強く、乳房を抓られた。ガスマスクの無い口や鼻は既に例の気体を吸っているらしく、体は非常に敏感で、熱い。今回は痛みが勝ったけど、場所によっては気持ちいいとさえ感じてしまうだろう程には、わたしの身体は発情していた。
「あらあら、黒桐さん。口に気を付けた方が良いですわよ? わたしの扱うモノが何か、お忘れですか?」
「は……うっ!?」
ぴたりと閉じられているはずの――後ろの、穴。
そこに、ナニカが……ぬるりと、その口をこじ開けて、入ってきた。
「ぅ、ぁ……!」
「前はお兄さんのためにとってあると、貴女の記憶にありましたから、触れないでおいてあげますわ。その代り、前以外のすべての場所に張り付いた五十を超える妖精たち。黒桐さん、貴女の態度によってはそれらがどうなるか……ふふ、聡明な貴女なら、想像が付くでしょう?」
言われてから、ようやく意識出来た。
敏感になった身体の上。皮膚を這いずる、無数の羽虫。一匹一匹が手のひら程の大きさで、羽が生えていて、脚があって、それが、ずるずると……わたしの裸に、舐めるように群がっているのだ。
「例えば、こんな風に」
「ッッ!」
乳頭……否、乳首に鋭い痛みとくすぐったさにも似た快感が走る。
どうやら齧られたらしい。通常であれば痛いだけのそれを、発情した身体は快感であると誤認する。
黄路先輩はその類い稀なる並列思考により、五十強の妖精、その全てを同時に操る事が出来る。両手両足の指でそれぞれ違う絵を描く事より難しい。狙いその物は少々甘いが、この状況でそれはあまり良い要因にはなり得ない。むしろ、黄路先輩の狙った加減以上の刺激が来るかもしれないという、恐ろしい状況だ。
「そ、それで……わたしに、何を要求するつもりですか……ぅ、ふっ」
後ろの穴に入った妖精が、その釣鐘型の身体を無理矢理押し込もうとしている。出て行くだけの不浄の穴に、余りにも不釣合いな大きさのソレが入ろうとしているのだ。
さらには、さわさわと動く肢と、微振動する羽。それらが腸壁を無作為に詰る。
「淫蕩を」
「いん、とう」
「そう――妨害するな、とか。調査をやめろ、とか。そう言う事を要求するつもりはありませんわ。ただ、淫蕩を。彼身に捧げるための淫蕩を差し出してくれればよいのです」
「具体的、には?」
「気持ちよくなって頂ければよいのですわ」
「つ、ぶん゛っ!」
引っかかっていた妖精がずぼんと腸内に張り込む。
同時、胸に張り付いた九匹が微弱な振動を始める。右胸を囲う様に四匹。乳首に一匹。左胸を囲う様に四匹。
腋や膝窩、足裏、首。
それらに張り付いた妖精もまた、わさわさと肢を動かし始めた。
「ひぁ……あ、ぁぁ、ぁああ……」
くすぐったい。痛みや苦しみにはある程度我慢が効くかもしれないけど、これはどうしようもない。
単純にくすぐったくて――気持ちが良い。
「ふふ、可愛らしいですわね、黒桐さん。それでは私も失礼して……はむ」
左胸の乳頭に、黄路先輩が口を付けた。
敏感に屹立していた乳首は黄路先輩の吐息の圧をも感じ取って、乳房全体にその快感を伝える。妖精たちの振動がそれを増幅し、乳腺や筋肉が弛緩する。
まずは舌先が、その後に舌の腹が。ざらざらとしたそれが少し動くたびに、薄甘いくすぐったさが左胸を駆け抜ける。次に来たのは歯。左胸の乳首を上下から挟み込み、甘く潰す。
「あ……ひぃ、ぃぃ……いぃい!」
「ぇろ……ぇろ」
唇が乳房へ貼り付き、唇と唇に挟まれた乳頭周辺が、じゅぼぼぼ……と吸い込まれ始める。息が続かなくなれば唇周辺を人差し指と親指で造った輪っかで抑え、息継ぎをしてからまた。
吸いながらも甘噛みと愛撫は止まらず、むしろ軽く鬱血している乳頭はさらに刺激に敏感になる。黄路先輩はまるで極上の果実を少しずつ啄むかのように、小さな範囲を執拗に責めたててきている。
「ずい、ぶん、と……手馴れてますね……! 後輩で練習でもした、ぁ、ぐ!?」
「っはぁ……。んんっ、いい味。ところで何かおっしゃいましたか? 随分と苦悶の表情を浮かべておられますけど……」
「ア、ンタ、がぁ、ぅアアッ!」
ぶびゅっ、と下品な音を立てて飛び出した妖精が、今度は一匹だけではなく、三匹、後ろの穴に入って行く。形状上どうしても空気を巻き揉むその妖精によって、腸の中に空気が溜まって行く。
穴を閉じようと括約筋に力を入れるも、他の場所からの快感が筋肉を弛緩させた。
「あぁ、安心なさいな。汚いものは全て妖精が食べてしまいますわ。ですから、今から貴女がひり出すのは、汚らしい音だけ。この礼拝堂に響き渡る程の――」
「ぐ、ぅぅ……ううう!」
黄路先輩はするりとわたしに抱きついた。
噛み付いてやろうとしたら、口の中に妖精が入ってくる。
黄路先輩はわたしの肩口に顔を置き、腰から両腕を後ろに回し。
「えっ、やぁ! やええ!」
「おや、人間の言葉も忘れてしまいましたの?」
尻たぶに、その両手を当てた。
後ろの穴の出口付近に妖精たちが集まってきたのがわかる。まるで栓をするように。だけどそれは、より音を大きくするための加圧装置に過ぎない。
「さん,に――」
「ん、んんっ!」
乳首と足裏、膝窩の振動が大きくなる。
筋肉が弛緩する。
「ぜろ」
「う゛――」
籠めようとしていた力のタイミングも外されて。
開かれた尻たぶと、飛び出した妖精に我慢する事も出来ず。
わたしは、神に声を届ける礼拝堂で、その大きな音を響かせた。
ぷ、ぷ、ぷ……と、未だ出しきれない腸内の空気。
だからといって、黄路先輩の責めが終わるわけではなかった。
「あぁ……貴女でも、そんな顔をするのですわね……。真赤になった頬に、目の端には涙。ふふ……これは、
「ふぅー……っ! ふぅー……っ! 黄路に、二言は……無いんじゃなかった、んです、ううっ」
ぶふっ、と、また排気。
黄路先輩はわたしのお腹をゆったりと撫でさすっている。それが余計、腸の動きを活発にして、排気を早めていた。
「ええ、勿論。婚前用の穴は、触りませんわ。触るのは、こ・ち・ら」
お腹をさすっていない方の手で、その小指で、黄路先輩は前の穴……の、上部をツツ……となぞり上げた。肌ではない、肉にその爪が触れて、背筋をゾクゾクしたものが駆け上る。
「そこはっ! そんな、頭おかしいんじゃない!? ひゃんっ!?」
「ひゃん、ですって。可愛らしい声。よくってよ、黒桐さん。そして、頭がおかしくなるのは貴女、ですわ」
黄路先輩が曖昧にした手のひらをそこへ近づける。
見えない。視えない。けど――風圧が、肉芽を撫でる。
「無理……無理だから。そんなものは、絶対に……!」
「大丈夫。お尻に入れた妖精より、二回りほど小さいものですから……まぁ、その代わり水を飲む事は出来なくなってしまいましたが」
ぴと、と。
そこに――その穴に、肢がかかったのを感じた。
「御開帳、ですわ」
にゅ、ににににっ……。
外部から開かれることなぞ到底想定していない肉穴が、非力極まりない妖精の力で開かれていく。身体が反射的に閉じようと力を入れるが、かまうものかと妖精がその身体を穴に突き入れた。
「、っつぅぅうう~~~……!」
「最初は痛い、らしいですわね。私はやったことがありませんので、他の子の記憶ですが……でも、大丈夫。すぐに気持ちよくなります。その間、私は先程虐める事の出来なかった右胸を食べさせてもらいますわね」
「ず、ぁ。ぁあっ、ああ、あああっ!」
ゆっくり、ゆっくり。
摩擦と炎症で熱を発するその道を、本来とは逆の方向に入ってくる妖精。
手足と羽が擦れて、今にも決壊してしまいそうな甘い快感と痛みが下半身を覆う。
もちろん胸の快感も相当な物だけど、今まで感じた事の無い異物感は、下半身の方が上。
「んちゅ、るるるる……はむ。うぃぎうぃぎ」
「噛むな、ぁ! あ、そ、その、その奥は!」
ぶひゅぅ! と最後の排気と共に、下腹部の水源へ、ソイツが到達したのを悟った。
「さて、それでは、脚を上げましょうね、黒桐さん」
「う、うそ」
足の縄が片方解かれる。蹴ってやろうとしたけど、弛緩した筋肉にそれは不可だった。
膝に巻かれた縄が腕の縄にかかり、わたしは股間を黄路先輩に見せつけるような体勢になる。
反対の足も、同じように。
これで正しく張付けられたというわけだ。
ぶぅぅう……と、先程が最後だと思っていた腸内の空気が吐き出された。
「見事なM字開脚。私、非常に気分が良いですわ。黒桐さんのこんな姿を見る事が出来たんですもの」
黄路先輩はわたしのヘソに指を入れる。
そして、ぐりぐりと穿ち始めた。
例の穴が刺激される。
「うぅぅう……ふぅぅうう……!」
「さて、
軽い掛け声で。
ちゅぽん、と抜け出た妖精と、穴を左右に引っ張った妖精によって。
「あ、あ、あ――!」
わたしは礼拝堂に、それを、盛大にぶちまけた。