私ことアタランテはジャンヌ・ダルクと再び争うつもりはなかった。
同時に、親しくなるつもりもなかった。
元より私は他者と親交を深めるということをしない女だ。
そう言って離れようとしたのに……あの聖女は追いかけてきた。
またとない機会だから仲良くなりたいなどと言って近づこうとしてきた。
愚直に、真っ直ぐに、レイシフト先だろうがシミュレーションだろうが食堂だろうが風呂場だろうが近寄ってきた。
私が撒くのに色々疲れてくると、マイルームにまで押し掛けてくるようになった。流石にこれは看過できず追い出そうとした。……が、筋力の差とは悲しいものである。
ただまあ、別に嫌いではなかった。聖杯大戦のいざこざを冷静に割り切れば、あの聖女の性格は好みの部類に入る。脚の速さも中々のものだ。匂いも変に飾っておらず、豊かに実った女らしい身体はきっと良い母親になれただろう。
ありきたりな村娘としてごく普通に、ごく平凡に。
それ故に尊くもある優しい未来があった。
私らしくない感傷だ。それをアルテミス様との酒の席で漏らしてしまったのは一生の不覚といえよう。
だが、だが…………ああもうっ、あんな加護があるか!
処女神ともあろう御方が何という祝福をしてくれたのか……!!
いったい誰に恩義を感じ、純潔の誓いを立てたと思っていらっしゃるのか!!
『わ、わわわ私が責任を取りますから……えっと、その……。アタランテも責任、取ってくださると嬉しい……です?』
合意の上だったのが唯一の救いだろう……。
私は純潔ではなくなって、ジャンヌ・ダルクも聖処女ではなくなった。
罪悪感はあったがそれほどでもなかった。元凶が元凶だからである。私は悪くない、悪くない、うん、悪くないんだ。善意しかなかったジャンヌも悪くない。
初夜を過ごし、朝を迎え。消えていない男根を見たときは気まずかったが。
『えへへ……あんなに優しくされたのは初めてでした……』
両手の指先を合わせながら、はにかむジャンヌを目にして。
細かいことはどうでもいいからこの少女を娶るしかないと思った。
あれから私たちは果物、林檎のような関係になった。
見るからに親しい間柄ではあるが節度は弁えている。公衆の面前でいちゃついたりはしない。カルデア内のコミュニティは広くないのだから当然である。
ただ、どちらかのマイルーム(大抵私の部屋だ)に入ると雰囲気が変わる。
したい時はどちからともなく触れ合い、我慢していた時はドアが閉まった瞬間から求め合う。身体を清めるのももどかしく寝台に縺れながら倒れる。
一皮剥けば様変わりし、その下にある果肉と蜜の味の虜になってしまう。
今回は、殊更に甘くしたい夜だった。
ガーデンルームのように多種多様の花や植物が置かれた部屋。
意識すれば甘く清らかな自然の香りが匂えるこの部屋で、どこのきらきらと煌く王妃様が用意したものなのか。
貴族や王族などの位が高い者が使いそうな天蓋付きの寝台の上で――アタランテとジャンヌ・ダルクの二人の少女は重なり合っていた。
男性器を生やしたアタランテがジャンヌに覆いかぶさり、正常位の形で腰を突き込んでいるといった具合である。
水気を帯びた肉と肉がぶつかり合う音に、狩人の荒い息遣いと聖女の蕩けた嬌声。不慣れで初々しいぎこちなさはなく、それなり以上に回数を積んだ間柄なのを物語っている。
「――♡」
蒼い瞳で熱っぽい眼差しを向けるジャンヌは恥じらうどころか、アタランテを抱き寄せてキスを欲しがる。花弁のような可憐な唇を心持ち前に突き出す。
もっと深く繋がりたい。
その想いは言葉にせずとも伝わる。
不思議に思うぐらい愛おしく、意地悪をせずに応えてやりたくなる。
私だってそうだ。
アタランテの端整な顔が呆れたように、けれど嬉しそうに綻び、抽迭の動きを少しばかり緩めて口付ける。
「アタランテ……♡ ちゅ、んんぅ♡ うむぅ、はちゅ、れる♡ んじゅ、ちゅぷ♡」
ジャンヌと性交を重ねていくにつれて分かってきたことが一つある。
この金髪の少女は接吻をしながら交わるのが好きだ。基本的に軽くても深くてもいいのだが、情事が長引くにつれてディープなものを強請るようになる傾向があった。
「ぢゅう、はん♡ じゅ、ちゅ、んんっ、ぷちゅ♡ はむ♡ じゅく、ちゅ、んぅっ♡」
ジャンヌは熱情をこめて唇を重ね、アタランテの口内で舌同士を絡める。逞しい男根に子宮を揺さぶられながらも離そうとしない。背中に両手を回して抱き付き、ほんのり林檎の味がする唾液を幾度となく飲み込む。時折こぼれる吐息は悩ましく、アタランテを見つめる蒼い瞳は濁りのない信頼と情愛に満ちていた。
「ちゅむ、ちゅう……ふふふ♡ 甘くて美味しくて、気持ちよくて、とっても幸せです♡」
「私も、汝との接吻は気分がよくなる。まだしてもよいか?」
「はいっ♡ もちろんいいですよ♡ たくさんしてくださいね♡」
舐めあい、吸いあい、離れたら笑いあって、また重ねあう。
上手く表現できないけれど――とにかく幸せな心地だった。
この関係に発展したきっかけは破天荒極まりないというか、ギリシャの神様特有の理不尽で頭を悩まされたものの、発破を掛けるにはあのぐらいの勢いが必要だったのだろう。
予想だにしない進展ではあったが、悔恨のしこりは残っていない。
「はぁ……じゅむ、じゅる、ジャンヌ……ジャンヌ……っ」
「っぷは、アタランテ♡ ちゅう、ぢゅく、ぢゅずぅ、ちゅる、アタランテ♡」
〝私は恋をしてはならない、愛に堕ちてはならない〟
――アタランテはそう誓っていた。
〝恋も愛も私には関係のないもの、そうでなければならない〟
――ジャンヌはそう信じていた。
そんな自身への戒めは二人共捨てた。神様が取っ払ってしまった。
得られた恋と愛を深めたいという欲求だけを追い求める。
アタランテは全身を押し付けるように抱き締めた。上の口でも下の口でも深く繋がり、ジャンヌとの快楽の高みを目指して動きを激しくする。
一気に突いてはすぐさま抜き、体液が飛び散る勢いで突き込む。奥に行くほど狭まる蜜壺を掻き分けて子宮口を叩く。
その力強さから射精の兆候を敏感に感じ取った肉壺は喜悦に震え、一枚一枚の膣壁をそれぞれが独立した生き物のように蠢かせた。熱い愛液を湛えた膣道の中で密着して絡まり、擦り、絞り上げる。ジャンヌの優しいが厳しい一面もある性格を体現したような、柔らかく包み込みながらも強烈に締め付ける膣だった。
そうしながらも奥へ奥へと導き、精液を欲しがる子宮口は今にも破裂しそうな亀頭を咥え、快楽のあまりに漏れ出てくる大量のカウパーを吸い上げる。
「うあっ……」
予想以上の、期待以上の気持ちよさにアタランテも呻く。
ジャンヌの女陰が極上の名器であることを差し引いても、男としての性感を飼い慣らすのは本当に難しい。何十回と性交を重ねても、その分ジャンヌも自分専用の女として適応してくるのだから終わりがなかった。嬉しい半分、油断すると情けない姿を晒してしまいそうで怖くもある。
肥大化した肉棒の根元から先端にかけて高まる、むず痒く痺れるような射精感。それをどうにか意識しないようにジャンヌとの濃厚なベーゼに集中していく。
「ぢゅる、じゅぷ♡ じゅるる♡ あふっ、っふ♡ あ、ぁ♡ んんぅっ♡ れる♡」
息つく暇を与えずに唇を重ねる。引っ張り出した舌を舐めて、じゅるじゅると吸い立てる。こぼれた唾液で口元や顎が濡れても気にしない。ジャンヌの唾液なら汚れている感覚など微塵も覚えない。
アタランテの情熱的な求めにジャンヌの頭の中は真っ白になりつつあった。身体はふわふわして、大切なところは熱くてしょうがない。特に子宮が、熱々で濃厚な精液が欲しくて欲しくて耐えられないらしく、さっきからずっときゅうきゅうしている。
これが絶頂の兆しなのは知っていた。理性ではなく本能で理解できるのだ。
一旦離れたアタランテを見上げる。霞んだ視界でも彼女だけはちゃんと見えた。
額に大粒の汗を浮かべた彼女の深緑の瞳には、ジャンヌが――私が確かに映っていて。
見てくれている。
愛してくれている。
それが嬉しい。幸せな気持ちがどんどん溢れ出てくる。だから言葉にして伝える。
「好きです♡ 貴女のことが、大好きです♡」
途端、林檎みたいに真っ赤になって目を丸くするアタランテが愛おしい。
お腹に力を入れると彼女の男根がビクビク震えて一回り大きくなる。
「いいんですよ♡ 我慢しないで♡ 私の中で、私の子宮に精液出してください♡ 私もそろそろ……ですからっ♡ 一緒にイキたいんです♡」
素直で淫らなお願いにアタランテの衝動は燃え上がる。
返事をする代わりに、緩くなっていた抽迭を再度強めることで応じる。部屋中に打擲の快音が鳴り響き、美しい狩人を求める聖女の淫蕩な嬌声が続く。
絶頂を迎える直前――二人の肢体は絡み合い、唇と唇は深く重なっていた。
そして最後のひと押し――子宮口に亀頭が突き刺さり、内側へと食い込んだ。
お互いの身体がビクリと震え、快楽の頂上に至った喜びを分かち合う。
激しく収縮し、顫動する膣壁に搾られながらアタランテの男根は吐精する。濁流のような膨大な量のスペルマを注ぎ続ける。
(まだでてます……♡ アタランテの精液たくさん注がれてますぅ♡)
自身をどんなに想っているのかの証でもある白濁液。それらを子宮に直接浴びせられるジャンヌは絶頂したあとも小さく達して潮を吹いていた。
射精が終わるまでアタランテと触れるだけのキスをしつつ、まだ治まりがつきそうにない男根をお腹の上から確かめた。一回だけでは満足できないらしい。それはジャンヌも同じ気持ちだった。時間の余裕もまだある。終わらないといけない理由はなかった。
ジャンヌ、と名前を呼ばれる。三つ編みを解いた髪を撫でられる。丁寧に優しく、まるで恋人を相手にするような繊細な手つき。
「今夜は汝の要望をできる限り叶えたい。もしあるなら、遠慮なく言って欲しい」
貴女はそう言ってくれる。
うれし涙が零れ出てくる。
ぎょっとしておろおろしだすアタランテを「えい」とジャンヌは押し倒す。繋がったままの状態で騎乗位になり、ゆっくり倒れて火照った身体を密着させる。
まだ混乱している様子のアタランテにジャンヌは涙を拭って微笑む。
「悲しんでも怒ってもいません。すごく嬉しかったです」
「う、うむ……安心したぞ……」
「では、お願いを聞いてくれますか?」
◇
私を大切にして、愛してくれるこのヒトをもっと気持ちよくしてあげたい。
だから思い切って伝えてみた。
勝手に動かない。
勝手に出さない。
全部任せて欲しい。
私がアタランテにお願いした内容はこの通りである。
『汝が達しても出しては駄目か……?』
彼女は心なしか獅子の耳を落ち込ませながら言ってきた。
あまりにも可愛くて『そのときは出していいですっ』と慌てて返しそうになったけれど、心を鬼にしてぐっと堪えた。
隆起している男性器の根元を黒い紐で縛り(最初は私のリボンで結ぼうとしたが反対された。ちょっと大きすぎたのかも知れない)、私が上に跨って一つになる。
中を大きく広げながら入ってくるアタランテの逞しい逸物に背中をぞくりと震わせて、私は動き始めた。
それが……二時間ぐらい前になるだろうか。
胸が揺れるのも厭わず上下に跳ねたり、股を擦り付けるように前後にスライドしたり、円を描くようにお尻をグラインドさせたり等々。
緩急も意識してみたり、私はとにかく色々な動きで性感を高めようとした。
アタランテはお願いしたことをちゃんと守ってくれた。
動かず出さず。両手も極力触れないようにしてくれた。射精の衝動にも歯を食いしばって耐え、私がイッても目を瞑って我慢してくれた。
『だ、大丈夫だ……まっ、まだいける……っ』
男性器の性感がどんな風なのかは分からないけれど、アタランテの表情の移り変わりを見るに相当なものなのだろう。
だらしなく緩んだ顔、涙を絶え間なく流す瞳、唾液を垂れ流す半開きの口。
私の膣内では肉棒がずっと苦しそうに痙攣していた。
「ひあっ♡ あうぁ、あああ♡ ジャ、ジャンヌゥ……♡ まだ我慢しなければならないのか♡ このままだと本当にっ、どうにかなってしまいそうで怖い……♡」
凛とした気丈者である筈の彼女がこんなにも乱れている。
快楽の虜になって喘いでいる。
手元にカメラがないのが悔やまれた。この痴態を写真や映像で撮ることができたら、アタランテをもっと夢中にさせてあげられるのに。後日機会があればダ・ヴィンチに借りるか作ってもらおう。
そんなことを頭の端っこで考え、私は顔を寄せる。
「もう限界ですか♡ ならどこに出したいか言ってください♡ ちゃんと言えたら紐を取ってあげます♡」
「な、なん、汝のなかに♡ 子宮に……うぐっ♡ 射精したいっ♡」
「ふふふ♡ よく言えました♡ 偉いですよ♡ でも、もうちょっと厭らしい言い方じゃないと駄目です♡」
「ひにゃ……!?」
アタランテの程よい大きさで張りのある乳房を揉み上げて、苺みたいに赤くなった乳首を二つとも摘まむ。顎を引いて両手を握り締める彼女は「なんで」「どうして」と訳が分からないと言った風に見つめてきた。快感で麻痺した頭では答えに辿り着けないらしい。
目尻に溜まった涙を優しく舐め取る。
「不安がらないで♡ ちゃんと教えてあげますからね♡ アタランテのおちんちんは、私のおまんこにいっぱいビュービュー射精したいんですよね♡」
卑猥な言い振りにアタランテは口を何度も開閉させて戸惑う。
その気持ちはわかる。私だってすごく恥ずかしい。全身が焔のように熱くなってお尻を何度も叩きつけてしまう。愛液と精液でぐちゅぐちゅになったおまんこに呑み込んで、子宮口で亀頭にむしゃぶりついてしまう。
「ほら、ほら、ほら♡ アタランテも言ってしまいましょう♡」
「あぐっ♡ んっ♡ ひゃめ、ジャンヌ♡ わ、わかった、言う、言うから♡」
「……♡」
「ジャンヌの……おまんこに、射精したいっ♡ 頼むから射精させてくれ♡」
そう乞われた瞬間、得も言えぬ歓喜が胸の奥で生まれて全身に広がっていく。
それが胎内にまで広まる直前、黒紐を素早く解いた。
長い時間我慢させられたおちんちんが脈打ち、私は奥の奥まで迎え入れた。
「はい、どうぞ♡」
「……! ああ出る、出るぅ!!」
「はぅんっ♡ きましたぁぁぁぁ♡ ああっ♡ 一緒にイキますからね♡ 私も一緒にイキます♡」
この時ばかりは上体を起こして抱き締められる。いや、縋りつかれたという方が正しかった。両目をぎゅっと瞑ったアタランテが私の胸に顔をうずめてくる。
私自身絶頂していたが比較的早く立ち直れた。そしてアタランテを支えて「よしよし♡」「よく言えました♡」「頑張りましたね♡」と褒めながら頭を撫でる。普段であれば羞恥から嫌がられそうなものだが今回は子供のように身を委ねてくれた。
撫でている間にも煮詰めた糊みたいにドロドロの精液を子宮に流し込まれる。一滴残さず全部受け入れてあげたいけれど、量が量だからどうしても溢れてしまう。
「……っ……」
数分以上も続いた射精が終わりを迎えると、魂が抜けたようにアタランテが脱力する。どうやら気絶してしまったらしい。
そこまで感じてくれたのだ。感想はまた後で聞かせてもらおう。
マリーが用意してくれたベッドに寝かせて少し離れる。引き抜いた男根は白濁色にコーティングされていて、美味しそうに見えたから掃除も兼ねて舐め取り、尿道に残ったものまで吸い取る。もちろん起こさないよう注意は払った。
アタランテの精液は癖になる味で、苦いのは苦いのだが抵抗感や嫌悪感は覚えない。
寝息を立てる彼女の隣で横になる。無垢な子供みたいな寝顔を眺め――我慢できずに抱き寄せる。母が子供に、姉が弟妹にするように寄り添う。
努力の甲斐もあって本来の艶やかさを取り戻した髪を梳き、果物の甘い匂いに鼻孔を満たされながら私も目を瞑った。
◇
深夜、アタランテはふと目を覚ました。
真っ先に映ったのは愛しいジャンヌの安らかな寝顔。
あんなことをされたばかりなので距離を置きたくなるが、豊満で柔らかい身体の魅力には逆らえなかった。微妙な調整をしただけで結局収まってしまう。
(甘くしたいと思った結果がこれか……)
まさか快楽地獄に陥れられるとは予想もしていなかった。
自分があれほどまでに乱れたことが今まであっただろうか。
あんな、あのような痴態……情けないにも程があった。
転げまわりたい。穴があったら入りたい。シーツに包まって世界を遮断したい。
流石に怒ってやりたいが、ジャンヌには悪意なんてなく善意しかなかったのだから言いたくても言えない。そこはアタランテも見抜けていた。
(しかしもっとこう……普通にだな……愛し合いたかったぞ)
切実な思い。
それが啓示の如く届いたのか、前触れなくジャンヌは両目をぱちりと開いた。
彼女はアタランテが起きていることを喜んで、だがすぐに気まずげ視線を逸らす。
自分がアタランテをどんな風に犯したのかは忘れていないらしい。加えて本番中はノリノリだったが、冷静になった今ではお察しである。
「……あ、あの」
「……なんぞや」
「ゴメンナサイ」
機械的な片言で謝るジャンヌ。
ここで恐れ知らずに感想を聞いてこようものなら即座に四つん這いにして尻を掲げさせ、朝まで犯し抜いてやろうかと考えていたが、そうはせずに済みそうだった。
「反省はしておるな?」
「はい、とてもしています……」
「なら仕置きはなしだ」
アタランテはヘッドボードの小棚から水差しを取り、二個のタンブラーのグラスに冷水を注ぐと、片方を少しだけ残念そうな顔をしているジャンヌに手渡す。
「どうして今夜はあんなことを言ってくれたのですか?」
ちびちびと飲む聖女が狩人に何とはなしに訊ねた。
「恋人同士なのだから……時には無条件で甘やかしたくもなろう」
隣り合った聖女の方を向かずに言った狩人。見る見る内に赤色を帯びていく。
「今夜は、たまたま、そういう気分になったのだ」
そう言った恋人をジャンヌは心底愛おしいと想う。
同時にキスをしていた。軽く啄むようなバードキス。それをしつつグラスを取って適当な場所に置く。
仕切り直したいという意図の元での行動だった。
「ちゅ……ちゅ……まだまだ不器用ですね、私たちは」
「……仕方あるまい。恋や愛にはとんと縁のない人生を送ってきたんだ」
「でも今こうして縁が出来ています」
――ですから、大切に育んでいきましょう。
ジャンヌはアタランテの髪と、獅子の耳に口付けを落とす。
アタランテはジャンヌの額と、花弁の唇に口付けを返した。
――少しして、愛を囁きながら二人の少女は交わり始める。
――優しい時もあれば激しい時もあった。
――嬌声に、水音と打擲の音が止んだのは朝方になってからである。