やはりメインヒロインは八幡を見捨てない 作:小松菜☆キック
「ああアナタ、イク、イッちゃうぅぅっ」
勿論相手は葉山だ。
こんなの、こんなの俺の青春ラブコメじゃ無いっ!!
比企谷八幡は夢精しながら起きた。
比企谷八幡は三十歳である。
もっと正確に言うと、比企谷八幡の身体に入っている精神は三十歳のおっさんである。
比企谷八幡に三十歳にもなって結婚もしていないどころか、彼女が出来たことも一度も無いおっさんが憑依したのだ。
この世界に来たからには主人公である己を中心に物語が進むはず。
何せ俺は八幡だ。
俺は推しヒロインの雪乃とイチャイチャしてやるぜ。
ん? ピンク色の方? 捨てヒロインなんか葉山にでもくれてやるよ。
八幡は何処かで見たことがあったような今日の夢を振り払うように、己こそが雪ノ下雪乃に相応しい男だと改めて思い直した。
今の八幡の肉体は二十歳であった。
大学にも進学せず、取り敢えず受けた公務員が受かったのでそちらに行ったのだ。
給料は高くないし、意外に残業も多いが、公務員は公務員だ。
能力が低いという理由でクビになることは無い。
勿論、そういった考えで入ってくる連中は他にもいないわけでは無いが、ある程度の倍率の試験を実際に受かって入っては来ている。
己がなれないという理由で下級公務員如きに嫉妬して不平不満で毎日を浪費している連中よりは、まだ八幡は幸せと言えた。
ある日、偶々、そう偶々雪ノ下雪乃の家の近くを通った。
雪ノ下雪乃は大学を卒業して四年後に、平屋の一軒屋を購入した。それだけ稼げる仕事に就いていると言うことだった。
何やら塀の向こうから、くぐもった声がする。
八幡はこっそり中を覗き込むと、雪ノ下の後ろに葉山が抱き込むように押さえつけてから、葉山は懸命に腰を動かしていた。
八幡は一瞬何が何だか解らなかった。いや、解りたくも無かった。
だが、これはもしかしたら雪ノ下が襲われているのでは?
八幡はそう言う可能性に辿り着いた。
八幡は勢いよく雪ノ下邸に駆け込むと、
「あっああ、あなた、いいわぁっ」
「ああ、雪乃も最高だよ」
葉山は後ろから雪ノ下を抱きしめるような格好のまま、口づけをかわし、その直後、雪ノ下は激しく痙攣した。
そこで漸く気が付いたかのように、二人は八幡を見た。
「――――――――見てたの…?」
「…何時からだ?」
八幡は己の思い込みが勘違いだったことに気が付いた。
周知や怒りややるせなさなど、様々な感情が今になって一気に押し寄せた。
「葉山ァッッ!! 何でお前が雪乃とっ!!」
そう叫んだ八幡に、困惑したように葉山と雪ノ下は左手に付いた、おそろいの指輪を見せる。
それは、婚約指輪だった。
八幡には婚約指輪と結婚指輪の違いはどうにもわからなかったが、どちらにせよ、それは八幡の敗北を示していた。
「どうして俺の雪乃が処女じゃ無いんだ。どうして俺のモノじゃ無いんだよぉぉぉ!!!!!!」
そんな八幡の絶叫に、葉山はにこやかに答えた。
「なあ比企谷、俺の中古の穴で良かったら使ってみる?」
その言葉は八幡に葛藤を与えた。
お情けでも、雪乃とヤれるなら…。いや、それでも――――。でも、こんなチャンスは…。
八幡は悔しそうに、
「じゃあ、貸してくれよ」
と答えた。
それを聞いた葉山隼人は雪ノ下雪乃を置いて、家の中に入っていった。
八幡は残された雪乃に近づこうとしたが――――――――――――――
「気持ち悪いのよ、負け犬」
雪ノ下の言葉で身体が凍ったように動けなくなった。好きな女からの軽蔑の言葉は、それ程の衝撃を受けた。
その悲しみが怒りに変わろうとしたとき、葉山が戻ってきた。
「コレ、使えよ。あげるから返さなくて良いよ」
そう言って投げられたのは、オナホールだった。
それは確かに
女である雪ノ下には力で押さえ込む自信があっても、葉山にとても叶うイメージが八幡には浮かばなかった。
そうしている間に、再び葉山と雪ノ下はまぐわい始めた。
興奮した八幡は、ズボンと下着を下ろし、顔を真っ赤にしてお粗末な己のブツをオナホールでしごき始めた。
そして――――――――――
「ヂグジョーヂグジョーヂグジョーッッ!!!!!」
そう言って果てて気を失った。
そこでピタリと葉山と雪ノ下は性行を止めた。
いや、まだ少しだけゆっくりとは擦り続けてはいたようだった。
「昔はこうでは無かったわ」
「ああ、一番可哀想なのは、本来の彼だ」
二人が言うとおり、嘗ては比企谷八幡は、正しく比企谷八幡であった。
しかし、いつからか、急に乗っ取られたように別人となった様に振る舞う事があった。
そういう時には決まって、八幡の中に入っている
最近では、本当に結婚をしようかと互いに思い始めてはいるが、本来は雪ノ下雪乃による本物の八幡を救う為に葉山隼人に持ちかけた作戦だった。
きっと、目を覚ませば本来の八幡に戻るのだろう。――――――――そして暫くすればまた、何かに乗っ取られる。
それでもきっと、元の八幡を知る人々は元の八幡を救う為に足掻き続けるのだ。
八幡を乗っ取る何者かをはじき出す為に、足掻くことを諦めはしないのだ。
雪ノ下雪乃が、そうしたように。
完
シリアスでごめんね