「はあ……」
ㅤ浴槽に背をもたれながら、俺は何度目かのため息を吐いた。そんなことをしても、今俺の頭を悩ませている問題は何も解決しないのだが。
ㅤ別段、深刻な問題という訳ではない。少なくとも、数ヶ月前に行われた聖杯戦争に比べれば、問題とすら言えない程の些末なことだ。
ㅤ桜はその身を縛っていた呪縛から解き放たれ、助かるはずのなかった俺自身もイリヤの「奇跡」によって命を救われた。さらに、遠坂の尽力もあって身体を取り戻すことすらできた。
ㅤだから、俺が今悩むことはないはずなのだが、そうもいかない。問題は俺のほうではなく、桜のほうにあった。
ㅤ彼女の身体は一度聖杯として覚醒した影響で、今なお「あちら」と繋がったままになってしまっている。そのせいで、魔力が余剰に供給されてしまうのだ。そのまま放っておけば、身体のほうが耐えきれずにパンクしてしまう。
ㅤつまり、その余剰分を外へ逃がす必要があるわけで、そのために手っ取り早いのは俺にそれを渡すことだ。体液の交換──つまり、性交によって。
ㅤその必要があることを桜から告げられたのがつい一週間前のことだ。その時はお互いに気恥ずかしくなってしまって、それ以上の話はできなかった。それに、俺の身体が自由に動かせるようになって間もなかった頃のせいもある。
ㅤそして今日、そのことも忘れかけていた時だった。いつものように俺と桜、それに藤ねえ、ライダーと夕食をとり、桜と二人で洗い物をしている時に、唐突に桜が口にしたのだ。
「あ、あの……今夜、私の部屋に来てくれませんか……?」
ㅤそう、顔を真っ赤に染めながら言われて、鈍感な俺でも一瞬で察した。とりあえず俺は冷静な感じを装って返答したが、心臓はバクバクと跳ねていた。正直、返答の声がうわずっていたような気もするが、動揺していたのでまともに覚えていない。
ㅤその後はお互いに無言のまま洗い物を終わらせ、桜はそそくさと風呂へ行ってしまった。その上、悶々とした気持ちのまま居間でテレビを見ていると、そんな俺にライダーが追い討ちをかけてきた。
「士郎。今夜は泊まり込みでバイトがありますので、サクラとごゆっくりどうぞ」
ㅤ……古道具屋で泊まり込みの仕事なんてあるのだろうか。なんていう突っ込みすら入れる間もなく、ライダーはあっという間に家を出ていった。おまけに「フフ……」なんて意味深な笑みを残して。
ㅤ藤ねえもさっさと帰ってしまい、とうとうこの家は俺と桜の二人きりになってしまった。それを意識しただけで、緊張でどうにかなりそうだった。
ㅤその後はテレビを右から左へ聞き流し、桜が上がるなり逃げるように風呂へ直行した。
「はあ……別にこんなに緊張しなくてもいいはずなのにな……」
ㅤもう何度目かもわからなくなったため息を吐きながら呟いた。
ㅤそう。何も桜とそういうことをするのは初めてじゃない。聖杯戦争中も桜に魔力を与えるために身体を重ねたのだ。
ㅤあの時と違うのは、今度は俺が桜からもらうということだけ。それだけのはずなのに、どうしてこうも身構えてしまうのか。
ㅤだがそんなことを考えても状況は変わらないわけで……というか、考えすぎで頭がくらくらしてきた。
「まず……のぼせてきちまった。もう上がらないと」
ㅤ風呂で倒れて桜に迷惑をかけたりしたら、それこそ本末転倒だ。いろいろ考えるよりも、とりあえず何か行動を起こすほうがいいだろう。
ㅤ──と、そう決心して桜の部屋の前まで来たわけなのだけれど、緊張は最高潮まで達していた。早鐘を打つ鼓動が、部屋の中にいる桜にまで聞こえてるんじゃないかと思うほどだ。
「ええい……!ㅤ俺がこんなでどうする……!」
ㅤそんな自分がどうしようもなく情けなく感じて、そう小声で呟いて自分を奮い立たせる。そのまま勢いに任せて、ドアを二回ノックして桜に声をかけた。
「桜?ㅤ入って、いいかな……?」
ㅤややあって、中で人が動く気配とともに桜が返事をした。
「あ……ど、どうぞ、先輩……」
ㅤごくりと唾を飲んで、ドアを開けて部屋の中に入る。部屋の電気は落とされていて薄暗い。ベッドは綺麗に整理されていて、桜はもう準備をしてくれていたようだ。
ㅤそれは桜自身を見てもわかることだった。目の前に立っている彼女は、その身を毛布で隠している。恐らくその下は下着姿か、あるいは──
「桜……えっと、魔力をもらって欲しいってコトでいいん、だよな……?」
ㅤ確認の意味で口にする。ずっと黙ったままというのはあまりにも気まずいから、とりあえず何か言ってみたといった感じだが。
ㅤだが、いざそれを口にしてみると、途端にこれから行うであろう行為を想像してしまってどぎまぎしてしまう。
「は、はい……ライダーを使役してるだけだと、消費が追い付かなくて、あふれそう、なので……その……」
ㅤその先はうつむいてしまってよく聞き取れなかった。だがそれも仕方ないだろう。暗さに目が慣れていないせいで桜の表情は読めないが、俺と同じで桜も恥ずかしさを感じているんだろうし。
ㅤというか、俺の方もそんな桜を見て、ますます緊張が高まってきてしまう。
「…………」
ㅤまずい。お互いになにも言えなくなってしまった。こういうのは男の俺が言うのが好ましいのだろうけど、なんて言えばいいのか。
ㅤいきなり「それじゃあ、始めようか」っていうのは違う気がするし、だからってこのまま押し倒すなんてのは論外だ。
ㅤ数分か、数十秒か、しばらくの間沈黙が訪れる。それを破ったのは、やはりというか桜だった。
「え、えっと……せ、先輩……その、私がしてあげます、から……ベッドに……」
ㅤ思った以上に直球な桜の言葉に、これ以上速くならないだろうと思っていた心臓の鼓動がさらにそのスピードを増す。
ㅤどうしてこれほど緊張するのか。正直、自分でもおかしいと思うほどだ。
「あ、ああ。わかった……」
ㅤだが、その理由を考えていられるほど俺の頭は冷静なはずがなく、桜の言葉に従ってぎこちない動作でベッドに腰掛ける。
ㅤすると桜は自分の身を隠していた毛布をぱさりと床へ落とした。
「桜──」
ㅤさらされた桜の肢体は、下着すら身に付けていなかった。俺の視線は、当然のようにそれに吸い寄せられる。
ㅤそれに気付いたのか、桜が恥ずかしそうな表情へ変化するが、そんなことで目を逸らせるような忍耐なんてあるはずもない。むしろ、そんな表情が堪らなく魅力的に感じる。
ㅤあの時もお互いの裸くらい見ていたはずなのに、まるで初めてのように見入ってしまう。それになんだか以前よりもまた成長した気がする。具体的にどこが、とは言わないが。
ㅤあれから時間が経っているのだから当たり前といえばそうなのだが、俺にとってはついこの間のことなのだ。
ㅤそうやって俺が勝手にどぎまぎしていると、桜がゆっくりと俺に近づいてきた。自らの身体を隠すことすらせず、ひたひたと歩いてくるその姿に、どくんどくんと心臓が跳ねる。
「ごめんなさい、先輩……すぐ、終わらせますから……」
ㅤそして、そう言いながら桜は俺の前にしゃがみこみ、ズボンのジッパーへ手をかけた。
「……待ってくれ、桜」
ㅤだが俺はそんな桜を制止した。
「え……せん、ぱい……?」
ㅤ戸惑いと、僅かな悲しみの混じった桜の表情。だがそれを俺に悟らせまいと、すぐに取り繕うような顔に変わる。
「そ、そうですよね、私とこんなことをなんて……イヤ、ですよね……」
「あ……その、違う。そういう訳じゃないんだ」
ㅤそう。イヤなはずがない。むしろ嬉しいくらいだ。でも俺が桜を止めたのは、さっきの彼女の言葉によるものだった。
「じゃあ、どうして……」
「その、何かのために桜とそういうことをするのはイヤなんだ。……せっかく、こうやって二人だけになれたんだから、ちゃんと恋人として──桜を抱きたい」
ㅤそれはあの聖杯戦争中にはできなかったことだから。恋人という関係にこそなったが、あの時の俺たちは純粋な愛情表情として身体を重ねられてはいなかった。
ㅤあの戦いから二人こうして帰ってこれたのだから、情を交わすのにもう理由なんて必要ないはずだ。
「先輩──」
「だからさ、桜。恋人同士としての『初めて』を、今ここで桜としたい」
ㅤ桜の身体を抱きしめて耳元でささやく。その感触があの時と何も変わっていないことに安堵した。
ㅤそして、変わっていないのは自らを卑下するところもだった。
『──先輩はこんなこと、イヤだろうって、わかってる、のに──』
ㅤあの夜もそうだった。桜は俺に触れられることに罪悪感を感じている。
ㅤ自分は汚れているから、そんな資格ないからと。桜がそう思ってしまうのは仕方がないとは思うけれど、俺はそれがとても悲しい。
ㅤだから、そんなものは今ここで取っ払ってしまおう。理由もなく触れ合うことなんて当たり前なんだと、桜に思ってもらえるように。
「い、いいんですか……?ㅤ先輩……」
ㅤ桜はおずおずと聞いてくる。抱きしめる腕に少し力を入れて、それに答える。
「いいも何も、あとは桜が頷いてくれるだけでいいんだ」
ㅤどうして俺は過剰な程に緊張していたのか。それがようやくわかった。
ㅤ桜と余計な建前も理由もなく一緒に夜を過ごすことに、俺は無意識ながら気付いていたのだ。そんなことは初めてだからと、こんなにも身構えていた。
ㅤそんなことに今になって気付くなんて、間が抜けているにも程がある。
「だから桜、いいかな。頷いてくれるか?」
ㅤ腕を緩めて桜の顔と真っ直ぐに向き合って問いかける。
ㅤ桜は、最初は躊躇うような表情で迷っていた様子だったが、少しすると優しげな笑みと共に答えてくれた。
「はい──嬉しいです、先輩」
ㅤそして、桜の方から俺に唇を重ねてくれた。それがあまりにも自然な動作で、気づくのに少しかかった。
ㅤでも、拒むことなんて当然せず、首の後ろに手を回してこちらからも唇を重ね合わせた。
「ん……っ、あ……」
ㅤ耳元に桜の甘い声が漏れる。まだ首筋へキスをしているだけなのに、その声に含まれる官能的な色で、どうしても劣情が昂ってしまう。
ㅤもう俺も服を脱いでいて、互いに裸でベッドで重なり合っている。押し倒した勢いのまま激しく唇を貪り合った後、互いの唾液で濡れた唇を桜の首へ這わせていた。
ㅤなけなしの理性は、その声や肌に伝わる桜の温もりであっけなく消え去ってしまいそうだ。だがそれも当然。だって桜の肌に触れるのはあの時以来なんだ。歯止めなんていつきかなくなるかわからない。
「せ、先輩……もっと──もっと、私のこと、さわって、ほしいです……っ……」
ㅤそしてそれは桜も同じのようだった。というか、俺よりも桜の方が我慢がきいていないようにも思えた。
ㅤ今の切ない声もそうだが、身体は熱く火照り、その荒い息遣いも先程のキスのせいだけではないだろう。
「ああ……わかってる。俺だって、もっと桜に触れたい」
ㅤ口付けをする場所を少し下ろしていく。首筋から鎖骨。そしてそこから、その豊満な胸へと。
ㅤ触れるだけの甘い接触なんてすっ飛ばして、ぴんと勃ったその乳首を強く吸い上げる。
「は……っ、あ……!ㅤせんっ、ぱい……!」
ㅤ身体を弾ませ、激しい嬌声をあげる桜。それがとても嬉しげで、俺の方も同じように昂ってきてしまう。
ㅤそのまま、もう片方の乳房に左手を這わせる。人差し指を頂点に添えて、柔らかなふくらみを手のひら全体で包む。
ㅤ成長したのは大きさだけではなく、感触もまた凶悪になったことを確かめながら愛撫する。柔らかいだけじゃなく、確かな熱と弾力をもつ桜の胸に触れているだけで理性が溶かされてしまう。
ㅤ桜の方も、理性を感じさせないような反応になってきていた。その口からこぼれる悩ましげな声はとどまることを知らず、少しずつその熱を増していく。
ㅤ特に、指や口でころころと乳首を転がしてやると、身体を震わせながら激しい声をあげてくれる。
ㅤそれで俺の方もやられてしまって、我慢できずに右手を桜の秘部へ手を伸ばした。
「ひゃあっ……!ㅤだ、だめ、せんぱい……そこ、はっ……!」
ㅤ触れた桜の陰部は、俺の想像以上に濡れていた。少し指を動かすと、ぐちゅりと音がする程だ。
ㅤその様子に思わず声を漏らす。
「う、わ……すごい、こんなに……」
「ご、ごめんなさい……あの、きもち、よくって……」
「いや、その……謝ることないぞ。……というか、俺でこうなってくれたんだったら、その……むしろ嬉しいかな、って……」
ㅤ我ながら、もの凄く恥ずかしいことを言ってしまった気がする。桜も同じようで、顔を真っ赤に染めて言葉に困っているようだった。
ㅤでも、そんな恥ずかしくなってしまうようなやり取りですらいとおしく感じて、桜に口付けた。
ㅤ俺の突然の行動に驚いたのか、桜は一瞬身体を強ばらせたが、すぐに優しく俺の唇にはむ、と吸い付いてきた。それが、俺の意図を読み取ってくれてのものかはわからないが、口付けは甘く溶けるようなものだった。
「ん、は……んく……」
ㅤ多少の唾液と共に唇を離すと、桜は俺の唇から垂れたそれを美味しそうに飲み込んだ。
ㅤそのどうしようもなく色っぽい仕草に、俺の理性も限界だった。
「きゃあっ!ㅤせ、先輩……?」
ㅤ桜の脚の辺りまで身体をずらす。そして多少強引に両脚を開いて、桜の陰部に顔をうずめた。
「だ、だめです……!ㅤそんなとこ……ひあっ、あ……んっ……!」
ㅤ何か言うのを遮るようにそこを舌で舐める。途端、桜の声に強い快楽の色が混じった。
ㅤそれで嗜虐心が刺激されたのか、俺は秘部に滴る愛液をじゅる、とすすった。少し下品だったかもと思ったが、桜のから漏れ出した蜜だと思うと、そうせずにはいられなかった。
ㅤ軽く喉で転がしてから飲み込む。少しすっぱいような味。不思議な感覚だけど、俺はそれがとても美味しく感じた。
ㅤそのままじゅる、じゅる、と音をたてながら桜の蜜を味わう。その度に、桜は羞恥と快楽の混ざった嬌声をあげてくれる。
「あっ、ん……や、だめ……そこ、き、きたないです……っ……」
「汚くなんかない。桜のここ、凄くきれいだ」
「うぅ……せんぱい……」
ㅤ桜だったら身体のどこだろうと汚いなんて思わない。頭のてっぺんから足のつま先まで、俺にとっては全て愛しいものだから。
ㅤ桜は俺の言葉に観念したのか、強張らせていた身体の力を抜いた。
ㅤ両手の指で割れ目をそっと開く。湿った音をたてながら、その中が少しずつ見えてきた。
ㅤ綺麗なピンク色をした肉がひくひくといやらしく動いている。それがまるで奥へと誘っているように見えて、欲望を抑えるのに必死だった。
ㅤ完全にそこを開くと、微かなボディソープの香りが漂ってきた。桜はこうなることを予想してここも洗っていたんだろうか、なんてことを想像してしまう。
ㅤだがそんなものも、隠しきれない濃い桜の香りでどこかへいった。それが俺の頭をおかしくしていく。身体全体が桜と同じように火照ってきて、理性はどんどん溶けていく。
「や……は、はずかし、い……わたし、せんぱいにぜんぶ、みられて、る……」
ㅤ口ではそう言いつつも、心無しかその言葉から嬉しげなニュアンスを感じ取った。さらに、その言葉と同時にひくついた桜の秘部に、もう歯止めなんかきかなくて、指と舌でそこを愛撫し始める。
ㅤ陰唇の少しふくらんでいる部分。そこを覆っている皮をそっと剥いて、隠れていた陰核をあらわにする。
ㅤそこを舌で舐めると、淫らな声とともに桜はびくんと一際大きく身体を震わせて反応した。
「ん……桜、ここ、気持ちいいのか……?」
「き、聞かないでくださいっ……そんなこと……」
「あ……わ、悪い、桜……」
ㅤさすがに今の発言はアウトだった。顔を上げて確認した桜の顔は、羞恥で真っ赤に染まっていた。
ㅤただでさえ桜は恥ずかしくて仕方がないのに、どこが感じるか、なんて答えられる筈がない。
ㅤそう反省して、再び愛撫を始める。今度はその小さな膣口を。
ㅤ舌先をちろり、と差し込んでみる。すると、多少の抵抗はあれど、少しずつ奥へと入っていく。
「あ……ぁん、した、いれ、ちゃ……は、んっ、ぁ……」
ㅤ挿入した舌で膣壁から染み出す愛液を受け止める。表面よりも濃い桜の味。それをもっと味わおうと、舌を一旦引き抜いて口の中へ飲み込む。
ㅤ唾液と混ぜ合わせて飲み下すと、まるで俺と桜が一つに溶け合っているかのような想像をしてしまう。少し変態的かとも思ったが、そんな妄想をしてしまうほど俺の頭もおかしくなってきたということなんだろう。
ㅤもう一度そこへ舌を這わせる。今度は指で陰核への愛撫も行いながら。
ㅤ先程よりも激しく舌を膣内で動かしながら、陰核を人差し指と親指で優しく刺激する。
「あっ……は、ぁんっ……!ㅤふぁ……あ、んっ……!ㅤせんぱいっ……だ、めっ、そんなに、した、ら……あっ、わたし……っ!」
ㅤ身体を何度も震わせながら、桜は快感で染まっていく。それと共鳴するように、きゅうう、と舌を締め付ける膣。
ㅤその反応から、桜の絶頂が近いことは容易に見てとれた。
ㅤここで焦らすような真似はしない。それもまたいいかもしれないが、今はただ桜を気持ちよくしてあげたいから。
ㅤ性交を真似るように、舌を膣内に出し入れする。じゅぶ、じゅぶ、といやらしい音が響き、同時に桜の声も熱くなっていく。
「だ、だめっ……!ㅤせんぱい、や、わたし、いっ、ちゃう……!」
ㅤ限界まで高まった桜の声。
ㅤそして、最後の一押しとばかりに、陰核を強くつまみながら舌を限界まで突き入れた。
「あ……っ、い、くぅっ……!ㅤあっ、ひああぁっ……!」
ㅤ絶叫にも似た声とともに、桜は激しく絶頂した。身体はびくんと強く跳ね、舌を包む膣は痛いと思うほどに締め付けていた。
ㅤ絶頂が終わっても、その余韻が桜の身体を包んでいるようだった。熱い吐息を吐きながら、時々ぴく、と痙攣する身体。
ㅤその様子を見て、ちゃんと気持ち良くしてやれたことへの達成感が湧き出てくる。でもまだこれで終わりじゃない。
ㅤ一緒に気持ち良くなって、初めて終わりなんだから。
ㅤ桜の横へぼふ、と倒れ込む。桜の顔を覗き込むと、未だ余韻が抜けていない様子だった。
「桜」
ㅤ声をかけるとようやく桜は気がついた。
「あ……せんぱい……?」
ㅤしかし、まだ意識は朦朧としている様子だ。俺のほうを向く目は視線が定まっていない。
ㅤだが、そうする内にだんだん意識が明瞭になってきたのか、顔がみるみる内に赤く染まっていく。
「あ……せ、先輩……私……」
ㅤ桜は先程のことを思い出した様子で、両手で顔を覆って言った。
「うう……先輩、あんなの反則です……」
「う……ごめん。久しぶりだったから、つい……」
ㅤとはいえ、少し度が過ぎてしまったかもしれない。途中から半分くらい理性が飛んでいってたし。
「……でも、とっても気持ち良かったから、いいです」
ㅤ……こういうことを笑顔で言う桜のほうが反則だと思う。危うく押し倒そうとする自分を抑えるのに大変だった。
ㅤでも、気持ち良くなってくれたのならいいか。
「──だから、次は私が先輩を気持ち良くしてあげますね」
「え?」
ㅤ桜の言葉の意味を理解する前に、桜に押し倒された。そして俺が何か言う前に、唇をふさいできた。
「ん、ちゅ……う、ん……は……」
ㅤしかもやや強引に舌まで入れて。桜らしからぬ貪るようなキスに、驚きを隠せない。
ㅤ俺が戸惑っている間にも、桜は俺の唇の中で舌を動かしている。口内の隅々まで舐めとるように、丹念に舌が這い回る。
ㅤそしてその舌先が俺の舌にぶつかると、否応なしに絡め取られる。すると途端に官能的な快感が全身を襲った。
ㅤそれだけじゃない。桜が俺の上に密着した状態で乗っかっているせいで、二つの胸の感触が直接伝わってくる。
ㅤこんなの、本当に反則だ。とどめとばかりに、桜の下腹部に当たっている俺のものは、桜が少し動く度になめらかな肌が擦れて、気持ち良くて仕方がない。
「ぷは……っ、……ふふ、先輩の、すっごい熱い……」
ㅤ唇を離した桜だが、今度は代わりにとばかりに屹立した俺のものを手で包んできた。そしてそのまま、上下にしこしことしごき始める。
「く……っ、桜……」
ㅤ突然の桜からの快感に声を漏らす。
ㅤただでさえ先ほどの桜の姿を見て限界なのだ。感覚が普通よりも敏感になって、より大きく快感を感じてしまう。
ㅤ正直、今ので出してしまいそうになっていた。寸でのところでこらえたが、このまま続けられたら我慢できる自信はない。
「さっきは先輩にいかされちゃいましたから、お返しです」
「さ、桜……う、あっ……!ㅤそれ、は、まずいっ……て……!」
ㅤ桜はそう言うと、股間に顔をうずめて熱く勃起した生殖器を口に含んだ。
ㅤさっき俺に絶頂させられたのが恥ずかしかったのか、先ほどの俺がしたように激しく口淫を始める桜。
ㅤいや、ただ自分だけ気持ち良くなったことを不公平だと思っているのだろう。
ㅤその気持ちは嬉しいが、いささか激し過ぎのような気がする。こんなのじゃすぐに出してしまう。
「くっ……!ㅤさ、桜……そんなにしたら……すぐ、にっ……!」
「んは……っ、いいですよ、だしちゃってください……ん、ちゅっ……ふ……ぅ……」
ㅤ桜はそう言うが、さすがにこんなに早く射精してしまったら男として情けない。俺は限界まで我慢すると決めた。
ㅤ桜の口淫は激しさこそ伴ってはいるが、甘美な快感を伝えてくる。熱い粘膜が触れるだけで、背筋にぞくぞくとした感覚が走る。
ㅤ桜が顔を動かす度に擦れる柔らかい唇の感触だけでも恐ろしい快感が襲う。そして、肉棒を奥まで飲み込まれ、喉に亀頭が当たると、もうそこで射精してしまいそうだ。その瞬間を想像するだけでも快感だった。
ㅤじゅぶ、じゅぶ、と音をたてる、性交のような桜の奉仕。だが、時折べろりと舐めてくる舌が、それとは違うことを思い出させる。
ㅤ口の動きとは全く別に這い回る舌は、獲物を絡め取る蛇を彷彿とさせる。快楽を毒のように与え、絶頂まで導くように俺を弱らせてくる。
「ん、あむ……はっ……あ、せんぱい……ちゅ、ん……もう、でそう、なんですね……」
ㅤ桜のそのどうしようもなく淫靡な愛撫に、もう限界だった。生殖器は桜の口の中でびくびくと痙攣し、もう少し強い快感を与えられてしまえばすぐにでも射精してしまう。
「く……ああ、このまま、いいかな……桜……」
「ちゅっ……、んは……はい、ぜんぶ、のんじゃいますから、どうぞ……ん、は、ふっ……」
ㅤ桜はそう言って、再度ぱくりと肉棒をくわえ込んだ。そして先ほどよりも激しく顔を上下させる。さらに、そのぬめった舌で鈴口をちろちろと舐め回される。
ㅤそれでもう我慢ができなくなって、じゅぶりと奥までくわえ込まれた瞬間に、どくん、と精液を吐き出した。
「ん、んんっ……!」
ㅤ桜は少し苦しそうな声を漏らしたが、口を離さずに俺の精を飲み込み始めた。
ㅤ熱い口内で精を受け止められる感触。それがあまりにも心地よくて、さらに白濁を注ぎ込む。桜はそれすらおいしそうに、こくん、こくんと喉をならして飲み下してくれる。
「桜……」
ㅤ俺が射精を終えてからも、桜は口を離さなかった。尿道に残った精をじゅる、と吸い出してくれている。
ㅤ桜のその丁寧な奉仕は、敏感になった生殖器には少しつらい。でも、目の前で嬉しそうにくわえている桜に、それが終わるまでこらようと思った。
「ぷ、はっ……はぁ……おいしい……」
ㅤようやく口を離した桜の表情は恍惚とした色に染まっていた。その顔を見て、再び情欲が昂ってきてしまう。だがそれも仕方がないことだろう。桜とこうなるのは本当に久しぶりなんだから。それに、桜とつながるまで枯れるつもりは毛頭ないのだし。
「いっぱい出ましたね、先輩」
「ああ。桜の口の中、凄く気持ちよかった」
ㅤ上体を起こし、桜の髪を軽くかきながら答える。
「ふふっ、それなら良かったです。……でも先輩の、まだおっきいですね」
ㅤ唾液でどろどろになった生殖器を撫でながら言う桜。その表情はどことなく嬉しそうだった。
「ああ。もっと桜が欲しくて、つながりたいって思ってるんだから当たり前だ」
ㅤ髪を撫でていた手を桜の頬へ下ろしながら告げる。このまま二人で愛し合いたいと。
ㅤそして、桜も俺の手に自分のを重ねながら答えてくれた。
「はい。私も同じ気持ちです。──私も、先輩とひとつになりたいです」
ㅤ俺が抱き寄せる前に、桜のほうから抱きついてきた。そして、互いに導かれるように唇を重ねた。
ㅤ少しの間、はむ、はむ、と啄み合ってから離す。でもすぐに足りなくなって、もう一度唇を合わせた。
ㅤ今度はディープキス。遠慮なんかせずに互いの口内に舌を突き入れる。俺の出した精がまだ少し残っているのか、ねばついた感触が舌に伝わる。
ㅤそれを二人の舌で混ぜ合わせて、唾液と共に飲み込み、唇を離した。
「最初は私が動きますから、先輩は寝ててください」
ㅤ桜は、肩に手をかけて押し倒そうとする俺をそうやんわりと制した。そして、俺の胸に手をそえて、軽く体重をかけながら俺をベッドに押し倒した。
ㅤそのまま、桜は脚を開いて俺のものの上にまたがった。二つの性器の距離は僅か。桜から滴る蜜が先端に落ちる。
「いれます、ね……先輩……」
ㅤ熱い吐息と混ざった、陶酔するような声。桜も俺と同じように、今から行う行為に興奮しているのだろう。
ㅤ桜の手が俺のものに優しく触れる。それと同時にゆっくりと桜は腰を下ろしていく。そして、掴んだ肉棒を上に向けさせて自らの秘部へ触れさせた。
「ん……っ」
ㅤびりびりとした快感が走る。濡れた性器がこうして触れるだけでも気持ちがいい。でも、もっと快感が欲しい。もっと奥へと進んでいき、桜と完全につながりたい。
ㅤ桜はその俺の気持ちを感じとったのか、手と腰を使って先端を膣へ侵入させ始めた。俺の胸に片手をつき、もう片方の手で肉棒をしっかりと掴みながら、腰を下ろして挿入させていく。
「あ、ん……おっき、いっ……」
ㅤずぶずぶ、と少しずつ桜の中へ導かれる。まだ浅く挿入されただけなのに、押し寄せてくる快楽は大き過ぎるものだった。それもそのはず、お互いのものは過剰な程に濡れている。だから、擦れ合うことで生じる快楽を妨げるものがない。
ㅤそしてその快楽は、深くへ進んでいく程に膨れ上がっていく。それは、だんだんと桜と繋がっていくことへの喜びと合わさって、心まで快楽に染めらていくようだった。
ㅤ桜の顔は、俺のものという異物を受け止めているにも関わらず、全く苦痛の色がない。そして、唇からこぼれる吐息は甘い快感を孕んでいた。
ㅤそうやって二人で快楽を共有しながら挿入するという行為は一分もかからなかった。そしてそれが終わると同時にやってくる幸福感。桜とひとつになれただけで、何者にも替えがたいほど嬉しかった。
「は……あ、ぜんぶ……はいりましたよ……先輩……」
ㅤ火照った顔を綻ばせて桜は言った。その幸せそうな顔に手を伸ばす。そしてその頬の曲線をなぞるようにさする。
ㅤその行為に特別な意味はない。ただ何となく桜に触れたかっただけ。
「ああ……桜からあったかいのが伝わってきて、なんだか凄く安心する」
「先輩……でも、あったかいのは先輩のほうが上ですよ」
「ん……そうかな。俺は桜のほうが熱く感じるよ」
「いいえ。とってもあつくて、私、溶かされちゃいそうです」
ㅤ互いに熱いって思ってるってことは、結局同じくらいということなんだろうか。まあ、どっちでもいいか。どっちかわからない程に、お互い興奮しているということなんだろうし。それに、今はただ、このまま桜と求め合いたい。
ㅤ頬に触れていた手ともう片方の手をそっと首の後ろに回す。そして桜の顔を俺の顔へ引き寄せた。
「じゃあ、一緒に溶ければいい。どっちかわからなくなるくらいに」
「ふふっ、それもいいですね、先輩」
ㅤそして、交わした言葉を確かめるように唇を重ねた。この接吻だけでも溶けてしまいそうな感触。ぴたりと吸い付くように重なる二つの唇は、激しく貪っているわけでもないのに快感を伝えてくる。
ㅤそれで少し我慢できなくなった。キスが終わるよりも先に、首の後ろに回していた両手を背筋の上に滑らせる。そして、その弾力のある桜の尻へ手を添えた。
ㅤその手に軽く力を入れて柔らかい尻を掴む。豊満な乳房とはまた違った感触だけど、こちらもこうして触っているだけで心地いい。
ㅤそれを両手で味わいながら、ゆっくりとその尻を動かす。激しくしたい気持ちは抑えて優しい動きで。それだけでも理性が溶けそうな快楽。
ㅤ少しの間そうしていると、今度は桜の方から腰を動かし始めた。唇はまだ重ねたまま、俺がさっきしたような緩やかな速度。でも、やはり自分で動かすのとは違う感覚だ。
ㅤ膣内の無数のひだは、まるで桜の意思で動いているように、生殖器に快楽を与えてくる。この遅い動きでも、油断していたらすぐに射精してしまいかねない。
ㅤたまらず、合わせていた桜の口の中へ舌を差し込む。桜はそれにさして驚いた様子もなく、俺の舌の挿入を許した。
ㅤ性器だけじゃなく、唇でも繋がって求め合う。その一体感がたまらなく気持ちいい。いつの間にか桜の両腕が俺の首に回されていて、俺たちは身体全体で重なり合っていた。
ㅤまだ動き始めて間もないというのに、既に溶け合っているような感覚に包まれる。身体に触れる桜の感触が全て快感に変わっていく。性器や唇はもちろん、柔らかい胸や、顔にかかる髪でさえ、全て心地いい。
「ん……っ、ふ、は……せん、ぱ……あっ、ん……」
ㅤ桜も快感が高まってきたのか、抑えきれない声がキスの合間に漏れていた。それと同時に、桜の動きと接吻が少しずつ熱を増し始めた。
ㅤそれにつられて大きさを増す快感。ただでさえこの姿勢は、桜の動きが伝わりやすいからなおさらだ。 でも、それが激しくなっていく程に、桜から俺を求める気持ちが伝わってくるようで嬉しかった。
ㅤそれに応えるように、俺も少しだけ腰を動かす。今は桜が動いてくれているのだから、攻めるような激しさはいらない。だが、それだけでも生殖器同士の刺激には変化が訪れる。
ㅤ桜の膣は俺の動きに合わせて柔軟に形を変え、奥へ突き入れると、子宮の入口がこつん、と当たって気持ちがいい。桜はそれにたえかねたのか、重ねていた唇を離した。そして俺の頭の両側に手を突いて激しく腰を振り始めた。
「はっ、ん、あん……せんぱい……ごめん、なさい、あっ、は……わたし、がまん、できなく、て……!」
ㅤ荒い息を吐きながら、桜は腰を前後に動かす。それに伴って、膣もきつく締め付けながら肉棒を攻め立ててくる。
ㅤ急に熱を増した桜の動きに、歯を食いしばって射精をこらえる。ただ突き入れているだけで快楽を与えてくる桜の中が、こんな激しく動いているのだ。伝わる快感は半端ではない。
「桜……いい、からっ……は、あ……さくらのっ、すきに、うごいて、いいから……!」
ㅤでも互いに気持ちよくなれるのなら、激しかろうと問題ない。快楽が高まっていくのなら、それに身を任せてしまえばいい。それで絶頂してしまっても、何回でも求め合えれば構わない。
ㅤそれと何より、目の前の桜をもっと見たかった。快楽で緩んだ淫靡な表情と、本能のままに激しく動く腰。その、恥じらいを捨てて乱れている桜を見ていたい。
ㅤだが、そんな桜を見ていると、知らず知らずのうちに情欲が昂ってしまう。そしてそれは桜からの快楽と合わさって、急激に射精感を引き上げてくる。
ㅤそれを紛らわそうと、桜の動きで揺れる豊満な双丘に両手を伸ばす。
「ふあっ……!ㅤだ、め……せんぱい……!ㅤいま、おっぱい、さわっちゃっ……あ、んっ、ぁ……っ、や、んあ……!」
ㅤびくん、とのけ反る桜の身体。それでも手は離さない。人差し指と親指で乳首をつまみながら愛撫する。
ㅤ桜は興奮で身体が敏感になっているのか、過剰な程の反応をしてくれる。だがその代わりに、俺が刺激を与える度に、膣が生殖器を強く締め付けてくる。
ㅤそのせいで、元々近かった限界はますます近づいてくる。でも、俺もタガが外れてしまったのか、胸への愛撫を止めることができない。柔らかい胸の感触も、その口から溢れる甘い声も、もっと感じていたいから。
ㅤそれに、このまま二人で達してしまうのも別に構わないと思った。俺も桜も我を忘れ、心と身体は愛欲に染まりきっている。だったらこのまま、高まっていく快楽のまま果ててしまえばいい。
「桜、く……おれ、もう……っ、いき、そうだ……!」
「は、はいっ……!ㅤわたし、も、あんっ……もう、だめ……は、ぁん……だめ、ですっ……!」
ㅤ両手で包んだ胸をわしづかみにする。桜にとっては少し痛いくらいのはずだが、それすら気持ちよさそうに身体を震わせる。
ㅤ俺の方も今まで我慢してきたのを取っ払って、激しく桜を突き上げる。それを甘い感触と強い締め付けで受け止める膣。
ㅤ互いの快楽も嬌声も限界まで高まって、もう耐えられなかった。
ㅤ快感が最も高まった瞬間、桜の一番奥へ生殖器を突き入れて、熱くたぎった精液を解き放った。
「あっ、ふあぁぁっ……!ㅤせん、ぱぁい……っ!」
ㅤそれと同時に、大きくその身体を反らせて、桜も絶頂を迎えた。絶頂の瞬間、強く生殖器を締め付けられて、もう一度びゅく、と射精した。
ㅤ二人で大きな快感を得る感覚。その一瞬は、本当に心と身体がひとつに溶け合ったようだった。
「せんぱい……ぁ……きもち、いい……」
「さく、ら……」
ㅤ絶頂の快感の後に俺たちを包む心地のよい余韻。それを二人で共有しようと、両手を桜の背中に回して、俺の上に倒れさせた。
ㅤ触れ合う身体から伝わる桜の温もりを感じながら、じんじんと軽く痺れる余韻に浸る。胸に顔を埋めている桜は、時々身体を痙攣させながら、甘い吐息を漏らしている。
ㅤその心地いい抱擁のまま、余韻が抜けきるまでしばらく二人でそうしていた。
「桜……気持ち、良かったな……」
「はい……気持ちよくて、先輩と一緒にいっちゃいました……」
ㅤ未だ朦朧とした意識のまま言葉を交わす。桜も同じ様子で、紡がれる言葉がどことなくおぼろげだ。それでも、そこに含まれる嬉しげな色を感じ取って、ちゃんと悦ばせてやれたと実感できた。
「でも、凄いです……先輩のまだとっても固い……」
ㅤ桜はそう言いながら軽く腰を動かした。ぬちゃりとした感覚が生殖器に伝わり、びくんと痙攣する。
「まあ……そりゃ久しぶりだし、一回じゃ足りない。まだまだ枯れてなんかいられないよ」
ㅤさっきの交わりだけでも充分過ぎる程に気持ち良かったけれど、心も身体もまだ桜を求めている。多分、単純に俺は飢えているのだ。だからこんなにも桜が欲しい。
「……じゃあ、その……今度は先輩からしてくれませんか?」
「ん、わかった」
ㅤ一度互いの繋がりを解く。桜がゆっくりと腰を上げて肉棒を引き抜くと、俺の出した精が桜の花びらからどろりとこぼれた。絶頂の感覚でかき消されてわからなかったが、かなりの量を出したらしい。
ㅤ桜は自分のからこぼれたそれを指ですくうと、ぺろりと舌で舐めた。それを口の中で軽く味わってから、おいしそうに飲み下した。
ㅤその後、桜は俺の上から降りると、俺の方に尻を向けてベッドの上で四つん這いになった。必然的に俺の目には桜の性器や、肛門までもがさらされる。その光景を前にして、昂る欲を抑えながら膝立ちになる。
ㅤ桜の尻を軽く掴み、そこへ肉棒を触れさせる。桜の呼吸で僅かに尻が揺れて擦れると、それだけで気持ちがいい。そこから少し位置をずらして、先端を入口へとあてがう。
「入れるぞ、桜……」
「はい、ください……先輩……」
ㅤそっと腰に力を入れる。互いの体液で表面まで濡れた性器は、容易く俺のものを受け入れていく。むしろ、俺のほうが奥へと誘われていくようだ。
ㅤそれに抗うことなく挿入していく。やはり桜に入れてもらうのとは違う感触だ。あれは飲み込まれていくような感覚だったのに対し、こちらは吸い込まれていくような感覚。
ㅤそれに理性がやられないようにこらえながら奥へ突き入れていく。増していく快楽に耐えながら挿入するという行為は、多少の苦しさを伴いながらも、心地のよいものだった。
「ん……あ……先輩、の……おく、まで……きて……」
ㅤそして桜の中からの愛撫に耐えて、肉棒を全て挿入し終えた。先ほど味わっていたとはいえ、桜とひとつになれたことは本当に嬉しい。
ㅤそれは桜も同じなようで、色気を孕んだ息を漏らしながら身体を震わせている。こうしていると、そういう幸福感みたいなものが互いに伝わってくる。だから、このままでも充分満たされた気持ちになる。
ㅤだが、そうは言っても俺たちは贅沢なもので、もっと大きい充足が欲しくなってしまう。でも、それを無理に遠慮する必要なんてない。今夜は二人で飽きるまで愛し合うと、桜と決めたんだ。
「桜、動くぞ」
「はい……たくさん突いて下さいね」
ㅤそのまま腰を動かす。どうしようか少し迷ったが、最初から飛ばした。さっきの交わりで二人とも身体は慣れているし、単純にこの体位に俺が興奮しているというのもある。
ㅤだから、躊躇いなんかなしに桜の中で激しく生殖器を突き動かす。柔軟な膣と過剰分泌される愛液で、その動きにはほとんど抵抗がない。
「あ……っ!ㅤはんっ、ふああっ……!ㅤせんぱいっ、あ、んっ、はげ、しい……!」
ㅤ桜の激しい嬌声には苦痛が少し含まれていたが、それよりも圧倒的に快感の色が大きい。そしてそれは、俺が膣奥を突く度に大きさを増していくように感じた。
ㅤだから俺も遠慮なんかせずに突き上げる。高まっていく快楽なんかお構い無しに、乾いた音をたてながら何度も腰を打ち付ける。
ㅤ桜のほうもそんな俺に応えるように尻を揺らしてくる。だが、それに合わせて形を変える膣が、また違った快楽を与えてくる。生殖器の様々な部位を締め付けたり、吸い付くような刺激をしてきたり、その変化は多様さを見せる。
ㅤ互いに快感を与え合う、甘い性交。それでいて獣のような激しさも帯びている。
ㅤそれに当てられて少しおかしくなったのか、俺は片手を桜の脇腹へ這わせた。しかし、途中でこのままの体勢では距離が足りないことに気付き、もう片方の手をベッドについて身体を前へ倒した。
「は、んっ……あ……え……?」
ㅤ突然の俺の行動に驚いたのか、桜は困惑の色を示した。だが、それに構わずにその顔へ手を添わせる。そして、人差し指を桜の口へ侵入させた。
「んぁ……は……ふ、ふぇん、はい……!?」
ㅤさすがに桜の口からは若干の抵抗があった。だがそれも当然だ。いきなり自分の口へ指を入れられるなんて、俺でも驚く。正直、どうしてこんなことをしたのか、自分でもわからない。後ろから桜を突くという背徳的な行為に、もっといけないことをしたかったから、かもしれない。
ㅤだが、桜はそんな俺の勝手な行為さえ、優しく受け入れてくれた。唇で指を挟み込み、口内に入った指先を柔らかな舌で舐めてくれている。
ㅤそこから伝わる未知の快感に、ぞくぞくとした感覚を覚えた。それがもっと欲しくて、自然と指をさらに深く突き入れる。それに対しても、桜からは抵抗が全くない。むしろ、嬉々としてそれを舐め回してくるようだった。
「う、ぁ……さくら……」
ㅤまるで指が性感帯になったように快感が伝わってくる。頭がぼうっとしてきて、正常な判断が出来なくなってきてしまう。
ㅤいつの間にか止まってしまっていた腰と共に、突き入れた指を出し入れし始める。そうして俺に伝わってきたのは、未だ感じたことのない、背徳的な快楽だった。指と性器から伝わる性的な快感はもちろん、桜に指を舐めさせながら犯しているという事実さえ快感へと変わる。
ㅤそれにつられて加速していく情欲。その勢いに任せて、腰のスピードを速める。
「ふぁ、は、ん……っ!ㅤんむっ、は、ふ……ぅ……!」
ㅤ俺の指をくわえながらも、抑えきれない嬌声が桜の唇から漏れる。多少苦しそうな色が混ざった声だが、今まで聞いたことのないそれに、ごりごりと強く生殖器を突き上げる。
ㅤ性交はだんだんと激しく、危うい色を孕んでいく。四つん這いになって俺を受け止める桜と、それに覆い被さって指を舐めさせながら犯す俺。そんな、どうしようもなく淫らな交わりをしていると意識するだけでも、おかしくなってしまいそうだった。
ㅤそして桜も、そんなふうに求めて合っているうちに理性が溶けてきたようで、俺の指への口淫が激しさを増してきた。舌で指の隅々までを舐め回しながら、しゃぶりつくように愛撫をしている。
ㅤそのせいで、俺が桜を攻めているのに、桜からも犯されているような、奇妙な感覚に包まれる。でも、それがとても気持ちよくて、このままそれに溺れてしまいたいと思う程だ。
ㅤいや、既に溺れているのかもしれない。桜から愛撫をされている部位だけじゃなく、桜と触れているところの全てから快楽が伝わってきている。
ㅤそしてその感覚は、必然的に絶頂の瞬間も近付けてくる。桜の中で動く生殖器は、既にびくびくと痙攣し始めていた。
ㅤそれは桜も同じのようで、きゅうう、ときつく俺のものを締め付けている。そして何より、舌足らずに俺の名を呼ぶ声が、限界まで熱くなっていた。
「ふぇっ……ふぇん、ふぁいっ……!ㅤん、は……ぁ……わら、ひ、わらひ……っ、ひっひゃう……!」
ㅤその言葉と共に、一層締め付けの強さを増す桜の膣。その無数のひだは、射精を促すように激しく攻め立ててくる。それによってもたらされる大き過ぎる快楽に、声すら出すことができない。
ㅤでもこれ以上無い程に、俺も桜も快感に染められている。なら、もうこのまま二人で絶頂してしまっていいだろう。互いに全身快楽漬けになったまま、気持ちよく達してしまえばいい。
「ふぇんふぁいっ……ふぇん、はい……っ!ㅤん、はっ……ふああぁぁ……っ……!」
ㅤびくん、と跳ねる桜の身体。その絶頂に導かれるように、俺も桜の中で果てた。どくん、どくん、と先ほど以上の勢いで精液を注ぐ。
ㅤそれがどうにかなりそうな程に気持ちいい。桜と密着した状態で、一番奥で射精する。それが桜も気持ちよかったのか、大きく身体を震わせて、再度絶頂したようだった。
「は、あ……んく……は……」
ㅤ二人揃って達した後のぼうっとした頭で、指先に違和感があることを感じ取った。なんとか意識を集中させて確認してみると、まだ桜は俺の指を舐めていた。
ㅤだが、桜はそれを無意識でしているようだった。舌や唇の動きに意思が感じられない。しかし、それでも相変わらず気持ちがいい。
ㅤだから、しばらくそうして指を桜の好きなようにさせていた。指先が桜の口内で溶けているようなその感触は、絶頂の余韻に浸るにはちょうど良かった。
ㅤそれから少し経って快感も抜けきった頃に、そっと桜との繋がりを解いた。さすがにずっとこの格好っていうのは、お互いに少しつらい。でも、桜の花びらから肉棒を引き抜いてからも、唇と舌で愛撫されている人差し指だけはそのままにしておいた。気持ちいいからというのももちろんあるが、こっそり覗いた桜の顔がどこか愛しげに俺の指を舐めていたからというのが大きい。
ㅤ少しの間、そんな桜の顔を横に座って見ていたが、だんだんとその目が意識を取り戻してきた。そして、自分がずっとそうして俺の指を舐めていたことに気付くと、慌てて口を離した。
「ご……ごめんなさい、先輩!ㅤ私、ずっと先輩の指を……」
ㅤ俺の方を向いて座りながらそう謝る桜。その顔は、申し訳ないという気持ちと、恥じらいの色が混ざっていた。
「いや、いいんだ。そもそもそうさせたのは俺なんだし、その……気持ち、良かったし」
ㅤ元々は俺の身勝手な行動が原因なんだ。本当は、それを受け入れてくれた桜に感謝しなくちゃいけないくらいだ。
「でも……」
ㅤしかし、桜は俺がそう言ってもなお申し訳なさげな顔をしている。
ㅤそう罪悪感を感じることはないと、俺は再度桜に言うが、それでも桜はその様子のままだった。
ㅤそこで俺はひとつ思い付いた。
「桜。ちょっと、手、貸してくれ」
「え?ㅤはい、どうぞ……」
ㅤ桜は突然の俺の言葉に、戸惑いながらも片手を俺に差し出した。それを俺は両手でそっと掴んだ。
ㅤ不思議がる桜を一瞥し、俺はその人差し指を自分の口へ向けさせる。それで桜も察したのか、「あ……」と声を漏らした。
ㅤだが、それでも桜には抵抗の色がない。それを確認してから軽く口を開け、その綺麗な指を口に含んだ。
「んっ……」
ㅤぴくりと震える指。それを安心させるように唇で優しく挟み込む。そしてほんの少しだけ唇を離し、もう一度唇だけでくわえる。
ㅤそうして、何度か甘噛みのような接触をした後、舌先で挨拶するように指先に触れた。それを拒む様子が無いことを確かめてから、そっと舌を絡ませた。
「あ……先、ぱい……」
ㅤ理性と快感の間で揺れるような桜の声。それを全て飲み込むように、深く指をくわえ込んだ。
ㅤ口内で強ばるそれをゆっくりと舐めていく。指の腹をそっとなぞるように、丹念に舌を這わせる。何度かそれを繰り返すと、桜から徐々に力が抜けていった。
ㅤそして今度は少し激しくしていく。と言ってもほんの僅か。舌を動かすのを少し速くしただけだ。しかし、桜にとってはそれだけではなかったようで、その目が快感に溶けていく様子が見てとれた。
ㅤそして桜の方からも少しずつ指を動かし始めた。軽く出し入れするようなその動きに、俺もさらに舌を激しく指へ這わせる。
ㅤそれに応えるように、桜の指もその動きを増していく。自分から舌に指を絡めてきたり、激しく抜き差ししたりと、だんだんとその秘め事はディープキスに似てきた。
ㅤだが、俺はそこで唇を離した。これ以上は、多分俺の理性が危うい。それに、本来の目的はもう終わったのだから。
「ほら、これでおあいこだ」
「え、あ……そ、そうです、ね……」
ㅤたどたどしい口調で言う桜。まだ先ほどの快感が抜けきっていないのかもしれない。
「で、でも……先輩……その、嬉しかったんですけど、私、あんなに恥ずかしいコト、してたんですね……」
「う……すまん、桜……」
ㅤ罪悪感は払拭できたかもしれないが、代わりに羞恥をより強めてしまったような気もする。というか今の桜の言葉で、俺もかなり恥ずかしいことをしたという事実にも気付かされてしまった。
ㅤそれでお互い気恥ずかしくなってしまい、二人して視線を落とした。だが、それがまずかった。
「あ……」
ㅤその声はほぼ同時に俺たちの口からこぼれた。その原因は俺の方にあった。
「先輩の……おっきく、なってます、ね……」
「あ、ああ……そう、だな……」
ㅤそれが先ほどの舌と指の戯れのせいなのか、それとも二人で絶頂したときから既にそうだったのかはわからない。
ㅤ先の交わりで充分満足していたはずなのだが、身体のほうはそうではなかったようだ。しかし、その事実を知ってしまうと、心のほうも桜が欲しくなってしまう。
「え、えっと……もう一回しますか……?」
「いや、でももうたくさんしたんだし……桜だって疲れてるだろ?」
「確かに疲れてないと言えば嘘になりますけど……で、でも……先輩だってそのままじゃつらいでしょう……?」
ㅤそんな、互いに遠慮し合うやり取りを続けること数回。確かに俺だってしたくないわけじゃないが、疲れている桜のことを思うとここで終わりにするのがいいと思う。
ㅤしかし桜はこういうときは結構強情で、俺はかなり押しきられそうになっていた。
「──それに、今夜は私と先輩の恋人同士としての『初めて』なんですから、二人で満足のいくまでしたいんです。心も、身体も」
ㅤそして、結局俺はその桜の言葉に負けた。それはまさにその通りといった言葉で、俺は何も言えなかったのだ。
「──ああ。そうだったな。それが一番大事だって、忘れてた」
ㅤそのまま二人で抱き合って口付ける。互いに何度か唇を重ね合った後、桜をそっと押し倒した。
ㅤ体力的にも恐らくこれで最後だ。だから、最後はお互いの顔が見えるのがいい。
ㅤ片手を使って桜のと自分のを触れさせると、湿った互いのものが音をたてる。ちゃんと桜のほうも受け入れられるのを確認して肉棒から手を離す。そして、両腕で桜を抱きしめた。
ㅤそうやって密着したまま、ゆっくりと腰に力を入れて挿入していく。その時に、俺たちの間に言葉はなかった。互いの表情だけで、「ひとつになりたい」という気持ちは充分伝わったから。
ㅤ三回目だからか、桜の花びらは驚くほど容易く俺のものを受け入れ、あっという間に奥へとたどり着いた。それと同時に、また桜へ口づけた。
ㅤすると、桜のほうから俺の口内へ舌を侵入させてきた。軽く口を開けてそれを受け止める。そしてそれを合図にしたかのように、俺たちは腰を動かし始めた。
ㅤぬちゅり、ぬちゅり、と淫らな音を結合部から漏らしながら、緩慢な動きで桜と交わり合う。動きが遅いとはいえ、快楽は大きい。その上、桜と深いキスまでしているから、すぐに脳は桜で染まっていく。
「ん、ふっ……ちゅ、ぅ……はっ……せん、ぱ……い……す、き……」
ㅤ俺が桜の奥へ肉棒を深く挿入する度、桜はおかえしにとばかりに熱く舌を絡ませてくる。そうやって互いを強く求め合う交わりがたまらなく心地いい。
ㅤそうして自然と腰の動きは速くなっていく。でも、求めるのは快楽だけではなく、愛情もだ。こうやって桜と身体を重ねていると、身体だけじゃなく心もつながっているような感覚になる。そしてつながった心は快楽でひとつに溶け合っていく。そこから伝わる桜の気持ちが、俺は欲しい。
ㅤ俺のその気持ちに、桜も強く応えてくれる。それは、俺と重ねている唇だったり、「好き」という言葉だったり、様々だ。
ㅤでもどんな形であれ、俺はその全てが愛しく思える。そしてそれと同時に、それをもっと欲しくなってより強く桜を求めてしまう。そうやって、性交は自然と激しさを増していく。
ㅤそうすると、俺の口内で響く桜の嬌声か熱くなっていく。それをもっと聞きたくて、少しの名残惜しさと共に唇を離した。
「ん、はっ……せんぱい……っ、は、あ、ぁん、すきっ……大好き、先輩……っ」
ㅤ途端、あふれだすように俺の耳に届く桜の声。それに急かされるように、肌と肌が激しくぶつかり合う。
ㅤその荒々しい性交に酔わされ、俺たちの目は互いのことしか映さなくなっていく。「桜」「先輩」と、幾度も名を呼び合って、互いに相手の心を自分に染め上げる。その、満たし、満たされる感覚が、おかしくなるほど気持ちよくて、どうしようもなく嬉しかった。
「先輩……!ㅤあ、ふぁ、んっ……せんぱいっ……!ㅤもっと……あっ、もっ、と……!ㅤわたし、をっ……!」
ㅤもう、快楽は限界近くまで上がりきり、俺も桜もすぐにでも絶頂してしまいそうだった。でも、まだ足りない、もう少し、とこらえながら求め合う。
ㅤ射精を我慢するのはかなりきついが、麻痺しかけている感覚は、それすら快感に感じてしまう。繋がった生殖器からは互いの体液がだらしなくこぼれ、俺たちの交わりの激しさを物語っていた。
ㅤでも、与えられる刺激が全て快楽へ変わっていくようになった俺たちに、そんなことはどうでもよかった。互いの頭にあることは、もう相手のことだけだった。
「せんぱい……!ㅤあ、ひあっ、は……っ、あ、わた、し、もう……!ㅤぁ、あんっ……もう、いっちゃい、ます……!」
「さく、ら……っ、く、おれも、だか、ら……いっしょ、に……!」
ㅤとはいえ、そうしているのも限界はある。いくらこのまま愛し合っていたいと思っても、こんなに激しくしているのだから終わりはやってきてしまう。
ㅤでも、ここまで来たらそれに無理に抗おうとはしない。再度桜と唇を合わせ、貪るように舌と腰を動かす。ぐちゅぐちゅと、口と性器から淫らな音をさせながら、互いに快楽を高めていく。
「んっ、ん──!」
ㅤそして、互いに導かれるように果て、ぎゅう、と締め付ける桜の中へたまりにたまった白濁を解き放った。桜の奥へ生殖器を突き入れて、何の遠慮もなく精を注ぐ。
ㅤ勢いは前よりは弱い。しかし、量はそれ以上だ。三回も出したというのに、その量には俺も驚いた。
ㅤそれを桜は俺の身体を優しく抱きしめながら受け止めてくれている。それに甘えるように、とくん、とくん、と何度も短い射精を繰り返す。それは、抱き合いながら交わしているキスと合わさり、甘い甘い幸福感を運んでくる。
ㅤそれに二人で浸りながら、長い長い絶頂にしばらく身体を任せていた。
「先輩、ありがとうございました」
ㅤ俺の腕の中で桜が不意にそう口にした。そこには控えめながらも、確かな親愛が込められていた。
ㅤお互い快感が抜けきった後、俺たちは一緒にベッドに入っていた。今夜はこのまま二人で眠りたいと、言葉にせずともわかっていたから。
「私、知りませんでした。こんな風に先輩と触れ合うことが、あんなに……幸せだなんて」
ㅤそのままの姿勢で桜は続ける。しかし、言葉とは裏腹に、その口調はどこか憂いを帯びていた。
ㅤでも、その理由はちゃんとわかっている。桜は自らの罪の意識から、自分が幸福を感じることに躊躇いを持っている。いや、躊躇いというよりも、もっと強い、そうであってはいけないという、強迫観念のようなものだ。
ㅤそれを払拭することは、俺にはできない。それに、それは桜が長い時間をかけて向き合っていくものだから。
「──そっか。そうだったんなら、俺も嬉しい。桜が幸せになってくれるのが、俺にとっての何よりの幸せだから」
ㅤだから、俺にできるのはそう言ってやることだけだ。桜の幸せを、俺は本当に願っていると。それで桜の罪の意識が消える訳ではないけれど、少しでも桜自身が幸せになろうと思ってくれたらいいと、俺は思う。
「先輩……嬉しいです。そんな風に、思ってもらって……」
ㅤ未だその言葉に陰りを残しながらも、桜は言う。そして、今度は顔を上げ、俺の目を見ながら確かな声で続けた。
「だから……だから、いいですか……?ㅤまた、こうやって先輩に触れても、いいですか……?」
「ああ。いいに決まってる。俺だって、桜に触れたいんだから」
ㅤその目を真っ直ぐ見つめ返しながら答える。桜は俺の言葉に、それを確かめるように目を閉じた。そして、今度は控えめに、だけど確かな笑みを浮かべて言った。
「ありがとう、ございます……大好きです、先輩……」
「──ああ。俺も大好きだ。桜」
ㅤそう言葉を交わすと同時に唇を合わせる。触れたのはほんの僅かの間だけだ。それでも、確かにお互いの気持ちは伝わった。
ㅤそれで俺も桜も満たされて、共に眠りについた。