生意気で勝気な派手好きの妹と“新婚生活”を始めるまで 作:志邑イチロウ
<登場人物>
兄
年齢:13歳
特徴:ノッポ。ガリ。ガリ勉。ヘタレな割に喧嘩っ早い。
長所:視力が良い(ただ、父は遠視ではないかと疑っている)
短所:たいした男でもないくせにナルシストの傾向がある。
ハマっていること:貧乏をネタにした自虐で笑いを獲ること。学校では【貧乏キャラ】としての地位を確立しつつある。
妹
年齢:9歳
特徴:チビ。生意気。地黒(夏場だからメッチャ日焼けしてる)。
長所:ませてて派手好きだが、聞き分けがいい。
短所:大人っぽい行動や服装を好むが、根がガキなので間抜けにしか仕上がらない。
ハマっていること:ささやかな筋トレ。及び、鍛えた体を友達にシレッと自慢すること。(ただし、父曰く「どこの筋肉が増えてんのかサッパリ解らねぇ」)
「なぁ、お前サッサと"向こう"いけよ。今日はお前がアッチで寝る日だろ」
「は?別によくない?」
俺の真横、コッチが使ってる最中の枕に横から強引に割り込んでくると、生意気に俺を睨んできた。
「"お兄ちゃん"でしょ?妹のこと大事してよ」
「自分で言うな、バカ」
初めて妹と性的な行為をしてしまった夜、同じ布団に枕を使って俺ら兄妹は添い寝していた。
***
当時、俺ら一家が住んでいた家と言うのは明らかに3人家族が暮らす様には設計されてない狭苦しいアパートだった。
台所の他に部屋は2つ。うち一つは父親の荷物がぎっちり詰まっており、寝室として機能している。
もう一部屋が俺ら兄妹の部屋。だが、この部屋に布ける布団は1枚が限度だ。
つまり、俺ら兄妹が別々に寝れるスペースは部屋の中に無い。そこで、兄妹交互に「台所の床に置いた座椅子」と「自室に布かれた万年床」を寝床として使うという生活をしていた。
その晩は、サイクル的には妹が布団をリビングに布いて寝るはずの日。
ところが、奴は部屋に布いてある蒲団に寝転がっている。色白な俺に似ず、地黒の肌を一段と濃厚な褐色に灼け上がった体をだらしなく投げ出している。
もう風呂も入って一通り学校の宿題にも手を付けたらしい妹は、パジャマとして使っている薄手のワンピースと、小学校低学年の頃から吐いている「そろそろサイズ的に限界なんじゃないか」っていうショートパンツを履いた就寝モードの服装。
学校でクッキリと刻み付けた日焼け跡――半袖の体操服と靴下の跡が剥き出しになっている恰好だ。
勝手に俺のスマホをベタベタ触りながらゲームをしている妹に「今日はお前向こうで寝る日だろ」と言って追い出そうとするが、「は?知らないから」と突っぱねてくる。
こういう駄々は昔から捏ねられているのでこっちも慣れっこ。
俺も落ち着かない台所の座椅子では出来る限り寝たくはないから、我慢比べだと思って負けじと布団の上に寝転がった。
てっきり妹から「邪魔なんだけど」みたいに突っかかられると思ったが、コイツは何も言わず、一旦チラリと俺を見て来ただけ。何事も無かったかのようにスマホをタップし続ける。
ちなみに、中学時代の俺は結構勉強熱心で、「なんとしてでもいい大学に言って金を稼げる大人にならなければ」という強迫観念に苛まされていたから。
そこで、寝る前はいつも自分で作った英単語帳や歴史の年代メモ帳を読み込むのが習慣だった。
その夜も、部屋の電気を消す前に英語の受動態の勉強なんかをやっていた。
ただ、集中できない。
何せ貧乏な父子家庭が使っている煎餅布団。サイズに余裕があるわけでもなく、こうしている間にも真横にいる妹の体温がムワッと漂ってくるのが暑苦しい。
しかも妹は風呂上がりの濡れた髪の毛はしっかりと乾かしていないし、エアコンも使えない猛暑のせいで寝汗もタップリとかいている。
そんな奴がゴロゴロしていたせいで、布団がベトッと湿っていて滅茶苦茶に気分が悪い。妹の身体から出て来た水分がしみ込んだ布団で寝転がっている内に「これなら、もう向こうで寝た方がいいわ……」と俺は思った程。
とはいっても、いかんせんそれも負けたみたいで悔しいし……と、ウンザリしながらも同じ布団で我慢比べを続けていた。
すると、ブツブツ口に出しながら英語を勉強してる俺の耳元へ、枕元で動いている扇風機が送る風とは別物の、生暖かい風が微かに吹いてくる。
何かと思って横を見ると、隣で妹が俺の枕の上に顔を乗せて、頬が触れ合う程に距離を詰めてきている。
「何見てんの?」
いつもは気にもとめない俺の勉強に興味を示して来た。細くて丸っこい方が俺の肩に押し付けられて、鬱陶しい。
「ん?学校の英語の勉強だけど」
「どんな勉強してんの?」
「は?なんだっていいだろ」
「ちょっと話してみてよ」
「何でだよ」
「いーから。ちょっと英語喋ってみてー」
俺の肩に手をかけて、ブンブンと揺さぶって来る。一体、何でこいつはこんなに絡んでくるんだ
――考えられるのは、昼間の行為だけだった。
もう頭が冷えていた俺は「ヤバいことをした」という想いしかなかった。
謝って罪を認めるのも怖くて、何もせずに無かったことのように振る舞っていた。
あくまでもあれはガキ相手のおふざけ。子供の頃に俺らが裸で風呂入ったりビニールプールで遊んでいたことと何ら変わりはないことなんだ…。
自分で自分に言い聞かせるようにして、俺は妹に背を向けて目をつぶっていた。
だが、どうしても気になる。
そもそも女子にモテない俺にとっては、「女子に性器を触られる」という性的な体験は初めて。
ついつい単語帳をめくりながら、横目に妹を見てしまう。
そこで、ふと気がついた。
「……え、お前ブラしてないの?」
「うん。だって熱いんだもん」
言いながら、胸元に伸びているワンピースの襟元をクイッと抓むと、パタパタと引いて扇ぎ始めた。
そうやって胸元に風を送っているあいだ、ずっと俺の顔を薄目でじっと見つめていた。睫毛の下でシットリと潤んだ瞳を俺に向け、俺の視線を合わせて離さない。軽く視線をそらしても、クッと顔を寄せて目を合わせてくる。
俺は、背筋が凍るようなことを考えてしまう。
―――コイツは今、俺を誘惑している……。
「ブラしてるとさ、中で蒸れてアセモ見たいのができちゃうしさ」とかなんとか、わざとらしいことをイイながら胸元を強調する。
まだ第二次成長も満足に迎えていない身体だ。この年齢の女子の中でもまだ幼い方の体つきのコイツに、まともにオッパイなんてあるわけないんだが。
なにせ、ちょっと襟元引っ張れば簡単に隙間から見えてしまうサイズだ。少しでも顔を向ければ、視界に褐色の肌の中にプックリと飛び出た乳輪と乳首が映り込む。
もっとも、お互いだらしない生活をしてる身。互いの裸なんて、別に珍しいもんじゃない。何よりも『兄妹』という大前提もあるので、コイツの肉体を異性のソレとして認識した経験がない。
ただ、今のシチュエーションが妹の身体を一気にエロい存在に変えてしまった。生意気でませていて、ガミガミとうるさいムカつく妹が、汗ばんだ体を火照らせている一人の女子に見えてしまう。
この時のコイツが、何を想ってこんなことをしたのかはわからない。
ハッキリと性的な誘惑だと認識してやっていたのか、あくまで兄妹間でのちょっとした下ネタ、おふざけでやっていたのか。それとも、幼い妹の中で芽生えた”メス”としての本能がそうさせたのか。
「もういいかげんにしろよ」
俺が妹の顔をグッと押し退けると、唇から「ムゥー」と不貞腐れた声を出しながら、俺に背を向けた。
薄手のワンピースからは肩甲骨や背骨の突起がクッキリと浮き上がり、異性として見てしまった俺はその輪郭をなぞりたくなる衝動を抑えるのに必死だった。
もう勉強にも集中できなくなった俺は、電気を消して寝ることにした。
「電気消すからな?」
妹に確認すると、奴は背中を向けたまま生意気な口調で答える。
「消せば?」
……ムカつくわぁ、コイツ……。
それでも「おやすみ。兄貴」と、チラリと俺を見ながら話しかけてくる妹にドキドキしている自分が情けなかった。
と、ここで一つ、また変わったことがおきた。
当時俺は寝る時に蛍光灯の灯りを完全に消して真っ暗になった部屋で寝ていた。しかし、カチカチと紐を引いていると、オレンジ色の豆電球だけがついている状態の所で、妹がクッとおれのシャツの裾を、親指と人差し指でつまみながら引っ張って来た。
「今日は……豆電球はつけといて」
心なしか、目つきだけじゃなく声色もネットリと濡れた印象を受ける粘っこいものになっている。
「はぁ?何で?」
俺が質問しても、ハッキリとは答えない。
「今日は真っ暗なのが……イヤだから」
そういうと、ゆっくりと体を起こすと、俺の手の甲に指先をヌッと這わせてゆき、紐を掴んでいる俺の指先を絡みついてくる。そのまま俺の指を絡めとって蛍光灯の紐から引き離すと、か細い女子小学生の力でクッと引っ張ってきた。
「このまま……寝て」
いつになく大人びた、ハスキーボイスで妹は言った。