※この作品はR-18です。

最低無敵の霊能チン〇、ネギま世界で無双する   作:人工シメサバ三号

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近衛近右衛門の失敗

麻帆良学園の土曜日。

学園都市で学校が休みだから街は静か――という事もなく、

朝の通学ラッシュが無いだけで

むしろ、授業が無い日という事で一段と賑やかになる。

 

拠点としてビルを手に入れた翌日、横島は朝から街に出ていた。

若々しいパワーに溢れた喧騒に包まれている街は、

人の少ない時間に見たものとはまるで別な場所だ。

日本の中ではあるが、魔法使いが管理している治外法権の街だ。

ルールから違う。

学生でも学園側に届け出を出せば、店を出してもいいのだ。

ほとんどがフリマの延長程度のものだが、稀に本気の店もある。

 

その一つであり、代表格でもあるのが「超包子」である。

ワンボックスのワゴンを改造した屋台風の店で、

屋台の前に椅子とテーブルの置かれたオープンカフェ方式で本格中華が味わえる

コスパの良さと味で評判が高い。

 

『あ、古菲さんだ』

「ん、知り合い?」

『はい、クラスメイトです』

「へー、これまた可愛い子だなぁ。

 君達のクラスってレベル高すぎじゃないか」

 

褐色で小柄なチャイナドレス娘が手早く料理を運んでいる姿が見える。

午前中の微妙な時間ゆえに、まだ客もそう多くない。

チャイナドレスの横のスリットから見える太ももに釣られて

横島はこの店を利用する事に決めた。

この店の利用客としてそう珍しくも無いパターンだ。

超包子の常連は大体が、「味のファン」「店主のファン」

「オーナーのファン」「ウィトレスのファン」に大別されるのだ。

ウェイトレスのファンは味のファンの次に多い。

 

「いらしゃいネ。

 あら、あんまり見ないお兄さん。

 初めてカナ?

 ご注文は?」

「おっと、こっちも可愛い。

 凄いな、可愛い女の子だけでやってるのか、ここ」

 

ワゴンの窓口に注文に行くと、応対してくれたのは黒髪お団子の美少女だった。

さよが挨拶しているが、当然返事は無い。

 

「フフ、そんなに褒めても安くならないヨ」

「いや、お世辞じゃないんだけどな。

 炒飯と麻婆豆腐とチンジャオロースと

 小籠包と蟹と玉子のスープと君のお名前と連絡先を頼めるかな」

 

実は昨夜、刹那と楓が来てくれなかったので

横島は金策に行っていた。

街の浮遊霊や地縛霊に聞けば悪い事してる奴はすぐに見つかる。

麻帆良の街は魔法使い達が頑張っているので、悪質な輩はほぼいないが、

他の街なら簡単に見つかる。

懲らしめついでに金品を頂いただけだ。

おかげで今の横島は懐に余裕があり、食べたいだけ頼める。

 

「す、凄い食欲だネ、最後の以外は承たヨ、お兄さん。

 ワタシは超鈴音(チャオ・リンシェン)

 この超包子のオーナーでもあるから、贔屓してくれると嬉しいナ」

「するする。

 毎日通いつめちゃう。

 でも、君みたいな若くて可愛い子がオーナーなんだ?

 凄いな、商才もあるんだね」

 

オーナーを名乗ったからだけではなく、

客商売だから、と感じさせないにこやかな応対に感じ入り

横島は素直に感心していた。

無責任なバイトの若いねーちゃんだと、こんなナンパ客に

眉を顰めたり気持ち悪がったりする事もある。

さよ情報で中学二年生だと分かっているので、

増々その凄さが際立つ。

 

「お兄さん、ナンパは困るナ。

 貴方のような人に贔屓して貰えるのは嬉しいガネ」

 

やんわりと押し返す超に対して、横島もにこやかに代金を払って引いた。

さすがに横島もこの状況で本気のナンパはしない。

ナンパしていい状況かどうかぐらいは経験則から学んでいる。

 

「中二でもうオーナーかー。

 親から貰ったとかじゃなくて、自分で立ち上げてってマジで凄いな」

『超さんは学年トップの成績で、様々な発明もしてるし、

 麻帆良の最強頭脳なんて仇名もあるぐらいですから』

 

何故か嬉しそうにさよが教えてくれる。

クラスメイトの事を話したり出来るのが嬉しいのだろう。

 

「身体も鍛えられてたな。

 おそらく中国拳法だろうが、あの年にしてはかなりの練度だ」

『そうなんですか?』

「あっちのウェイトレスの子とほぼ互角と言った所か。

 さよちゃん達のクラスは凄い子ばっかりだね」

 

えへへーと笑うさよを撫でて、簡易なテーブルに着く。

幸いにも可愛い女の子がレジとウェイトレスをやっているので、退屈はしなかった。

可愛い女の子が働いてるのを見てるだけで癒される程度に、

横島は大人になっている。

 

「お待たせアル。

 炒飯と麻婆豆腐と青椒肉絲と小籠包と蟹と玉子のスープよ。

 お客さん、一人で食べきれるノカ?」

「残したりしないから大丈夫だ。

 あ、もし、無理って言ったら一緒に食べてくれるなんてサービスが……」

「そんなのないアル。

 自分で食べる量も把握できないような男は最低ネ」

 

言葉とは別に古菲はにこにこしている。

残す男が最低なら、健啖家に好感を持つタイプなのかもしれない。

 

「それじゃあ、ごゆっくり」

「おう、いただきます」

『わー、美味しそうですー』

 

しっかりと手を合わせ、全ての料理を8:2でちょっと分割する。

2の方はさよへのお供えだ。

こういうのは気持ちだ。

公家や三方に乗せて捧げたりしなければ、お供えじゃないという事は無い。

 

「美味いっ。

 これは美味いな」

 

一口食べた後は、もう止まらなかった。

炒飯は干し海老のだしとほのかな醤油と焦がしネギが利いている、

麻婆豆腐は肉の旨味と甜面醤が引き立てあい、抜けるような辛味が刺激的だ。

青椒肉絲は牛肉の旨味に筍とピーマンがシャキシャキとした調和を奏で、

小籠包はほのかにゆず風味、どっしりと肉の脂、木耳コリコリと

三つ全てにほのかに味を変えてある工夫がしてある。

そして、スープは生姜の香る蟹の出汁が奇跡の出会いを果たしている。

 

がつがつとかき込み、スープをぐびぐびと飲み干す。

十代の頃と変わらないような勢いの食べっぷりだが、

実は変わっている事もある。

一粒も一滴もこぼさないで食べているという事だ。

マナーとしてはなっていないが、

こんなに旨そうに食える人間もそういないという食べっぷりである。

好感抱く者と嫌悪感抱く者と半々といった所か。

作る側からすれば嬉しい反応ではある。

 

「ごちそうさまっ!

 無茶苦茶美味かったよ。

 ありがとう」

「いやいや、お兄さんの食べっぷりは見てて気持ちよかったヨ。

 どうやら気に入ってくれたらしいナ」

「そりゃ、こんだけ美味いの気に入らない奴なんていないだろ。

 営業時間は決まってるの?」

 

本気で気に入ってしまった横島は、食器を返しに行くと

料理人にお礼を言い、連絡先を聞き出した。

ナンパではなく、営業しているか確認の為である。

それくらいに美味かったらしい。

お供えのおかげでご相伴に預かったさよも嬉しそうだ。

 

『食べてみたかったんですー』

 

と、にっこにこである。

お腹をさすりながら帰っていく横島を

超包子の面々が仕事をしつつも見送っている。

 

「イレギュラーか……敵対したら厄介だナ」

 

可愛らしい少女オーナーの目の奥は、表情のように笑ってはいなかった。

 

 

早めの昼食を終えた横島は、また街をぶらつき始めた。

遊び半分ではあるが、「目的」の為の行動でもある。

正確に言うと目的の為に何をしたらいいのかを探っている段階だ。

近所の幽霊から聞いた話の中で、いくつか調べてみようと思っている所はある。

しかし、まだ街の事もよく分かってない段階では早いと感じていた。

それで街を歩いているのだ。

美女でもいたらナンパしようというのもある。

 

ビルの方は昨日の内に早速、電気ガス水道を通し、

ベッドとタンスと冷蔵庫だけ買って

『改』『修』で、一気に住居として作り替えてしまった。

元がオフィスビルだったので、給湯室、トイレはあっても風呂は無かった。

当たり前であるが、無いという訳にはいかず

それで一々工事して貰ってたら時間がかかる。

それで文珠で一気に作り替えたのだ。

改めて文珠の利便性は反則である。

 

横島としては後は女の子を連れ込むだけ、なのだが

そうはいかなかった。

というのも刹那は珍しく日中から任務があるらしく、

昨日はその打ち合わせで来れなかったし、

楓は魔法を知ってしまい、知ってしまった事を知られたので

研修を受けさせられているのだ。

女といちゃつく予定でも無ければ家にいる意味がない。

 

『あれ、近衛さんだ……

 どうしたんだろう?』

 

周りから見えないのを良い事に

さよのスカートの中をふにふにと触ったりしながらだらだらと歩いていると

何かを見かけて彼女が声を上げた。

 

「知ってる子?」

『クラスメイトです』

 

さよの知り合いなど、クラスメイトか元クラスメイトぐらいだ。

視線の先には豪華な赤い着物を着こなしながら、

あまり愉快そうではない顔を浮かべている少女がいた。

暗い顔でベンチに座って溜息を吐いている。

服装の豪華さ、容姿の可憐さとのギャップに痛々しさすらあった。

 

「……さよちゃんに似てるな。

 さよちゃん、実は子持ちだったって事無い?」

『ええーっ、いませんよぅ。

 私、恋愛した事も無かったんですからっ』

 

怒った振りをして、さよがえいっと横島の腕に抱き着いた。

このへなちょこな力で抱き締めるのが精一杯の害意らしい。

 

「おお、気色ええ……じゃなくて、子孫って訳じゃないのか。

 まあそう言う事もあるか。

 それより、なんか元気ないみたいだな」

『近衛さん、いつもにこにこしてる子なんですけどねえ。

 何かあったんでしょうか』

 

と、こちらも釣られたように暗い顔になっている。

表情まで似ると、余計に容姿が似ている事が分かる。

しかし、優先順位としては気が沈んでる風の彼女の方だ。

横島はすたすたと彼女の前に近づいていった。

 

「こんにちは、近衛木乃香ちゃん。

 ちょっとお話させてもらっていいかい?」

「えっ、だっ、誰ですか……

 うちの事知ってる人……?」

 

近衛木乃香が戸惑うのも無理はないだろう。

見ず知らずの大人の男から声をかけられたら

大抵の女子中学生はこういう反応をする。

むしろ、不審者と思われようが平然と声をかけれる横島の方がおかしい。

 

「知っているといえば知っているかな。

 でも、知らなくても声をかけたと思う。

 君のような美しい女の子が落ち込んでいるのを見るのは辛すぎる」

「あはは、おにいさん気障やわぁ。

 そんな事、誰にでも言うとるんちがう?」

「いやいや、男なら誰だって同じ事思うって。

 今見せてくれた笑顔の為ならなんだってするのが、男って生き物なんだ」

 

わざとらしく格好つけて横島はおどける。

別にブサイクではないが、

二枚目とはいかない横島の気障でカッコつけたポーズは

見事に木乃香の顔に笑みを浮かべさせた。

木乃香の性格が人を疑ったり拒むのに向いてない事もある。

世の中に悪い人がいるのは知っているけど、

ほとんどの人はいい人だと信じているような子なのだ。

 

「お兄さん、本当にうちが暗い顔してたから来たん?

 面白い人やなぁ」

「そう?

 まあ、木乃香ちゃんが笑ってくれるならなんでもいいんだけどね。

 何かあった?

 あ、自己紹介しとらんかったな。

 俺の名前は横島忠夫。

 美女の笑顔を守る事を使命としてる男だ」

 

クルっと回ると、横島の手には花が一輪握られていた。

それをいかにも恭しく差し出す。

回っている隙にすかさず後方の花壇から霊波触手でもぎとったのだ。

ナンパする為に手品の練習もした事のある横島だ、

このくらいの芸当は朝飯前である。

 

「わぁっ、凄い。

 今の手品?」

「いい男は可愛い女の子の為にいつも花ぐらい常備してるんだよ」

「嘘やぁ。

 だって、これ、そこの花壇の花やんか」

 

そう言いつつも木乃香はちょっと機嫌良さそうに笑って花を受け取っている。

いい感触だ、と横島は木乃香の隣に座ろうとすると、

黒服を着た強面の男が六人もベンチの周りに現れた。

 

「あ、ええよ、ええよ。

 この人、悪い人じゃないと思うわ。

 時間までお話するぐらいええやん」

 

木乃香が言うと、黒服達はそれ以上は近づかずベンチを囲んだだけで突っ立っている。

普通のナンパ男なら威圧感で逃げて行ってしまうだろう。

だが、横島は全く気にもしなかった。

基本的に男は視界に入らないタイプなのだ。

 

本来ならば木乃香には刹那が常に護衛に付いている。

だが、今日はお見合いの為に学園長は

わざわざ刹那に任務を与えて、違う場所へとやっていた。

この後の事を後に知った学園長は、あまりの裏目ぶりに叫び声をあげたという。

余談である。

 

「木乃香ちゃんってお嬢様?

 こんないかついのがいつも周りに?」

「そんな事ないけど……今日は特別やからな」

「特別?」

「……うち、これからお見合いなんよ」

『ええーっ』

 

零してしまったのは横島の明るい雰囲気と、

よく知りもしない男だったからだろうか。

聞かせるような話じゃないと分かっているのに、

木乃香はうっかりと悩みを打ち明けてしまっていた。

 

「うちのお爺ちゃんがな。

 なんかお見合いさせたがんねん。

 うち、まだ中学生やし早いと思うんやけど……」

「見合いかぁ。

 それでこんな格好なんだな。

 凄く奇麗で可愛いけど、普段する恰好じゃないから何事かと思ってたよ。

 でも、確かに中学生でお見合いは早いな」

「そやろ?

 うちもそう言うてんけどお爺ちゃんが聞いてくれへんねん」

『悪いお爺ちゃんですねっ。

 孫のお見合いを勝手に決めるなんてダメですよ』

 

木乃香は元々大人しい性格で我儘を言わないタイプである。

周りに気を遣って愚痴も言わないようにしている。

それが今日だけは不思議な事に、

溜まっていたものをぶちまけてしまっていた。

初めは小さく不満を言っているだけだったが、

徐々にヒートアップしていって、

熱くいかにお見合いが面倒くさいかを語り始めた。

 

断るに決まってるお見合いをなんでせなあかんの、とか

うちかて好きな人見つけて恋愛した気持ちぐらいある、とか

読みたい本とかあるのに休みが潰れる、とか。

 

木乃香がぷんぷんと不満を言ってても、

横島は頷いたり、肯定したり、促したりと上手に聞き役に徹していた。

この程度はモテる為には必須の技能であるし、

木乃香の不満など可愛いものであったし、

容姿も可愛いから目の保養になるしで、横島からすれば嬉しい楽しいものだった。

美女、美少女と一緒ならば、この男はそれだけで満足なのだ。

 

「今からあるの、お見合い?

 そんなに嫌なら断ればいいのに」

「うん、そやけど……うちが断ったら迷惑かかるし……

 横島さん、ありがとな。

 誰かにこんなに愚痴言ったの初めてやわ。

 聞いてくれて嬉しかったえ」

『木乃香さん……』

 

うっかり愚痴を零してしまったが、

木乃香は生来優しい性格で周りを気遣える子だ。

それは横島にも発揮されるようで、にっこりと笑ってお礼を口にした。

その笑顔の可愛らしさが一押しとなり、

横島に一つの犯罪を決意させた。

 

「じゃあ、木乃香ちゃん、誘拐してあげようか。

 いや、違うな。

 許可求めたらおかしいか。

 ごめんな、木乃香ちゃん、誘拐させてもらうわ」

「え、それ、どういう事なん……?」

 

微笑み返してきた横島の言葉についていけず、

木乃香が戸惑っていると、突然風景が一変した。

 

大きい窓と内装に室内にいる事は分かる。

ついさっきまで外のベンチに座っていたのに、

全く一瞬のうちに室内である。

 

「へ?」

 

としか言葉は出ない。

ぽいーんと跳ねた事で、ベッドの上にいる事に気付き木乃香は草履を脱いだ。

訳が分からなくても、土足でベッドは無い。

内に根付いた躾は緊急時でも出てしまうものだ。

 

「木乃香ちゃんともっとお話ししたかったから、誘拐させてもらったよ。

 悪いね」

「ど、どういう事?

 さっきまで外おったやんな。

 どこなん、ここ……」

 

キングサイズのベッドの上で、女の子座りをして木乃香が呆然としている。

それはそうだろう。

一般人が『転』『移』されたのだ、理解できるはずが無い。

ここは昨日買ったばかりの横島の家の二階。

ベッドの置かれた寝室兼居間である。

まだベッドの他にはタンスと冷蔵庫しか無い、広さも相まって殺風景な部屋である。

 

「ちょっと、俺の力で転移したんだ。

 ワープしたって言った方が分かりやすいかな。

 まあ、手品だよ、手品」

「嘘や。

 こんな凄い手品ある訳無い……

 もしかして、横島さんってまほーつかいなん?」

「いや、俺は魔法使いじゃないよ。

 霊能者って分かる?

 退魔士とか除霊士とか呼び方は色々あるけど」

 

それなら分かるけど、と木乃香は妙な顔で首を傾げた。

関西呪術協会の娘である。

退魔士を名乗る人を見た経験はある。

お札みたいなのを使って手品めいた事をする人も。

しかし、こんな超常現象を起こすのは見た事も聞いた事も無かった。

 

「うちが知っとる霊能者とちがうえ。

 こんなん、まほーや、まほー」

「いや、俺は魔法使いじゃないんだって」

 

この状況に驚きはしても怯えていない木乃香に、横島が驚く。

危害を加える気はない、という意思表示をやるつもりだったのに

必要が無さそうである。

 

「とりあえず、何か飲む?

 と言ってもお茶と珈琲ぐらいしか無いけど」

「わー、冷蔵庫すっからかんやん。

 どうしたん?」

「昨日買ったばかりだからねー」

「あー、そうなんやー」

 

なんとも気の抜ける木乃香の態度である。

器が大きいのだろう、誘拐されてきた家でもうのんびりし始めている。

 

「数時間したら解放するから、それまでくつろいでて」

「……おおきにな、横島さん。

 お爺ちゃんには本当の誘拐やないって、言うとくわ」

「何言ってんだ、木乃香ちゃん。

 これは誘拐だよ。

 被害者が誘拐犯にお礼言ったらおかしいって」

 

そう言って横島がにやっと口角を上げると、

木乃香は朗らかに笑った。

 

「そやなー。

 でも、うちの為に横島さんに前科つくんは嫌なんや」

「警察にしっぽ掴まれるようなヘマしないって。

 これでも逃げ足は人十倍ぐらいあるから」

 

覗きとか下着ドロとか警察に追い回された経験は積んでいる。

全くダメな方向に自信満々な横島にけらけらと木乃香は転がった。

 

「横島さんっておもろいなぁ。

 知り合ったばっかりって気がせんわ。

 警察から逃げるのもまほー使うん?」

「いや、本当に魔法じゃないって。

 そうだ、証拠見せようか。

 そもそも木乃香ちゃんの事を知ってた理由でもあるし、

 さっきから五月蠅いし」

 

冷蔵庫から冷えたお茶のペットボトルを出して木乃香に渡すと、

横島はさよと手をつないだ。

この時点で横島は一つ誤解をしている。

木乃香が魔法使いと言った事と態度から魔法を知っている子だと思ったのだ。

木乃香は「おとぎ話の魔法使い」のイメージで話したのだが、

横島は「実際にいる魔法使い」の事を言っていると思っている。

さよを見せようとしたのも関係者だと思ったからだった。

 

「木乃香ちゃんは幽霊とか信じる?

 見た事は……」

「おったらええな、と思うけど

 見た事はないなぁ」

「そっか。

 今から見えると思うから、驚かないでくれる?

 すごくいい子だからさ」

「え、見えるの?

 うそぉ……」

 

隣に座った横島に手を握られ、ドキドキしていると

もっとドキドキする事が木乃香の目に映り始めた。

殺風景な何も無い部屋が見えるだけだった空間に、

徐々に色が付き始め、人の形が浮かび上がって来る。

 

まさか、本当に、嘘。

 

固唾を飲んで見つめている木乃香の前で、

はっきりと女の子の姿が現れた。

前髪を切り揃えたストレートロングな髪型も、

顔かたちも良く似た女の子が。

 

「こちら、相坂さよちゃん。

 分かるかな、木乃香ちゃんのクラスメイトなんだけど」

『こんにちわー。

 私の事見えますか?

 声聞こえます?』

 

木乃香の方は呆気に取られてしまっているが、

さよは目をきらきらさせて木乃香を見つめている。

念願叶ってクラスメイトと話せるかもしれないのだ。

わくわくが止まらない様子である。

 

「き、聞こえる……聞こえるけど……

 クラスメイトってどういう……あ、もしかして座らずの席の?」

『そうですー。

 出席番号一番、相坂さよですー』

 

抱き着かんばかりにさよは木乃香の肩を掴んで見つめている。

 

「ふぁぁぁ……ほんまに幽霊なんやねぇ。

 こちらこそよろしくなー。

 近衛木乃香いうんやえー」

『知ってますっ。

 私、ずっと皆と仲良くなりたかったんですっ。

 うう~、お話出来るなんて~』

 

うるうると泣きそうになっているさよと、

もう事態を飲み込んだのかおっとりと挨拶をする木乃香。

二人の容姿が似ている事もあって、横島すら妙だと思う空間が形成されていた。

 

「この子、、さよちゃんはずっと木乃香ちゃん達の教室にいたんだ。

 見えなかっただけでね――

 

横島は簡単にさよの事を木乃香に説明した。

60年前の幽霊である事、

ずっと誰にも気付かれず寂しい思いをしていたこと、

それでも誰も恨まず悪霊になる気配が微塵も無いいい子な事、

出来れば友達になってやって欲しいという事。

 

「そーいう事やったんかぁ。

 そんなんなるに決まっとるよー。

 っていうか、もううちら友達やんな」

『と、と、友達っ。

 横島さん、聞きましたっ!?

 今、木乃香さんが友達って……』

 

ふぇ~んと嬉し泣きを始めたさよを、

二人が優しい笑顔で見守っている。

木乃香はもうすっかり新しい友達が好きになってしまっていた。

 

「今、さよちゃんが見えてるのって横島さんおるからやんなぁ?

 うちらだけで遊んだりって出来ひんの?」

 

しばらく話をしている内に木乃香が質問してきた。

当然の疑問である。

横島の鍛えられた手に包まれてるのが気恥ずかしいというのもある。

教室にいるんなら教室で会話出来たらもっといいと思う。

こんなに友達欲しがってるなら、他の子達とも仲良くさせてあげたいとも思う。

木乃香は自分が見合いをすっぽかしている事も忘れ、

さよの事を考えていた。

 

今の三人の体勢は横島は左手で木乃香の右手とつなぎ、

右手でさよの左手を掴んでいる状態だ。

さよにも木乃香にも霊波を流しているから

木乃香にさよが見えているのであって、

まださよ単独で見えるほどの存在にはなっていない。

 

「今は無理だよ。

 さよちゃん特訓中だから、その内俺がいなくても見えるようにはなる。

 木乃香ちゃんかなり素質ありそうだし、

 木乃香ちゃんが霊能修行した方が早いかもだけどね」

『うう~頑張ります。

 こうして木乃香さんとお友達になれたんだし

 友達同士で遊びに行ったりしたいですっ』

 

特訓が辛いのだろう、さよは顔をしかめながらぎゅっと拳を握っている。

 

「特訓ってそないきついん?」

『きついっていうか、気持ちいいんですけど……

 味がちょっと……』

「味?」

 

遂に出来た同性の友達にテンションが上がってしまっていたさよは

うっかりと口を滑らせていた。

 

「横島さん、どんな特訓やの?

 うちも同じ特訓すれば早く見えるようになる?」

「一つは、こうやって霊波を凄く薄ーくして撫でるんだ。

 さよちゃんを傷つけないように、ここにいるって教える感じ。

 こういう形なんだよって刻むっていうか……」

 

そう言って横島の手がさよの腕をさすると

擦られた所が少し色づく。

目に見えるだけ、分かりやすい。

 

「わぁー、横島さんは触れるんやねぇ。

 うちはすかすかや、すかすか」

 

木乃香もさよに触ろうとするが、手がすり抜けてしまっている。

横島のやっている事は霊能者でも真似できる者のいない神業に近いので

しょうがないとしか言いようが無い。

 

「まあ、修行したからなー。

 俺だって最初から出来た訳じゃない」

「そうなんや。

 幽霊って見える人はそういう体質やと思うとったえ」

「見えるぐらいだと、生まれつき見える人もいるよ。

 でも、霊波とか霊気を操って、となると無理だ。

 超天才って呼ばれる人でも修行がいる」

 

はーっと感心している木乃香だが、この程度の話は

本来実家で聞けたはずの話である。

魔法から遠ざける方針のせいで、

霊能や符術、呪術からも遠ざけられた弊害がこういう所で出ていた。

 

「木乃香ちゃんがやる気ならまずは霊気を意識して出す所からだな」

「横島さん、教えてくれる?」

「いいけど、授業料高いよ?」

「高いの?

 いくらなん?」

「木乃香ちゃんの唇」

 

ぷーっと木乃香が吹き出した。

キザ芸を前に披露したせいで、もう横島のシリアス顔自体が

木乃香には面白く感じられてしまうらしい。

 

「恰好つけんといてよ、横島さん。

 わろてまうやん」

「今のは笑わせるつもりやなかったんだけどな。

 隙あらば口説くのは男の義務やから」

「義務で言うたん?」

「いや、本気で言うた」

 

また木乃香がけらけらと笑う。

 

『落ち込まないで、横島さん。

 あとで私がしてあげますからね』

「うう、さよちゃんはええ子や。

 存在感高める為だとしても嬉しいぞっ」

 

慰めているつもりか、さよが透き通った手ですかすかと横島の頭を撫でる。

そんな事をしていると、ようやく笑いのおさまった木乃香が

握っていた手を離して、どんと横島の胸板に頭突きをしてきた。

 

「っ木乃香ちゃん……?」

「……あんなぁ、横島さん。

 うち、嫌とはいうてへんえ?」

 

顔を伏せたまま、木乃香は密着して話す。

上げた後ろ髪と着物の襟の間に見えるうなじは、ピンクに染まっていた。

 

「木乃香ちゃん……」

 

寄りかかって来ている木乃香の頬を撫でる。

さらさらと親指で柔らかく熱いほっぺたを手の平で包むと、

木乃香は真っ赤にした顔を上げた。

 

優しくて面白くて幽霊見えるようにしてくれて友達作ってくれて

恰好良かったりもする大人の男。

恋とか愛とかに興味もあるし、一緒におったらドキドキするし、

キスぐらいええかな……これが恋って事なんかも分からんし確かめて見んと……

 

木乃香にとって、これが初めてのトキメキだった。

 

「んっ……」

 

ちゅっと、紅の塗られた薄い唇に横島が吸い付く。

すぐに離して、もう一度。

木乃香は目を閉じたまま、黙ってそれを受け入れた。

やがて、どちらともなく舌が触れ合った。

 

木乃香の傍に置かれていたペットボトルが床に落ちた。

誰も拾う暇を持たなかった。

 

「キスってこんなに気持ちええんやね……」

 

鼻をこすり合わせながら、木乃香が囁く。

 

「横島さん、何かしてへん?

 うち、おかしい。

 熱いし、気持ちええし、美味しい」

 

今度は木乃香の方から横島の口にむしゃぶりついてきた。

じゅるじゅると吸い付いて、

ぎこちなくも貪欲に横島の舌を探して小さな舌が蠢く。

 

 

「横島さん……横島さぁんっ……」

 

キスの合間に呼ぶ声にせつなさが混じり出す。

まとめた髪を揺らしながら、

木乃香の方が上になってベッドの上に二人転がった。

 

木乃香の霊力素養がありすぎたのだ。

本来、知り合ったばかりの男とこのような事をする子ではない。

体質のせいで超強力な媚薬と惚れ薬を飲んでしまったようなものなのだ。

 

「んんっ……」

 

寝転んでキスをしながら、横島が膝を立てた。

着物の裾を割って入り、太もも部分にしみを作る。

木乃香は古風にも襦袢の下には何も着けていなかった。

ぬるっと擦られて、木乃香が声を上げる。

そうして横島は目の前の小柄な少女を抱きしめて、ぐるりと上下を入れ替えた。

ベッドに木乃香を押し倒したのである。

 

「木乃香ちゃん……もう止まらないよ」

 

ベッドの上に寝転がらされて、キスした相手にこう言われては

奥手だった木乃香にも意味は分かる。

荒い息を整えもせず、木乃香は横島を見つめ返していた。

 

「うちは……誘拐されてんやから……犯人さんには逆らえんえ……」

 

赤い顔をして、木乃香が横を向く。

その言葉を許可として、横島の手が着物の裾に差し込まれた。

 

「はぁっ……!」

 

にゅるりとした粘液の存在を確認すると、分泌源であるクレバスを指がなぞる。

丘で粘液をぬぐい、むくむくと固くなった芽をつつき、

摘まんで指の腹で転がす。

そっぽを向いたまま、耐えるように声を上げる木乃香を

横島は間近で見つめて、首筋に唇を落とした。

 

「あっ、あっ、ぁぁぁぁ……」

 

しっかりと閉じられていた木乃香の瞼が痙攣する。

蠢く横島の手を太ももで挟み込むと、

何かに耐えるようにして震え、それから小さく息を漏らした。

木乃香の初めての絶頂だった。

 

「今、すごい気持ちよかったん何……?

 電気走ったみたいやったぁ……」

 

戸惑っている木乃香に横島が微笑む。

 

「今、イッたんだよ、木乃香ちゃん。

 オーガズムとか、絶頂とか分かる?」

「いまのがそーなんや……

 こんな気持ちええんやなぁ、そら大人も夢中になるわ……」

「もっと気持ちよくなるよ。

 ちょっとだけ我慢してくれればね」

 

もっと?と更に戸惑う木乃香から離れて、

横島は素早く服を脱ぎ去った。

最後までやる気だ。

息子も張り切っている。

 

「ひゃあぁぁ、そんな大きいん!?

 そんなん、そんなんて……」

 

木乃香が驚き目を見張る。

しかし、横島は淀みない動きで再び木乃香に覆いかぶさった。

 

「木乃香ちゃん入れるよ。

 最初は痛いけど、すぐ気持ちよくなるから我慢して」

 

横島から足を広げられ、あてがわれる。

迎え入れる為の汁をどろどろに出して、

なぞってくる棒状の肉を木乃香は図らずも潤していく。

気が昂って、見えてしまったのか思い出したのか、

木乃香はさよの名前を呼んだ。

 

「さよちゃん見んといて……

 うちのいやらしいとこ見んといてぇ……」

 

それが処女だった木乃香の最後の言葉だった。

ぐぐっと亀頭が少女の性器を成人させていく。

お尻の下に広がる着物の裾に、粘液に混じって血が垂れていく。

 

「ううううう……」

 

きつすぎて痛いぐらいに締め付けてくる穴を

横島はぐいぐいと無遠慮に突き進んでいく。

シーツを握りしめた手が白さを増していく。

半分ほど受け入れさせると、横島は動きを止めた。

木乃香は151㎝と小柄だし、刹那と違って純人間だ。

これくらいが限界だろう。

 

横島は前後に突き動かして、木乃香を揺すりたい衝動を抑えて、

内側から霊波ヒーリングを行っていく。

突っ込んだままなので処女に戻るような事は無い。

癒着していた肉を引きはがされた痛みを軽減し、癒すだけだ。

 

「ふあぁぁ……なんやの、気持ちええわぁ……」

 

癒される気持ちよさなので、性的な快感とは違う。

しかし、暖かさと優しさ、安らぎのようなものが身体に染み渡っていく。

優れた資質を持つ木乃香は人一倍その心地よさを感じているようだった。

 

「動いても大丈夫そう?」

「うん、ええよ……」

 

横島が少しづつ腰を前後し始める。

浅く、浅く、入り口付近だけを擦り、カリで粘液を掻き出すように。

それから木乃香のお腹を内側からごりごりと抉る。

 

「っっっ~~」

 

口を開けて、声にならない声を木乃香が上げる。

悦楽の波が木乃香の中で頂点と達し、横島の首にしがみついた。

清らかだった媚肉が横島を締め付ける。

木乃香の肉が出せと、注げと促してくる。

その要求に素直に答え、横島は早めに木乃香の中に欲望をぶちまけた。

そして、その霊薬の投入が木乃香の歓喜をまた一段深く押し上げた。

 

「ああぁぁぁ~~」

 

木乃香の意識が飛んで行った。

震えながら横島に抱き着いて離れない。

こうして関東魔法協会の理事長の孫であり、

関西呪術協会の長の娘である近衛木乃香は誘拐犯の手に堕ちたのだった。

 

ようやく事態を知らされた刹那がよりにもよって横島に

「大事な人が攫われたから助けて」と電話をかけてくるまで、あと十分。

木乃香は幸せなまどろみに浸り、憂いの無い笑顔を浮かべるのであった。

 




木乃香の口調に苦戦しました
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