「きみ、どこまで行くのかな?
某駅の改札口。
(何度目だ、これ)
あの後、阿笠博士の家の裏口から出された(ってこの展開、安室さんは納得するんだろうか?でもこれで安室さんに保護される、っていうのも何か違う気がする)あたしは、あるルートを辿ろうとしていた。
「○○までです。帰るだけなので大丈夫です」
そう言ってもまだ食い下がってくる駅員さんに、途中の駅をそらんじてみせたり。
何とか新幹線乗り場まで来たとき、視線を感じた。
(まさか)
振り返りたかったけど、そうするとこちらが気づいていることが丸わかりなので、よく子供がやるような他愛もない探検ごっこを演じつつ、長いホームを往復してみた。
(へ!?風見さん!?
某公安の風見さん発見!
あたしとは面識がないから、と思っているのか、結構な距離まで近づいても知らん顔だけど、これってーー
(尾行、だよね)
声を掛けたくなるのを抑えて、各駅停車の新幹線へ。
○○駅なら途中駅をとばす○○○○や○○○の方がいいって薦められたけど、あたしは各駅停車にこだわった。
杞憂だったらよかったんだけど、やっぱり風見さん居たし。
ちなみに軍資金は件のバックに入っていた。
(灰原さんがそんなミスするハズないから、これは使っていいんだよね)
あたしが乗車すると、やっぱり風見さんも乗ってきた。
(これって安室さんの指示だよね)
席について、ふう、とため息。
これで元々の住所に戻ったら帰れる、なんて思ってない。でもやっぱり、自分の家がこちらではどうなっているのか確認したかった。
ときおり、好奇心旺盛な子供を装って新幹線の中をうろうろ。
風見さんは乗車口付近に居た。
(やっぱりそうか)
トンネルを飽きるほど越えたころ、見慣れた××の街が近づいてきた。
すかさずあたしはトイレに行くふり。
(バックは仕方ない。置いていこう)
貴重品だけポケットに詰め、風見さんが居るのとは反対側のトイレへ。
揺れがおさまりかけ、のんびりとした音楽が流れたとき、トイレから出る。っと、風見さん、こっちに来かかってる!?
風見さんはまだ車両の真ん中辺り。
(大丈夫。間に合う)
自分に言い聞かせ、タイミングを計る。
目の前の降車口は数人、降りる人がいた。
あたしはその人達が邪魔で戻れない振りをする。
(三、二、一……
発車の合図ぎりぎりに降車口に飛び込んだ!
(ゼロッ!
無事、××駅のホームに降り、辺りを確認。
風見さんの姿は、ない。
(セーフッ!
各駅停車を使ったせいで大分遅い時間になっていた。
早足でバスターミナルへ。
「えっと、八雲団地行きは……」
記憶とほとんど変わらない街並みにほっとしながら乗り場へと向かった。
「え?
(八雲団地行きがない……)
あたしが住んでいる八雲団地は近年できたニュータウンというもので、そのバイパスの奥には大学や大学病院があるため、地元では結構知名度が高い。大学病院行きのバスには大概、「八雲団地経由大学病院」などと書かれているくらい。
なのに、どの停留所にも「八雲団地」はなかった。
「なんで、大学病院しか書いてないのよ……」
「どうかしたのかい?
(しまった!今、あたしは子供の姿だった!
「なんでもないです!大丈夫です!
穏やかな風貌のおじさんにそう返して、あたしは「バイパス経由大学病院」のバスへ乗り込んだ。
街中の景色も鉄橋も途中のバス停も同じ。
(同じ、なのに……)
ひとつ手前のバス停降りたあたしは固まっていた。
「八雲団地が、ない」
ない、というより造られてすらない。
山を削って造られたという団地はあちこちに急な勾配が残っていて、この手前のバス停で降りると、小山をぐるりと回る道路。その小山にどん、と建つ真新しいアパート群が目に入る。左手には家が建ち並びーー
(何もない)
そこは単なる緑の塊だった。
どれくらいそうしていただろう。
とにかく近くへ、と歩を進める。
(この足の裏の感触は確かなのに)
なんどかこのバス停で降りたこともあるから、この道も見知ったもののハズだった。
(ただ、八雲団地がないだけで)
無理やり足を動かして団地の入口まで来て、あたしはまた衝撃を受けた。
「入口が、ない」
考えてみれば当たり前だ。もとから団地が存在しないのだから。
だけどこの時のあたしはそこまで頭が回らなかった。
「お母さん、お父さん、ゆうと……」
いない、と分かっていても、声を上げてしまった。
ガードレールを乗り越えて中へ入る。
「わっ!
手入れもしていない土手は足場もなくてすぐに転んでしまった。
伸び放題の枝や草が体を打つ。
「もうやだ、帰り、たい」
みっともない、と思ったけど涙は止まらない。
(やっぱりあたしの居た世界じゃないんだ。もう、戻れない……)
嗚咽が止まらない。
「っく、っく、うっ、うっ」
お腹が痛くなるまで泣いて泣いて、あたしは何とか落ち着こうと大きく息をはいた。
(いつまでもここにいてもしょうがないのだから)
ガードレールを乗り越え(結構キツイ)た頃には、辺りはすっかり暗くなっていた。
(やっぱりもう一回、ダメ元でお願いするしかないのかな)
アスファルトの上で体育座りをしたあたしはそう結論を出した。
(工藤くんは無理としても、せめて博士に会えればなあ)
博士の、のほほんとした顔を思い浮かべながら、あたしは反対側の道路、記憶の中のバス停があったところへと移動した。
(ここから引き返してさっきのバス停ーー
何やら凄い排気音が聞こえてきたのだ。
(まさか、ゾクーー
思考はそこで途切れた。
なぜならこの非常に曲がりくねった道を白いスポーツカーが凄い勢いで迫ってきたのだから。
(まさか)
白い弾丸は反対側の道路に止まり、更に中からあたしが一番会いたくない人物登場。
「道に迷ったのかな?送ってーー
「結構ですぅっ!!
後ずさってしまったあたしは悪くないと思う。
「それじゃあ、阿笠博士のところでいいんだね?
押し問答の挙げ句、あたしは再び阿笠博士の家へ行くことになった。
(だってもう、他に行くところないし)
そこでふとあたしはシートの真新しい匂いに気がついた。
「何だい?
「あの、このシートって運転席のものより新しい気がするんですけど」
原作の様々なシーンを思い出してあたしが聞くと、
「ああ。少し前に事故ーー
「降ろしてください!バスで帰りますぅ!!
……必死に頼んだけど、無駄でした。
仕方がないので途中、サービスエリアで休憩もらいました。
「うわあ」
ちょうど誰もいなかったのでつい呟いてしまった。
目は当然腫れているのはもちろん、下枝か何かで切った切り傷(何か、当然のように安室さんに手当てされてしまったけど)やら絆創膏やらでちょっとしたコスプレみたいになっていた。
ハンカチを濡らして目に当ててみたけど、それくらいで収まるわけもなく。
ちょこっとだけ冷やして車へ戻ると、
「どれがいいかな?
ホットドッグや串焼きなどの軽食が待っていた。
車内は胃に堪える匂いで一杯。そのとき、後ろから異音が聞こえてきた。
「風見。お前の胃は自己主張だけは一人前だな」
「すみません!
後部座席で小さくなっていた風見さんが更に小さくなったみたいだった。
新幹線からあたしが降りたとき、風見さん(探偵業の同僚と言われたのでこちらも受け流して自己紹介しました)はやっぱりというか、降り損ねたらしい。
慌てて折り返してきたら、安室さんがこの車で待っていた、と。
(って、新幹線、車に負けてる?でもって安室さん、用意周到すぎる!
それからすぐに聞き込みを始めて、あたしが乗ったバスを割り出し、先ほどのバス停まで一直線ってそこまで聞いて思わず「刑事さん!?と叫ぶと、
「本業は探偵だよ」
とじつにいい笑顔で答えてくれました。
ちなみにバックは風見さんが回収。
お礼を言うと、風見さんは複雑そうな顔をしていた。
(というか、本業違うやん!あ、これは言っちゃいけないやつだった)
「ありがとうございます」
一応お腹は空いてるんだけど、あまりの展開で、今はあまり入りそうにない。
適当に牛串や玉こんにゃくをチョイス。
「おいくらですか?
「いいから食べなさい。子供がそういうことを言うものじゃない」
少し強い口調に押されてしまった。(どおせチキンですよ)(泣)
「いただきます」
(あ、おいしい)
牛串は前に家族旅行で来たときと同じ味がした。
(お母さん)
喉に込み上げてくるものを、お肉と一緒に飲み込む。
視線を感じたような気がするけど、そこは気づかない振り。
(あ、雨降ってきちゃった)
こういうときのドライブって少しだけ気分が落ち込む。
(止まないかな)
そんなことを考えながらもぐもぐしていると、車体が揺れた。
「風見!
「はい!
一瞬後、爆発したような音と砂嵐のようなものが車を襲う。
「君はここにいるんだ!
(なに、これ)
駐車場の奥で何かが燃えているようだった。
そう思ったときには安室さん達はとっくに車を降りて走り出していた。
あっぶな。もう少しで「バスプール」って打つとこだった。ぐぐってみたらこれは限られた地域で使われている呼称だって(汗)
ん?タイトルに「北へ」って入ってるから、問題なかったかな(^^;
それからこれ、推理物にする気はないです(^^ゞ(ロマンス小説希望)何のためにR18にしたんだか分からなくなるわ(^^;
できるだけ、必要エピソードのみで辿り着きたいけど、……できるといいなあ(汗)