ポケモン剣が楽しいので初投稿
一家の長として家族を養うのは義務だ。しかし義務と言ってしまうと味気ないし、それ以上に『義務』なんて刺々しくて重く圧し掛かる言葉は嫌いだ。だから俺はたまに小遣い稼ぎと呼んでいる。これならしょぼくても味気なくはならない。いつまでたっても少年の心を忘れずに済む。
稼ぐ金はすべて俺のモノではないけどみんなの笑顔のためなら山菜取りから害獣駆除まで何でも苦しくない。苦しくなさそうな仕事を選んでいるから当たり前だけれど今回は例外でちょっぴり大変そうな仕事を受注した。
……
…
それは今日の朝のこと、俺はいつものようにギルドの集会所に来ていた。掲示板には所狭しと以来の紙が張り付けてある。その中に一枚だけ異彩を放つ紙を見つけた。真っ赤な紙に黒い字で書き殴られている。
「お姉さん、これなんすか?」
「あぁ、それね。初めて見るっけ?」
首を縦に振ると丁寧に説明してくれた。
「実はちょっぴり前の話なんだけどここら辺の山でゴブリンを見たって噂が流れたのよ。それで王都の兵士が向かったのだけれど帰ってきてないの。それで王様が腕の立つギルドの戦士に依頼したってわけ。やってみる?」
「なんか怖いなぁ」
「あら、あなたのステータスならゴブリンなんてイチコロよ。それにトシキさんに退治してもらえたらお姉さん安心だな」
「ゴブリンってどんな奴っすか?」
「下品で汚くて女を犯すことしか考えていないゴミみたいな魔族崩れよ」
「魔族崩れって?」
「トシキさんってホント何にも知らないのね。そのうちお姉さんが夜のベッドの上で全部教えてあ・げ・る♡」
「はいはい。で、魔族崩れって」
お姉さんのクソつまらない冗談は華麗にスルーするー(激寒-114514点)
「魔族は知っているわね?」
首を縦に振り返事をする。しかしお姉さんは「本当かしら?」と信じてくれない。ちょっと悲しい。
「まぁ、念のために説明すると純粋な魔素を体内に摂取して進化した生物のことを言うの。例えばオーガやドラゴンね。彼らの祖先は人間やトカゲが魔素を取り入れて進化したものなの。とはいえかなり定義は曖昧なのだけれどね。魔法が生まれつき使えた生物を素に進化した生物だとか色々よ。とにかく分かりやすく言うと魔素で強化された生物を祖先に持つ生物が魔族なの」
「ふんふん」
「で、魔族崩れっていうのは進化の流れで劣性遺伝子だけを受け継いで生まれてきた種族のことなの。これには定義がなくて差別用語的な意味もあるわね。魔族の中でも低級な奴らは魔族崩れって呼ばれているわ。上級魔族からしたらすべての魔族が魔族崩れでしょうけど」
「魔族も色々あんすね」
「お姉さんの説明を一言でかたずけないの。もっと褒めてくれたって良いんだからぁ。で、このクエスト受けるの?報酬は良いわよ?」
「ゴブリン退治っすよね…ちょっと怖いけど」
魔法も使えるし、素早さも並みのモンスターよりある、チビのゴブリンになんて負けないだろう。
「良いですよ。受注します」
そこからは早かった。書類にサインして支給品の食料と簡易魔術札を数枚受け取ってクエストに出発した。
今回は危険なクエストになるかもしれなかったので三人は家でお留守番をしてもらうことにした。しかし俺の肩の上でガリアはアイシャさんが焼いたパンの屑をこぼしながらもしゃもしゃと食べている。妖精は空を飛べるし小さいので敵に見つかりにくいし魔法で俺のサポートもできる。…とガリアに押し切られて連れていくことになった。
「食うのは良いけど屑をこぼすなよ」
「良いじゃない。あんたの肩にパンくずをこぼすのはあたしだけなんだから」
「そんなのお前じゃなくても願い下げだ」
「小さい男ね。それで三人を満足させられるのかしら?」
「ハナクソみてぇに小さい女に小さいとか言われたかねぇ」
反撃のつもりか頬をぺちぺち蹴ったり耳を伸ばしたりしているようだが正直、気持ち良い。
「悪かったって、ガリアはとてもいい女だよ。俺にはもったいないね」
「はぁ…あんたに惚れてたら照れるけどそうじゃなかったら全然ね」
呆れられるとダメージがすごい。罵倒とか照れじゃなくて呆れってのはかなり心にくるね。
「それより目的の山は本当にここで合ってるのかよ」
街を出発してから5時間弱、たどり着いた山は木々が生い茂り獣や山菜の宝庫だった。しかし道と呼ばれるものは存在せず誰かが住み着いている様子はない。
「木と意識を同化させて聞いてみたらいいじゃない」
「え?俺そんなことできるの?」
「はぁ~~~、あんたほんっとバカね。妖精ができるんだからその力を与えられたあんたもできるに決まってるじゃない」
目を閉じて集中して木と同化を試みる。想像していたよりも簡単で某サイレンが鳴るゲームの様に視界が様々な木の場所へジャンプした。
「すげぇ…一気に視界が広がった。あぁ~見えますねぇ」
茂った場所じゃなくて崖など洞窟がありそうな場所を探していると緑色の肌、尖った鼻と耳、特徴的な猫背で獲物を引きずりながらどこかへ向かう薄汚い生物を一匹見つけた。
「うぇ~あいつがゴブリンか。ここからそう遠くないし早く追っかけるぞ」
「はいはい」
思ったよりも早く見つかって助かる。遅い時間からだと暗くて土地勘のあるやつらの方が有利になってしまう。
見つからないように草むらを移動しながら追いかけると入り口の小さな洞窟を見つけた。ゴブリンはしゃがんでその中へ入っていったので相当小さい。
「中が広くなっている事を祈るか…」
匍匐前進でゆっくりと中へ入る。中には光が届いていなかったが何故か俺には昼間のように明るい。
「キノコ類や苔類が周りの様子を教えてくれてるんじゃないの、知らないけど」
これなら好都合だ。昼間のような場所で戦えるのなら俺にも勝機がある。
しかしそれでも洞窟が狭いことには変わりない。数メートル進んだがまだしゃがまないと進めない。若干の閉所恐怖症の俺はぶっちゃけこの時点でかなり帰りたい。ただ暗所恐怖症でもあるので明るいのだけは本当に助かる。
いつまでこうしていたらいいのだろうか。そろそろ立たせてくれないと腰痛持ちになってしまいそうだ。
「良いから行きなさいよ。声も聞こえてきたしもうすぐよ」
声なんて…
「はぁ…」
あ、なるほど。植物とリンクして聞いたのか。
俺もガリア同様、周りの植物を耳代わりにしてゴブリンの声を聴く。話している内容は分からないけれどもう少し進んだ先に広場があることも分かった。広場には入り口が一つだけなのでそこが終点らしい。
広場には焚火や明かりなんかはなくておそらく真っ暗だ。しかし数匹のゴブリンは物が見えているかのように行動しているので夜目が効くのだろう。棍棒を削ったり骨をしゃぶったり各々休憩しているようだ。
人間サイズの鎧や衣服がまとめられているのも確認できる。きっと殺された騎士たちのモノだろう。夜目が効かず、狭い洞窟で戦ったのか…それとも奇襲を受けたのか訓練された騎士も正面の立ち合いじゃなければ負けてしまうものなのか。
さて…完全に油断しているな。今なら余裕で殺せそうだ。
「ちゃんと首は残すのよ」
「分かってるって」
ギルドの人からは『戦果の確認できるものを持ち帰ってきてね』と言われているので俺は首を持ち帰ることにしていた。
なので首を切り落とさなきゃいけない。しかし俺はこの日まで魔法の訓練は毎日行っていた。すでに俺は植物を自分の身体のように動かすことが可能になっている。
広場の壁から植物の根を生やしてゴブリンたちを捕まえる。植物の根と言うのは固い地面を掘り進む力を強靭さを兼ね備えた最強の武器になる。
纏わりつく根はゆっくりと確実にゴブリンたちの身体に根を張り、腹を突き破り、骨を締め付け砕く。内臓は飛び出して苦しみながらゆっくりと死んでいった。
「すごく呆気ないね」
「これが魔法の力よ。なんの苦も無く相手を蹂躙できる力」
「俺が想像していたよりも魔法の力ってすごいのね」
広場に落ちていた袋にゴブリンの頭を放り込んでいく。血の匂いもひどいけど生活臭と言うか獣臭さもひどくて吐きそうになった。
偏見かもしれないけど鶏舎とか牛舎のような畜産をしているところの匂いってこんな感じの匂いなんだなって思う。
「もうそれで最後ね。早くここから出て街へ戻りましょう」
「そうだな。早く帰ってお金貰って家でうまい飯を食おう」
……
…
街に戻るころには日は傾いて夜が顔を出す時間になっていた。それでも町は活気づいて、人は行きかっている。
「すごい、一日で退治してくるなんて。でもその大量の頭は何なの?」
「討伐した証として何か必要かなって」
「それなら耳とか鼻で良いじゃない。悪趣味な将軍じゃないんだから頭じゃなくったって…」
「あ…」
言われて気付く愚かな俺。確かに耳とか鼻でも討伐の証にできる。なのにご丁寧に頭を持ち帰るなんて。
「討伐の確認ができるなら何でも良いからさ。そう落ち込まないで。ほら、今回の報酬よ」
ずっしりと金貨がたくさん入った袋を渡される。これが命の重さか(ドヤッ)
「おうおう兄ちゃん、そのクエストは俺たちも受けたんだぜ。横取りはいけねぇな」
振り返ると俺よりも頭二つ分くらいデカい大男が立っていた。
「賞金稼ぎならルールを守りな。この街は俺たちの縄張りだ」
なるほど…受けようとしていたクエストを俺にクリアされて悔しいわけか。
「ギルドの規定に反しているわけじゃあないから良いだろ」
「うるせぇ!!毎回こんなことされたら商売あがったりなんだよ」
胸ぐらを掴まれ足が地面を離れる。ちょっぴり苦しい。
「上がりの5割で放してやるよ」
周りのみんなが制止をしないところからこいつらはこの辺じゃあ有名な悪たれなんだな。暴力沙汰は起こしたくないけど仕様がないよね。
両手で相手の腕を掴んで思い切り握る。筋肉に指がめり込んで骨が悲鳴を上げる。
「これは俺が稼いだ金です。家族を養うために稼ぎました。それを違法紛いな行為でたかろうとするならキレますよ」
「いでででで!!」
「きちんとごめんなさい出来たら離します」
「だ、誰が言うかよ!!こいつをやっちまえお前ら!!」
そう言うと思っていたので掴んだ腕をねじって出口に向かって投げて外に吹っ飛ばした。
「かかってこいや!!」
そこからはあっという間だった。鞘に収めたままの刀で襲い来る蛮族をボコボコにしてやった。もう張れる場所もなくなった顔を踏みつけて見下す。
「もし次こんなことをしてみろ…近くの川にお前らの死体が浮かぶぞ。良いな?」
「ふぁ…ふぁい……ごめんなさぃ…」
この時はこれがとんでもない事になるなんて思ってもいなかった。
今回も最後まで読んでいただいてありがとうございます
次回予告
善も悪も信仰も欲望も全てが混ざり合って煮えたぎっているのが戦争だ
戦争に勝者は存在しない
存在しているのは偽善者だけだ
だから俺は立つ
真の正義は我に有り!!
次回『戦場』
期待するだけ無駄なんだ
だって嘘予告だもん