永遠亭に来てから6日目。
宛てがわれた部屋で目を覚ませば、両腕に違和感。
誰かにがっしり掴まれている。
右を向けば、至近距離に輝夜の顔。
よだれを垂らして気持ち良さそうに寝ている。
左を向けば、これまた至近距離にてゐの顔。
幼い顔に似合う安らかな寝顔。
………………起きれねぇ。
その後、起こしに来てくれた鈴仙ちゃんに二人共起こされ、俺も漸く布団から出ることが出来た。
既に用意されていた朝食を食べ、食器の片付けを手伝い、暫くしてから診察室に向かう。
今日は耳鼻含む、呼吸器の診察。
とは言えど、やることは少ないので午前中で終わった。
鈴仙ちゃんと昼食を作り、永遠亭のメンバー全員と昼食をとる。
その後、次の四日間で誰が俺とヤるかの順番決めじゃんけん大会が開催。
能力以外は何でもありのじゃんけん大会。
結果は輝夜、てゐ、永琳、鈴仙ちゃんの順番。
今日はヤるのは休みらしい。
診察も無く、輝夜、てゐ、鈴仙ちゃんは出かけ、永琳は研究で部屋に籠もった。
暇だったので庭の掃除をしていたら空から美少女が急降下してきた。
背中に黒い翼をはやした黒髪のショートカットの女の子。
「ちょ、ちょっと良いですか!? お名前を教えて貰っても!?」
俺を見つけるなり、上空からダイブし、地面に激突する寸前で止まったその娘はいきなり名前を聞いてきた。
「も、杜屋慶次ですけど……?」
「み、みみみみ、」
耳?
「見つけたぁァーーーー!!! 漸く! 漸くですよ! 貴方が噂の外来人ですね!? 良ければ今からしゅざっ」
めっちゃデカい声でそう叫んだかと思えば、庭でノンビリしていた兎、イナバ達からのタックルを顔面に受けた。
「あだっ!? ちょっ、待っ、いだっ!?」
モフモフの兎とはいえ、妖怪の全力タックル。
流石に痛いらしい。
…………そろそろ可愛そうになってきたのでタックルして地面に着地した一匹のイナバを抱きかかえる。
あ、やっぱり凄い毛並みが良い。
ゆっくり優しく撫でると、気持ちよさげに目を細める。
それを見た他のイナバ達が自分にもやって欲しいのかタックルを止めてワラワラと集まってくる。
「あややややや、助かりました。 兎の脚力って意外と侮れませんね。 まあ、それはさておき、取材させて下さい!」
取材?
縁側に座り、イナバを一匹一匹順番に撫でながら、空から下りてきた娘、烏天狗の射命丸文さんからの取材を受ける。
因みにイナバ達は一列になって順番待ちしている。
他の場所からも集まって来るので列はどんどん長くなっているが。
白い兎の中に人型になれるイナバ達が混ざっているので、中々にシュールな光景である。
あ、てゐも並んだ。
てか、帰ってきてたのか。
「スキマ妖怪からの話は噂混じりで聞いてましたけど、本当なんですねー。 貞操観念逆転世界ですか。 いや〜、行ってみたいですねー。 そしたらハーレムじゃないですか。」
「いや、一夫一婦制が基本だから無理だと思いますけど。」
「あやや、じゃあ良いです。 でも慶次さんからすればハーレムなんですよね?」
「そうなりますね。 いやぁ、一度は夢見たハーレムなんで嬉しいですけど。」
「なるほど。 女のロマンならぬ男のロマンと。」
そう言いながら手帳に書き込んで行く文さん。
撫でていたイナバを下ろし、次のイナバ………人型の方か。
胡座をかき、その上に座らせて頭を撫でる。
めっちゃ髪質良いな。
「ところで、もうここの住人とはヤりました?」
ニヤッと笑いながら指で輪を作り、そこに人差し指を抜き差しするジェスチャー。
笑顔で何聞いてくんだ、この人は。
「まあ、しましたけど。」
「おお! その時の様子とか聞かせて貰えませんか!? ただの興味なので記事にはしません!」
「いや、それは流石に……」
「私は別に良いけど?」
突然、後ろから声が聞こえ、振り向けば服がボロボロになった輝夜。
「輝夜!? いつの間に。 ってか、」
その手に持って引きずってる人型のは何?
「これ? 私が出かけた理由よ。 帰ってきたのはついさっき。」
「ああ、妹紅さんですか。」
もこう、という名前らしい。
「そうそう。 ちょっと賭けをしてたのよ。 私の勝ちだけどね。」
賭け(物理)ですね、分かります。
「ってか、本当に良いのか?」
「良いわよ。 だって自慢したいじゃない。」
「聞いたのは私なのに腹立ちますね。」
「あら、それはごめんなさいね。」
わざとらしく口元を手で隠し笑う輝夜。
「それじゃあ、私はちょっとやらなきゃいけない事があるから。」
「分かった。」
そう言うと輝夜は角を曲がって消えた。
…………てか、足持って引きずるのは止めて差し上げろ!
そうじゃなくても、せめて仰向けにしてやれよ!
しかも角曲がる時にがっつりぶつかってたぞ、あの人!
「じゃあ、許可の出た輝夜さんのお話、聞かせて下さいな!」
文さんもスルーするし。
「なるほど。 これが強い嫉妬の感情ですか。 地底の橋姫がパルパル言うのも分かる気がしますね。」
話し終えた後、そんな事を言ってきた。
「ぬあぁーーー!! 秋にならないとヤれないとか生殺しも良い所じゃないですかぁ!!」
どうやら藍さんの言ってたスケジュールではこの人の順番は秋らしい。
ちょうど半年くらい先か。
「………………ふぅ。 さて、そろそろお暇させて貰いますね。 今回の記事が出来上がったらお持ちします。」
「あ、はい。 よろしくお願いします。」
切り替え早いな。
文さんはバサッ、と翼を打ち鳴らし、空へ去って行った。
イナバの列はまだ続く。
「た、ただいま帰りましたぁ〜〜。」
かなり疲れた様子の鈴仙ちゃんが薬売りから帰って来た。
その後ろに鈴仙ちゃんと同じ様にウサ耳をつけた女の子が二人。
青髪、青服で杵を担いだ子とオレンジ髪のオレンジ服で帽子を被り、へそを出した子の二人だ。
「おお、本当に男がいた。」
「鈴仙ちゃん? この二人は?」
「…………私と同じ、元月の兵士です。 まさか、耳のヨレヨレ度でバレるなんて。」
「だって珍しくピンと立ってたし、鈴仙、隠し事下手なんだもん。」
どうやら、二人共鈴仙ちゃんとは知った仲らしい。
「えっと、上がって行きます?」
「いやいや、事実確認と顔合わせに来ただけだから、気にしなくて良いよ。 私は清蘭。 人里近くで団子屋やってるから今度来てよ。」
「私は鈴瑚。 同じく人里近くで団子屋やってるよ〜。 因みに売上は私の方が上。」
清蘭さんと鈴瑚さんね。
何か睨み合ってるけど、まあじゃれ合いみたいなものでしょ。
「ハァ。 …………まぁ、純狐さんに出会わなかっただけ今日は」
「あら、私がどうかしたのかしら?」
ギギギギギ、と擬音がつきそうな感じで後ろを振り向く鈴仙ちゃん。
そこに居るのは金の長髪をウェーブにした、中国の伝統的な服のようなものを着た女性。
後ろには尻尾のような紫の何かがある。
「じゅ、純狐さん?」
「ええ、そうよ。 鈴仙ちゃん。 来ちゃった♪」
「じゃ、じゃあ鈴仙、私たち帰るから!」
「ごゆっくり〜。」
「あっ、ちょっ、逃げんな!」
無情にも清蘭さんと鈴瑚さんに逃げられた鈴仙ちゃんはその場でガックリ肩を落とした。
「えっと、その方は?」
「………………神霊の純狐さんです。 純狐さん、こちら現在噂の外来人の杜屋慶次さん。」
「ああ、スキマ妖怪が言ってた人ね。」
スッ、と今まで細めていた目を見開き、俺に顔を近付けてジッと見てくる。
突然の事とジッと見てくるだけで何もして来ない事に不気味さを感じるが、何となく目を逸したらいけない気がしたので同じくジッと見つめ返す。
徐々に威圧感が増していくが、それでも目を逸らさない。
冷や汗が止まらず、すぐにでも逃げ出したいが、意地でその場に立つ。
そうやって見つめ合っていると、純狐さんの手が動き、俺の頭の方にのびて来た。
咄嗟に後ろに下がろうとする体を抑える。
「ふふふッ、強い子ね。 スキマ妖怪も良い拾い物をしたじゃない。」
そう言いながら笑って俺の頭を撫でてきた。
威圧感は霧散し、今はただの優しいお姉さんみたいな雰囲気だ。
冷や汗を拭い、いつの間にか荒れてた息を整える。
「男の子なのにこんなに芯が強い子は中々いないわ。 誇って良いわよ。」
「は、はあ。」
どうやら気に入って貰えたらしい。
「じゅ、純狐さん!? 何を!?」
フリーズしてた鈴仙ちゃんが動き出した。
「ちょっと試しただけよ。 そして、この子は合格した。 それだけの事。 私の純化した敵意を持った霊力に耐えられるなんて並大抵の精神力じゃ無理よ。 もしかしたら、そういう血筋なのかもしれないわね。」
最後だけボソリと何かを呟いた純狐さんはそのまま玄関の外に出た。
「あ、あれ? 帰るんですか?」
「ええ。 良い物を見させて貰ったし、この家の主に怒られちゃいそうだから。 また今度ね、鈴仙ちゃん、慶次くん。」
そう言うとその場からフッ、と消えた。
鈴仙ちゃんと顔を見合わせていると、ドタドタと永琳と輝夜、てゐが走って来た。
二人共俺たちの姿を見つけると詰め寄って聞いてきた。
「何があったの!?」
「師匠、純狐さんです。」
「純狐? 随分とはた迷惑な事を。 何事かと思ったじゃない。 それで、純狐は何であんな霊力を?」
「何か俺を試した、とか言ってたけど。」
「目をつけられたって事ね。 ケイは渡さないんだから!」
「それはそれで戦争になりかねないので勘弁して下さい。」
「ブン屋にバレたしね。 最悪、ウチとその他で全面戦争だよ。」
怖っ! そんなに男に飢えてんの!?
キャラは紺珠伝までは把握してます。
天空璋は現在勉強中です。