……その最強が発情などのステータス異常を引き起こしていなければ(汗
「……本気で言ってるのか?」
アリーナに千冬の静かな、けれど怒気を含んだ声が響く。
それを正面で受け止めながら一夏は黙って頷いた。自分の気持ちは変わらないと示すように。
「俺は、箒達を本気で愛してる。だから選ぶなんて出来ない。もし選べと言われたら全員だ。それを阻むものがあるのなら、俺はその全てと戦っていく」
「馬鹿な事を。人一人が出来る事などたかが知れている」
「それでもさ。俺は、もう決めたんだ。誰が何と言おうと、みんなを嫁にして生きていくって。認めろなんて言わない。ただ、俺達へ攻撃するなら立ち向かうだけだ」
「……いいだろう。なら、そんな馬鹿な考えを抱いた愚弟を止めるのは姉の務めだ」
そう告げて千冬はその手に雪片そっくりの武器を出現させる。その身に纏うISは束が創った“百式”という名の桜色の機体だ。
白式をモデルに作られただけあり、その形状はほとんど同じである。装備面も同様で武装は手にしている“雪片弐型改”のみだった。
放課後に束からISを受け取って一夏との約束通りにアリーナへやってきた千冬は、そこで彼と箒達の関係にまつわる全てを聞かされた。
一般常識で言えば到底認められない話を遮る事無く全て聞き終え、千冬が抱いた感情は失望ではなく嫉妬だった。
それが誰へのものかは本人でさえ正しく理解していない。ただ何故という気持ちだけが強くあったのだ。
「なら、俺は千冬姉を倒してでもこの馬鹿な考えを貫くだけだ」
言いながら雪片弐型を構え、一夏は表情を雄々しくし眼差しを鋭くする。その表情に千冬の体が反応する。強い雄を感じさせるそれに彼女の中の雌が叫び始めたのだ。
(不味いっ! か、体が……っ!)
一瞬にしてインナーの股間部分が愛液で濡れて変色する。その嫌悪感を覚えながら千冬は表情には一切見せる事無く身構えた。
ただ、その両者の様子をモニタリングしている束には筒抜けであったが。
「ふんふん、ちーちゃんも頑張るね~。まぁ、むしろ頑張っちゃったからこうなったのかな?」
「千冬さん、どうやらかなり自分を慰めてるみたいです。私が少し愛撫しただけでぐちょぐちょになりましたから」
「そっか。じゃ、まっちゃんのせいでもあるんだ」
「そうですか? そもそも千冬さんがオナニー中毒になってたのがいけないんだと思いますよ?」
管制室で会話する束と真耶。あの大浴場での一時から真耶は束の前でも物怖じする事がなくなり、それを受けてその呼び方が親しげなものへと変わっていた。
もう今の二人は一夏によって変えられた彼を支える魔法使いと魔女である。一人はその頭脳と技術力を以って世界と交渉し、一人はその立場を使って世界最強の女を弱体化させたのだから。
「それで、本当にやるんですか?」
「とーぜん。こんな機会を逃したら後々後悔するもん」
「……まぁそうですね。どうせやるなら思い切ってやりましょう」
「そーそー。まっちゃんも分かってきたね~」
楽しげに何事かを話す二人とは対照的に、静かに睨み合う両者を観客席で箒達が神妙な雰囲気の中見守っていた。
「いよいよ、か……」
「勝てるのかしら?」
「鈴さん、その問いかけは愚問ですわ」
「そうだね。一夏が言ったじゃないか。勝てるか勝てないかじゃない。勝つんだって」
「そして私達の旦那は言った事は必ず実現してきた。それはきっとこれからもそうしてくれるだろう」
揃って祈るような表情を一夏へ向ける五人。一夏の同級生であり深く関わってきた故によく分かっているのだ。彼がこれまで努力してきた全ては、下手をすればこの時のためのものだと。
「一夏君ならきっと、きっと大丈夫だよね?」
「ええ。信じましょう簪ちゃん。私達姉妹をこうして繋ぎ合わせくれた人を、ね」
不安げな簪の方へそっと手を置く楯無の表情も不安な影を宿していた。
箒達が一夏の努力が報われる事を祈るのとは違い、彼女達は一夏の無事だけを願っていたためである。
「お前も博士と一緒にいなくて良かったのかよ?」
「はい。私は一夏さんの傍でその勝利を見届けたいのです」
「……そうかよ。あたしと一緒だな」
揃って一度たりとも一夏から目を離す事無く言葉を交わすオータムとクロエ。
二人の表情は無表情にも近いが、それでも抱く想いは一つ、一夏の勝利であった。
「一夏君……忘れてないッスからね。あのコンビ戦の君の無茶苦茶を。こっちの予想を超えていく、その強さを」
「ダーリン……」
手を繋ぎながら凛々しい表情で一夏を見つめるフォルテとレイン。
世界でただ一人彼女達が愛する男性の強さを目の当たりにし、そのともすれば無謀と言える行動力と判断力に敗北した上級生コンビは、それだからこそ誰よりも一夏の強さを信じていた。
「……一夏兄、見せてもらうぞ。世界最強が書き換えられる、その瞬間を」
唯一一夏だけではなく千冬の事も見つめるマドカは小さな声でそう呟いた。
家族になろうと言ってくれた一夏。その姉である千冬への複雑な想いを抱きながら、マドカは過去とは決別したのだとばかりに力強い眼差しを二人へ向ける。
『始めっ!』
「「っ!」」
真耶の声で二人が動く。その動きは恐ろしい程一致していた。まるで鏡のように同じ速度、同じ表情で手にした剣を振るったのである。
「千冬姉っ! 今まで背負ってくれてた俺の荷物、今日全部引き取っていくぜっ!」
「その気持ちは嬉しいが、まだまだお前のような青臭い学生にそんな事はさせ、られんっ!」
鍔迫り合いをしていたが、力を込めて一夏との距離を強引にとって千冬は雪片弐型改を突き出す。
その一撃を避けるのではなく敢えて雪片弐型で弾き、お返しとばかりに真っ向から一夏は振り下ろすも、それは千冬の体を捉える事なく防がれてしまう。
それでも気にする事無く一夏は攻勢を強めていく。その姿を見て箒だけがある事に気付いていた。
(あれは……あの頃の一夏だ……)
幼い頃、共に実家の道場で剣を学んでいた時、箒が見た天才剣士の姿。それが今、目の前にあった。
(重く鋭い太刀筋だ。ここまでなっていたのか、お前は……)
千冬もこれまで実感する事のなかった弟の成長を己の目で、肌で感じていた。
守るべき存在と心に決めて過ごしてきた最愛の弟。それが気付けば一人の男として見事に成長を遂げていた。
更に自分を追い越そうと努力を続け、ISに触れて一年にも満たない期間で急激な進歩を遂げて目の前に立っている。
それを自覚した瞬間、千冬の体を親代わりとしての想いと女としての想いが駆け巡った。愛情と欲情の波が大きく彼女の精神を揺さぶる。
「っ……この程度でっ!」
「くっ!」
一夏の大上段の一撃を回避しながら返す刀で彼の脇腹を千冬が薙いだ。それによって白式のシールドエネルギーが消耗する。
互いに零落白夜を発動させていないためにまだ戦闘は続行されるが、今ので一気に一夏が不利になった事は否めない。
それでも距離を取る事無く一夏は再び攻め始める。
「うおおおおおっ!」
「ちっ! 猪突だけが戦い方ではないぞっ!」
「かもしれないっ! だけど今の俺が千冬姉に、貴女に勝つにはこれしかないんだっ!」
「舐められたものだっ!」
怒涛の攻めを避け、時に捌き、時に弾き、千冬は一夏の戦意を挫く方向へ動いた。
圧倒的な力の差を見せるには大きく二通りのやり方がある。
一つはあっさりと負けさせる事。だが、これでは一夏の性格上何度も挑んでくると千冬は読んだ。
なので二つ目である何をしても通用しないという方法を選んだのである。それは、かつて楯無がやろうとして敗北したものだった。
しかしあの時と違い今の一夏はただ勝つのではなく千冬に認めさせると言う目的もある。故に零落白矢を使うつもりはなかったのだ。
何をしても、どう動いても、千冬は顔色一つ変えず対処してしまう。そんな現実を突き付けられても一夏は決して闘志を萎えさせる事はなかった。
(この世に絶対無敵なんていない。千冬姉は世界最強かもしれないけど、それがそのまま無敵って訳じゃないんだ。いつかは千冬姉だって疲れる時が来る。心が弱る時が来る。向こうが俺の心を、想いをへし折るつもりなら、こっちが逆にへし折ってやるっ!)
(何て強い眼差しだ。これだけ力の差を見せても、分からせてもそうなのか、お前は。決して諦めないと、そういう事か? 圧倒的な力の差があっても、お前は臆せず立ち向かうと、そう言いたいのか一夏っ!)
不思議な構図となっていた。どう見ても有利であり優勢なのはその場で最小限の動きで一夏の攻撃を無力化している千冬である。
なのに、ゆっくりとではあるが確実に、一夏が千冬を追い詰め始めていたのだ。ここはやはり現役を退いた者と常日頃から己を鍛え続けていた者の差だ。
つまり基礎体力である。更に言えば年齢と性別という千冬であっても抗えないし変えられない要素も一夏へ味方していた。
そして最後に、千冬は既に一夏のナノマシンによる異常状態となっていた。
そう、時間をかければかける程、一夏に有利になる要素しかなかったのである。
堅牢なはずの城塞は、実際にはあちこちに亀裂を生じさせており、それを騙し騙し見ない振りをしていただけだ。
しかも、その主としたい相手が城門を開けろと何度も何度も攻め立てているのである。そうなれば、その結果は自ずと分かろうものだ。
「いい加減に諦めろ一夏っ! お前に勝ち目などないっ!」
「それでもっ! それでも俺は諦めないっ! 例え勝てないとしても、負けるつもりはないっ! 諦めなければ、それはまだ負けた事にならないんだっ!」
「屁理屈を……っ!」
「大人の理屈なんてもん、俺がこの手でひっこめさせてやるっ!」
「青二才がっ!」
「熟していれば偉いのかよっ! 青くて何がいけないんだよっ! 誰だって最初は青いんだっ! なら何でそれを責められないといけないんだよぉっ!」
一夏の言葉と気迫に千冬の動きが若干ではあるが鈍る。子供の駄々にも聞こえるそれに、千冬は思い出してしまったからだ。
(一夏は、思えばあの時から私へワガママを何一つとして言わなかった。きっとそれは、私が無意識に一夏へ押し付けてしまったんだ。大人である事を……そして、子供でいない事を……)
過去を思い出して隙を見せた千冬へ一夏は無我夢中で雪片弐型を突き出した。
「俺はもう守られるだけは嫌なんだぁぁぁぁっ!」
「っ?!」
零落白夜を発動させたその一撃を辛うじて雪片弐型改で受け止める千冬だったが、それで終わる一夏ではなかった。
「イグニッションっ!」
「なっ!?」
凄まじい加速度から来るGにさしもの千冬も動く事が出来ず、凄まじい勢いで彼女はアリーナの壁へ叩きつけられる。
その光景を誰もが息を呑んで見つめていた。箒が、セシリアが、鈴が、シャルが、ラウラが、楯無が、簪が、真耶が、束が、クロエが、オータムが、フォルテが、レインが、そしてマドカが。
彼女達だけではない。二人の試合は何故か学園内や世界中に流されていた。全ては束と真耶による企みである。
一夏と千冬の試合を見せる事で一夏への期待や男としての強さなどを刻み付け、今後の計画を進ませやすくするために。
激突による砂煙が晴れていく中、ゆっくりと誰かのシルエットが浮かび上がる。
それが誰かを映像で見ている生徒達は固唾を飲んで見守る中、箒達はいち早くそれがどちらであるかを察して瞳を潤ませた。
“勝者っ! 織斑一夏っ!”
真耶の心の底から喜ぶ声に世界中が揺れた。それは驚きだったり、悲鳴だったり、歓声だったりと様々であったが、誰もが理解していたのだ。
今日、この瞬間、大きくISの歴史が動いた事を。
気を失っている千冬を両腕で抱き抱えて凛々しい表情を見せる一夏の姿と共に……。
束の研究室。そこに全裸のスコールがいた。あの独房と化していた場所から出され、拘束さえされていない状態で、だ。
だが、何故かそれにも関わらず彼女はそこから脱走しようとはしていなかった。束もクロエも、オータムさえもいないそこから。
その理由。それは、つい先程まで流れていた映像を食い入るように見ていたためだった。
「嘘、でしょ……。あの坊や、織斑千冬を倒したの? 一対一で、しかも正攻法で?」
呟いた言葉の持つ意味にスコールの体が震えた。
投与されたナノマシンは一夏との接触がないためにもう活動を停止している。それでも体に刻み込まれた快楽は消えない。
そして人には自分を負かした相手には自分以外に負けて欲しくないという気持ちが少なからず存在する。
それはスコールも例外ではない。それもあって一夏の勝利は彼女にとってある種の喜びであった。
(あの坊やはエムだけじゃなく私さえも負かした。でもそれはこちらのレンジ外からの攻撃があるからと思っていたけど、それだけじゃないのね)
恐ろしさを覚えると同時にどこかで安堵している事に気付いてスコールは慌てた。
(何でホッとしてるのよ!? 私をこうした最大の要因なのよ?!)
怒りや憎しみを燃やそうとするスコールだったが、そこへ通信画面が出現した。
『あっ、起きてた起きてた』
「っ……篠ノ之博士」
『どうする? もうある意味自由だけど?』
「……私をどうするつもり?」
『束さんはもうなぁ~にもしないよ。体一つで逃げられるなら逃げればいいんじゃない?』
その言葉にスコールは面食らった。あれだけの事をやり、殺す事さえ匂わせておいての発言に耳を疑ったのである。
『あー、そうだ。あきちゃんとまーちゃんからの伝言があるんだった』
「オータムとエムから?」
『ん。でも二人して同じ事言ってるんだよね~。帰ったところで意味はない、だって』
二人の言いたい事を瞬時に察してスコールは言葉に詰まる。
身一つで組織へ戻ったところで待っているのは一つの結末しかないからだ。
青い顔で固まるスコールへ、束は学園周辺の地図を表示させた。その一部に赤い点として表示されている場所がある事にスコールは気付く。
「これは……」
『忘れてるかもしれないけど、束さんが設けた期限は今日までだよ? 束さんは何もしなくてもあきちゃんはそっちを警戒してるからね』
暗に殺さないとは言っていないと告げる束にスコールは舌打ちする。そんな彼女へまったく反応する事無く束は地図の赤い点を指さした。
『で、今そこにいっくんがいる。言いたい事、分かる?』
「……そこへ行って織斑一夏に抱かれれば助ける?」
『それだけじゃないよ。何と今なら束さんが創った白式モチーフのIS“百式”をプレゼント~。ちーちゃんが今日の試合で使ってたやつね』
まさかの言葉にスコールは目を見開いた。それが意味する事は、上手くすれば新型ISを入手出来るという事なのだ。
勿論一夏と性行為を行う事は必須だろうが、相手は年頃の男子。そんなものはスコールからすれば盛りの付いた獣も同然だった。
「分かったわ。そちらが何を考えているか知らないけれど、私の拘束を解いた事を後悔するでしょうね」
その言葉にも反応する事なく束は通信画面を消した。その場に静寂が訪れる。
けれどスコールの目は激しく輝き、何も身に着けない姿のままで外へと飛び出した。
日も暮れ、辺りを夜の闇が包む中、まるで女豹のように鋭い目つきでスコールは学園内を走る。
目指すは以前一夏が鈴と簪と交わった場所。それを知らぬスコールは、あの時に覚えた記憶の地図を頼りに進む。
やがて目的の場所付近へ近付き、スコールはそこで誰かを待つ一夏の姿を視認した。
「いたわね……」
このまま出て行っても一夏が自分を脱走してきたと考え面倒な事になると判断したスコールは、一夏の姿が見える辺りで身を潜めてどうするか考える事にした。
ただ、季節は晩秋。夜風はもう冬と同様の冷たさを持っているためいつまでも裸のままでは辛い。なのでスコールが思考へ使えた時間は短いと言える。
(どうする? いっそ正直に話す? ……そうね。お人よしのようだし、命乞いにも近い事を言えばこちらの予想通りに動いてくれそうだわ)
普段の彼女であれば浅慮と断言しただろう思考でスコールは小さく頷いた。
「束の奴、こんなところで大事な話って一体何だってんだ?」
一方一夏は近くにスコールがいるとも知らず、寒さに若干体を震わせながら来るはずのない相手を待っていた。
だが、その表情が一瞬の内に険しいものとなり、目だけを自身の斜め後方へ動かす。そこには誰もいない。しかしいるのだ。一夏の嗅覚がそれを教えていた。
(この匂い……ラボで嗅いだ事があるな。でも俺が知ってる相手じゃないって事は……)
「どうして亡国機業のお前がここにいるんだ?」
「っ?!」
静かに距離を詰めていたスコールが思わず驚き足を止める。まったく彼女の方を向く事無く告げられた言葉は、適当に言っているのではなく確信めいたものを持っての言葉だと分かったからだ。
「ラボから逃げ出してきたのか? ならどうしてここにいる? モノレール駅は逆だぜ」
もう隠れていても意味はないと思いスコールはため息と共に一夏の傍へと近寄っていく。
その気配に一夏がゆっくりと振り返って一瞬息を呑んだ。そこには見事なスタイルを惜しげもなく晒す妖艶な女性がいた。
「裸?」
「ええ。それと、信じてくれるか分からないけど、篠ノ之博士にある条件を出されたのよ」
「束に?」
「今日中に坊やとセックスしないと殺されるの」
さらりと告げられた内容に一夏は驚く事も無く、むしろ納得さえしていた。
「そっか。束らしい」
「助けてくれる?」
「……大人の女って感じだな、あんた。男に抱かれる事なんてどうって事ないって顔だ」
「当然よ。エムはどうだったか知らないけど私はこれでも色々とあったの」
「そうかよ。それとエムじゃない、マドカだ」
「っ……分かったわ。で、どう?」
乳房を両手で持ち上げるように動かすスコールだが、それを見ても一夏は顔色一つ変える事無くむしろ冷めた目を向ける。
(何だろうな、この気持ち。俺、思ったよりも股の緩い女が嫌いなんだな)
(何て冷たい目をするの、この坊や。これが本当に学生なんて歳の男?)
オータムもスコールと同じく既に男を知っている女性であったが、彼女は最初から一夏へ色仕掛けなどしなかった。それがスコールとの大きな、そして一番の違いである。
別に一夏は処女でなければ嫌という考えではない。ただ、誰でも簡単に体を許す女性を毛嫌いするある種の潔癖さに似たものは持っていたのだ。
「……とにかくまずはこれでも羽織れよ」
冷たい突き放すような表情と目をしながらも、来ていた上着を脱いでスコールへ投げる一夏。その行動に上着を受け取りながらスコールは小さく笑う。
「優しいのね」
「女子供には可能な限りそうしようと思ってるんだ。とにかくここじゃなんだ。場所を変えるぞ」
「分かったわ」
一夏について行く形で移動を始めるスコール。そのまま二人は校舎内へ入り、一夏が使っている更衣室へと入った。
「正直言う。俺はあんたの事を許してない。オータムやマドカの事を駒として利用しておきながら、危なくなったらあっさりと斬り捨てた事をな」
「甘いわね」
「だろうさ。でも、それを貫くのが俺の生き方だ」
ぶれる事無く言い返し一夏は片手を動かしてシャワールームへ向ける。
「とにかく体が冷えてるだろ? あっちにシャワールームがある。熱い湯でも浴びてこい。結構匂うぜ」
「っ……ならお言葉に甘えるわ」
一瞬ではあるが顔に動揺を見せてスコールは上着を長椅子へ置いてシャワールームへ向かう。
それを目だけで追い駆け、一夏はため息を吐くと後ろ手で頭を掻いた。
「嫌いなタイプ、だと思うんだけどなぁ……」
呟きながらも一夏は視線を下へ向ける。そこにはズボンを盛り上げるように若干大きくなり始めているペニスがある。
一夏の思考としてはスコールのような女性を毛嫌いしている。だが、一夏の本能はあの女を抱き種付けたいと思っていたのだ。
オータムよりも自分を見下しているような態度や雰囲気。それを持つスコールを心身ともに屈服させてしまいたい。二度と今のような態度が取れないようにそのプライドを粉々にしたいと。
「…………ま、悪人でも命は命か」
理性と本能のせめぎ合いは呆気なく勝敗が着いた。人命救助という大義名分を得た性欲を抑えるだけの理性は今の一夏にはない。
どこか獰猛な笑みを浮かべながらシャワールームへと向かう一夏。その足取りはどこか軽い。
(さてと、愛情のある感じは望んでないだろうし、向こうも作業みたいに思ってるだろうから……オータムの時みたいでいいか)
着ていた物を脱ぎ捨てるのと同じく一夏の自制心も捨てられていく。
反り返るペニスは既にこれからの事を想像してカウパーを流し、陰嚢は千冬との試合での興奮の残り火を燃やすように急速に精子を製造し始める。
「あら、やっぱり来たのね」
一夏がシャワールームのドアを開けると、スコールは驚く事もなく笑みさえ浮かべた。頭上から降り注ぐ熱い雨を浴び、その妖艶な肢体を見せつけるかのような姿勢で。
「俺のせいで死なれるなんて夢見が悪いからな」
「ふふっ、そう。ならお願いするわ、坊や」
どこまでも年長者らしい余裕を漂わせるスコールだったが、今の一夏には無駄な偽装だった。
(こいつ、凄い女の匂いをさせてるな。いつかのオータムよりも酷いぞ、これ)
(な、何っ?! 急に体が疼き始めたっ! それにこの感情は……不味いっ! もしかして、エムが簡単に坊やの女になったのは目の前の彼に理由があるの……っ!)
一夏のナノマシンからのフェロモンの吸収。それによりスコールの中で休眠状態だったナノマシンが急激に活性化し、強烈な性的欲求と凄まじい多幸感を与えたのだ。
何とか大人の女の仮面を着け続けるスコールへ、一夏はまず主導権を握るために先手を放った。
「っ?!」
乾いた音がシャワールームに響く。スコールの頬を一夏が引っ叩いたのだ。
「何か勘違いしてないか? 何でお前が上の立場だと思ってるんだよ」
「な、何を言って」
「お前が俺に頼みごとをしてきたんだろ? 違うか?」
自分の言葉を遮って一夏が放った言葉にスコールは息を呑んだ。
言葉だけ見ればチンピラなどの三下らしさが溢れるもの。だが、一夏は冷徹に淡々とスコールへ言葉をぶつけていた。
「たしかに俺もお前を殺すような事は避けたいが、だからってこの期に及んで自分が上だって思ってる奴を助けたいってなる程人が出来てる訳じゃない。お前も本気で助かりたいなら助けてもらえるように動けよ」
「……つまり私が坊やをその気にさせるようにしろと?」
「せめて大人の余裕みたいな強がり出すな。そっちが望んでるようにさっさと終わらせるから」
その一夏の対応にスコールは自分の想像が違っていた事を認識していた。
(この子、とんでもないわ。あれだけペニスを勃起させておいて冷静さをなくしてないとか、この年齢じゃ有り得ない。やはりあの計画で生まれた存在だけあるって事ね……)
性欲は歳相応かそれ以上にあるが、必要となればそれを抑え込んで立ち振舞う事が可能。そんな一夏にスコールは僅かではあるが感心していた。
そしてならばと壁に手をつき尻を突き出すような体勢を取る。更に自分で尻肉を掴んでヴァギナだけでなくアヌスまでも見せつけるようにしたのだ。
「これでいい?」
「……ああ」
年齢不詳の美女が自分に対して無防備に性器と排泄器官を晒している。その状況に一夏は意識を人から獣へ切り替え、反り返ったペニスを掴むとスコールの発情したヴァギナへとあてがい、一気にそこへねじ込んだ。
「~~~~~っ!?」
一瞬にして子宮まで到達したペニスによる刺激にスコールは声もなく絶頂する。
それだけではない。失禁までしたのだ。初めてだった。これまで幾多もの性交を経験してきた彼女が、意識を失いかける程の快楽を得たのは。
ナノマシンによる感度上昇に幸福感の増大、果てには従属性の付与に数日間の焦らしと飢え。それらが今、全て結実してスコールを襲ったのである。
一夏という雄へ服従すべしと。自分はもうこの雄に勝てない。この雄の子を産む事だけが全てなのだと。
「……思ってたよりもキツイな」
一方の一夏は淡々としていた。初めての気持ちの無いセックス。故に彼は事務的な雰囲気をどこかに纏っていた。
ただ、一夏がキツイと思うのは当然と言えば当然である。何せ彼はスコールが今まで受け入れた事のない場所までペニスをねじ込んでいるのだ。つまり、今絶賛開発中なのである。
「まぁ、いいか。じゃ、動くぞ?」
「っ!? ま、待ってっ! まだ」
薄れかかった意識が覚醒し、何とか制止の声を発するスコール。突き入れられただけで人生初の快感を得たのだ。ここで動かれたら絶対に不味い。
そう予想しての声だったが、一夏はそれに応じる事なくあっさりと腰をそのまま前後に動かし始めた。
もう、そこからはスコールだけが阿鼻叫喚だった。
束製のナノマシンによって変えられた体は一夏との粘膜的接触で常時フル稼働。とめどなく多幸感を与え、脳細胞が焼き切れるような強い快楽を覚えさせていく。
加えて今までの性交が可愛く思えるような力強いピストンとペニスに、スコール自身がこれまでとまったく違うと認識してしまった事で、一夏とのセックスが特別だと強く確信してしまう。
(ああっ! な、何なのこれはっ!? 有り得ないっ! こんなセックス、有り得ないわっ! 子宮が直接揺らされてるっ! こんなの知らないっ! 知らないぃぃぃぃぃぃっ!!)
人は未知の事に怯え恐怖する。それはスコールとて例外ではない。
それを冷徹な心でこれまでは抑え込んできた彼女だったが、女の本来不可侵である場所を侵略されてしまってはそれも無理と言うもの。
何せ本能と理性両方から恐怖を与えられているのだ。それは、じわりじわりとスコールの思考を犯していく。
この相手には勝てない。逆らってはいけない。一夏が一突きする度にそれらの思いがスコールの中へ刻まれていくのだ。
「ぐっ……すっげぇ締まるっ! お前っ、こうやって扱われるのが好きなのかよっ! とんだスケベだなっ!」
「こ、こんなモノで突かれたらどんな女もこうなるわよぉっ! 駄目になるっ! 駄目になるぅ! 私が私でなくなっていくのぉ!」
「そうかよっ! なら駄目になっちまえ! おらっ! おらぁ!」
「ああっ!」
尻を強く叩かれスコールは声を上げる。艶めいた、嬌声を。雄に媚びる、喘ぎ声を。
かつての自分になかったマゾヒスティックな面。それに動揺しつつも、与えられる刺激や快感に思考は呆気なく流され溶けて行く。
疑問を疑問として認識出来ぬまま、スコールは一夏によって躾けられていく。決していいようにされないとそう思っても、ペニスの一突きで、尻を叩かれるだけで、それはあっさりと崩れ去る。
代わりに、この相手にもっと愛されたい、もっと抱かれたいという欲求が湧いてくるのだ。そこには、捨て去ったはずの女がいた。いや、人として幸せを求める弱い自分がいた。
「おい、締まりが悪くなってきたぞ。頑張って締め上げろよ。じゃないと出してやらないぞ?」
パシンッと乾いた音が響く。加減なく振り下ろされた手が赤くなっているスコールの尻肉へ容赦なく襲い掛かった音だ。
「はあんっ! や、止めて……。も、もう止めてぇ……」
自分が壊されていくのを自覚し、スコールは恥も外聞もなく涙や鼻水を流しながら声を絞り出す。
分かっていたのだ。このままだとかつてオータムが忠告した事になると。
“自分”が“自分”でなくなる。その正しい意味をこの時スコールはやっとはっきりと認識出来たのだから。
「何言ってんだよ。止めて欲しいなら自分でチンポ抜けばいいだけだろ?」
だが、そんな彼女へ一夏は容赦なく現実を突きつけるのだ。何せ今、彼はスコールの腰を掴んでいない。
それどころか動いてさえもいなかった。ただペニスを膣内へ挿入しスコールの尻肉を叩いていただけなのだ。
それを正しく認識させられ、スコールは弱々しくかぶりを振った。
「無理……無理なのぉ。私じゃ、もう今の状態から抜け出せないのよぉ……」
意識は今すぐに一夏から距離を取るべきと叫んでいる。なのに、肉体はずっとこうしていたいと吼えているのだ。
その弱音に一夏は口の端を吊り上げるやならばとゆっくりスコールの膣内からペニスを引き抜いていく。
「ぁ……」
それに対してスコールが無意識に喜びとも悲しみとも取れる声を漏らした。
膣肉をじっくりと刺激しながら抜けていくペニス。そのもどかしい快感に体を震わせながらスコールは抜けていくのを待った。
(もう少し……もう少しで抜ける……)
ペニスの逞しさや力強さが薄れていくのと反比例してスコールの理性が息を吹き返していく。
抜け切れば自分はまだ自分のままでいられると、そうスコールが思った瞬間だった。
「っと、足が滑った」
「~~~~~っ?!」
ニヤニヤと笑いながら一夏が再びペニスを奥まで突き入れたのだ。
その刺激でスコールは潮を吹き、白目を剥いて意識を失う。それを締め付けから感じ取った一夏は、スコールの体を片腕で保持するや顔を彼女の耳元へ近付けた。
「起きろ」
そう告げると腰を一度だけ強く打ち付ける。その衝撃と快楽で無理矢理スコールは意識を取り戻した。
その両足をガクガクと震わせながら、だ。
「ぁ……ああっ……」
(壊れていく……壊されていく……。私が、私の中で崩れていく……)
オータムやマドカはゆるやかだった変化。それをスコールは一気に行われていた。
今や世界最強の男となった一夏によるセックス。更に二種類のナノマシンも加わった事でもうそれは女である以上誰も勝てない勝負となっている。
今、スコールは女に生まれた事を後悔していた。せめて男であればこんな想いをせずに済んだのにと、そう強く思って。
「どうした? 大人の余裕は無くせって言ったけど、子供みたいに怯えろとか震えろとは言ってないぜ?」
「お、お願い……。わ、私が悪かったわ。だから、もう……解放して……。私が今の私でいられなくなるぐらいなら……死んだ方がマシよ……」
惨めに、みっともなく、ある種命乞いよりも無様なそれに一夏は憐みを抱いたような表情を浮かべる。
「そこまでか。そっか……」
声もどこか同情の色を宿しているように聞こえ、スコールは安堵した。例え生き長らえるとしても、今の自分でなくなるぐらいなら死んだ方がマシだと心から思っていたからだ。
(もう、いい……。いっそ楽になるわ。私は私のままで死を選ぶ……)
自棄になり疲れた笑顔を浮かべるスコール。それを見て一夏は彼女の耳元へこう囁いた。
「じゃあ死ねよ」
「ぇ……?」
言われた言葉の意味を理解しようとした次の瞬間、スコールの子宮へ大量の精液が発射される。
その熱に、勢いに、何より幸福感にスコールは思わず叫んでいた。
「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!! 私が私でなくなっていくっ! こんなの、こんなので嬉しくなんてなりたくないのにっ! なのにどうしてっ! どうしてこんなに嬉しくなってしまうのぉぉぉぉぉっ!!」
始まりは悲鳴。それが徐々に歓声へ変わっていく。流していた涙が恐怖や悲しみから出ていたのに、気付けば感動や喜びからのものへ変わるように。
スコールから流れ出る全てがまさしくそれまでの彼女自身だった。まるで一夏に注がれた遺伝子情報がスコールのそれを変えていくかの如く彼女の中から亡国機業の彼女を追い出していく。
その終わりを告げたのは、一夏がスコールの事を不憫に思ってした行為だった。
「んっ?!」
優しく口付けられた時、スコールの中のナノマシンが最大のエネルギー供給を受けて激しく反応する。
それによってその日最大の多幸感を与えられ、スコールは再度白目を剥く程の快感を得ながら潮を吹いて意識を完全に手放した。
――さよなら……私……。
そんな事を、どこかで思いながら……。
「今日の試合の反響、どうです?」
「学園側はもう知ってるでしょ? 今日の事でかなり下準備は出来たと思っていいんじゃない?」
「世界の方も上々だよ。ま、ちーちゃんが正面切って負けたんだもん。ちーちゃんの事をよく知らない人達はともかく、知ってる人は言葉がないんじゃないかな? 何せ弟が相手だろうと手を抜かないって分かってるだろうし」
束のラボで彼女と話し合うのは楯無と真耶だ。話題は当然一夏と千冬の試合の結果がもたらした状況の変化だった。
学園の生徒達は皆一様に一夏への評価を急上昇させていたし、国際情勢もISへ関わって一年にも満たない一夏が現役を退いたとはいえ千冬を負かした事は大きな衝撃として受け止めていた。
その対処に彼女達はつい先程まで追われていたのだ。それらも全て彼女達の企てる計画のために。
時刻は既に午後九時を過ぎており、本来であれば真耶は帰宅の途に就いて、楯無も自室で寛いでいる頃である。
それでも二人がここへ来ていた理由は、他ならぬ密かに温めてきた計画を実行に移す時が迫ったためだ。
「それで束さん、いつ頃行動を起こします?」
「そうだねぇ……まっちゃん、いつ頃がいいかな?」
「本格的な行動は来年度がいいかと。ただ、前段階として年明けに三年生を狙った企画を行うべきですね」
「ん。じゃ、なっちゃん」
「はい、早速明日にでも立案しますね。あっ、そうだ。あの、一夏君に生徒会も掌握させたいんですけど……」
「じゃあ、そっちは私が動くよ。一人は本音さんだもの。きっと彼女も一夏君も想いを通じ合わせてくれるはずだから」
魔女の集まり。オータムは三人の事を眺めながらそう思った。ただ、そういう意味では彼女も十分魔女と言えたが。
(スコールの奴、今頃どうしてるかね? 一夏の女になったか、あるいは……)
そこでポツリと呟いた。
「されたか、だな」
ニヤリと笑うオータム。かつての想い人を奈落の底へと叩き落す切っ掛けとなったにも関わらず、彼女は悪びれもせず笑うのだ。忠告はしたと、そう心の中で告げて。
同じ頃、一夏の部屋では箒達一年生が勢揃いしていた。その視線は行為に使われていないベッドで眠る全裸の千冬へと注がれていた。
「一夏もいい性格してるよね、今夜は放置だなんて」
「それぐらい楽しみにしているんだろう。私はそう思うぞ」
「そうですわね。織斑先生ならそれぐらい焦らした方がいいでしょうし」
「だからってここまでする? 試合で気を失ったのに、そこから更に束さんの睡眠薬よ?」
「で、でも、そうしないと織斑先生は性欲が酷い事になるって」
「そういう事だ。まぁ、私も少々やり過ぎな感はある。何せ明日の朝まで何をしても起きないと言っていたからな」
そう言いながら箒は千冬の突起と化した乳首を突く。その刺激に眠ったまま千冬の体がピクリと動いた。
「ホント、束さんって恐ろしいわよねぇ。あたしでもこんな事思いつかないわよ」
呆れながらも鈴が箒が刺激したのとは逆の乳首を摘む。強めの刺激だったようで千冬の体が大きく動く。
「これも一種の睡眠学習なのでしょうか?」
小首を傾げてセシリアが千冬の首筋をゆっくりと舐め上げていく。それさえも快感なのか千冬のヴァギナが愛液をトロトロと流していた。
「そうとも言えるかもね」
苦笑してシャルがセシリアの反対側をゆっくりと舐め上げる。千冬のヴァギナからの愛液の量が増した。
「こんなにも充血しているとはな。きょ……先生もかなり辛いだろう」
同情するような眼差しを送ってラウラはクリトリスを優しく舐め回す。千冬の体が大きく動くも、それをすかさず箒達が押さえる事で事なきを得た。
「で、でも、さすがにこれはちょっとイキ過ぎじゃないかな?」
だらしなく愛液を垂れ流すヴァギナを広げるようにしながら簪は眉を顰める。千冬の膣内がよく見え、そこで簪はあるものの存在を確認して頷いた。
「長い栓は使えないよ」
「そうか。なら蓋にしておこう。鈴」
「はいはい」
「ふふっ、織斑先生もそういうところは乙女なのですわね」
「奪って欲しい相手がいたんじゃない?」
「もしくは、奪って欲しくなった相手、か」
「じゃあ、その望みは叶うね」
ここに誰かいれば彼女達をこう評しただろう。小悪魔の群れだと。
何しろ彼女達は眠り続ける女王を愛撫し続け、その体を極上の状態へと仕上げていくのだから。
全ては愛する男のために。そして目の前の存在を自分達と同じステージへと乗せるために。
そんな一種のサバトのような事をしている裏側で、クロエはフォルテとレインと共にある場所へ向かっていた。
その手にはレインの服がある。それは一夏から頼まれた物だった。彼からレインとフォルテを連れて男子更衣室へ来て欲しいとの連絡を受けたのだ。その際、レインの服を何でもいいから一着上下揃いで貸してもらうようにとも言われたのである。
「一体何の用ッスかね?」
一夏が何のために自分達を呼んだのか予想出来ないフォルテはレインへ視線を向けた。
レインは先程から、クロエから一夏の伝言を聞いて時から複雑な表情を浮かべている。
「……多分だけど、叔母がいるのよ」
「レインさんの……え?」
「私もそう思います。だから比較的体格や背丈が近いレインさんの服を用意して欲しいのでしょう」
想像していなかった言葉に瞬きをするフォルテと違いクロエは淡々とレインの予想に同意した。その視線を手にした服へ落とし、それが意味する事を想像する。
「脱走を束様が許すはずはありません。なら、これは意図的なものでしょう」
「裸でラボから出て行った……ね」
「それで一夏君と、ッスか。あれ? それって……」
自分の言った事の意味する事に気付きフォルテが思わず足を止める。その視線の先にはレインとクロエだけでなく、男子更衣室のドアが見えている。
「きっと、もう叔母も堕ちたでしょうね」
「その答えはこれで分かります」
クロエがドアを開けるとそこから三人には嗅ぎ慣れた淫臭が漂ってくる。もうそれだけで答えだった。
更に三人の視界に入ってきた光景が駄目押しだった。
「ん? ああ、来てくれたか。悪いなクロエ。レインとフォルテもありがとな」
笑みを浮かべて長椅子に座っている一夏。その股倉に顔を埋めるようにスコールがフェラチオをしていたのだ。
「グッポグッポっ! っぷは……レロレロレェ~……」
「叔母様……」
「うわぁ……見事なまでに目がイっちゃってるッス……」
最後に見た時のような凛々しさなど欠片もなく、蕩けた目でペニスへ奉仕を続けるスコール。そんな変貌にレインとフォルテは憐憫の情を抱く。
ただクロエは二人とは違い特に反応する事もなく一夏へ手にしていた服を差し出していた。
「一夏さん、どうぞ」
「ありがとう」
「いえ。それで、この人は今後どうするのですか?」
「ん? ああ、そうだな……」
クロエの問いかけで忘れていたと言う風に後ろ手で頭を掻く一夏。彼の中ではまだスコールは愛情などの好意的な気持ちを抱ける相手ではなかったのだ。
「なぁスコール。あんたはこれからどうしたい? 選んでいいぜ。組織に戻りたいなら束に頼んで何か手土産持たせてやるよ」
その発言にはレインとフォルテだけでなくクロエまでも息を呑んだ。
そしてスコールの奉仕が止まる。蕩けていた目付きがゆっくりと鋭さを戻していき、一夏の事を見上げる。
「……そんな事、聞くまでもないでしょ?」
「そうか。で? なら聞かせてくれよ、お前の答えを」
そこで沈黙が訪れる。無言で一夏を見上げるスコールと、どこか冷たい目でスコールを見下す一夏。それとその光景を黙って見守るクロエ達。
どれ程黙っていたのだろうか。やがてスコールが目を楽しげに細める。そしてその手で一夏のペニスを優しく握ると妖艶に微笑んだ。
「……それが答えか」
「以外にないわよ、ダーリン」
「「「っ?!」」」
スコールの口から出た呼び方に三人が息を呑み、一夏は息を吐くと呆れたように笑みを浮かべた。
「ったく、仕方ないな。分かった。じゃ、クロエ達にさっきの宣言を聞かせてやれ」
「ええ、分かったわダーリン」
嬉しそうに返事をするとスコールはクロエ達の方へ向き直る。そこで三人は見たのだ。
「私、スコール・ミューゼルは、織斑一夏の女になります。ダーリンのためにこの身を捧げ、ダーリンのために生きます」
ヴァギナから大量の精液を垂れ流し、心の底から幸せだと言うようなしまりのない顔で笑う、壊れた女の姿を。
「って、事だ。これからは仲良くしてやってくれ。年齢もあって子供を産むのは厳しいかもしれないけど」
「でしたら束様に相談してみてはいかがでしょう? きっと何とかしてくださるはずです」
一夏の言葉にスコールの表情が曇るのを見てクロエがそう口を出した。クロエは一夏の事を主人として見ている部分がある。それ故彼が言った事を誰よりも素直に受け入れる事が出来ていた。
もうクロエにとってスコールは自分と同じ立場だと受け止めていたのだ。
「……一応聞くだけ聞いてみるか。スコール、お前はどうなんだ? 俺の子、欲しいか?」
「……許されるのなら」
「許すも許さないもない。お前が俺の女になったならお前の罪は俺の罪だ。一緒に背負ってやるよ」
「ダーリン……」
オータム相手にも器の大きなところを見せた一夏は、自分の女となると改めて宣言したスコールさえも受け止める度量を見せた。
そしてそれはレインの心さえ打つ。叔母であるスコールの事は彼女も気に病んでいなかった訳ではない。それでも一夏の敵ならと、そう思って心を鬼にしていたのだ。
「良かったわね叔母様。ダーリンはこういう人なのよ」
「ええ……ええっ! ありがとうダーリンっ!」
感謝するように自分へ抱き着くスコールを一夏は優しい笑みを浮かべて抱き締めた。
「スコール、とりあえずシャワーを浴びてこれに着替えろ。レイン、フォルテ、今夜はとりあえず二人の部屋にスコールを匿ってくれないか?」
「ええ、いいわ」
「そういう事だったッスか。了解ッス」
二人の言葉に感謝するように笑みを返し、一夏は視線をスコールへ向けた。それに小さく頷き、スコールは着替えを手にシャワールームへと向かった。
「クロエ、千冬姉の方はどうだ?」
「問題ありません。今は一夏さんの部屋で眠っています」
「そうか。マドカは?」
「簪様のご厚意で簪様の部屋にいます。何でも一夏さんへ見せたというあにめ? それを見ているそうです」
「へぇ、マドカがなぁ」
意外そうに、だけど嬉しそうにそう言って一夏は笑った。
その後、スコールの事をレインとフォルテに託して一夏はクロエと共に更衣室を出た。
「一夏様」
「ん?」
通路を二人手をを繋いで歩く一夏とクロエ。その姿はどこか恋人と言うより兄妹のように見える。
「千冬様も、奥さんにするのですか?」
その問いかけに一夏は意味ありげに笑った。
「それを決めるのは俺じゃないな」
「そうなのですか?」
「ああ。選択権は千冬姉に委ねるつもりだ。それこそ……」
後年、その後の言葉を言った一夏の顔をクロエは一生忘れないと思ったと語る。
「さっきのスコールみたいに、な」
一種の狂気を孕んでいるかのような、そんな笑顔を……。
スコールさんは即堕ち二コマより少し頑張った程度で陥落。まぁ、一人だけ凌辱される前の対魔忍状態だった故仕方なし。
これで一夏は最後の砦でもあった愛情や好意を抱いていない相手は抱かないを崩されてしまいました。
……まぁもうその片鱗はオータムで見えてたので納得して頂けると幸いです。