からかい上手の高木さん〜戦い上手の高木さん〜 作:ナチュラル
チリリリリと朝のアラーム時計がオレを叩き起こす。
「なんだよ・・煩いなぁ」
オレは嫌々ながらも、アラームを止め、身体を起こす。
朝早くに起きて、オレが一番最初にすること。
それは、顔を洗うことでも、歯を磨くことでも、朝食を作ることでもない。
「・・よし」
ゴシゴシと洗面所で何かを必死に磨く。
「2年前と比べたら、大分綺麗にはなったな」
それは、ハンカチを洗うことであった。
あれから、2年の年月が流れた。
オレはあのまま意識を失い、目を覚めした時には【ショード】と言う町の病院のベッドの上だった。
状況を整理できず慌てふためくオレに医者が教えてくれた。
(君は軍によって救助された村の生存者だ)
そうらしい。
しかし、何か違和感があった。
オレの覚えている限り、軍人らしい軍人は奴らに皆殺しにされたのだ。
それも、奴らを倒したのはもっとも軍人とは掛け離れた容姿をした女の子だった。
それだけは、覚えていた。
顔まではハッキリと覚えていないが。
オレは救われたのだ、とこの時再び再確認する。
すると医者はオレに血に濡れた真っ赤なハンカチを見せるのであった。
(なっ!)
血を見るのは嫌だ。
先日の恐怖も、しっかりと覚えている。
その血に濡れたハンカチを見て、オレは1度目を逸らしてしまう。
しかし、その恐怖は案外簡単に慣れる事になってしまう。
(これは、君を助けた軍人のハンカチだ。このハンカチで血まみれだった君を洗ったと言っていたよ)
それは、恐らくオレを助けた、彼女なのだろう。
なら、このハンカチは彼女の私物だ。
それを何故先生が持っているのか気になったが、自分から打ち明けてくれた。
(伝言だよ。その人から君にこう言ってくれと頼まれた)
【ちゃんと洗って返してね】
それから、オレは毎日欠かさず、朝起きたら必ずこうして彼女のハンカチを洗っている。
大量の血を吸い込んだからか、最初はこれでもかという程洗っても血は取れなかった。
しかし、何度も何度も繰り返しているうちに、少し変化が訪れる。
ハンカチの端の方に、洗い流された血の後から何かが浮かんで見えた。
そこには【I】と書かれていた。
最初はなんなのだろうと思った。
しかし再びそれを繰り返していると、徐々に理解していく。
これは、彼女の名前だ。
最初に【I】を発見して1年ほど経った後、今度はようやく最初の頭文字であろう【T】を発見する。
【T】と【I】の間にあるスペースを考えると、これはローマ字なのだろう。
【T〇〇〇〇I】
Tから始まってIで終わる。
もしこれが全て解読出来れば、軍にいる人の中からその人を探し出すことが出来る。
もし会う事が出来れば、死にたがっていたオレでは見せることのなかった、今のオレとしてきちんと生きた者の笑顔で御礼が言える。
オレはそう願う内に、それが夢に変わっていた。
オレには、両親はいない。
血の繋がっていた者は全員死んだ。
今こうして生きていけるのは彼女のおかげだ。
幸い、彼女に連れてこられたこのショードという町は軍事都市。
この日本での最大の防衛都市であり、基地であり、もはやここが日本の首都と呼べる都市であったのだ。
この2年間で、色々と分かった事がある。
あの化け物の名前は【メンサーギカタ】
最近、政府からの直々な発表があったのだ。
そして、今この日本で唯一生きている都市は、東京でも大阪でもない。
このショードしか無いのだと知った。
海の向こうの外国でも、いくつか生きている国はあるのだろう。
しかしそれと同時に、人類は今、極限の状態なのだということも分かった。
そんなオレが15の歳を迎えて、こんな時だってのに、1つ夢が出来たのだ。
いや違う。こんな時だから、か。
オレは、軍に入る事にした。
彼女に会いたいから、という目標もある。
しかしそれとは別に、オレは人類を守る。地球を守る以上に、彼女を支えなければ行けないのだと。
彼女はオレにとってまさに、【希望の星】そのものだ。
彼女がいなければ、この星は終わる。
オレが世界を救うのではない。
彼女が、このハンカチの持ち主が地球を平和な星へと変えるのだと。
オレはそれを信じて、彼女を支える男になると誓う。
だから、まず会う。
そう決めたのだ。