束を背負って砂浜へ戻った一夏を見て全員がざわっとしたものの、初日の日程は滞りなく終了した。旅館へと戻った一夏達を出迎えたのは、ラウラによく似た少女であるクロエ・クロニクルと名乗る少女。
「束様、申し訳ありません。心配になり言いつけを破ってしまいました」
「んーん、いいよいいよ。くーちゃんの顔が見れて束さんは嬉しいもん」
この時には束も既に自力で歩ける程には回復しており、一夏は二人のやり取りを眺めて小さく笑みを浮かべていた。
「束、その少女はお前の何だ?」
「ん? そうだね……くーちゃんはくーちゃんとしか言えないなぁ」
「とりあえず織斑先生、生徒達を部屋へ」
真耶が小声で千冬へ提言すると、それに小さく頷き彼女は後ろへ向き直った。
「では、各自割り当ての部屋へ行って時間まで待て。夕食後は一応自由行動を認めるが、織斑のいる離れへは接近を禁ずる。解散」
やっと休めるとばかりにガヤガヤと動き出す生徒達とは対照的に一夏達六人はその場に残っていた。本当はセシリア達も他の生徒達のように部屋へ向かおうとしたのだが、箒だけでなくラウラまで足を止めたためその場に残ったのだ。
「教官、一ついいでしょうか?」
「先生だ。それで、何だ?」
「その、あのクロエと名乗った人物が……」
「ラウラさんにそっくりですわね」
「あんた、姉妹とかいるの?」
「いや。だからこそ教官なら何かご存じかとな」
彼女達の視線は束と話すクロエへと向けられていた。銀髪に白い肌。瞳は閉じているので色が分からないが、直感的にラウラは自身と同じ色と読んでいる。
「あの、姉さん」
「ん?」
だからこそ、箒が動いた。大事な友人のためにと。
「そのクロエという女性は、私の大事な友人と似ているんだが、どういう事だろうか」
「恐れながら、私とそちらの方は違います。私は、失敗作ですので」
「失敗作?」
「はい。彼女と同じ作り方で生み出された存在という事です。容姿が似ているのはそのためかと」
さらりと告げられたのは、存外に重たい事実。ラウラとクロエが試験管ベビーだと教える言葉であった。ただ、それに息を呑んだのは誰もいない。千冬は言うまでもないが、一夏達にとっても、だからラウラをどうこう思うという関係性ではなかったために。
逆にクロエの方がそんな彼らに若干の驚きを抱いたぐらいであった。
「では、貴方は私の姉妹か」
「いえ、私と貴方は似て非なる存在です。同じ工程でも結果は失敗作と」
「そんな事は関係ない。同じように生まれたのであれば、私と貴方は姉妹いや家族だ。そうか。私にもいたのだな、家族が」
どこか嬉しそうに締め括り、クロエへゆっくりとラウラが近付いていく。それを千冬や束さえも止めようとしない。向かい合う二人の少女。しばし沈黙が訪れる。そして先に動いたのはラウラだった。
「……これは?」
クロエへ右手を差し出したのだ。
「握手だ。その、これからよろしく頼む」
「…………ですが」
「せっかく会えたのだ。私を孤独にするのか、姉よ」
「姉、ですか? 私が?」
「ああ。背丈などを考慮するとそちらの方がいい。それに、下の立場なら一夏と同じだ」
その言葉に一夏達六人の同級生と真耶が苦笑する。千冬はやや小さな驚きを見せ、束はどこか嬉しそうに笑っていた。どこか和やかな空気が漂う中、クロエは初めて目を開いてラウラの手を握ってみせる。
「これで、私達は家族だ。ラウラと呼んでくれ」
「分かりました。なら、ラウラ様」
「様はいらない」
「ボーデヴィッヒ、お前が私にやっているのはそういう事だぞ」
若干不満そうに返すラウラへすかさず千冬が指摘した言葉で彼女が呻く。敬愛する千冬を教官と呼んでしまう気持ちがクロエの気持ちとすれば、おいそれと直せと言えないと思って。だが、それでもラウラにとってはようやく出来た家族である。
「……分かりました。姉よ、様を無くして欲しい。私も教官ではなく先生と呼ぶようにする」
「それは私には関係ないのですが、分かりました。そちらが相当の決意をした事は伝わりましたので」
「うむ、改めてよろしく頼むぞ、姉よ」
「……はい、ラウラ」
握り合った手が少しだけ強く握られる。それを見て束は満足そうに頷いた。我が子も同然のクロエがラウラと姉妹となれた事。その光景を見届け、束の中でラウラの存在がかなり高くなった。何故ならクロエが微かに笑みを浮かべていたからである。
「うんうん。よくやったよらーちゃん」
「らーちゃん? 篠ノ之博士、それは私の事か?」
「そーだよ。ちーちゃん、お願いがあるんだけどさ、今夜だけはらーちゃんとくーちゃんを一緒に居させてあげて」
「……いいだろう。ボーデヴィッヒ、明日の朝の予定は覚えているな?」
「はい」
「ならばいい。お前の同部屋の者達へは私から説明をしてやる。姉と、親睦を深めろ」
「はっ! ありがとうございます、きょ……先生」
最後の言い直しに誰もが小さく笑みを零し、ラウラはクロエと手を繋いで旅館の中へと向かう。その後ろを千冬もついていき、玄関には一夏達が残された。
「あの、真耶さん」
「うん、分かってる。箒さんもお姉さんと話す事がいっぱいあるでしょうし、ラウラさんと同じで荷物を持って一緒に過ごしていいから。織斑先生へは私から言っておく」
「ありがとうございます。姉さん、待っててくれる?」
「あったりまえじゃん。でも、出来るだけ早くね?」
「ああ」
「じゃ、行こうか」
こうして箒も真耶と連れ立って旅館の中へ。一夏はそれを見送り、束へ視線を戻した。彼女は彼が初めて見る程上機嫌である。理由は簡単。妹と和解した事と一夏に抱かれて女になった事、それに尽きる。
「一夏、僕らも部屋へ戻るね」
「また夕食時に」
「ああ、ありがとうな。シャル、セシリア」
いる理由もなくなったと察し、二人は彼へ声をかけて動き出す。唯一鈴だけがそこに残っていた。彼女は一言だけ束へ言いたい事があったために。
「あの、箒のお姉さん」
「……何?」
特定の人間以外へは冷たい扱いをする束だが、鈴の呼びかけ方には無反応とはいかなかった。箒の姉。こう呼んでくる存在はこれまでいなかったためだ。それと、今彼女が凄まじく機嫌が良かったのも関係していた。
「箒との事、あたしはあまり聞いた事なかったし聞く事もしなかった。だけど、これだけは言っておきたいの。箒、あのISをとても大事そうに扱ってた。最新鋭だからとかじゃない。姉からの贈り物だからって、そう言ってた。お願いだから、もう箒と仲違いしないで。あたしも、両親が離婚して色々思う事があったけど、それでもやっぱりまだお父さんの事嫌いになれないから」
鈴の言葉は束だけでなく一夏の心へも響いていた。彼はここで初めて鈴の帰国理由を察していたのだ。両親の離婚。それが決め手だったのだろうと。そこで引っかかるものを彼は覚えた。
(でも、何で離婚なんて? おじさんもおばさんも仲良さそうだったのに……)
中華料理屋を営んでいた頃の凰夫妻は一夏の目から見ても仲睦まじく見えた。それがどうして離婚なんかと、彼の中でも納得出来ない話ではあったのだ。だが、そこで本人達にしか分からない事情があったのかもしれないと思えるぐらいには、一夏も大人になっていたため何か鈴へ言う事はなかった。
「……いいよ。ほーきちゃんの女の子の友達なんて珍しいからね。その言葉、覚えておいてあげる」
「そう、ならいいわ。一夏、あたしも部屋戻ってる」
「おう」
束の返事に満足するように笑みを見せ、鈴も旅館の中へと歩いて行く。一人残った一夏は束へ顔を向ける。彼女は鈴の背中をどこか楽しげに見つめていた。
「鈴の事、気に入ったんですか?」
「ん? ん~……らーちゃん程じゃないけどね。束さんをほーきちゃんのお姉ちゃんって扱う相手なんて、中々いないし」
「そうですか」
「ん。で、いっくん。お願いが一つあるんだけどいい?」
その切り出し方と表情で一夏は小さく息を吐いた。束が何か厄介事を頼もうとしていると理解したのだ。
「一体何ですか?」
「いつでもいいんだ。くーちゃんもエッチしてあげて」
「……は?」
「あれ? 聞こえなかった? くーちゃんも」
「いえ、そうじゃないです。あの、俺は」
「くーちゃんはらーちゃんのお姉ちゃんだけどお姉ちゃんじゃない。なら、血の繋がりとは違う繋がり作ってあげた方がいいじゃん」
とんでもない発想である。要は二人を竿姉妹にしてしまえとそういう事だ。これには一夏も頷けない。言いたい事は分かるし、たしかに何か明確な繋がりがあった方がいいとも思うが、だからと言って自分へ強い好意を抱いていない相手を抱くなど彼には出来なかったのである。
「束さん、俺は俺の事を本気で好きな相手と向き合いたいんだ。女の子なら誰でもいい訳じゃない」
「ふむふむ。なら、もしくーちゃんがエッチしてって言ってきたら?」
「…………その時は、まぁ」
何とも情けない反応であるが、これが今の織斑一夏であった。クロエは彼の目から見ても可愛らしいと映ったのだ。更にラウラと擬似姉妹となった今、彼女が自分の女になれば姉妹丼となる。その誘惑に抗える程、最早一夏は清廉潔白な体ではない。
それを束も分かっているのだろう。彼の迷いや躊躇を飛ばすようにこう告げたのだ。
「そっかぁ。あ、それといっくん、束さんはほーきちゃんとならいつでもウェルカムだからね?」
その意味を分からぬ一夏ではない。本物の姉妹丼が食べられるぞと、そう理解して彼は股間を膨らませる。丁度そこへラウラと手を繋いでクロエが戻ってきた。目を閉じないでいるのは、やはりラウラの事をしっかり見ていてやりたいという気持ちの表れなのだろう。
「束様、ラウラをラボへ案内してもいいでしょうか?」
「いいよいいよ。らーちゃんと仲良くね、くーちゃん」
「はい。ラウラ、ついて来てください」
「ああ、分かった。一夏、また明日だ。おやすみ」
「ああ、おやすみラウラ。クロエさん、ラウラをよろしくお願いします」
「かしこまりました。それと、呼び捨てで結構です一夏様」
「なら、俺も呼び捨てで」
「……善処します」
ぺこりと一礼し、クロエはラウラと共に去って行く。その後ろ姿はまるで双子の姉妹だ。その背を見送っていると、今度は箒が姿を見せる。
「待たせたな、姉さん」
「別にいいよ。いっくんがいたから暇じゃなかったしさ」
「そうか。一夏、すまんが今夜は」
「ああ、分かってる。気にせず束さんと話してこいよ。おやすみ」
「……そうする。おやすみ、一夏。また明日会おう」
「じゃね~」
こうして二組の姉妹は旅館から去った。一夏はそれを見送りあてがわれた離れへと向かう。そして夕食を終えて女生徒達が入浴をしている間、彼はその部屋に一人の女性を招いていた。
「んっ……」
「千冬姉、やっぱこってるぞ。こことかどう?」
「ああ、いいぞ。その調子で頼む」
「ん」
浴衣姿で布団に寝そべる千冬をマッサージするのは一夏である。彼の得意なものの一つだったのだ。これは、千冬が脱力し切る珍しい状況の一つであり、一夏以外の人間が知らない彼女の姿であった。一夏が寮生活となった今、滅多に受けられない事もあってか、千冬はこの機を逃すものかと離れへやってきたのである。
ただ、これが要は一夏がナノマシンを投与されて初めての二人きり。しかも、一夏はもう女の味を知り、千冬にさえ欲情する危うさを持ち始めている。そうなればどうなるかと言えば……
(な、何だこの匂いは……。妙に安らぐ上に思考がまとまらなくなる……)
(千冬姉の体って、やっぱ女なんだなって分かるなぁ。鍛えてるけど柔らかいし……)
姉弟揃って互いのフェロモンにゆっくりと興奮し出すという結果となっていた。しかも互いに体を密着させているため、一夏はそのペニスを勃起させていき、その事を千冬が感じ取るまでそう時間はかからなかった。
「っ!? い、一夏?」
「どうした、千冬姉。痛かった?」
ただ、問題はそれに対して耐性のない千冬と開き直れる一夏という差がある事だろう。
「……姉に欲情するな、馬鹿者」
「いや、無理だろ。千冬姉だって女性だし、いい匂いするし柔らかいし。それに、俺は高校生の男子だぞ? こうならない方が変だろ」
「そ、それは……」
何とか冷静に対処しようとした千冬へ放たれる強烈なカウンター。家族へ欲情するなというのは正論ではある。だが、やはり年齢を考えれば仕方ない部分もあった。千冬はまだ十分若く容姿も整っている。一夏は言うまでもなくヤリたい盛り。なら、勃起しても見逃してやろう。そう判断して千冬が息を吐いた時だった。
彼女の臀部に硬くて熱いものが押し付けられたのは。
「っ!? い、一夏っ!」
「いや、マッサージを早く終わらせようと思って。中途半端じゃ意味ないし、これが治まるのは無理だからさ」
顔を赤くする千冬という光景に一夏は内心でドキドキしていた。常に冷静沈着な姉が初めて見せる女の顔。それに堪らなくテンションを上げていたのである。それを必死に顔へ出さないようにし、彼は少しだけスケベ心を出していたのだ。
(ちょ、ちょっとぐらいいいよな? どうせ今夜は久しぶりに一人寝だし、処理するためのオカズは必要だ)
緩みに緩んだ自制心は姉を性欲処理に使う事を良しとした。こうして一夏は何も言えなくなった千冬を相手にギリギリの行為を始める。
まずは臀部へペニスを押し付け、背中を押すふりをしながらピストンするかのような動きでその尻肉を楽しむ。それだけでは飽き足らず、太ももやふくらはぎを揉むと言って座り方を変え、臀部にペニスを挟むようにしつつムチムチとした感触を楽しんだ。
肩甲骨などをマッサージする際には手が滑ったと言って一度だけ乳房へも触れた。それには千冬も怒りを見せたものの、一夏がそういう事をする事がこれまでなかった事もあってか、彼の謝罪にあっさりと許しを与えた。
この時、もし千冬が心底激怒していればまた未来は変わっただろう。ここが千冬の未来を変える分岐点だったと誰も気付かなかったのだ。
「ふぅ、こんなもんかな」
ペニスを勃起させたまま、一夏は一息ついた。千冬はと言えば、布団にうつ伏せになったまま身動き一つしていない。ただただ荒い呼吸が聞こえるのみである。
(な、何だ、この感じは……。体が、熱い……)
マッサージによる効果と至近距離で嗅がされたフェロモン。更に執拗に当てられ続けたペニスと一夏の悪戯心による愛撫もどきによる快楽。それらが性的な攻撃への耐性がなかった千冬を完全に負かしていたのだ。
世界最強の存在の弱点は性的なものであり、それも最愛の弟によるものというピンポイント。故にそれを突かれればこの通りである。一夏に顔を見せまいと枕へ突っ伏しているが、その表情はだらしなく緩んでいる上に涎さえも垂らしているのだ。
「千冬姉……て、寝ちまったのかな?」
呼びかけに無反応である事からそう判断する一夏だったが、実際は起きているし聞こえてもいる。ただ、身動きが出来ない状態だったのだ。束もそうだが、千冬もこれまで性的快感を得た事などなく達した事もない。そこへきての今回の出来事だ。その疲労は肉体的にも精神的にも千冬には未知数のものだったのである。
「じゃ、時間もいいし風呂に行ってくるか」
そんな事とは露知らず、一夏はタオルなどを手にして部屋を出て行く。後ろで聞こえる襖を閉める音で、ようやく千冬は顔を上げる。
「……へ、部屋に戻らねば」
強靭な意志力で起き上がろうとする千冬だったが、少し立ち上がった辺りでぐらついて倒れる。そうなれば当然顔は布団へと接触する。しかも、運悪くその辺りは一夏のペニスが触れていた部分であったため……
「っ?!」
顔を布団に密着させた瞬間、千冬の全身に電流が走りガクガクと両足が震えてしまったのだ。絶頂したのである。そこに残っていたカウパーの匂いで。しかも、脱力してしまった事もあり、そのまましばらく千冬はその雄の匂いを嗅ぎ続ける事となる。何度も何度も小刻みに絶頂し、這う這うの体で部屋を出た彼女は、そのまま風呂へと向かった。
入れ替わるように戻ってきた一夏は、部屋の中に強く残る女の匂いで何があったかを察してペニスを再び猛らせる。
「……千冬姉も、女って事か」
布団を見つめる一夏。そこには、後始末なども出来ないまま出て行った千冬の紛れもない雌の証拠が残されていた。この夜、一夏はその匂いで五発程精を放つ。その脳裏では千冬を犯しぬく自分を想像しながら……。
翌日も何の問題もなく過ぎていく。束とクロエはビーチパラソルの下で箒やラウラの頑張りを眺め、妹二人はそんな姉の姿に片方は苦笑し、片方はやる気を見せる。千冬もそんな束に文句を言うつもりはなく、ただあまりにも授業の邪魔となった際には教師らしく注意を行っていた。
そんな中、一夏は一人新しい戦術を考えていた。今のままでは正攻法での勝ち目が薄い。かといって武装を増やすのは論外。ならば、自分に出来る事は戦術を増やす事である。だが、それが簡単にいくのならば苦労はない。それは彼とて分かっている。
しかし、それを成し遂げなければならないとも思っていた。特に昨夜の事があったために。千冬を超えてあの雌を自分のものにしたい。それが今の一夏の原動力に加わっていたのだ。
「俺が勝つには接近戦に持ち込むしかない。でも、それを相手も分かってる。だから中遠距離で戦おうとする。それを何とか距離を詰めないといけない。これに尽きるんだよなぁ」
声に出して考える事で問題点をしっかりと認識する一夏だが、その解決策は現状一つだった。それは彼が強くなる事。単純にして明快な答えである。だからこそ、それがすぐに何とか出来る事ではないと分かっている。それ故にすぐに効果を出せそうな事をと知恵を絞っていたのだ。
うんうんと唸る一夏だったが、これまで幾度となく考えて直面してきた問題だけに今更浮かぶ事などなく、ただただ腕を組んで水平線を見つめるだけであった。
「…………いっそ刀身の部分が伸びてくれたらな」
それは出来たとしてもエネルギーの消費が激しいために実用性がない。その事に気付いて一夏はため息を吐いて―――はたとある事に気付いたかのように目を見開く。
「もしかして、こうすれば距離の問題をどうにか出来るんじゃないか?」
彼の中で浮かんだとあるアイディア。それはまさしく彼の一か八かの戦い方の最たるもの。だが、それだけにもし成功出来るのなら勝利は間違いない戦術である。思い立った彼は、即座に白式を展開して一人無人の入り江へと向かう。
そして時間は流れ旅館へ戻る事になった時、彼はある確信を持っていた。己が思いついた方法なら、今後誰が相手でも勝ち目が見えると。今までにない自信を得て、一夏はますます男らしい顔つきへと変わる。今はまだ、彼の強さを限られた者達しか知らない。いつか、それを学園全体が知る時が来れば恐ろしい事になるかもしれない。
今の一夏は、それだけ男らしい人間となっている。千冬が認める程なのだ。その雄々しさや内に秘める野性味は言うまでもない。
旅館へ戻ってきたところで、一夏は箒を呼び止める。束とクロエは今日はさすがに来ていない。そのままラボへと戻り、また会おうと言って去って行ったのだ。
「箒、ちょっといいか?」
「何だ?」
「その、こんなところで何だと思ったけどさ。部屋へは行けないから」
そう言って彼が見せたのは白いリボン。飾り気のないそれを見て、箒はすぐにある事を察して息を呑んだ。今日この日は彼女の誕生日である。そして今も彼女が使っているリボンは幼い頃に一夏が渡した物。そこまで揃っていればそれが何を意味するかは言うまでもない。
「覚えててくれた、のか」
「当然だろ。今のそれも俺が昔あげた奴だしな。そろそろ新しいのにした方がいいと思ったんだよ。で、もらってくれるか?」
「当たり前だ。ふふっ、姉さんもお前も渡し方を考えて欲しいとは思うが、それがまたらしさか」
苦笑しながらの声には紛れもない好意が滲んでいる。そこから箒と束が本当に仲直りをした事が伝わってくる程だ。一夏もそれを感じ取り微笑みを見せる。
「悪い。実はあの買い物の時に買おうと思ってたんだけど……」
「そういう事か。そういえば昼食を待つ間手洗いに出て行ったが、あれはそういうための行動だったんだな?」
「ああ。っと、そうだ。箒」
「ん?」
「誕生日、おめでとう。俺、お前と再会出来て良かった」
夕日を背に微笑む一夏。その光景に箒は優しく笑みを返して彼へ抱き着いた。一夏にとって、箒はやはり少し特別な存在である。初めての異性の友人であり、初めての性行為をした相手。箒が一夏と交わらなければ現状はない。それを知ってか知らずか、二人は夕焼けを浴びながらキスをする。
「……ホントはここで抱きたいけど、それは帰ってからにする」
「私もここで抱いて欲しいけど、それは帰ってからにしてもらう」
互いを見つめ合っての会話は、まさしく恋人のそれ。甘い雰囲気を漂わせながら最後にもう一度だけ軽く唇を重ね、二人は揃って旅館へ入った。さすがの一夏達も旅館でのセックスはしなかったが、密かに彼の寝る離れへ忍び込み温泉デート気分だけは味わったが。
「必ずみんなをこういうとこへ連れてくるからな」
六人の女性達を侍らせながら一夏は優しくも力強い声で宣言する。それに彼女達が微笑む裏で、一人の女性が女湯の洗い場で自身のヴァギナを恐る恐る触りながら悶えていると知らずに。
「体の奥の熱が……消えない……。あの、あの感覚が……あの匂いが……欲しい……っ!」
拙い自慰で自分を炙る千冬。世界最強の名に、些細な、だが確かなヒビが生じていた……。
クロエとラウラによる擬似姉妹丼フラグが立ちました。束とクロエによる擬似母娘丼フラグが立ちました。
千冬の性欲が目覚めました。