「じゃあ、桜。電気消すぞ」
私のはい、という返事と共にぱちりと部屋の明かりが消える。二人しかいないこの部屋を静寂と薄い月明かりだけが支配する。
「うー、さむさむ」
軽く腕を擦りながら、先輩が足早に私の入っている布団へとやってくる。軽く毛布をめくってそれを迎え入れた。
「ん、ありがとな、桜」
そうして二人で横になって布団をかぶる。柔らかい毛布の感触と、肩から伝わる先輩のぬくもりが心地よい。最近は雪もちらつく季節だけれど、こうして先輩といればその体温だけで寒さなんて吹き飛んでしまう。
最近は、こうして先輩の部屋で寝床を共にするようになった。建前上は一人だと寒いからという理由だが、本当はいつまでも先輩と密着することに照れてばかりなのはどうかと思ったからだった。
おかげで今では、ほとんど恥じらいもなく先輩と同じ布団で眠れている。
「ふふ、やっぱり二人で寝ると暖かいですね」
「ああ、桜があったかいおかげだな」
先輩はそう言ってくしゃりと私の髪を撫でてくれる。
「ん……ありがとうございます、先輩」
先輩は私の言葉を聞くと、満足そうに優しく笑った。その、凛々しさの中に柔らかさを含んだ表情が、月明かりに照らされて思わず見惚れてしまった。
と。
「くしゅんっ」
ぼーっとしていたせいか、くしゃみをしてしまった。そういえば、今日はいつもより冷え込む。先輩と一緒にいるおかげで心はあったかいけれど、体の方の寒さはどうにもならない部分もある。
「あ、大丈夫か、桜? もうちょっとこっちきてくっついたほうがいいんじゃないか?」
「い、いえ、大丈夫です。ちょっと──くしゅっ」
「ほら、大丈夫じゃないじゃないか。我慢しないでこっちきな」
「は、はい……」
少し照れつつも、先輩と体をくっつける。
じんわりとした暖かさ。先輩は私があったかいと言ってくれたけど先輩にはかなわないと思う。身体の暖かさももちろんだけれど、先輩が与えてくれる安心感は何物にも勝るものだから。
「あの、先輩」
「ん、どうした? もしかしてまだ寒いか?」
だから、今日はもう少しだけそれに甘えたくなった。
「はい、まだちょっと寒いんです。──だから、その、抱きしめて欲しいな、って」
ちょっとわがままなお願いだったかな、と一瞬不安になったけれど、先輩はうん、とうなずいて優しく抱いてくれた。
「どうかな、桜。これで寒くないかな」
「はい、もう全然寒くないです。これでよく眠れそうです」
「ん。それじゃあ、おやすみ、桜」
「はい、おやすみなさい。先輩」
就寝の挨拶をして瞳を閉じる。先輩の温もりに包まれているからか、私は夢の中へとすっと入っていった。
「ん……」
不意に目が覚めた。ぼんやりとした頭で辺りを見ると、窓から月明かりが差し込んでいるのが見えた。枕元の時計で時間を確認すると、まだまだ朝には遠い時間。下手に起きて寝坊するのは良くないから、再び目を閉じる。
──と。
「あれ?」
そこで、自分が先輩に抱きしめられていることに気付いた。驚いて思わず声を上げそうになったが、先輩を起こすわけにはいかないと、ぎりぎりで抑えた。
……ああ、そういえばこうしてほしいと言ったのは私だったっけ。寝起きだと頭がうまく働かなくて困る。
気持ちを落ち着かせるようにほぅ、と一つ息を吐く。それでひとまず心臓の高鳴りはおさまった。
「…………」
あとは寝るだけなのに、目を開けたまま数秒停止してしまう。その原因は目の前で無防備に寝息を立てている先輩だ。
いつもはかっこよくて頼りがいがあるのに、今は可愛らしいその様子に思わず見入ってしまう。そして私の意識はだんだんと軽く開いた唇へと吸い寄せられていく。
「先輩……?」
恐る恐る声をかけるが返事は無い。ちゃんと眠っているのを確認すると、自然と私の顔はゆっくりとそこへと近づいていく。寝てる先輩へこんなことをするなんていけないとわかっているのに、その動きを止めることができない。
「──」
気付けばもう唇同士の距離は一センチも無くなっていた。規則正しい先輩の寝息が私の唇にかかってどきどきする。
「んっ……」
そして思い切って自分のものを先輩へ押し当てた。
くちゅ、と僅かな水音とともに柔らかな唇の感触に受け止められる。唇の先だけの甘い接触。ただそれだけなのに、私が抱いていた躊躇いは、一瞬で崩れ落ちてしまった。
「ん……む、ぅ……」
少しだけ口を開けて、下唇を先輩の唇の間に差し込む。そして甘噛みでもするように、はむ、と啄んだ。ふにゅ、と少しだけ帰ってくる弾力が心地いい。
一度だけじゃ当然足りなくて、幾度となくそれを繰り返す。それを続けるほどに、その行為は熱を増していき、ぴちゃ、ぴちゃ、と弾けるような音が部屋に響く。
「んっ、は、む……っ、ぅ、ん……っ」
先輩の意思を無視してこんな行為に耽っていることへの罪悪感は、いつの間にか蝋細工のように溶けて無くなっていた。起こしてしまうかもという不安さえどこかへ吹き飛んで、愛しいこの感触をいつまでも味わっていたいという気持ちで頭がいっぱいになってしまっている。
しかし、貪欲な私はさらに濃厚な感触をも欲しがってしまう。唇だけじゃなくて、その口のなかに眠る舌までも味わいたい。
「は──ぁ」
一度唇を離した。そこまで深い接吻でもなかったのに、私と先輩の間を銀色の橋がかかっている。その様は言いようのないほどに扇情的で、私の興奮が煽られる。
それに導かれるまま、快楽を求めるように口を開けて先輩ににじり寄る。先輩の唇は私の唾液で湿っていて、より魅力的に見えてたまらない。
「せんぱい……」
まるで磁石に引き寄せられるように、先輩に顔を近づけていく。そして再び私の唇は先輩のものへ──
「夜更かしは良くないな、桜」
「え──」
言葉の意味を理解する前に唇を塞がれた。そしてそのまま、先輩の方から私の口内に舌を侵入させてきた。突然のことに状況が飲み込めない私は、それを全く拒まずに受け入れてしまう。
口内に突き入れられた先輩の舌は、驚いて硬直した私の口内をほぐすように、優しく口腔を愛撫してきた。私の舌に挨拶でもするかのように、舌先でちょん、と触れられた後、奥の方から歯の一本一本まで丁寧に舐めとられる。
「ん……っ、ぁ、んん──ぅ、は……ん……」
その優しく、濃厚な接吻に、背筋がぞくぞくと震える。さっきまで一方的に先輩を貪っていた私の唇は、だらしなく開いたまま先輩を受け入れている。それはまるで、快楽という餌をただ享受する雛鳥のよう。
でも、そんなの仕方がない。先輩と交わすキスは、私にとってこれ以上ない至福の味。まるでアルコールのように、私の理性を溶かしてゆく。
「っは──ぁ、……あ、先輩……」
でも、私の理性が溶けきる前に、先輩は私の口内から舌を引き抜いた。名残惜しさに、少し泣きそうになる。
でも、そんな私の目を見据えた先輩の顔を見て、一瞬でとろけた頭が覚醒した。
「あ……せ、先輩!? 起きてたんですか!?」
「いや……あのな、あんな激しいキスされて起きないほど俺は鈍感じゃないぞ」
恥ずかしさ半分、呆れ半分といった顔で先輩は答えた。
「え……。私そんなに、その……してたんですか?」
「ああ。途中で止めるのが申し訳なくてできないくらい夢中になってた」
「そっ……そう、だったんですか……」
そう謝るが、恥ずかしくて先輩の顔が直視できない。自分ではそんなに激しいキスをしていたつもりはなかったのに、先輩が止められないくらいにしていたなんて、羞恥と罪悪感で逃げ出したくなる。
「さて、桜」
自然な動作でごろん、と転がされて、先輩に容易く上を取られる。見上げた先輩の目は、いつも通りでいるようで、悪戯を思い付いた子供のような色があった。
「寝てる俺にイタズラするなんて、桜はいけない子だな」
言葉では叱っている。でも、それとは不釣り合いに声色は優しい。
「だから、ちゃんとお仕置きしなきゃだ」
その言葉と表情に、ぞく、と背筋が震える。
「は、はい。なんでも、言ってください……」
「なんでも、か……。そうだな、それなら──」
軽い恐怖と、少しの期待。何をされるのかわからないという不安と、どんなことをしてくれるのだろうという高揚感が、どくどくと心臓を鳴らす。
「じゃあ、今日は俺と一緒に夜更かしの刑だ」
しかし先輩は、私の予想とは違う、楽しそうな笑顔でそう言ったのだった。
「……へ?」
拍子抜けして、思わず間抜けな声が漏れる。
「え、そ、それだけですか?」
「うん。それだけだ。桜はこれじゃ不満か?」
「い、いえ。そんなことはありません」
ぶんぶんと首を振って否定する。
お仕置きというには甘すぎる気もしたけれど、よく考えれば先輩はこれくらいのことでそこまでキツイことをする人じゃない。
……あれ。でも夜更かしと先輩は言ったけど、なぜだろうか。お仕置きというにはちょっとヘンな気がする。
「桜」
と、そこで思考から引き戻される。
「は、はい」
「桜はどうしたい? 夜更かしをして──俺と何がしたい?」
そう言う先輩の顔は、私の返答はもうわかっている様子だった。
当然だ。この状況でそんな聞き方されたら、私が答えることなんて一つしかない。というか、先輩は私にこう言わせるために「夜更かし」と言ったのだろう。
だったら、私はちゃんとその期待に応えなくちゃだ。
「なら──さっきの続きがしたいです」
私の返答に先輩は満足そうに微笑むと、再び私の唇を塞いだ。
「桜、脱がすぞ……」
「ん……はい……」
向かい合って座った姿勢で、先輩はそっと私の寝巻のボタンに手をかけた。そして一つ目のボタンを外された瞬間、どくん、と私の心臓が跳ねる。
何度経験してもこの、服を脱がされている時間だけはどうも慣れなくて、妙な気恥ずかしさがある。キスしてる時とか、その、行為の最中とかなら夢中になってるからいいのだけど、この時はまだいつも通りの気分が残っているから変に意識してしまう。
そして、先輩にボタンを外されるたびに、これから行うことを想像してしまって、心臓の鼓動がどくどくと速まっていく。それはさながらカウントダウンのようだった。
そして、寝巻のボタンが一番下まで外された。そして先輩は前立てに手をかけて、壊れ物を扱うようにそっとそれを脱がせた。ぱさりとそれが布団に落ちて、素肌が先輩の目に晒される。
「綺麗だな……桜」
先輩は愛おしむようにそう言うと、自身の上着も脱いで私の身体を抱き寄せた。
密着した身体から伝わる先輩の熱が心地いい。あったかくて、私を優しく包み込んでくれるその熱は、今は燃えるような激しさも僅かに、でも確かに孕んでいた。
「桜──好きだ」
先輩は私の耳元でそっと囁くと、ちゅ、と首筋に口付けを落とした。
「ん……っ」
ぶる、と身体が震える。肉体的な快感よりも、先輩の唇が私の身体に触れているという事実が、私の心に甘美な幸福感をもたらす。
そしてそれにゆっくりと浸るまもなく、まだ下着に覆われたままの両胸をそっと包まれた。
「ぁ……ん、先輩……」
直接触れられたわけでもないのに、気持ちよさに声が漏れる。そのまま軽い力でそっと揉まれると、痺れるような快感が走って心地いい。自分で触っても大した快感はないのに、先輩に触れられると、たとえ下着ごしでもびっくりするくらいに感じてしまう。
そんな状態のまま、先輩は私への愛撫を続ける。その行為には激しさはあまりなく、代わりに私をすべて包み込むような優しさがあった。ゆったりとした手つきで両の胸を包まれると、全身が砂糖菓子のような甘い快感に浸される。そして、お互いの唾液で湿った唇で素肌に口付けられれば、その熱で心も身体もとろかされてしまいそうだ。
「んっ……は、ぁ……せん、ぱい」
そして、先輩の愛撫に私が声を抑えきれなくなったころ、背中に手を回されて下着の留め具を外された。そのまま慣れた手つきで私の両肩から紐を外すと、私の胸を覆っていたものは重力にしたがってはらりと落ちた。
「桜、ここ」
ぽんぽん、と先輩は自身の膝を叩いて私を呼んだ。それに促されるまま、先輩の膝の上に腰を落とした。
私と先輩では先輩の方が背が高いから、こうして膝の上に座るとちょうど真正面に先輩の顔がくる。そして当然、お互いの視線は絡まりあう。
「桜」
再び、先輩が私を呼ぶ。そこには、私を受け止めてくれる柔らかさがこめられていた。それに導かれるように、私は自然と口を開いた。
「先輩──好きです」
そこに恥じらいはなく、ただ純粋に先輩へ好意を伝えた。すると先輩は、少しだけ照れたような表情をした後、優しげな笑みとともに私の髪をそっと梳いた。そしてするりと頭の後ろに手を回すと、ゆっくりと私の顔を引き寄せて口付けた。
柔らかいもの同士が触れ合う感覚。まるで溶けているかのような錯覚がするほど。でも、本当に一つになることはかなわない。それがもどかしくもあるけれど、だからこそこうして触れ合うことが愛しくてたまらない。
「ん──っ、ふ、ぁん……」
不意に胸に暖かい手の平の感触が触れる。今度は直接だから、その温もりが心臓まで届きそうなほど伝わってくる。
そうしてそのままゆっくりと手を動かされると、全身が震えるほどの快感が走る。その気持ちよさに声が漏れそうになるが、唇を先輩に塞がれているから恥ずかしい声が出ることはない。
「んっ……! んん、ぅ……!」
しかし、その口からも快楽が流し込まれ始めた。僅かな水音とともに、先輩の舌でわたしのものがとらえられる。そして、撫でるように優しく舐められる。まだそこまで深くはない、挨拶のような接触だったけれど、こんな風に抱きしめられている状態だからそれだけでもぞくぞくする。
しばらくその甘い舌同士の愛撫が続いていたが、だんだんとその行為に熱が入り始めた。先輩がより強く求めてくれるのもそうだが、私が我慢できなくなったのも大きい。先輩の頬に手を添えて、私の方へと引き寄せ深く舌を絡ませる。
「ふ……ん、んっ……ぁ、は、んんっ……!」
その濃厚なディープキスとともに、先輩の私への愛撫もより激しくなっていく。さっきまでは撫でまわすような動きだったのに対し、今は乳首をくりくりとこね回してきたりと、より快楽を与えるためだけの愛撫へと変わっている。
そんなことをされて平気でいられるはずもなく、快感を与えられるたびにびくびくといやらしく身体が痙攣してしまう。キスの端からは抑えきれないものが嬌声となってこぼれ出る。
そんな私の様子に先輩も興奮してきたのか、脚をもぞもぞと動かしているのがわかった。それを感じて、私は先輩のおなかに手を這わせた。そしてするすると下へ滑らせてゆき、熱い膨らみへとたどり着いた。驚いたのか、先輩の体がびくりと跳ねる。
それに応えるように、さすさすとそれを撫でまわす。するともどかしそうにそれがびくびくするのが可愛らしい。さらに、私がそうやって先輩のを弄ぶと、先輩もそれに返事をするように私へのキスや愛撫を激しくしてくれる。
その反応がたまらなく嬉しい。私をそうして求めてくれることや、私でそんなに興奮してくれていることが。
それでとうとう我慢ができなくなった。
「んっ、は──ぁ……」
唇を離す。ちゅぽん、と音を立てて先輩の舌が引き抜かれた。
激しく求めあっていたから、互いに吐く息が荒い。むわりと漂うお互いの吐息で、酔ってしまいそうだ。
「先輩……私もう──したい、です」
「ああ、いいよ……俺も、もう我慢できない」
お互いの気持ちを確認するように浅い口付けをする。そして、いったん離れて下にまとっているものを脱ぐ。寝巻も、下着もすべて取っ払って、一糸まとわぬ姿になった。
先輩の方に向き直ると、先輩も私と同じように衣服をすべて脱いだ姿だった。
「桜──綺麗だ……すごく」
先輩はその私の姿を見て言った。
先輩はよく私のことを綺麗と言ってくれる。それも、一点の曇りもない真っすぐな言葉で。
好きじゃなかった自分の身体だけれど、先輩がそう言ってくれるおかげで今は少しづつその気持ちも前向きなものへと変わり始めている。
「嬉しい、です──先輩」
その感謝の気持ちをこめて、再び先輩に軽く口付けた。そのまま、何度か啄みあってから口を離した。
「今日は私がしてあげますね」
くるりと先輩に背を向ける。そして、座っている先輩のものにそっと触れた。急に触れられたことにびっくりしたのか、勢いよくそれがびくんと跳ねた。
「ん……元気ですね、先輩の……」
そこへゆっくりと腰をおろして、お互いの秘所を触れ合わせる。くちゅ、と小さな水音。そのまま、少しずつ腰を動かして先輩と繋がっていく。
「んっ、あ、ん……っ、おおきい……」
熱いもので割かれる感覚。だけれどそこに痛みはなく、あるのは好きな人とひとつになることへの喜び。
そして、あっという間に私の濡れた場所は、先輩のものをすべて受け入れた。一番奥をこつん、とノックされるような感覚と、臀部が先輩のたくましい身体に受け止められていることが心地いい。
「せん、ぱい……動き、ますね……っん、ぁ……」
緩い動作で腰を動かす。浅く引き抜いて、ゆっくりと再び奥まで挿入すると、ぐちゅりといやらしい音がする。さっきまでの前戯で私のは奥まで濡れているから、その動きに抵抗はほどんどない。
「あっ、んっ……ぁんっ、や、せん、ぱ……い」
まだ遅い動きなのにも関わらず、意識が飛んでしまいそうなほど気持ちがいい。先ほどの先輩の愛撫で感度が上がっているせいだ。でも動き始めてしまったから、今更止めることなんてできない。後は、二人で達してしまうまで求め合うだけだ。
布団に両手をつけて腰を振る。激しい動きではないけれど、少し動くだけで先輩のものが私の中の形を変えて快感が走る。さらに、先輩も気持ちがいいのか、時々びくびくと痙攣するのが、電流のような刺激を私に与えてきて恥ずかしい声が漏れてしまう。
「っく、ぁ……桜っ……」
不意に、柔らかな熱が臀部に触れた。気付くと、先輩が両手で私の尻を包んでいた。そして、さわさわと撫でまわされる。
「ひあっ……! ぁ、んっ、先輩……あ、だめ、あん……は、あっ……!」
予想してなかった刺激に、鳥肌が立つほど感じてしまう。その快感に、身体の内側から押し上げられるようにひとりでに嬌声がこぼれ出る。ただでさえ先輩のもので気持ちよくなっているというのに、そんなことをされたらたまらない。
だというのに、私の腰はその動きを少しずつ激しくし始めた。当然快楽は膨れ上がり、身体の痙攣もいやらしい喘ぎ声もその熱を増してしまう。でも、今更そんなことになんか構ってられない。今は、先輩ともっと深く愛し合うことのほうが大事だから。
「あ……っ、ん、先輩っ……は、あ、いい、ですっ……気持ち、いいです……っん、あ……」
ぱん、ぱん、とふたつの肉がぶつかり合う。その度に一番奥まで先輩の熱いものが届いて、先端で脳天まで突き抜けるような快感が全身を襲う。優しく撫でるだけだった先輩の手は、いつの間にかぐにゅぐにゅと尻の肉を揉みほぐすような動きに変わっていた。
そうして中からも外からも先輩に弄ばれて、私が動いているにもかかわらず、まるで先輩に激しく求められているかのよう。その感覚が私の情欲の炎に油を注ぐ。その炎に焼かれて、理性なんか氷菓子のように溶けていく。
「あっ……んっ、せん、ぱい……っ、は、ぁ、あ、好き、です……っ、ぁん……」
もう、恥じらいすらもほとんど無くなっていた。繋がったところが擦れ合う度に、その快感に溺れるように声をあげる。そうしているうちに、先輩との性交で生み出される快感が身体の中にどんどん溜まっていく。それも、こうして求めあっているうちにぐつぐつと煮えたぎって、あと少しもしないうちに弾けて絶頂してしまいそうだ。
それは先輩も同じなのか、私の中でびくびくと震えるだけだった先輩のものが動き始めた。その動きが私の動きと重なって、私が先輩に尻を押し付ける時に先輩のが奥深くに突き刺さる。そのせいで、快楽はゴム風船のように膨れ上がった。
「あ、ぁっ、ん……あ、先輩、ひゃ、あんっ……! むね、さわっちゃ、あっ……わた、しっ、も、だめ……ですっ──」
ぎゅ、と後ろから抱きつかれて両の乳房を鷲掴みにされる。意識さえ溶けるほど交わって敏感になった身体には、ただ触られるだけで快感。だというのに、先輩は容赦なく二つの柔らかいものを愛撫してくる。
それは、絶頂が迫っている私の体にとって、最後の一押しになった。身体の奥から凝縮された快感の塊が、まるで火山のように湧き上がってくる。それにとどめを刺すように、私の身体に激しく先輩の腰が叩きつけられる。
「あ、先輩っ……わた、し……っ、もうっ──!」
「ああ……っ、桜、いっしょ、に──!」
どくん、と身体の芯まで壊れてしまいそうなほどの激しい衝撃が走る。その瞬間、快楽が全身を包んで、頭が真っ白になった。
「っあ──ぁ、は……っ……あ、でて、る……」
どくどくとおなかの中に温かいものが注がれる感覚。その熱が全身に広がっていって心地いい。
快感に侵されたせいか、身体に上手く力が入らない。でも、先輩が後ろからしっかり抱きしめてくれているから安心して余韻に浸れる。背中に感じる先輩の体温や、耳元に流し込まれる気持ちよさげな吐息を感じていると、いつまでもそうしていたいと思ってしまう。
「は、ぁ……せんぱい、すき、です……」
「ああ、おれも……大好きだ、さくら……」
ぼやけた頭で言葉を交わす。だけれど、その気持ちはお互いに嘘偽りのない純粋な気持ち。まるで綿菓子のように柔らかくて甘い幸福感。その感覚を失いたくなくて、絶頂の余韻がさめた後も、しばらくの間ひとつになっていた。
「お、おい、桜……ちょっとくっつきすぎじゃないか?」
「だってこれくらいじゃないと寒いんです。……先輩はこうされるの、イヤですか?」
布団の中でぎゅっと先輩に抱きついたままそう聞き返す。
「いや、イヤなんてことはない。まぁ、その……ちょっと照れるっていうか、なんというか……」
少し紅くなった頬をぽりぽりとかくその様子に、思わず笑みがこぼれる。先輩が私を抱きしめてくれる時は何でもないことのようなのに、どうやら私から抱きつかれるのは慣れないらしい。まあ、今はお互いに裸だから余計なのかもしれないが。
「うん、まあ、桜が風邪でもひいたりしたらしたら大変だし、今日はこのまま寝よう」
先輩は、そう言って私の髪を撫でた。
「はい、ありがとうございます。先輩」
でも、結局こうして私を受け止めてくれる先輩は、やっぱりかっこいいと思う。
そんな先輩の頬に、感謝と親愛の気持ちをこめて口付ける。
「それじゃあ、おやすみなさい。先輩」
「ああ、おやすみ。桜」