次回は……いつになるやら。本当に申し訳ありません。
「織斑一夏、話があるッス」
その日の朝、一夏は珍しい相手から話し掛けられた。その相手とは彼が一度だけ顔を合わせた事のある上級生。
「……フォルテ先輩ですか。俺に何の用です?」
心の底から不思議がるように一夏は首を傾げる。場所は食堂から教室へ向かう途中の廊下。最近の一夏は極力一人で行動するようにしていた。
その理由は彼の変化である。要は、箒達取り巻きがいない時に自分へ接触してくる相手がいないか探っているのだ。いれば、その相手は自分への好意を抱いていると判断しやすいと考えて。
こんなところにも一夏の雄化が影響していた。
「出来るだけ人気がないとこで話したいッス。だから今日はまず約束を取り付けに来たッス」
「はぁ……」
「いつならゆっくり話せそうッスか? 出来るだけ早くでお願いしたいッスけど」
「じゃあ……明日で」
「っ?! い、いいんッスか?」
意外な答えにフォルテは息を呑んだ。一夏は毎日のように訓練をし、箒達と過ごしていると聞いていたのだ。故に一人でいる時を狙って声をかけた訳なのだが、まさか話をした翌日に希望を叶えてくれるとは思ってもいなかったのである。
「ええ。明日の放課後、場所は男子更衣室でどうですか?」
その提案が自分への配慮も兼ねていると察してフォルテは無言で頷いた。更衣室は放課後であれば人がそこまで寄りつかない。しかも向かう場所は専用機持ちならば珍しくもないアリーナ方向だ。
(こっちの意見からある程度配慮を出来るぐらいにはしてくれるッスか。……でも、本当にダリルさんの事を知ってるんッスかね?)
内心で疑問を抱くも、それを確かめるには場所が悪いとフォルテは考えてその場は去った。その去りゆく背中を見つめ、一夏は何となくだが彼女の目的を予測する。
「……多分だけど、あの人の事絡みだよな」
フォルテの想い人でありコンビの相棒であったダリルことレイン。イラマチオされて気をやったオータムの後始末をしてくれた女性の事を思い浮かべ、一夏は少しだけペニスを勃起させる。
「何となくだけど、あの人の方も俺の事を熱っぽく見てくるし……」
オータム程ではないが、レインも眼差しに艶っぽさが混じるようになったと一夏は感じ取っていた。特にオータムへちょっかいを出すようになってから露骨に。
それもそのはず。今までは遠くであったはずの一夏の精臭を間近で嗅ぐ事になり、更にその雄々しいペニスをはっきりと見る事でより彼を逞しい雄として認識してしまい、レインの雌としての本能が疼き出すどころか騒ぎ出したのだから。
「ま、いいか。早く教室へ行かないと」
それまでのスケベな思考から一転、すぐさま凛々しく思考を切り替えて一夏は動き出す。既に勃起も収まり、本気で彼が思考を変えた事を示している。こうして静かに束の描いたシナリオは動き出す。
ただし、その本人さえも思い描かなかった方向へと……。
放課後の訓練を終えて普通に汗を流した一夏は、珍しく女子更衣室の前で壁に背を預けて立っていた。箒達を待っているのである。
大抵は訓練終わりの興奮冷めやらぬまま箒達と肌を重ねるのが常であったが、今日はそういう事はせずにいた。それは、一夏なりの女心を考えた結果である。
いくら愛する男とはいえ、毎日毎日求められては嫌気が差す事もあるだろう。それに、体ばかり求めては心の寂しさが満たされないかもしれない。そう思い、一夏は今回の行動に踏み切ったのだった。
「一夏、すまない。待たせたか?」
「いや、そうでもないぜ。それに、好きな女を待つのは苦にならない」
先んじて更衣室から出てきた箒へ一夏はそう返して笑みを見せる。その言葉に箒だけでなく残りの女性達も思わず息を吐いた。
「一夏君ってそういうのサラリと言えるのね。よくこれで学園来るまで女性と縁がなかったわねぇ」
「お、お姉ちゃん……」
「いえ、楯無さんの言葉は間違っていませんわ。一夏さんは元々女性を惹き付ける要素は持っていました。ただ……」
「それを補って余りある程鈍感だったのよ。あたしや箒がよ~くそこは知ってるから」
懐かしむように告げて、鈴は苦笑した。箒も同じような表情で笑っている。甘酸っぱい幼少期の思い出。それらをその脳裏に思い浮かべたのだ。
「だけど、それだから今があるんだもんね。僕としては鈍感なままの一夏じゃなくて良かったって思うよ」
「私もだ。もし一夏が鈍感なままなら、私は今頃どうなっていたか」
「あー……多分ラウラとの関係はこじれてたかもな。それに、シャルの事だってどうなった事か」
シャルやラウラとの関わりは、一夏とすれば箒達との関係があればこその展開と分かっている。故にIFを考えるのなら当然良くなる可能性は皆無となるのだが……
「どうだろ? 何となくだけど、遅かれ早かれ僕の事はバレた気がする」
「私も今のようにはならんだろうが、一夏を気に入る可能性はあると思うぞ」
共に答えたのはかなり正解に近いものだった。実際、一夏が辿る可能性として有り得たものである。まぁ、たしかに性行為などは一切ない関係であり、その付き合いさえ男女ではなく仲の良いクラスメイトを脱しないとは思いもよらないだろうが。
「かもしれん。さっ、立ち話もなんだしそろそろ移動しよう。一夏、いいか?」
「ああ。じゃ、行こうぜ」
一夏を先頭に歩き出す箒達。最後尾には楯無が位置取り、一夏のすぐ近くに簪とラウラが位置取る。箒は楯無の近くを位置取り、シャルとセシリアは鈴と共に中団を。それがここ最近の彼らの群れの在り方だった。
「箒さん、これでいいの?」
歩きながら楯無がそっと尋ねる。本来であれば箒が一夏のすぐ近くにいたのだ。何故それをしなくなったのか。楯無としてはそれを聞き出したかった。彼女にはその理由に一つだけ心当たりがあったために。
「ええ。一夏はみな公平にと思っていますが、どうしても私にだけ少し特別感があるようです。なら、私の方でも多少調整をと、そう思っただけですから」
「……やっぱりね。貴方もすっかり大奥のまとめ役が板に着いたってところかしら?」
「かもしれません。そういう意味では貴方の加入は色々と助かります。セシリアやシャルロットも考えてくれますが、この中では貴方が一番私に近い考えをしてくれますし」
「あらあら、これは思わぬ言葉だわ。じゃあ、頑張って信頼に応えないと」
「お願いします。まぁ、おそらく全員に多かれ少なかれ共通意識はあるとは思いますが」
箒の言葉に楯無も小さく苦笑して頷いた。一夏の性欲を受け止めるのは一人では無理。故に現状は受け入れられている。その根底を支えているのは仲間意識だ。一夏が認め、受け入れた女同士。そこへきて前からいる者が後から来た者を拒絶せず受け入れるからこそ上手くいっている。
これが崩れればきっとハーレムなどは瓦解するだろう。そう誰もが察している。そうならないよう一夏も頑張っているし箒達も意識している。だが、それも絶対ではない。だから箒は一夏から少しだけ距離を取り、楯無は全体を見渡せる位置にいるのだ。
そんな話をしている二人から少し離れた位置で、鈴はシャルやセシリアとある事を話題にして話していた。
「で、ティナが一夏との事を結構聞き出そうとしてくんのよね」
「それは……」
「多分だけど、脈ありじゃない? 思い出してみると、あの時の彼女は一夏の事興味ありそうな目で見てたし」
鈴のルームメイトであるティナ。その彼女が最近一夏の事をよく話題にしてくると言うものだった。鈴としてはルームメイトであるし、ティナの事も好ましく思ってはいるので特に何か思う訳ではない。それでも仲間へ引き入れるのは違うと思って、まずは新規加入へ寛大と思われる二人の意見を聞こうとしたのだ。
「そうだった? じゃあ、やっぱりそうなのか……」
「鈴さん、もし違っていても最終的な判断は一夏さんへ任せるべきかと」
「分かってるわよ。ただ、ティナは一夏が活躍する前から興味持ってたのよねぇ。だから、あたしとしてはいいかなって」
「うん、それは僕も同意見。あのタッグ戦以前から一夏へ興味を持ってた人は、少なくてもミーハーな気分じゃないだろうから」
男子として入学した際の事を思い出し、シャルはやや苦い顔をした。あの時はクラスメイトだけで済んだが、あれがもし全校規模となれば堪ったものではない。そう思うからこそのシャルの言葉だった。
一夏と簪への興味は今はかなり沈静化し、彼ら二人の日常は落ち着きを取り戻している。それでも、未だに完全に消えた訳ではない。それに関しては一夏や簪は誠意を以って対応していた。
ただし、どうしても一夏へ女として迫る手合いに関しては箒達の心情は穏やかとは言えなかったが。
可愛らしく迫ったり、あるいは何とか好意を伝えようとする者はまだいいのだ。中には露骨に一夏へ女を武器に迫る者もいて、そういう相手にはやはり箒達も苛立ちを覚えていた。当然一夏としても色仕掛けに男は弱いと思っている相手にはあまり良い顔はしない。
その時の毅然とした対応が逆に相手に気に入られてしまう事もあるので、箒達には余計複雑な想いをさせているのだが。
「一夏、姉が言っていたのだが、最近アレではなくただ抱き合うだけが増えてきているそうだな?」
「ああ。それがどうした?」
「ズルいぞ。わ、私だってエロではなくイチャイチャがいい時もある」
顔を少し赤らめての言葉に一夏は小さく微笑んだ。クロエもラウラも感情の出し方が上手くなっていると感じて。それが彼女達の成長を感じさせ、一夏にとってはとても嬉しくなるのだ。
この姉妹を自分が変えているのだ。自分との関わりが二人を女へ成長させているのだと、そう思う事で。そんな一夏へ眼鏡越しの視線が向けられる。
「い、一夏君、それは私もだから。エッチ……は嫌いじゃないけど、ただ抱き合うだけでも私は満足出来るよ?」
「分かってる。俺も出来ればそうしたい。だけどさ、どうしてもそういう気分になっちまう時があるのは勘弁してくれ」
簪へ申し訳なさそうにそう告げて、一夏は頬を掻いた。夏前には我慢出来た事も今は我慢出来なくなってきていると感じていたのだ。特に臨海学校を終えた辺りから。一夏は知らない。それは、世界最強たる姉を発情させ女として敗北させた事によるものとは。
あの入浴後に部屋に残っていた千冬の残り香。あれによって彼の中の雄は一段と雄叫びを上げて成長したのだ。いつかこの雌を抱いて自分のものとすると、そう宣言するかのように。
そして彼らは食堂で食事を取り、その日の訓練を話題に語り合う。その後、彼らはそれぞれに分かれて動き出す。抱かれたいと思う者もいたが、どうしてもという訳ではないため一夏が今日を休養日としたためだ。
その彼は、自室で真耶が来るまで考え事をする事にしていた。勿論フォルテの事だ。何故自分とレインが接点を持っているのではと思ったのか。もしそうだとすれば、一体自分はどうするべきか。
一夏にとってフォルテは未知の相手だ。それも、好意を抱いている可能性はないに等しい。だからといって邪険に扱えるような一夏ではない。とりあえずは相手の真意を探ろうと決め、そこから思い出すのは今日の昼の事だ。
いつものようにクロエと過ごした後、セックスをしていない事もあってすぐ束と散歩へ出かける彼女を送り出し、オータムへその気にさせてみろとばかりにイラマチオをした後の事……。
「じゃ、後始末お願いします」
「え、ええ」
床に這い蹲り、失禁しているオータムを背にレインへ一夏はそう頼む。昨日と同じ流れと同じ内容。ただ、一つ違う事があるとすればレインの表情だろう。
目は潤み、顔は緩み、息さえもどこか荒いのだ。まるで発情しているかのようなそれに気付かぬ一夏ではない。ただ、それを尋ねる事が出来る程一夏はレインと親しくなかった。なので彼が取った行動はこうだった。
「あの」
「何?」
まずオータムの衣服を脱がそうとするレインへ一夏がややためらいがちに声を掛ける。そんな彼へ振り向く事もせず、レインは声を返した。
「本当に嫌だったらそう言ってくれていいです。俺、そいつはともかく貴方の事はどうしても悪人に思えないんで」
「……コンビ相手へ嘘を吐き、国にまで嘘を吐いていた人間でも?」
「でも、誰かを傷付けようとした訳じゃない。俺を傷付けた訳でもない」
「だけど、あの子はきっと傷付いたわ」
一夏の言葉へレインは突き放すようにそう言い放つ。あの子とはフォルテの事だろうと察しをつけ、一夏は小さく深呼吸をしてから口を開く。
「だけど、それを貴方は気に掛けてるじゃないですか」
「っ!?」
その一言は、思っていた以上にレインの心を捉えた。彼女の中でフォルテは斬り捨ててもいい存在であったが、斬り捨てたい存在ではなかった事がそこから見えたためだ。自分が見ないようにしていた事。それを一夏に指摘され、レインは思わず息を呑む。
「実は、今日フォルテ先輩が声をかけてきました」
「フォルテが……?」
「ええ。話があると。多分ですけど、貴方の事です」
「……どうしてそれで君へ?」
「分かりませんけど、貴方の事以外に声をかけてくる理由が思い当りません。それに、人気のない場所で話したいとも言われたんで」
「そう」
一夏の言葉でレインも彼の予想に同意するような表情を見せる。そしてそこから少しだけ思案顔を見せたかと思うと、レインは小さく息を吐いて一夏へ顔を向けた。
「もし私の事を聞かれたら、上手く誤魔化して納得させてくれる?」
「……そうしないとフォルテ先輩が面倒事に巻き込まれるから、ですか?」
「好きにとってくれていい。詳しい話は面倒だし」
「分かりました。俺なりに何とか身を引いてもらいますよ」
そう一夏が告げると、レインは無言で背を向けてオータムの後始末へと取りかかったのだ。その背中がどこか寂しそうに見え、一夏としては若干気になる終わりを迎えた昼休みの一幕である。
(レインさんは、きっとフォルテ先輩へ申し訳なく思ってる部分があるはずだ。そして、フォルテ先輩はレインさんの事を詳しく知りたいと思ってるはず。それを何とかするには……)
元来の人の善さを発揮しての思考は、結局これといったアイディアが浮かぶ事なく真耶の来訪で終わりを迎える事になる。だが、その真耶の来訪が思わぬ答えを一夏へ与える事となった。
「ね、何かあった?」
交わっている最中、不意に真耶がそう問いかけた。正常位で向かい合っていてのそれに、一夏は思わず面食らうもすぐに気恥ずかしそうに苦笑する。
「分かるか?」
「何となく、ね。しかも、他の女の事でしょ?」
「……フォルテ先輩の事って言って分かるか?」
「…………彼女の事を聞いてきたの?」
一夏の言い方で真耶も大体を察した。レインの事は彼女も千冬から簡単にではあるが聞いていたのだ。ただし、真耶は真実を聞かされてはいない。それでも何となく感じ取っていた。ダリルの本国召還に関する隠された何かがある事を。
「そんなとこ。で、どうすればフォルテ先輩が納得してくれるかって」
「一夏君は、彼女の本当を知ってるの?」
「……まぁ」
しまったと言う顔で頬を掻く一夏。彼はそこで気付いたのだ。真耶が真実を知っている訳ではない事を。それでも今更誤魔化せはしない。なので開き直って一夏は真耶へ尋ねる事にしたのだ。どうすればいいかを。
「真耶、何て言えばフォルテ先輩を納得させられるかな」
「そうだね。いっそ言える範囲で言える事を教えてあげたら? で、その上でこう言っておくの。あまり動き回るのを彼女は望んでないって」
上手い嘘だと一夏は思った。何せレインも口にはしなかったが、きっと同じような事を思っていたはずだと一夏は感じていたからだ。
「ありがとな、真耶。おかげで何とか出来そうな気がしてきた」
「んんっ、ふふっ、なら良かった。じゃ、ここからは……ね?」
「ああ。感謝も込めて抱かせてもらうなっ!」
「んああっ! 奥ぅ!」
一瞬にして空気を一変させる一夏の行動に真耶の声が艶を帯びる。そこに先程までの空気は欠片として残っていなかった。ただの雌雄の交尾がそこでは展開されていたのだ。こうして一夏は真耶への感謝を込めてたっぷりと種付けする。
その翌日、一夏は箒達へ断って訓練を休みにしてもらい更衣室へ向かう。すると、その途中にフォルテが立っていたのだ。
「待ってたんですか?」
「約束したッスからね。ま、来ると思ってたッスけど、一応来なかったり一人じゃなかったら……」
「そういう事ですか。まぁ、当然ですね。じゃ、ついて来てください」
揃って廊下を歩く一夏とフォルテ。何の問題もなく更衣室へ到着し、中へ入るやロックする一夏にフォルテは若干の警戒心を見せる。だが、そんな心配は無用とばかりに彼は開口一番こう切り出した。
「それで、話っていうのは何ですか?」
「……ダリルさんの事ッス」
「ダリル先輩? それなら俺じゃなくてフォルテ先輩の方が」
「芝居が下手ッスね。もし本気でそれを言ってるのだとしたら、ここまで来る前に疑問を投げかけてるッスよ。つまり、そっちは最初からこっちの話に推測を立ててたはずッス」
鋭い視線で一夏を見るフォルテ。その眼光に一夏は驚きもせず、ただ真っ直ぐ見つめ返す。そのまましばしの静寂が室内に流れる。やがてフォルテの方がその眼差しに若干願うような光を宿した。
「答えて、くれないッスかね」
「……まずそれを知ってどうするんですか? もうフォルテ先輩も知ってるんですよね? あの人がどうして寮からいなくなったのかを」
その言葉にフォルテが息を呑んだ。一夏が自分と同じぐらいの情報は持っていると察しただけではない。本当に一夏が今のダリルに関して情報を有していると分かったためだ。でなければ知ってどうすると言わないと。
(知ってどうするッスか……。たしかに知ったところで意味はないかもしれない。でも、それでも……っ!)
せめて好きな人の現状を知りたい。その一心でフォルテは息を吐いて一夏へ告げる。
「恋人の、好きな人の事を知りたいって思うのはおかしいッスか?」
「好きな人、ですか?」
「そうッス。私達はそういう関係だった。だから」
初めて一夏が顔に出した驚き。それに若干ムッとした表情を浮かべてフォルテは口を開く。一夏の驚きを嫌なものと感じ取ったのだ。嫌悪感。同性愛にはつきものの感じ方である。故にフォルテはやや苛立ちを声に込めた。
周囲が自分とダリルの関係をどう思うかは分かっているが、それでも納得出来るかは別問題。理解出来ても奇異の目で見られる事を納得は出来ないのだ。
が、そんな彼女へ一夏はやや慌てて両手を左右に振った。
「あの、違うんです。俺は別に先輩達を嫌な想いにさせるような感想を抱いたんじゃないんです」
「……じゃ、なんなんッスか」
「その、はっきり同性でも好きだって言える事に驚いたんですよ。本当に好きなんだなって、そう思えたし」
「へっ?」
「俺も、好きな相手はいます。しかも複数です。俺だってはっきりと好きだって、愛してるって断言出来ます。だからこそ、分かるつもりです。それをよく事情も知らない相手へ言うのがどれだけの意味を持つかを」
しっかりと告げられた言葉はフォルテの心を確かに打った。一夏の女性関係についてはフォルテでも聞いた事ぐらいはあったのだ。所謂ハーレム。常に複数の女性を侍らし、肉体関係も持っているのではないかと噂されているぐらいなのだから。
もしこれが一夏でなければ、あるいは彼が箒達と関係を持つに至っていなければフォルテは心を動かさなかっただろう。だが、今の一夏はそういう意味でフォルテに似ていた。公言する事をあまり良しとしない交際関係を持つという一点では。
「フォルテ先輩の気持ち、俺なりに分かるつもりです。なので、話します。ただ、分かってると思いますけど」
「誰にも言うつもりも話すつもりもないッス」
「お願いします。じゃあ……」
そこからは一夏によるレインの簡単な現状説明だった。束の世話係として生きている事、ラボに監禁されてはいるが元気な事、そして最後に……。
「私の事を、気にしてたッスか?」
「はい。俺はよく知らないですけど、最後に何かあったんですよね? その時の事を気にしてるんだと思います」
レインとの会話で一夏が感じて予想した事を聞いたフォルテは、静かに瞳を潤ませて両手を口元へ当てる。今も夢に見る光景。それが一瞬にして嫌なものから変わったのだ。
(ダリルさんが、ダリルさんもあの時の事を気にしてくれてた! 私を、気遣ってくれてたっ!)
こみ上げてくるものを感じ、瞳を閉じるフォルテ。その甲斐もなく、彼女の目からは熱い涙が流れ始める。それを見て、一夏は思わず近寄ってポケットを探った。
「これを」
「……グスッ、ありがとうッス」
差し出されたハンカチを受け取り、フォルテは目元を拭う。そんな彼女を見た一夏は、何とか二人を会わせて話をさせてやれないかと考え始めていた。
(何とか、何とか出来ないか? これじゃ、フォルテ先輩が辛すぎるだろ……)
今の彼にとって、フォルテは自分か箒達に見えていたのだ。何かによって引き離された自分達。そのようにも見え、一夏はせめて一目だけでも会わせて、可能なら会話をさせてやりたいと思い始めていたのだ。
そうやって一夏が静かに思考の海に潜り出した中、フォルテは感情の波が治まり冷静さを取り戻していた。そしてその手にしたハンカチを見つめて若干恥ずかしがる。
(……後輩の男に恥ずかしいとこ見せたッスね)
勿論一夏の優しさと気遣いには感謝しているし、知りたかった事を教えてくれただけではない内容にも喜びを覚えている。それでも、やはり異性の、それも年下の前で涙したという事はフォルテとしては恥ずかしさが勝るものであったのだ。
が、そこでフォルテは気付く。一夏が自分を見ていない事に。その顔は思案に耽る真剣なもの。どうしたのかと見守っていると、突然一夏は小さく「ぁ……」と声を漏らしてフォルテへ顔を向けた。
「フォルテ先輩、連絡先教えてもらえませんか?」
「何ッスか急に。まさか私を口説こうと」
「違います。その、上手くいけばなんですが……」
一夏の口から語られる話に、フォルテはその表情を徐々に驚きと困惑へ変えていく。それでも、一夏のどうしますとの問いかけへ首を横へは振らなかった。
こうしてフォルテは一夏によってレインと会えるかもしれない可能性を得る。それが自分とレインの関係を大きく変える事になるとは、フォルテはこの時欠片も思わなかった……。
いつもの昼休み、いつもの時間。ただ、この日は少々一夏の様子が違った。
「い、一夏さんっ! きょ、今日は激しいです……っ!」
後背位で一夏に抱かれるクロエ。その両腕を引っ張るように持たれ、強くペニスを打ちつけられていた。そんなクロエの言葉へ一夏からの返事は何故かない。それもそのはず。彼は束とキスをしていたのだ。
勿論こちらも普通のキスではなくディープである。しかも、しながら束は自分で自分の秘部を愛撫していた。そこからは一夏の精液と混ざった彼女の愛液が流れ出ている。
元々恵まれた肢体をしていた束は、一夏との睦み事を経てその魅力を増しており、その乳房は少しだけ大きさや柔らかさを増している。更に一夏との時間が影響して睡眠時間をしっかり取るようになった事で、その美貌は輝くばかりとなっていた。
「あはぁ、いっくぅん、もっとチューしよ~」
「いいぜ。舌出せ」
「え~……んぅ」
「んんっ……一夏さぁん、気持ちいいです。オチンポ、気持ちいいよぉ」
ジュルジュルと音を立てて唾液を啜り合う一夏と束。その間もクロエの膣はペニスに蹂躙され続けていた。その小ぶりな胸を揺らし懸命に一夏のペニスを膣で締め付けながら、クロエは恍惚の表情で淫語を呟いている。
そのいやらしい表現で一夏を興奮させて射精を促すために。だが、それだけではない。自分が感じていると伝える事で一夏へ喜んでもらおうという気持ちもあった。
さて、そんな光景を見せられて息を荒くしている者達がいる。勿論オータムとレインである。しかも、オータムに関しては目が血走りしそうな程に一夏達を凝視していた。
「……っ、クソ……」
蕩けた表情で突かれているクロエや緩んだ表情で舌を絡める束へ嫉妬し、そのヴァギナを濡らしに濡らして。
「いつか私もああなるのかしら……」
そんなオータムを横目にし、レインはどこか諦めの声を出す。彼女は分かっているのだ。自分の体に起こっている変化に。最初の頃には何も思わなかった一夏の事を意識し出している事を。
その切っ掛けは間違いなくあの精液の匂いを感じた時とレインは確信している。何故なら今もその匂いを感じると、何とも言えない気持ちとなるのだ。それも、好ましい気持ちに。
(それだけじゃない。きっと彼の振る舞いも影響してる。フォルテの事が、計算ではない事ぐらい私にだって分かるし……)
もしどこかに下衆な気持ちがあるのなら一夏からそれらしいものが出る。それぐらい一夏は隠し事が苦手なタイプだとレインは読んでいた。実際その通りであるので何とも言えないが、一夏は隠し事は苦手だが、それが言ってはいけない事や知られてはいけない事と強く意識しない限りバレない人間でもあるのが厄介なのだ。
実際、今回のフォルテの件もそう。一夏としては純粋にフォルテとレインの事を思っての動きである。その裏に束の思惑が絡んでいるとしても、だ。
「いっくぅん、そろそろ束さんもオチンチン欲しいよぉ」
「だ、ダメです。オチンポはまだ私のぉ」
「む~、くーちゃんが束さんに抵抗するなんて……いっくんのオチンチン凄いね」
「でも、そろそろ俺も束を抱いてやりたいな。クロエ、一度出すからそれで交代してくれないか?」
「……一夏さんがそこまで言うのなら」
どこか拗ねるような声で返事をし、クロエは無言で膣を締め付けた。それが射精をねだる声と察して一夏は小さく微笑むと再び腰を振り始める。束もそんなクロエに苦笑しつつ、ならばとばかりに彼女の陰核を優しく刺激し始めた。
「あっ! た、束様っ! そこはぁっ!」
「ふっふっふ……さぁ、くーちゃん? 早くイっていっくんにオチンチンミルク出してもらおうね~」
「やぁ! まだ一夏さんと繋がっていたいんですっ! ああっ!」
容赦なくクロエを絶頂へ誘おうとする束と、それに何とか抗おうとするクロエ。そのやり取りを眺めながら一夏は満足そうに腰を振る。そしてその時は来る。
「いっくん?」
「よっと……っ!」
「ふあああああっ!?」
束の呼びかけに応じるように一夏が一番奥へペニスを突き入れて射精する。その熱と衝撃にクロエも達し、全身を硬直させた。そんなクロエの髪を優しく束が撫で、まるで母親のような微笑みを向ける。一夏はクロエの膣内へ己の遺伝子を注ぎ込みながら、その疲労感と達成感にも似た快楽を味わっていた。
「い、一夏さん……不意打ちはズルいです」
潤んだ瞳で若干不満を述べるクロエだったが、その膣内は一夏のペニスを今も締め付け射精をねだっていた。その甘く蕩けるような快感を名残惜しく思いつつ、一夏は苦笑しながらクロエの中からペニスを引き抜いて行く。
「悪い。それぐらい我慢出来なくて」
「……そういう事にしておきます」
「じゃ、いっくん?」
「ああ。束、待たせたな」
こうして始まる二回戦。それを苛立ちで見つめるオータムと微妙な気分で見つめるレインという構図を作り出し、束とクロエはシャワーを浴びて散歩へと出る。一夏は一人その場に残り、オータムにフェラチオをさせていた。
「結構うまいじゃないか、パイズリ」
ペニスをしゃぶりながら一夏を睨み付けるオータム。ただ、そう思っているのは本人だけで、実際は目に力はなくむしろ媚びるような色を宿していた。既に一夏のペニスの味を覚え、体は完全に堕ち切る寸前となったオータム。その心も陥落寸前であり、おそらく抱かれて膣内射精されれば完全攻略されるだろう。
そんな事は露知らず、オータムは一夏を睨んでると思いながらペニスから口を離して舌を蛇のように這わした。
「お前がそれに弱いって言うからだ。たしかに我慢汁ダラダラ流して情けないなぁ」
「でも、お前を抱きたいとは思わないぜ? そこまで俺をさせてこそお前の勝ちだろ?」
「……上等だ。今日でその余裕を吹っ飛ばしてやる」
流れてくるカウパーをまるで蜜を舐めるような表情で舐めとりながら、オータムは誘う眼差しを一夏へ向ける。その光景を眺め、レインは自身の熱をどうするか考えていた。
(今の内にシャワーへ……ダメ、掃除をするのはあっちの役割だ。それじゃ私が何をしたいのか悟られる。かと言って他の場所じゃ……)
既に自慰を行う事は確定している時点でレインも相当追い込まれている事が分かる。そう、彼女自身も察していたが、一夏への感情が変化した事によりその性的欲求が高まってしまっているのだ。つまり、一夏を異性として意識し出している証拠である。
そうしてレインが自分の理性と本能の葛藤で苦しんでいる中、一夏はオータムの様子を眺めて一つ確信していた。
(こいつ……もう抱けるな)
ずっとペニスを前に媚びるような眼差しをしている事。更に自分の要求へあっさりと応えてきた事。後は、彼にしか分からないが、オータムから箒達と似た匂いがしている事だ。
そう、発情し切った雌のフェロモンである。
(んだよ、このチンポは。何でこんなにもウマいって感じるんだ? ああっ、もういい。考えるだけ無駄だ。今はさっさとこいつをイカせて精子出させてやる)
思考を放棄し、ただ一夏を絶頂させる事だけ考えるオータム。それがもうおかしい事に彼女は気付かない。最初の頃にあった一夏をおちょくろうという気持ちはとうに消え、今あるのはその精を啜る事だけである。その事に違和感も疑問も抱かず、オータムはその乳房と舌を駆使して一夏を喜ばせていく。
やがてそのパイズリは熱を増して、オータムから一切の思考が消える。あるのはただ一点。口内射精させる事だけ。
それを感じ取ったのか、一夏はすかさずオータムの頭を掴み喉奥へペニスを突き入れるようにして精を放った。熱く濃厚な精液がオータムの口内を焼き、その味と匂いで脳内までも焼き尽くす。
「……イったな」
プシャっと言う音と共にオータムから水音とアンモニア臭が漂い始める。一夏の視線の先では、白目を剥いて小刻みに震えるオータムの姿があった。それでもペニスを口から放さないところに彼女の本音が見える。
その何とも言えない姿にムラッとしたものを感じ、一夏のペニスが小さく動いて硬さを取り戻した。
「んっ……」
勿論そんな動きをオータムが感じない訳がない。ぼんやりとした意識のまま、彼女は嬉しそうにペニスをしゃぶり始めた。その光景を眺め、一夏は口の端を吊り上げる。その笑みには凶悪な何かが宿っていた。
「っ!?」
(あ、あんな顔するの、この子っ!?)
その表情を見たレインは初めて見る一夏の雄の顔に身震いを覚えた。それと同時に体の奥に微かに芽生える疼きもあって。その疼きは雌の疼き。束によって根付かされたナノマシンによる変化の賜物である。
と、そんなレインに気付いたのか。一夏がオータムの口からペニスを引き抜くとゆっくりとレインへ近付いたではないか。そのゆっくりとした歩みが、妙にレインには恐ろしく、どこか期待してしまうものに思えた。
「あの、ダリルさん」
「……何?」
何とか冷静を装って受け応えるレイン。だが彼女は知らない。自分の状態を一夏が匂いや雰囲気から察している事を。彼は誤魔化そうとするレインに合わせるように何も気付いていないかのように振舞う事を決め、どこか申し訳なさそうにこう口を開いた。
「その、いつもの事なんですけど後始末お願いします」
「……分かった……っ」
なんだ、と、どこかがっかりするかのようにレインは息を吐いて返事をする。そしてすぐに自分でその事に気付いて息を呑む。一夏もそれに気付くも、何も言う事なくシャワーへと向かった。
一夏がいなくなった事を確認し、気を失うオータムと自分だけとなったレインは小さく息を吐くとそっと右手を自身の秘部へと潜り込ませる。
「……熱い。それに、こんなに……」
そこは男を求めて濡れに濡れていた。それも、レインが今までなった事がない程の愛液を垂れ流して。もうレインも分かっていた。自分が一夏に抱かれたいと思っている事を。しかも体だけではなく心もそうなり始めている事に。
そのまま彼女はその熱さの源へ指を入れる。そうなればどうするかは言うまでもない。ラボ内に押し殺した息遣いと水音が響き渡るのに、そう時間はかからなかった。
一方一夏は汗を流してこれからの事を考えていた。
「フォルテ先輩をここへ入れる訳にはいかない。でも、あの人を外へ出すのも難しい。それでも何とか会わせてあげたい。なら……」
彼が考えた方法は簡単だ。ラボから束がいない時を狙う。大体どれぐらいの時間留守にするかは分かっていないが、クロエ曰く短時間ではないとの事。それを聞いて一夏は決意したのだ。後で怒られる事になろうと、フォルテをレインに会わせてやろうと。
そうして一夏はシャワーから出ると体を拭いて制服へ袖を通す。が、ラボへ戻ればそこには自慰へ耽るレインの姿があった。
「……えっと」
予想だにしない光景に一夏もどうしたものかと困り顔。何せ彼が戻って来た事にも気付かぬ程にレインは自慰に夢中なのだ。オータムは未だに気を失っている上にアンモニア臭が漂っている。そんな中でレインは嫌がるどころかむしろ余計興奮しているように一夏には見えた。
(もしかして、ダリルさんって匂いフェチ?)
正確にはそうなってしまったのだが、今となってはどうでもいいだろう。一夏は自分の事に気付かぬまま自慰に耽るレインを見て股間が盛り上がってくるのを覚えた。すると、それを察知したのかレインが弾かれるように顔を動かして彼を見た。
「…………忘れて」
「無理です。それと、シャワー浴びてきてください。このままだと貴方までそうしそうなんで」
その声に冗談らしさなどない事を察し、レインは火照りを残した体のまま、慌てるようにその場から立ち去った。残されたのは未だ意識を失っているオータムと一夏のみ。そうなると当然ではあるが一夏が取る行動は一つだった。
「……片付けるか」
こうして一夏はオータムの服を脱がせるとそのメイド服を洗濯機へ入れ、温水で濡らしたタオルで彼女の体を簡単に拭いていく。この日、一夏はもう五限を欠席するつもりでいた。その理由は一つ、フォルテのためである。
何故そこまでと思うかもしれないが、一夏からすればそうでもしなければフォルテとレインを会わせる事が出来ないのだ。
彼の言った事は必ず守るという律儀さがよく分かる行動であった。例えそれで自分がどうなろうとも、だ。
「……戻ってなかったのね」
オータムの体へバスタオルをかけたところで一夏は声を掛けられる。その相手は当然レイン。彼はその彼女の言葉に振り向くや、若干見惚れてしまった。
(綺麗だな……)
そこには、白いバスタオルを肩にかけただけのレインが立っていたのだ。つまり、大事な部分は隠していない状態である。それを惜しげもなく披露し、レインは恥じらいも照れも見せていなかった。彼女からすれば、裸を見られるぐらいで反応していては一夏に笑われると思っていたのだ。
何せ、彼はクロエや束と何度となく肌を重ねている。その際、当然秘部は露わになっていた。男と女という違いはあるが、平然と裸になり情事を行えた一夏に対してレインが妙な対抗心を抱いていたという訳である。
レインは自身の裸体に感嘆している一夏を一瞥しオータムへと視線を移す。
「後始末、してくれたの。ありがとう」
「え? ああ、別に気にしないでいいさ。元々俺のせいだし」
「そうかもしれないけど、引き受けたのだから」
「なら、俺にエロいもの見せてくれた礼だと思ってくれればいい」
「……そ」
一瞬赤面したものの、それを一夏に見せないよう顔をさり気無く背けてレインはオータムの近くへと移動する。ただ、今の一夏にはその行動だけでそれを悟られていると彼女は知らない。
「その、少し手伝って欲しい事があるんです」
「面倒」
「オータム、シャワーへ運びたいんです。邪魔なんで」
「はぁ~……仕方ないか」
そうやって一夏とレインがオータムをシャワーへと運び始めた頃、ラボ付近にフォルテの姿があった。一夏から送られたメールに従って彼女も五限を欠席したのである。その理由は……
「……ここに、ダリルさんが」
最愛の人と、会うために。
「あの、束様」
ラボ内へフォルテが足を踏み入れようとしている頃、クロエは束と共に校舎の屋上にいた。秋の終わりを告げる風が少々肌寒くはあるものの、まだ陽射しもそれなりにあるため過ごし易いと言える。
そんな中、クロエは隣で上機嫌な笑顔をしている束へ声を掛けていた。クロエには束の上機嫌の理由がまったく分からなかったからだ。
「どしたの?」
「その、何か良い事でもありましたでしょうか?」
「ん? ん~……」
クロエの問いかけに束は右の人差し指を顎に当てて空を見上げた。それは思い出すというよりはどう話そうかを考えているようにクロエには見えた。ほんの少しの間を置いて、束は力強く頷くように顔を戻すとクロエへ顔を向けてこう告げた。
―――これから良い事が起きそうなんだよ。
そう言い切る束の耳には、イヤホンらしきものが装着されているのだった……。
後半へ続く(某アニメのナレーションのように