前回より短めですが、投下。
ざんざと雨がアスファルトに打ち付ける。
サービスエリアであたし達は足止めを食らっていた。
というのもーー
「まだ警察来ないの?
「ったく。これじゃあ間に合わないじゃないか」
人がひとり、死んだというのに休憩スペースでは非難の声が上がっていた。
駐車場の端に停められていた車が炎上し、中にいた男性がひとり、亡くなったらしい。
らしい、というのはこの雨の中、まだ車が燃えていて誰も近寄れなかったから。
もちろん、近くに駐車していた車やサービスエリアにいた人達は安室さん達が足止めしていたけど、中にはさっさと出ていく人もいた。
「まいったな」
そう安室さんが呟くのも無理はない。
(これって事故?それとも……。雨だと大概の証拠は流れちゃうみたいだし)
「君は僕の遠縁の子で、今度遊びに来ることになった。ということにでもしておこうか」
こっそりと3人で打ち合わせが始まった。
「では自分は?
「君は僕の友人だろう。今回の話を聞いて観光がてら同乗した、とでも言えばいい」
「観光、ですか」
(今の風見さんの、サラリーマン風の格好を見て、そう信じてくれる人なんて何人いるんでしょう)
遠い目をしていたあたしに安室さんが念押しする。
「いいね」
「はい」
(それはいいけど、あたし、自分の住所言えないんですけど)
それはこの世界には存在しないものだから。
(警察来たら事情聴取、だよね、やっぱり)
どおしようか、と思い悩んでいると安室さんの携帯に着信があったみたいだった。
まったく隙のない身のこなしであたし達から離れたところへ移動して話し出す。
(ん?安室さん何か驚いてるみたい)
何だろう、と見ていると反対側から声が鋭く響いた。
「もう、だから今日は出たくないって言ったのよ!
「そんなこと今更言われても」
「その煙草、止めてって言ってるでしょ!
(うわあ、ケンカ始まっちゃった)
三十代くらいの夫婦が(このふたり、最初から何か表情暗かったんだよね)口ゲンカを始めてしまった。
(こうゆう時に役立ちそうな人はーー
安室さんを見るとまだ話し中。
(どおしようか)
「もういいわ。車にいるから」
女性がそう言ってあたしの側を通りすぎようとした。
(ん!?
近距離だったため、あたしはその女性をしっかり観察することができた。
(髪はきちんとしているのに、ファンデなし?それにこの靴ーー
もうひとつの要素も含め、あたしの中である結論が導き出された。
「お姉さん」
「なに!?
勢いよく振り返り返られて、一瞬ビビったけどこれは今言わないと、とあたしは思い切って口を開いた。
「座らなくていいの?
「は?
「だってお姉さん、お腹に赤ちゃんいるんでしょう?
その場の注目が一気にあたし達に集まる。
「妊娠するとね、『におい』に敏感になるんだって。だから煙草の臭いでイライラするし、そのお化粧も匂いのない化粧水とか乳液で抑えてるんじゃない?
「そんな当てずっぽうーー
(これはちょっとマズイかも)
この人、気づいてないか、それともーー
「靴だってかかとのないの、履いてるし」
そこで女性に少し近寄る。
「お母さんのお腹にね、うちの弟がいたとき、すごく懐かしい匂いがしたの。聞いたら、おっぱいの匂いだって。妊娠するとそういう匂いが出てくることがあるんだって」
お姉さんからも同じ匂いがするよ。
そう続けると女性は崩れ落ちた。
(あわわ、椅子、椅子!
「どうぞ」
いつの間にか話を終えていた安室さんが椅子を持ってきていた。
(早っ!
「この子が言うことは本当ですか?
「……はい」
「お前、そんなこと一言も」
「これは僕の想像ですが、もしかしてひとりで子供を育てようと?
女性が頷いたのを見てあたしは思わず口を挟んでいた。
「そんなのだめだよ。母子家庭に世間は厳しいんだよ。働いてる間、子供見てくれる人いるの?それに将来、その子が働きたいとき、片親だと仕事みつかりにくい、って近所のお姉さん、言ってたよ」
(あ、何か子供っぽくない発言しちゃった)
あたしが焦っていると、上の方でくすり、と笑ったような気配がした。
「この子の言うとおりですよ。原因が旦那さんの暴力だったりしたら止めませんが」
そこは否定が入った。
「だってこの人、すごくモテるから」
「「は?」」
あたしと安室さんの声がハモった。
(なんじゃそりゃ)
「それは浮気ということですか?
「厳密には違うけれど、どこに行ってもこの人の周りには女の人が寄ってきてーー
何だか疲れちゃって。
(さいですか)
そう続けた女性にあたしは遠い目をした。
「はあ」
安室さんも生返事。
その視線の先には人が良さそうではあるけど、極々平凡な容姿にしか見えない旦那さんがいた。
「すっかり当てられてしまったな」
さっきまでの言い争いが嘘のようにラブラブな夫婦を遠目に安室さんがひとりごちた。
(同感です)
心の中でうんうん頷いていると、安室さんがこちらへかがみこんだ。
「今の騒ぎで忘れるところだった。さっき灰原さんから連絡がきてね。君の面倒をみたいそうだ」
「え、」
(あれ?今、普通に『灰原さん』って。確か原作では連れ戻そうとしていたよね)
「何だかとても済まながっていて。君とも話をしたがっていたけど、この騒ぎだからね。後から掛け直すことにしたのだけれど」
(灰原さんが!
どういう風の吹き回しか知らないけれど、灰原さんの態度が軟化してくれたことが嬉しくてその他のことに頭が回らなかった。
「一体、君は何者なんだい?
「え」
「突然僕の目の前に現れたこともそうだが、今の女性に対する応接だってそうだ。どうも君を見ているとある人物を思い出してしまうのだけれど」
(コナンくんのことだよね、やっぱり)
「江戸川コナン、聞いたことないかな?
あたしは思いっきり首を振った。
「ないです!
「そうかい。とても似ているようにみえたけれど」
知り合いか親戚かと思ったけれど、と続けた安室さんを前にあたしは冷や汗が止まらなかった。
(これって絶対怪しまれてる!)
「あ、飴欲しいな。見てこよう、っと」
わざとらしいとは思ったけれど、とりあえず売店へダッシュ。
適当に選んで会計を済ませ、袋をーー
(よっと。思ったより固い)
その時、あたしは失念していた。
今の自分は子供の姿で、つまり握力もそのくらいしかないということを。
「わわっ!
あっという間に床に散らばるハッカ飴。
「ほら」
「はい」
「……アリガトウゴサイマス」
どうやら飴は広範囲に散らばってしまったらしく、その場にいたほとんどの人が拾ってくれた。
無事回収が済んだ飴を口の中で転がしていると、
「まったく、君って子は」
どこか呆れたような声がした。
「皆の利き手なんか調べてどうするんだい?
(え?あれ、そう言えばこれって)
原作のエピソードで似たような場面があったのを思い出してあたしは顔面蒼白。
「やはり君ーー
(スミマセン、グウゼンナンデスヨ……)
もちろん、推理物にする気はーー。
飴のエピソードは小銭でしたね~~(^^;
えと、本格推理にするつもりはないので、次回もさらっと……。
それと早くスマホに慣れたいですm(__)m