FGO性癖同人シリーズの1作目。
バニヤンで『赤ちゃんプレイ~胎児帰還プレイ~』
unbirth要素あります。
初投稿ということで、短編まるまる一つ載せます。
次回以降は、短編を段階分けで投稿していく予定です。
(前置き、前戯、セックス、というような)
バニヤンはカルデアの周回メンバーの一人として活躍してくれている。
最初の頃は上手く距離を縮めることはできなかったが、今ではお互い自然に笑えるようになっている。
俺は、新しく召喚されたサーヴァントに対して、積極的に信頼関係を構築するのだが、その時からバニヤンの部屋を訪ねたり、二人で食事をとることが習慣のようなものになっていた。
カルデアに所属する様々なサーヴァントとの交流もあり、頻度は多くないが、二人で夜を越えることもある。
マスターとサーヴァント、常識として考えればその関係性には、不必要だろうという結びつきを俺は大切にしていた。彼らは影法師と自身を表現するが、その影法師としての彼らは機械ではなく、心がある。だからこそ、有限のこの日々の中に絆を育むことだって許されるはずなのだ。
俺とバニヤンが関係を持ったのは、何でもない日だった。どこか悲しそうな顔をしていたバニヤンに声をかけたのが始まりで、彼女は自分自身の価値について悩んでいるようだった。伝説にあるような力が発揮されないことなど、様々の話を聞いた。
彼女にとっては何かしらの証が欲しかったのかもしれない。「伝説とは人々に愛され、語り継がれたもの」という話をすると、「じゃあ」と俺と同じ身長になって俺に抱き着き、ベッドへと倒れこんだのだ。
最初ということもあって、挿入することはせず、前戯で終了した。据え膳食わぬは何とやら、それでも勢い任せでしてしまうのは、何かが違うと思ったのだ。振り返ればこの時すでにバニヤンは俺の中で大きな存在になっていたのだろう。
結局、挿入は2回目だった。それはバニヤンが最終再臨を終えた夜の事。彼女とのささやかなお祝いにケーキを食べ終えて、話していた時のこと、俺の太腿に対面になるように跨り、首に腕を回して、か細く静かな部屋に吸い込まれて消えそうな声で、真っ直ぐに目を見据えながら「ねえ、マスター。今度は最後まで……お願い」と言ってきた。その瞳のたおやかさに、今度は、きっと大丈夫だろうと思い、それを受け入れた。
ポール・バニヤンという少女は、まさしく女性であった。幼き体躯ではありながら、いじらしい心根で、いみじくもこちらの劣情を連れだしていった。
4度目辺りから互いに要領を得たのか、誘い合って、ゆとりのある夜が過ぎていくようになった。
彼女は必ず挿入を伴う快感を得ようとするわけではない。抱きしめ合っているだけで生まれてくるような、もっと朗らかで微かな快感を大切にしていた。
二人してとりとめのない話をしたり、お互いの好きなものについて話したり、感情が彩る肌をお互いに確かめ合う。彼女の好きなものが明かりとなって部屋を静かに照らす。そんな静かな時間を彼女は大切にしていた。
俺も彼女とのそんな時間を過ごすことのできる日々が幸せだった。
しかし、最近一つの悩みが無視できなくなっている。
――“絶対的な安心が欲しい”それがその悩みの正体だ。
頼光やブーティカといった安心感をもたらすサーヴァントと過ごしても、埋まることはなかった心の隙間だった。幸福は感じる、だがそれは一人の人間として独立した幸福だった。決して誰かに自分のすべてをあずけた際の安心ではない。
日常を取り戻す戦いの中で、いつ死ぬかもわからない恐怖の中で、取り戻すことの出来ないものを失って、それでも目の前の幸福で塗り固めたそれが溢れてきたのだろう。
ダヴィンチちゃんでも解決できないものだ。いくら幸福に沈めても、決してそれは振りきれない。マシュがそうしたように、向き合わなければならないものだ。
この悩みを解決するにはどうすればいいだろうか。安心を感じればいい。
安心を感じるにはどうすればいいだろうか。安心を感じた時を思い返せばいい。
今まで生きてきて最も安心していたのは、小さい頃に母親と過ごした時間だろう。きっとあの時間は母親と共有したものが世界だったはずだ。
ならばそれを再現するとすればどうするか。カルデアの情報で検索をかける。
すると出てきた一つの答えは『赤ちゃんプレイ』というものだった。しかしそれは極めて――。
少しばかりの逡巡に手を止めたが、この悩みを解決しなければいずれ多くの人に迷惑をかけることになる。そう言い聞かせて読み進めていった。
一通り読み終えて、仮に実践に移す場合、相手をどうするかという問題に突き当たる。
お互いをよく知っている相手であることが前提だ。そしてこれを受け入れてくれる相手でなくてはならない。
マシュは最もお互いを知っている一人だが、日々の激務だってある。あまり迷惑をかけられない。安心感をもたらすサーヴァントといっても、これを受け入れられる相手は極めて少ないだろう。彼女たちとは一人の人間として交流している。
他にすべてを曝け出している相手と言えば。
バニヤンなら――。そんな確証もない考えに、どうしたものか妙な自信があった。
今日の素材回収の際にバニヤンに約束を取り付けよう。
そろそろ素材回収の時間といったところで、履歴をすべて削除し、パソコンを閉じて席を立った。
素材回収が終わり、近くの水辺で各々が身体を清めたりしている。
バニヤンは脚を投げ出して、生い茂る木々を眺めていた。耕すことを考えているのかもしれない。だが、以前に雄大な大自然を破壊しつくした際に起こる諸問題を足りない頭で考えながら説明したから、別のことを考えているかもしれない。
隣に座って話しかける。
「バニヤン」
「どうしたの、マスター」
「今日だけど、部屋に行ってもいいかな」
「いいよ」
「ありがとう。じゃあ9時過ぎに」
二人になりたいときは、お互い声をかける。内容を聞かないのは野暮だからというより、お互いがその自由な時間が好きだからだ。そして会話が途切れた後のこの時間もお互い好きなようだった。
向こうではジークフリートが静かに揺れる水面を眺めていた。その揺らめきはアサシンクラスにチェンジしたスカサハ(普段は師匠と呼んでいる)が水浴びをして生まれたものだ。
静かな昼下がり、このしばしの憩いは最高の贅沢だ。知り得なかった世界がある。その知り得なかった世界に俺は強く惹かれていた。
それからカルデアに戻って、報告を済ませたり飯を食べたりして過ごした。
9時、バニヤンの部屋の前にいた。
一抹の不安が足を冷やすが、放置した場合を考えて足を踏み出す。
ノックするとバニヤンは出てきた。中に入れてもらい、コーヒーをお願いした。
バニヤンと二人のときはお互いにコーヒーだ。
湯気を燻らせたコーヒーが運ばれ、二人で向かい合う。いつも通りの位置だ。
「今日はありがとう」
「いいよ。役に立ててうれしい」
「今日は楽しかった?」
「楽しかったよ。ブーティカさんのご飯美味しかったし、一杯耕せたから」
「それはよかった。明日はブーティカさんとエミヤの二人でつくるらしいから楽しみだね」
コーヒーを口に含む。とりとめのない会話が、白んで消える湯気にまかれて部屋を満たしていく。
「私、ここにきていろんな人たちと関わったけどすごく幸せ」
バニヤンは来た当初に比べて様々な感情表現をするようになったと思う。ナーサリー達とも友達になれたようだし、何よりも彼女が肩寄せ合って暮らすことを良いことと言ったのには感動した。
「皆すごい人たちばかりだって改めて認識させられるよ。レオニダス王とかにも鍛えてもらってるし」
「大変?」
「大変だよ……。でも少しずつ変わってきたのがわかるから面白いよ。クー・フーリンとかにはあんまり無茶するなとか言われてるけど、少しでも力になりたいからね」
「マスターはすごいね」
お互いにコーヒーを一口。
「そうだ、マスター。今度どこかに行く時間ある?」
「明日は鍛錬の日だから、それが終わったら大丈夫だよ」
「じゃあ、ウルクにいってみたい。街の方から森の方まで」
「いいよ。一応ダヴィンチちゃんに許可もらっておくね」
「ありがとう」
夜も程よく更けたところで本題を切り出した。
「実はね、少し悩みを聞いてほしいんだ」
「いいよ」
それから俺はどういう経緯かを話した。バニヤンはコップを両手で握っていた。
「それで……そういうのお願いしてもいい?」
少し間が開いて「いいよ」の声が聞こえた。
「じゃあ、私が少し大きくなって、マスターを抱えればいいの?」
「うん、それでいいはず。ただ赤ちゃんをあやすようにって書いてあったから……」
得も言われぬ羞恥心が心臓を握り四肢が痺れる。
「わかった」
立ち上がった彼女は俺に後ろを向くように言った。
振り向いた先に立っていたバニヤンは白のブラウスに緑のロングスカートを着ていた。
それはいつかダヴィンチちゃんにお願いして作ってもらった霊衣だった。初めて二人で外出したとき着ていた服。どの大きさでも対応できるようにと、3メートルのサイズまで用意してくれていたもので、今着ているのはちょうど3メートルのサイズのものだった。
「いつもの恰好だと痛いから」
お披露目の際にはいろんなサーヴァントから称賛を受けた彼女がそこにいた。それにサーヴァントなのだから俺を抱えることなど先ほどまでの身長でも容易いはずなのに、わざわざ3メートルにまでなってくれていたそのいじらしさが彼女を照らしていた。
丁度その背後から月光が後光となって差し込んでいる。
儚げに彼女の髪を梳いて流れる心根の光に隠された、感情に彩られた柔肌は慈愛に満ちていた。彼女の脚の動きに合わせて揺れるスカートは時を刻んで、後ろ手に揺れる肩は気恥ずかしさを伝えている。
俺が固まっていると、彼女は腕を差し伸べて首を傾ける。
「……おいで」
その声に導かれるようにして足が前に出る。
静寂を歩んで彼女のもとへと辿り着くと、彼女は俺を抱き上げて、赤子を抱くようにして包み込んだ。
瞳は小さく震えていたが、微笑みを湛えていた。――ああ、こんな顔もするのだ。
少女は母親が子供に見せる表情をしていた。
慈しみ、そのすべてを受け止める心の音がいつもより明瞭に聞こえる。抱きしめ合って眠る時よりも深く、深く、聞こえる。
全身を包まれて伝わるのはぬくもりと彼女の呼吸によって上下する胸、そして一定に刻まれるリズムだった。目を閉じてしまえば安心が少しずつ身体に溶けていく。
彼女が歩みを進め始めたが、落ちることはないという安心があった。
彼女がベッドに腰かける。
「ねえマスター、どうかな」
「気持ちいい。すごくいい」
「そう」とだけ彼女は返事をして、また静けさに漂う。
今ここに言葉は必要ではない。お互いがそう感じているのが分かった。
調べたものとは大きく異なるが、それでも二人を満たしていた。
二人してどれほどの時間を過ごしただろうか。心地良い眠気がやってきた。
「マスター眠いの?」
「うん」
「それじゃあ寝てもいいよ」
「バニヤンが起きてることになるなら一緒に寝よう」
「どうやって眠るの?」
「じゃあバニヤンが仰向けで寝て、俺はその上でうつ伏せで寝たいな」
「わかった。じゃあそうしよう」
バニヤンのベッドは大きい。だからバニヤンが俺と同じ大きさの時はベッドの中心で二人して眠る。今日はバニヤンが大きいから珍しくベッドが一杯だ。
枕を使ってもよかったが、ブラウス越しにでも伝わる柔肌に包まれて眠りたかった。その心音をずっと聞いていたかった。
二人で寝転がる。時間が経つにつれ、バニヤンの心音がゆったりとしたリズムになる。それに合わせて俺の意識も徐々に落ちていった。
不思議な夢を見た。
目は閉じられたまま、遠くから俺の名前を呼ぶ声がする。
水の中だろうか、とても穏やかだ。
宙に浮いているような、空を飛ぶような感覚に陥る。
また声がする。とても幸せそうだ。
とても安心する。俺が求めていたものだ。
また声がする。近くなっている。
少しずつ近くなってくる。とてもやさしい声。
好き。
目が覚めるとバニヤンも起きていた。
俺の頭を優しく撫でながら微笑んでいた。それはブーティカにも頼光にも通じるものだったが、意識の覚醒と同時に遠巻きに聞こえてくる心音が母性を生みだした。
「おはようマスター」
「おはようバニヤン」
いつもならすぐに起きてコーヒーを飲むところだが、もうしばらくこうしていたい。
バニヤンもそれがわかっていてか動くことはなく、優しく頭を撫でてくれていた。
彼女はカルデアに来てから多くのことを学んだ。
どこまでも無邪気なのに、こういう時にどうするかをわきまえているようだった。
母と子の間に言葉は必要ではない。
むろん言葉を尽くすべきことはあるが、この瞬間においては言葉よりもその触れ合いが俺たちを支配していた。強靭な信頼関係と相手を観察することを怠ることのない二人が辿り付ける領域に揺蕩っていた。
二人して素晴らしき倦怠の朝を迎えた後に、コーヒーを一杯。
昨日の約束を振り返り、朝食を食べに向かった。
「おはようブーティカさん」
「おはよう。バニヤンもおはよう」
「おはよう」
挨拶を交わして朝食を受け取る。
パンにカリカリのベーコン、目玉焼きが半熟で。隣にはトマトスープ。そしてプロテイン。朝と鍛錬後、寝る前と3回分が用意されていた。
「いつもありがとう」
「どうってことないさ、それよりもやりすぎに注意してね」
「了解。まあ一般人だからね」
そんな朝の会話を済ませてバニヤンのいる席に向かう。バニヤンが俺たちが会話している間にお礼を言って先に座っているのも日常だ。
「それじゃいただきます」
今日はバニヤンにもう一つお願いしようと思っているが、これは彼女にしか頼めないことで、さらに言えば普通ならば拒絶するものだ。
それでもお願いしてみようと思うのは昨日の夢のせいだった。あの夢はきっと胎児の夢だ。その心地よさは本当に母親の胎内にいる時に感じていたものかもしれない。
何事も根元から断たねば意味がない。特に感情やイメージというのはその原因がどこにあるのか考え対応しなければならない。
たしかに、ある種の好奇心があるのも否定しない。ただ誰でもいいわけでもない。
仮に他のサーヴァントと夜を超えることがあっても、こんなことを頼もうと思わない。
これをダヴィンチちゃんなら正当化なんていうだろうか。
そんなことを考えながら朝食を終えた。
「それじゃマスター、午後にね」
「うん。午前のうちに許可もらっておくよ」
鍛錬の前にダヴィンチちゃんのラボを訪れた。
「やあ、いらっしゃい」
「おはよう。ちょっとお願いがあるんだけどいいかな」
「うん。多分どこかにいきたいんじゃないかな」
「なんでわかるかな」
「そりゃあ万能のダヴィンチちゃんだからさ。なんてのは半分冗談で、素材回収の際にはサーヴァントにも報告してもらってるんだ。その報告で君が最近レイシフト先でその土地に興味を示しているという旨の話を聞いてね」
「なら話が早い。ウルクへ行きたいんだ。バニヤンと二人で観光に」
「まあ、素材回収してるポイントにさえ行かなければOKだよ」
「じゃあ今日の午後に行ってくるね」
「了解。もしもの時は速攻で逃げてね」
「わかった」
[newpage]
「マスター、少しずつではありますが体力と筋力が向上しています」
「そりゃかのレオニダス王に鍛えてもらえばね」
「これはマスターの努力の結晶です。ですが自身の力を過信しないように。敵の視界を手に入れるのです。目の前にいるあなたを自分ならばどのように倒すかを考えるのです」
鍛錬の後のプロテインを飲みながら行うレオニダスとの反省会は生き残る上でとても重要だ。それは敵を倒すのではなく、いかに倒されないかを中心に行われている。
「特に注意すべきことは多勢に無勢という危機的状況においてです。ゲリラ戦法を取り入れ、即撤退することです。これからバニヤンとウルクに向かうとのことでしたのでそのことだけでも覚えておいてください」
「ありがとう。いつもの場所には近寄らないようにするけど注意しておく」
「それではお気をつけて」
シャワーを浴びて支給された礼装を装備する。
バニヤンは先に来ていた。昨日と同じ服を着ているが、それは彼女のお気に入りでもある。
ウルクに行ったらとりあえず開けた野原でのんびりピクニックでもしようという話になった。弁当はエミヤにつくってもらった。
ウルクに降りたって地図を拡げ程よい場所を確認すると、一通り街をめぐって向かうことにした。
あの激戦が繰り広げられたウルクも元通りだった。そんなことがなかったかのように。それがどこまでも嬉しくて、どこか悲しかった。
喧騒に極まる市を抜けて目的地に向かう。遠のいていく人の声と街の色を噛み締めるようにしてバニヤンの手を握った。
面白かったね、という彼女の声が反芻するたびに色をかえて打ちつけられた。
これからこの子に途轍もないお願い事をするのだという思いも相まって心はちぐはぐにつなぎ合わされる。歪な笑顔を浮かべているのではという恐怖と向き合うことにも慣れたが、どうしてこんなにも怖いのだろうか。
答えが出ないままに目的地にたどり着いた。
心の奥に仕舞い込んで今はバニヤンと過ごす時間を楽しもう。目を向ければどこまでも美しい景色が広がっている。その景色を見ていると自然と心が凪いでいった。
エミヤがつくってくれた弁当を広げる。
肉そぼろの乗ったご飯と仕切りで半々のカツサンド、アスパラガスの肉巻きにホウレンソウのナムル、卵焼きにミートボールが綺麗に詰められていた。
「いただきます」
「おいしそう、いただきます」
俺とバニヤンはカツサンドを手に取る。
「美味しい」二人の声が重なる。
そんなことが面白くて笑いあう。
そよ風が鳴らす草木の唄を聞きながら平穏な一時を過ごすという贅沢を楽しむ。
箸とフォークが各々の食欲を満たしていく。
自分たちが戦いに身を置いていることすら忘れてしまいそうな時間だった。
美味しい料理に、言葉を尽くすのすら憚られる景色に、大自然の囁きが心根を満たしたところで、バニヤンを少し背の高い茂みに誘いこんだ。
「どうしたのマスター」
「実は、一つお願いがあって、引かれるかもしれないんだけど」
「うん」
「――バニヤンのお腹の中に還りたいんだ」
言葉を選ぼうと思ったが、そんなことをして何になるというのだろう。口をついて出た言葉はそんなものだった。
「どういうこと?」
面と向かってこんなお願いをして、こんなことを言われることの方が珍しいように思う。
「バニヤンに大きくなってもらって、俺も裸になってバニヤンのお腹の中に入りたいなって。ちゃんと小型のトリトンっていう酸素ボンベも持ってきたから」
説明していくにつれて恥ずかしくなってきた。
「つまり赤ちゃんになりたいってこと?」
「まあ、そういうこと」
捉えられない沈黙に包まれる。それを切り裂くようにバニヤンの声がそよぐ。
「それで……マスターはいつものマスターに戻れる?」
「うん。大丈夫だと思う」
「じゃあ、いいよ」
拒否されなかったことに少々驚きつつ、むしろなぜ拒否しないのかが気になってしまった。
「バニヤンは拒絶しないの?」
「だって最近のマスターおかしかったから。いつも通りの優しくておっきなマスターに戻ってくれるならそのくらいできるよ」
純粋さは時として狂気にもなりえるのだと確信した。少なくともバニヤンの純粋さは狂気だ。それこそこんなお願いをしてしまう俺と同じくらい。
だが今更引くわけにはいかない。
しかし3メートルとなるともう少し入り込んだところでなければ見つかってしまうかもしれないと思い、もう少し奥の方へ入って行った。
「それじゃバニヤン、脱いでくれるかな。畳んでおくから」
「うん」
衣擦れの音が聞こえる。
一枚ずつ脱いでいくたびに曝け出される柔肌と下着に欲情しながらも丁寧に畳んで岩の上に置く。その服から漂ってきた彼女の残り香に脳髄が焼ける。
振り向けば恥ずかしがりながらも一糸まとわぬ姿で彼女が鳶座りでいた。
それに倣って俺も服を脱ぐ。お互いに生まれたままの姿になって向かい合う。
「バニヤン、本当にありがとう。でもいきなりは痛いから、ゆっくり慣らしていこう」
彼女が頷いて、いつものように愛撫し始める。
お互いの目を見つめ、お互いの指の感触を確かめていく。指先から撫でるように、絡めるように。決してそれ以外の部分には触れない。相手を受け入れるための準備をするのだ。
バニヤンは少し震えていた。これからする行為の異常さと、密室ではなく大自然の中で誰かに見られるかもしれないという羞恥に駆られているのだろうか。人がいない場所を選んだつもりだが、見つかる可能性はゼロではない。その点で言えば俺はバニヤンのお腹の中に入るのだから見つかる可能性は低い。
その不安を煽るかのように風が口笛を鳴らす。
しかしそんな彼女の震えも、優しく名前を呼びながら、したたかに手を握ってあげれば幾分か収まったように思える。汗で少し湿った彼女の手が同じ強さで俺の手を握り返す。
そうしてお互いの指を絡め合ったところで鳥のついばみのように唇を触れ合わせすぐさま離す。また近づけては離す。バニヤンを求めながらも彼女が飛び込む隙をつくる。彼女が抱えるものを受け止めるように。
始めは俺から誘い、それに応えるように口づけを交わしていたバニヤンが徐々に自分からも誘い始める。俺が引いたところに彼女が追いかけてくる。それに応えるようにまた俺が口づけを交わす。
未だ周りの様子が気になるバニヤンの唇に指で触れる。こちらを見つめるバニヤンにできる限り細く、草木の賛歌に溶けて消えるような優しい声音で大丈夫と告げる。小さく頷く彼女の唇に、今度は唇で触れる。
次第に間隔の小さくなった口づけに合わせて優しく彼女の肩に手を乗せる。あまりにも華奢でありながら指に吸い付いてくるような柔らかな肌がその未発達な胸を連想させる。
これから触れるその場所に思いを馳せながらも、軽く唇に唇を添わせる。ついばみの口付けから愛のベーゼへ。
バニヤンの薄い紅の差した唇のカタチを覚えるように目を閉じて優しく触れる。唇を離した時にお互いの目を見つめる。それからどちらともなく唇を合わせる。
彼女の隅々まで犯したいという獣を押し止めて、まだ唇に意識を集中させる。これから彼女の口内を犯すときのためにその隆起をつぶさに覚える。互いの唇が相手を受け入れるようにノックを重ねていく。彼女の胸の内側から吐き出される劣情の籠った吐息を引き出すために何度も、何度も。脳が蕩けてしまうほどの、丹田からせり上がる柔らかな快感に身を震わせながら、何度も、何度も。
舌が彼女を蹂躙したげに疼くのを楽しみながら、燃えるほど熱くなった彼女の口内が舌を求めるようになるまで優しく触れ合わせる。それがやがて綺麗な唇を押しつぶしてしまうような劣情を呼び覚ますまで丁寧に。
求めるように先走った舌を受け止めて、開かれた唇から内側すべてを、バニヤンのすべてを染め上げるために。幸福以外何もわからなくなるほどに。
彼女の息が荒くなっていく。周りのことなどもう見えちゃいない。こちらを見つめる潤んだ瞳は間違いなく女の目をしていた。その目を見つめ返し、何も言わず背中に腕を回す。
身体をより触れ合わせて熱を感じる。上気して桃花褐を湛える肌に無骨な俺の腕が食い込んでいく。
上目遣いの彼女の気持ちを受け止めるように少し口を開けて彼女に近づける。途端、バニヤンはその綺麗な唇が押しつぶされることも厭わずに、劣情の籠った吐息とともに舌を滑り込ませてきた。熟れた柘榴は自ら弾け、その鮮烈な果汁は口内に溢れてくる。
その芳醇で甘美な愛液を飲み込みつつ、蛇のように彼女の舌に絡めながら口内に滑りこませた。顎に指で触れ、口を開かせバニヤンという果肉を無防備にさせる。いまだ彼女の内に残る妖艶な愛液をかき混ぜながら口蓋を撫で上げる。強烈な快感にバニヤンがぴくりと跳ねる。
このまま責め立ててもいいが、俺の我儘に付き合ってくれる、せめてものお礼にバニヤンをもっと感じさせてあげようと思い、唇を一度離し、すぐに唇を舌の先でなぞる。だらしなく舌を出している彼女の、行き場を失った愛液に昼下がりの陽光が揺れるその唇を、しわの一つ一つまで味わい尽くすように。
腰の奥から脳髄を突き上げた歓喜から戻ってきた彼女も俺の唇をなぞり、時たま歯茎を撫でる。その愛撫が唇の裏に触れるたびに乳白色の快感が脳内に滲み出る。俺も彼女の歯茎を撫でながら、内側の歯茎も愛撫する。舌を尖らせ、その先で前歯の裏の歯茎をこすってやると、ほどけるような溜息を漏らす。
淡い緩やかな甘酸っぱさを享受するバニヤンが弛緩したところにまた口蓋を撫で上げてやる。今度は先ほどよりも深く、柔肉を蹂躙する。先ほどよりも目尻が下がり、小さな反応に留まったが、その脳髄を焼き切るような痺れは消えることはない。そのしるしに彼女の腕には力が入っていない。快感に対する緊張もほぐれてきている。
さらに舌先で舌根を撫でてやる。欲を噛み砕いて味わうためにバニヤンの舌は俺の舌に柔らかく絡む。彼女の愛液を舌を使って少しずつ吸い上げる。こちらから吸い取った分の愛液を流し込んでやる。こくんこくんと小さく喉を鳴らしながら注がれた愛液を飲みこむ。これだけ身体を密着させることでやっと聞こえるようないじらしさにこころが晴れていく。バニヤンの首筋から胸へと優しく触れるようにして指先を降ろす。
俺たちの前戯は長い。それは挿入を伴う快感だけを求めているからではない。バニヤンと俺は強烈な快感だけでなく、心を結ぶようなお互いを確かめ合うような快感が好きだからだ。
左腕を背中に回したまま心臓に近しいバニヤンの胸に触れる。快感に飼い慣らされた肉体はその艶肌を慈しむ指先を受け入れる。決して弾き返すことはなく、飲み込むことはなく。
緩やかな丘を軽やかに滑っていく。肌に触れるかどうかのところを丁寧に撫でていく。バニヤンを快感が包み込むように引き出してやる。
触れてしまえばそれなりの快感は得られるが、所詮はそこ止まりなのだ。もっと深く、バニヤンの奥底の心の鍵を開くように、優しく彼女の感覚を拡げていく。少々の高鳴りを以って愛を伝える鼓動を指先に感じながら接吻をやめることなく。
双丘に集まる劣情が今にも吹き出しそうに乳首を隆起させる。その山に触れるようなことはまだしない。もっと痛いくらいに快感を尖らせて、微風ですら小さな快感を与えるように。胎児が母から感じるような穏やかな変化すらも覚えるように。
重ねた口から小さな嬌声の振動を感じながら、バニヤンの動きに合わせて舌を絡める。強くはない快感に身を任せるそのいじらしさが口内に滑り込む。レコードの谷を針がなぞるように、その声を聴くため、バニヤンに合わせながらも弱いところを突いてやる。ニードルトークのようであってもそれは美しい。二人しか聴くことを許されないほどの小さな声の美しさは重なり合ったときにしか聴くことはできない。
指先は丘を下り腹部へと至る。彼女の乳首の真下、腹筋横へと降りて、脇腹やへその辺りにも指先が渡り歩く。微風が草木を揺らすような小さな小さな足音を刻みながら歩いていく。
彼女の腹部は、強烈に鍛え上げられ滾々と隆起する筋肉が繰り広げられているわけではなく、縦にしなやかに一本の線が通っている、日常に育まれた健やかさを湛えるものだった。女性らしい柔らかさをも持ち合わせたものだった。
その線を遡ってまた丘を登るように見せかけて腕を下へと伸ばす。その向かう先は大地を踏みしめて歩き、肉体を支える脚だ。彼女のふとももは太いわけではない。筋肉質なわけでもない。愛しい相手に解放される瞬間のみ、解かれた緊張がその実のたおやかさを伝えてくるような神秘を内包している。
ぬくもりを帯びた曲線は、陽光を吸い込んで煌めいていた。その線をなぞる。誰も触れ得ぬ場所をなぞる背徳感と、触ることを許されたという優越感に浸りながらその宝石を愛でていく。外側を一周なぞってから内側を一周するように移る。外側よりもゆっくりと撫でていく。膝の内側から上り詰めていこうとするとバニヤンの脚が小さく震えた。接吻の快楽ではないのは明らかだったが、そこで止めることなくさらに速度を落として上っていく。
ふとももの付け根に差し掛かり、丸を描くように撫でていく。くすぐったそうに脚をすり合わせながらも舌を絡めてくるバニヤンをみて、スイッチが完全に入ったことを悟る。
優しく肌に触れ、五本の指先をすぼめて、また開く。ぞわぞわとした快感が脊髄を駆け上がっていく新たな快感に今度はバニヤンの腰が少し疼いた。三度ほどそれを繰り返すうちにその快感にも慣れてきたようだったが、鼻息が荒くなっていた。
快感は強烈なものを慣れる前に幾つも重ねるのもいいが、快感を慣らし疼きを覚えるのも一興だ。バニヤンは疼きの痺れるような甘い快感を優先する節がある。その先に解放があり、昇華があり、抗うことのできない熱を味わうことができる。
秘部に触れることを期待するようで、その実触れられてしまうことを惜しむように固く脚を閉じていた。その心根を救うように受け止め、秘部の少し上を「の」の字になぞる。バニヤンは脚をさらに強く閉じて、理性を焼き切られるような鮮烈な快感に舌を絡めることを忘れて打ち震えていた。その口から溢れ出る快感が熱になって吐き出され、俺の口に入り込んだ。
まだ酔い痴れるバニヤンの快感を弾けさせぬように右足も同じように滑らせていく。緩やかに解けていく脚の合間にじわじわとせり上がっていく。閉じなければそのまま秘部を愛撫される状態で彼女は迷いながら緊張と弛緩を繰り返していた。そのままふとももの付け根辺り、秘部に触れようとした時に脚を閉じた。
「まだ、もう少し」
バニヤンがか細く呟いて、潤んだ瞳で快感と愛液に濡れた唇と頬を赤らめて、上目遣いでこちらを見つめた。その表情は今まで見たものの中で最も乱れていたように思う。それに俺は驚きを覚えた。
普段のバニヤンというのは、そういった快感に酔い痴れることはあっても、ここまで乱れて懇願することはない。自分を持って快感を享受する彼女が快感に飲まれかけていた。
「わかった。じゃあ胸触るね」
彼女が頷いたのを確認すると、接吻をしながら右腕を胸に伸ばした。
今度はしっかりと触れるようにして胸を包む。しかし乳首に触れることはなく揉み始めた。少女の柔肌はとても敏感だから出来る限り力を入れずに、潰すようなことをせず、下から支えるようにして徐々に乳首に近寄っていく。
キスを交わしながら目を細めてバニヤンがこちらを見つめる。完全に快楽に飲まれているその瞳が期待に染まる。
触れてほしい、もっと、もっと、もっと……。バニヤンの両手が首に回され、身体がより密着する。しかし胸は触れることはなく、彼女もここまで高まった快感を浪費したくないようだった。
とうとうバニヤンの乳首に触れようとする。ここで痛々しく隆起した一点のみをつまむことによって積もり積もった快感の一部が解き放たれる。
心の鍵をこじ開けられ快感に溺れた彼女が昇り詰める瞬間を逃すまいと、口づけをしたままにバニヤンの乳首を抓り上げた。途端、彼女の背が反り、腰が浮く。
「んぁあっ!」
周りに声が聞こえることを抑えていた彼女が叫び声にも似た嬌声を上げる。その快楽の波は、反り返った彼女を抱きとめた左腕にさえ伝わってきた。彼女の顎が反り、その上から口づけを重ねた。
「んぅゥ、んっ、はぅ、ふぅン」
くぐもった嬌声の残り香が互いの口内で共鳴する。緊張を伴った嬌声が解けて吐息に混ざっていく。
バニヤンに一言声をかけ、彼女の背後に回る。
バニヤンに背中を預けるように言う。俺と何も変わらない小さな少女の背中を胸に感じながら、片腕で乳首をつまみ、もう片腕で彼女の秘部に触れる。バニヤンの秘部は淡い桜色をしている。茂みのない触り心地の良い肌と、その谷底に流れる川がぬらぬらと煌めく。その雫を掬いながら、その頂点をなでる。
直接的な快楽にバニヤンがピクンと跳ねる。「っん、はぁ……」控えめな喘ぎが鼻から抜ける。彼女が待ちわびた聖地に優しく触れていく。
胸を愛撫していた手でバニヤンの顎を掴み、唇を奪う。期待の色が解けて歓喜の色が滲む。その色をかき混ぜながら、彼女の最奥に指を埋めていく。
きゅうきゅうと優しく包み込んでくる欲の熱気の中を進んでいく。進むにつれてバニヤンがまたもため息を漏らす。雫が滝となって草原を濡らしていく。密着した肌が汗ばんでいく。
中指がすべて埋もれた後にゆっくりと抜いていく。そのときに膣壁を軽く押して刺激する。また最奥に進み、退いていく。丁寧に優しく刺激していく。
それをしばし繰り返していると、高まりきったバニヤンの欲が悪戯に、俺の身体を押し倒した。
紅潮した顔で「ねえ、なめてもいい?マスターの」と笑う。彼女がこんなことをするのは初めてだった。「じゃあ俺もバニヤンの舐めるね」そういって陰陽を象る。それがなんだか嬉しい反面、彼女が無理をしているのではないかと少し不安になった。自分から快楽に溺れきることによって恐怖心を無くしてしまうような。ぬぐい去ろうとしても決してぬぐいきれない、相手を思いやるばかりの心が、深く奥底に眠る不安感を逆撫でる。
それでも彼女を信じようと思った。そして彼女にできる限りをしてあげよう。改めてそう何度も決意する。
肉壁をかき分けていく指を薬指と中指の2本に増やし、秘部の頂点に口づけをする。肉壁を押し撫でて、深く、深く、彼女を落とし込んでいく。
小さく川のせせらぎを蹴り飛ばす音が響いてくる。熱狂に渦巻く坩堝に指が蕩けていく。肉壁というのは、まさしく快感を与え、得るための形をしている。まして、それが好いている女性のものならば。
声にならないため息に掻き出された甘い鳴き声を漏らしながら、怒張した逸物を唇の前にもつバニヤン。その振動が、その声が、媚薬となって俺の興奮を引きずり出す。彼女と同じくらい俺も快楽に呑まれかけていることをここで自覚する。
亀頭に優しく口づけをし、カリにも丁寧にキスを重ねていく。ゆっくりとしたテンポで進むノックに逸物は少しずつ反応していく。肉竿や裏筋、袋の方にもベーゼを重ねていく。そして根元の方から裏筋を舐め上げる。口から漏れる媚薬が肉棒を怒張させる。そのまま亀頭に辿り着くと、カリを口に含む。決して歯を立てないように、少し唇を内側に巻き込んで、舌先で割れ目に舌を押し込んでくる。バチバチと脳内に弾ける閃光を白く塗りつぶすように、またそのフラッシュを心待ちにするように。
その刺激に先走ったものを愛液に混ぜてカリ全体を舐めていく。360度様々な角度からバニヤンの舌を感じる。小さくザラザラした表とつるつるした裏の触感の違いに時折腰が引けながらもお互いの欲を高めていく。
そうしていると、唐突に舌裏の一本の筋が割れ目に沿い合わさった。そのまま筋が鈴口をこすり上げ、舌の裏の柔い快感に移り、バニヤンが逸物から口を離す。
気持ちよかったと伝えると、照れながらに微笑み、また逸物を口に咥える。今度は先ほどよりも深く。亀頭を口蓋に当ててその段が与える強弱の刺激に酔う。少なくともバニヤンにとっては俺のモノは大きい。すべてを呑み込もうとすると喉奥にまで達することになる。それを徐々に呑み込もうとすることを愛おしく思い、より一層バニヤンの秘部を刺激する。
柔らかな熱風の吐き出される喉奥へ、その熱にどんどんと勇んでいく肉棒をバニヤンは懸命に受け入れる。
そうして辿り着いた口蓋の奥、柔らかな肉に触れながらバニヤンは頭を前後させる。柔肉と硬い口蓋の二つの刺激に震える丹田に力を籠めながらその口内を蹂躙する。
閉じられた目尻に涙を浮かべながらバニヤンは先走りを吸っている。舌で刺激を与えることも忘れずにいる。
その刺激が柔らかくなり、リングに通すような刺激になっていく。バニヤンの舌根が下がって、肉棒をすべて呑み込まんとする。喉を封じたカリの先に鼻から抜ける呼気が触れる。喉を鳴らしてもたらす快感に今まで感じたことのない征服感と背徳感を覚えた。その快楽というのは、肉体的な刺激よりも精神的な刺激の方が強かったのだ。
バニヤンの目尻から涙が零れ落ちる。その行為自体が苦悶に片脚を踏み入れているものなのは想像に難くないが、それでもバニヤンが自主的にやってくれているのだから任せてみることにした。
自身の目から涙が落ちることも厭わずにバニヤンは喉を鳴らし続ける。そして何を思ったか、さらに呑み込むようにして、肉棒を頬張ったのだ。
俺の腰にバニヤンの腕が回り、クキキキという甲高い音が聞こえたかと思いきや、一息に自身の喉へ突き刺した。「んぐぅぅぅ……」という苦悶に満ちた声が漏れたが、バニヤンは顎を外すほど大きく広げて諦めない。すると、鈴口が何かに触れた。それがきっと喉の肉壁だろうということはわかった。いまだ喉がひくつき、コントロールできていなかったが、それでも喉仏を目いっぱいに下げて耐えていた。すると次第に感覚を掴んできたのか、また喉を鳴らし始めた。
だが、その行為自体が、俺にとっては自身の苦しみや恐怖さえも超えていくほどの快楽を味わおうとしているような、そんな風に感じとれてしまった。
ただどうしてかそれを止めてしまうことはできなかった。それは彼女の覚悟と愛を貶してしまうように思ったのだ。代わりにその覚悟を支えるように、バニヤンを快感へと誘う。
こちらが責め立てると彼女もピクピクと感じてくれるが、それに対するように俺を責め立ててくる。そうやってお互いのすべてを振り切るようにして高め合っていく。
コクコクと喉を鳴らし、さらには頭を前後させて絶頂へと導こうとする。懸命に愛撫する彼女の、誰にも触れ得ぬ場所を犯しているという事実に、ついに欲望がうねり、凝縮され始めた。
征服せんと脈打つ肉棒を感じ、バニヤンがずるりと喉奥から丁寧に吐き出した。
そのまま呼吸を整える間もなく、肉棒を咥えて口蓋へとこすりつけながら、裏筋を舌で舐め、ちゅうちゅうと吸い始める。
高ぶった劣情の爆発を堪えることに必死になり、バニヤンを責めることができなくなってしまっていた。それでもバニヤンはやめることをせず、逆にストロークの速度を落とし、丁寧に刺激を重ねていった。舌先で鈴口を押し開き、カリを撫で上げて、口蓋にこすりつけ、柔肉を経て喉奥まで呑み込むという一連の動きをゆっくりと繰り返す。
喉奥に呑み込んだ辺りで限界を迎えそうになり、歯を食いしばっていたが、柔肉を経て、口蓋を上り詰める時に堰を切って快楽が溢れ出た。
バニヤンは舌根めがけて吐き出された劣情に、刹那、目を大きく見開いたが、すぐに慈しむような目になり、こくんこくんとすべて飲み込み始めた。注ぎ込まれた精液を飲み干すと、肉棒の中に残っていた快楽までも吸い上げてきた。腰の奥から何かを抜かれていく感覚にふわりと脳内が焦げていく。
やがてその潮騒が引いていくと、今度はこちらがバニヤンを絶頂まで導いてやるために責め立てた。
中指と薬指の2本で膣内をかき回していく。秘部の頂点にもまた口づけをし、唇と舌で嬲っていく。バニヤンは小さく震えながら、口の中に含んだままの肉棒をてらりてらりと舐めまわしていた。それは先のような不安や恐怖を揉み消そうとするものではなく、愛おしげなものだった。
穏やかな彼女が快楽に跳ねるたび、肉棒にも些細な反応がある。ある程度振り切れた彼女を絶頂に導くことができたならば、きっと恐れるものは何もないだろうと思った。
それはお互いが平等に達した場所で向かい合えるという短絡的な、あるいは自己正当のようなものだろう。しかし、今の自身の立ち位置から考えればどうしようもないのだ。
今までの事もこれからする事も、すべてバニヤンの好意によるもので、結局バニヤンよりも先に達してしまっているのだ。だから、せめてもの気持ちを込めてバニヤンに絶頂を捧げたい。
その一心で彼女の聖地を慈しむ。しばしば膣壁の締め付けが強くなる。川も勢いを増していく。腕を挟む太腿にも力が入ってきた。
もう少しなのだ。もう少しでようやく準備が整う。彼女はきっと振り切っていることを俺はまだ振り切れていなかった。臆病な自尊心によって縛られている。趨勢すらも読み取れず、ただ信じることだけしかできない自分が遠くにユラユラと揺れている。
それを見ないようにして目の前のバニヤンだけに集中する。絶頂へと誘いたい、我儘を受け入れてくれた彼女に少しでも恐怖がないように、お互いが越えなければいけない壁を越えるために。そして何よりも、バニヤンに伝えきれない感謝をどうにかして伝えるために。
締め付けのスパンが短くなってくる。もうすぐ辿り着くだろう。
「ふぁっ、あ、あっ、あっ」ふわふわとした喘ぎ声がバニヤンから漏れ出す。今までで一番絶頂に近い、飛んでしまうような快感なのだろう。ここでこちらのストロークを上げないように意識する。押し上げてしまうことなく、一段一段酔い痴れる余裕を捧げる。それが天国への階段であり、その一つ一つに意味がある。その先に待つ強烈な閃光に自身で飛び込むのだ。それは彼女がすべてを振り切るための勇気であり、俺が彼女に捧げるなけなしの対価であり、二人のスタートラインなのだ。
はっきりと太腿が腕を締め付けてくる。指が膣壁によって形を成していく。ほんのあと一段というところでバニヤンが声を上げる。
「お願いマスター!手を握って!離さないで!」バニヤンの手を握る。したたかに優しく。
バニヤンは最後の一段を終えることに一抹の不安を感じているのだろうか。振り切ったというのはあくまで都合のいい解釈だろうか。頭を駆け巡るイメージが口を動かす。
「バニヤン、やっぱり」口から出た言葉はそんなものだった。
「違うの!背中を押して!!」
言葉になってしまう前に、即座に否定したバニヤンの心の叫びが聞こえたような気がした。
ならばと思い、頂点への口づけをやめ、バニヤンの膣壁が締まる時に合わせて甘噛みをした。
「んっ、くぅ!」途端、今まで以上に膣が指を締め上げて、バニヤンの腰に力が入る。全身がピクリと脈打ち、一瞬の緊張と弛緩を幾度と繰り返し脱力した。
はあ、はあ、と呼気を荒げるバニヤンの熱い身体を壊れてしまうことも厭わずに力強く抱きしめた。
「ありがとう……。本当にありがとうバニヤン」何故かそんな言葉が出た。
「マスター、マスター」譫言のようにバニヤンも返す。
「ずっと不安だったんだあ。マスターの願い事は叶えてあげたいけど、私が知らないことだったし、もしものことがあったらって思うと」力の抜けた笑顔でバニヤンが言う。
「俺もずっと不安だったんだ。怖かったんだ。バニヤンにこんなこと頼んじゃって、でもバニヤンは受け入れてくれて、だから何処かで無理してると思って」
「うん。怖かったのは本当」抱きしめ返す力が強くなる。
「でもマスターがね、いつもよりもっと大切にしてくれたから、信じてみることにしたの」
その言葉が、その声が、どれほどの力になるだろう。男としても「マスター」としても。穢れた欲望に今にも絡めとられそうな心を救ってくれた。
「それにね、マスター」バニヤンは続ける。
「マスターの子供だったら産んでみたい。産めない身体だけど、もしも産むことができるなら、どんな感じだろうなって」意外な言葉だった。
バニヤンとはセックスをしたりするし、お互いに好いてはいたが、そういったことは言わないようにしていた。だからこそ、はっきりとその言葉を口にしたバニヤンに驚いたのだ。
「でも、大丈夫かな」何を言うべきかわからずに口は開かれる。
「大丈夫だよ。だっていつもマスターはそう言って前に進むんだから」だから、大丈夫。
人が神や天使をつくった時、それに縋ろうとした時、こんな心なのだろうか。
「わかった。ありがとう、バニヤン」バニヤンは頷いて微笑む。
それからしばらくお互いの熱が少しひいていくまで抱きしめ合っていた。お互いの肌を確かめ合うように、その心を寄り添わせるように。
風が荒い熱を攫って草木を撫でる。やがて土に吸い込まれ命を育む。ふと互いが大きく吸い込んだ息が空の蒼を胸に遊ばせる。どちらともなく呼吸が合う。痛いくらいに泣いていた心根には陽光が照る。
「そろそろ落ち着いた?」バニヤンに応える。
じゃあ、と言ってバニヤンのカタチがぼやける。
バニヤンの拡縮は、神秘だ。それ以外に持ち合わせる言葉がないほどに、また、この大地の最後の夢であるように感じた。
ぼやけているが確かにそこには存在する。少しずつ滑らかに大きくなる肉体。すらりと伸びていく四肢が携える女性のカタチが神秘性を抱きとめる。その光景に見とれながらも、バニヤンの服の上に置いておいたトリトンという小型の酸素ボンベと水泳帽と海パンに着替える。着替え終えたところで、ちょうどバニヤンの方も終わったようだった。
「来て、マスター」バニヤンが秘部を指で拡げる。
バニヤンと目を合わせ、歩み寄る。
バニヤンの入り口に対して、俺は大きな逸物のようだった。これからバニヤンの中を進んで子宮内に辿り着く。それはかつて俺が産まれた道程を歩んでいるようだ。暴かれても奪われることのなかった人類の神秘に触れる。生唾を飲みこみ、呼吸を整える。
バニヤンの中を進むには匍匐前進することになる。バニヤンの秘部に触れ、声をかける。
「じゃあ、いくよ」バニヤンが頷く。
それを確認して、トリトンを咥え、頭と腕を入れる。柔らかな肉感が抱きとめる。そこから胴体まで潜り込ませる。全方面から母性に抱かれる感覚を覚える。
そこから脚を潜り込ませようとするがうまくいかない。四苦八苦しているうちに、ふと、足に触れる熱があった。バニヤンの手だ。
バニヤンの厚意を受け取り、足を乗せる。ゆっくりと、しかし確かに押し込まれていく。
光など届かぬ暗闇の中であっても、恐怖はない。それが愛しい者の中だからか、造形がそうさせるのかはわからないが、何にせよ、愛おしさがあるのは確かだった。
やがて足先まで入ると、今度はバニヤンの指が足裏を押す。動かずにそのままに押されていく。指が止まると道が傾斜をなくし、進むものを受け入れる形になる。バニヤンが正常位の体勢になったのだろう。
肉壁の締め付けはそれなりにあるものの、苦しいほどではない。バニヤンは俺がどこにいるのかわかるのだろう。先がどれほどあるかわからないが、前進を続ける。少しずつ着実に進んでいく。
歩みを止めることなく進んでいくと、壁のようなものに触れた。途端、身体を締め付ける力が強くなった。なるほどここが子宮の入り口なのだと不思議と理解した。バニヤンも初めての感覚に腹部を手で圧迫しているだろうことが上からの圧で予想できた。
いきなり大きく開いてしまうことで何かあるかもしれないと思い、腕から入り、少しずつ慣らしていくことにした。まずは右腕、次に左腕……とバニヤンが悶えているような衝撃が伝わってきた。
あまりゆっくりしてもいられないだろうと考え、出来得る限り子宮口から子宮峡部を拡げないように、腕から入り、伏し浮きの体裁で子宮口から滑り込む。決して足をばたつかせずに、水の中を人魚が優雅に躍るように。深い海溝へ落ちていくように。畳んだ腕で匍匐前進を繰り返す。
膣内はまだ締め付けの中でも余裕があったが、子宮口から子宮峡部までは余裕というものがなかった。その中を出来得る限り負荷のないように進む。
平衡感覚が90度傾いた。つまりバニヤンが倒れたまま横を向いたことになる。おそらく彼女には痛みがあるはずだ。だからこそ慎重に急がなければ。
そうして急く心と、冷静に慎重に動こうとする脳によって早くなった匍匐前進を繰り返し、とうとう子宮峡部を超える。
子宮腔に出る。子宮口から子宮峡部までの締め付けからの解放がなされたかと思えば、子宮腔は狭かった。必然、子宮壁を押し上げることになり、きっとバニヤンの腹部は膨らんでしまうだろう。また内部は羊水も何もないのだから苦痛が伴うだろう。胎児がするように、小さく丸まっていることにした。
実際にバニヤンの腹部は妊娠した時のように膨らんでいた。立香が子宮口から子宮峡部を通ろうとした時から耐えていた。それは圧迫感であり、何者かが体内を這いずるある種の不快感であり、中和するような快感とそれに勝る未体験の感触だった。
立香が子宮内部に入ったというのは感覚があり、それが圧迫感を以って確信へと変わった。というよりも、視認して初めて理解したが、腹部が膨らんでいたのだ。
それはほんの小さな起伏かもしれない。少なくともそこに快感はない。
ただ、どうしてか愛おしいのだ。もちろん今の身体では子を生すことはできない。ただ途方もなく愛おしい。彼の命を胎内に宿すということが愛おしい。
叶うことのない夢が現実になっているそのことが、こんなにも苦しいことなのに、どうしてか、本当に何故か、たまらないのだ。
ゆっくりと身体を起こし、楽なように樹に背を預ける。
滾々と湧き出る桃花褐の愛に、自然と手はその起伏を撫でていた。それは母親がするような、優しく慈しむような、あるいは健やかに産まれ来ることを願うような、そのようなものだった。
自然に微笑みが漏れる。眉が下がり、この命を守るためなら何でもしようという覚悟があった。
「リツカ」自然と名前を呼んだ。
普段は「マスター」と呼んでいるのに、その音の響きがたまらなかった。
「リツカ」もう一度呼んでみる。やはり心地がいい。心の奥底に光が満ちていくような、抱えていたすべてが解けては溶けていく。
「リツカ」先程より大きな声で。
「リツカ」胎内の立香に届くように。
「リツカ」ありったけの愛を一言に籠めて。
「リツカ」大好きなあなたに届くように。
その声は俺にも聞こえていた。
夢で見たような、遠くから徐々に聞こえてくる声、とても穏やかな声。
羊水の中ではないが、その声を聴くたびに心が安らいでいく。
次第に近くなる声が心地いい。
何も考える必要がないような安堵だ。すべてが溶けていく。解けて溶けて、何にも代えがたい光が満ちる。星の瞬きにも似た、貴い光が満ちていく。
もう少しこうさせてもらおう。そうして目を閉じた。
そうして数十分経った頃、目を開けて、戻る合図として子宮壁を軽くノックした。
バニヤンもそれを感じたのか、身体を倒して正常位の体勢に戻る。
子宮峡部から戻ろうとするとき、奇しくも胎児が産まれる時のように頭を下にして出る。それは新たな誕生であり、帰還であり、二度目の生だった。
二度目の生はこれまでのすべてを背負いこんで。しかしその顔は実に晴れやかだった。
バニヤンが踏ん張る。自然、スルスルと戻ることができる。子宮口を抜けて、膣内へと落ちる。踏ん張りに合わせて動く。もう少しで奪われることのない絶対の安心に別れを告げることになるが、何も恐れはなかった。
そして、最後の踏ん張りに合わせて一気に外へ飛び出した。少々呼吸の荒いバニヤンと目が合う。木漏れ日の色めきの最中に艶やかに揺蕩う黄金の髪のその内に、バニヤンは母の顔をしていた。無邪気さが鳴りを潜め、微笑みを湛え、俺を掬い上げて抱きしめる。
そしてこう言うのだ。
「お帰りマスター、お帰り私のリツカ」
それに対して俺はこう答えたのだ。
「ただいまバニヤン。ありがとう、バニヤン」
愛液に塗れた身体をタオルで拭いて、木陰でバニヤンと寄り添いながら景色を眺めた。
指を絡めた手を固く繋いだままにお互いの心が凪いでは満ちていくのを感じた。
互いに何も語ることはなく、語ってしまえば嘘になってしまうような気さえしている。それは貝殻の潮騒が木霊するように、月が欠けては星が満ちるように、反芻して礎となっていった。
いつしか互いに今回のことを忘れてしまう時が来るかもしれない。それでも、ふとその時の心を思い出すのだ。ただその一時のために。
風は凪いで、草木のさざめきもなく、蒼穹の中天に白む月が浮かんでいるのを見つけては、ぼんやりと人類の脈々たる営みを思ったりしていた。
俺たちは決して結ばれない。
だからこそ今を愛していく。バニヤンの無償の愛に抱かれて、俺も彼女にすべてを明け渡して、疑うことをせずに。結ばれないからこそせめて。
星の煌めきは旅人を照らす。
その足跡が穢れていようと、その手を握るが泡沫としても、人は征く。
星が微笑む夜を越え、朝に産まれて流れる涙の為に。
お読みいただきありがとうございました。
次作予定としては北斎で『画集参考、挑発搾り取り』です。
内容としては、手コキ、パイズリ、フェラ、媚薬、射精管理etcです。