「ふう……こんなもんか」
ㅤ洗濯物の最後の一枚を竿にかけて、一つ息を吐きながら呟いた。空からは三月の暖かい日差しが降り注ぎ、夕方辺りには乾きそうに思えた。
ㅤ今日はバイトは休みで、遠坂も時計塔へ発つ準備があるらしく、魔術の修行もなし。しかし平日であることが災いして、桜は学校でライダーはバイトだ。
ㅤだからいつも桜に任せきりにしてしまっている家事をしていたのだが、それもたった今終わってしまった。突然雨でも降ってくれば洗濯物を取り込むという仕事ができるのだが、それはそれで困るし、そもそも空は雲一つない青空だ。
ㅤそんなことを考えながら、外履きを脱いで縁側に上がる。
「あ……っと」
ㅤぼうっとしていたせいで、そこで日に当たらせておいた桜の布団を踏んでしまった。
ㅤしかし、そこで俺はその足をどけなきゃいけないはずなのに、少し固まってしまった。
ㅤこのままここに倒れたらとても心地いいんじゃないだろうか。そんな考えが頭をよぎる。
「……悪い、桜」
ㅤそして俺はその誘惑にあっさりと負けた。そのまま身体の力を抜いて柔らかいその布団に倒れ込んだ。
ㅤ途端に、ふわりとした感触に包まれる。知らず知らずの内に疲れが溜まっていたのか、自然とまぶたが落ちる。
ㅤそしてとどめとばかりに、日光の匂いと混ざった桜の優しい香りが鼻腔をくすぐる。それがもっと欲しいと、俺は無意識に布団に顔を埋めた。
ㅤそうすると、より濃くその感覚が伝わってきて、まるで桜に抱き締められているのかと錯覚する。どこか安心するその感覚は、俺には新鮮だった。
ㅤ思い返してみると、普段は俺の方が桜を抱き締めることばかりだ。桜のことを守ると誓っているのだから当然だが、たまには逆というのも悪くない。今度桜に直接頼んで──いや、それはさすがに恥ずかしいからやめだ。
ㅤそんなことを考えている内に、意識は眠りに沈んでいく。桜が家に帰って来るまではまだかなり時間があるから少しくらいはいいだろう。
ㅤそうして俺は暖かい陽だまりに包まれながら眠りに落ちていった。
「せんぱい……」
ㅤ心地の良い眠りの中で、これまた心地の良い声が聞こえた。普通、深い眠りの途中で起こされるっていうのは少なからず不快感を覚えるはずなのに、不思議とその声にそんなものはなかった。
ㅤそれも当然。それが桜の声だったからだ。好きな女の子の声なのだから、心地良いと感じるのは当たり前だ。
ㅤだがしかし、今その声が聞こえるってことは、俺は桜が帰ってくる時間まで呑気に昼寝していたということになる。それはいくらなんでも寝すぎだ。
ㅤ夕飯の支度、洗濯物の取り込み、やることはいっぱいある。そう思い、眠気を振り切って目を開けた。
「きゃっ、先輩!」
「うわっ、桜!」
ㅤしかし桜は俺の思った以上に近くにいた。具体的には顔は俺の目の前にあり、まるでキスをする直前のような状態。
ㅤそれに驚いて二人そろってがばりと身体を起こしたが、目を開けた瞬間は本当に口付ける寸前といった感じだった。
「す、すみません、起こしてしまって……」
「いや、いいんだ。むしろ助かった。夕飯の準備しなくちゃだよな……って、あれ?」
ㅤふと気が付くと、辺りはまだ明るい。体感だが、俺がここで寝始めた時とあまり変わっていないように見える。
「あ、それはまだ大丈夫です。まだお昼ですから」
「なるほどな……桜がいるからもう夕方になってるのかと──いや、ちょっと待て。桜、学校はどうしたんだ?」
ㅤこの時間、桜はまだ学校で授業を受けている最中のはずだ。行事などがあるわけでもなし、桜がこんなに早く帰ってくるのはおかしい。
「あ……その、早退、してきたんです」
「早退って……具合悪いのか?ㅤだったら部屋で休もう。すぐに身体にいいもの作ってやるから──」
「ちょ、ちょっと待って下さい、先輩……!」
ㅤ立ち上がろうとする俺を、桜は慌てた様子で制止してきた。
「ん、どうした?」
「その、具合が悪い訳ではないんですけど……えっと……その……」
ㅤ言いづらいことなのか、桜は視線を反らして言い淀んだ。
「違うのか?ㅤだったらもしかしてズル休みでも──」
「ち、違いますっ、私そんなことしませんっ」
ㅤ冗談のつもりだったが、桜は少し怒った様子で否定した。
「悪い悪い。桜はそんなことしないってわかってるよ。それで、どうしたんだ?」
「は、はい……その、魔力の方が危なくて、先輩にもらってもらわないと……」
「あ……そ、そうなのか……」
ㅤなるほど。それは確かに早退してこなくてはいけないだろう。それに、先程言い淀んでいた理由にも納得がいく。
「ん……?ㅤでも桜、それは昨日とか、遅くても今朝には危なそうだ、って気付いてたんじゃないか?」
ㅤ桜はまだ未熟とはいえ魔術師だ。元々才能がある上に、ライダーや遠坂の手ほどきを受けていることもあって、少なくとも俺なんかよりは数段上の実力は持っている。
ㅤ自分の中の魔力量くらいはわかるはずだ。事実、今まで桜は危険な状態になる前にちゃんと俺に報告してくれていた。
「それは……はい、すいません、本当はわかってました。今日そのまま学校に行くのは少し危ないって」
「だったらどうして言わなかったんだ?ㅤ俺は今日一日暇だったんだし、言ってくれればもらってやることくらい問題なかったんだから」
ㅤ俺に今日予定が無いのは桜も知っていたことだ。特に桜が遠慮する理由はない。
「ごめんなさい……でも先輩、最近は色々無理していたように見えました。この前の私の誕生日だって、準備のためにアルバイトをいつもより多めに入れてましたよね?」
「う……まあ、そうだな……」
「ですから、久しぶりに一日くらいはゆっくりして欲しかったんです。……だから、その、さっきも先輩が寝ている間にこっそり済ませようかと……」
ㅤ桜は顔を伏せて制服のスカートを軽く握りながらそう言った。
ㅤ確かに言われてみればそうだ。ここ最近はゆっくり休んでいる日はほとんど無かった。桜が気を使うのは無理もない。
「確かにそうだな。桜の言う通りだ。無理させちまってごめんな」
ㅤ桜の頭に手を置いて、その髪を優しく撫でる。
「い、いえ……私の方こそ、せっかくの先輩のお休みを邪魔することになってしまってごめんなさい……」
ㅤしかし桜は顔を上げずにしゅんとした様子でそう言った。桜が謝る理由は無いのに。
「別に邪魔されたなんて思ってないよ。あんまりにも暇で困ってたくらいだしさ、することができたってのはいいことだ」
「そう、ですか?」
「うん。それに、その……昼間誰もいない家で桜とできるなんて、滅多にないだろ?」
「え……?ㅤあ……は、はい、そういえば、そうです、ね……」
ㅤ急に話題がそっちの方向に変わったことに、桜ははっとした様子で顔を上げた。しかしそれは一瞬で、またすぐに俺から目線を反らした。
ㅤでも桜のその仕草の理由は、先程までの申し訳なさとは違うだろう。桜は口元を隠すように片手を添えて、視線を庭の方へと泳がせている。
「えっと、どっちの部屋でするのがいいかな。桜はどうしたい?」
ㅤそんな桜の仕草や、昼間にすることへの緊張で俺も若干固くなってしまいそうになる。それを隠すために、桜へそう聞いた。
「そ、そうですね……えっと……」
ㅤ桜は恥ずかしそうな表情で少し考えた後、顔はやや下を向けたまま上目遣いでおずおずとした様子で言った。
「あの、先輩。ひとつわがままを言ってもいいですか?」
「ん、いいぞ。なんだ?」
「ん……あ……先輩、なんだか、手つき……いやらしいです……あん……っ……」
ㅤ暖かい春の日差しに桜の可愛らしい声が溶ける。しかし、そこには官能的な色こそ伴っているものの、不思議といやらしくは感じなかった。制服姿のままの桜とこんなことをしているのにも関わらず。
ㅤそれも、今こうして二人で横たわっている場所が先程と同じ縁側だからだろうか。俺は制服とブラウスのボタンを外したその隙間から見え隠れする素肌へと片手を伸ばして、下着の上から桜の胸を包んでいる。
ㅤ柔らかい布団と、少しだけ開けたガラス戸から吹き込む優しい風。それが俺たちの周りを穏やかな雰囲気で包む。
ㅤこうやってここでしたい、というのが桜の「わがまま」だった。
「あ……悪い。なんか、桜の胸大きくなったような気がして、確かめようかなって……」
ㅤ首筋に口付けながら、軽い力で豊満な乳房を愛撫する。桜はそれに恥ずかしそうにしながらも、甘い声を口からこぼしてくれる。
「あ……ご、ごめんなさい……」
「ん……?ㅤどうして謝るんだ?」
ㅤ桜の言葉に、俺は首筋から唇を離してその顔を覗きこんだ。桜は俺から気まずそうに視線を反らして、片手で自らの胸を軽く隠すようにして言った。
「だって、その……あんまり大きいのは、好きじゃないですよね……?」
「いや、別にそんなことないぞ。好きな子のなんだから、大きさが何だって俺は好きだよ」
ㅤ片手でそのしなやかな髪をかきながら優しく答える。
ㅤしかしそうは言ったものの、大きくなって嫌いになることはなくても、困ることはあったりする。以前からそうだったが、桜がかがんだりした時とか、ちょっと激しい動きをした時なんかに目のやり場に困るのだ。それと、この前のデートの時に桜へ向けられる周りの視線が俺は少しイヤだった。桜はキレイだから仕方がないとはいえ、それに少なからず反応してしまうのは男の性か。
「そうですか……?」
「うん、だから桜は気にしなくていいんだ。……それに、大きい方が触ってて気持ちいい」
「そ、そんな……ふぁんっ!」
ㅤ桜のその恥じらいも、負い目も全てかき消すように、少し強くそこを両手で包み込んだ。軽い痙攣と、甘い声で可愛らしい反応をする桜。
ㅤ場所が場所だから、桜にあまり大きい声は上げさせられない。だからいつもより優しい刺激を与えていたのだが、そんな反応を見せられると、どうも抑えが効かなくなってしまう。
「桜、下着外すぞ」
「ん……はい……」
ㅤ桜は俺の言葉に、外しやすいよう軽く背中を持ち上げてくれた。そこに両手を滑り込ませて、ホックを外す。もうこうすることも随分と慣れたものだが、最初の頃は戸惑っていたことを思い出した。見かねた桜が恥ずかしがりながらも親切に教えてくれたことを思い出すと、今でも少し情けなくなる。
ㅤその照れを隠すように、外した下着をたたんで少し遠くに置く。しかし、再び視線を桜に戻した時に、俺は固まってしまった。
ㅤ上気して、色気を強く孕んだ表情。口からは甘い吐息がこぼれて、まるで触って欲しいとねだっているようにも見える。
ㅤそして何より扇情的なのはその格好だ。はだけた制服と緩んだリボン。そこから覗く白くて美しい素肌。その豊満な乳房は、最後の布までどかされて、全てが俺の目にさらされている。
ㅤ見慣れた制服姿なのに、少しそれを乱しただけで、こうも印象が変わるものなのか。
「あ、あの、先輩……?ㅤどうしたんですか?」
「あ……すまん、ちょっと見蕩れてた。明るいところで、っていうの初めてだからかな」
「ん……そうですね。……私はちょっと恥ずかしいですけど……」
ㅤ自分から提案しておきながら、そんなことを桜は言う。そんな桜を少しいじめたくなって、俺はその胸に顔を埋めた。
ㅤぽふ、と優しく受け止められる。それに甘えるように、舌をその突起に触れさせた。
「あ……っ、や、ちく、び……だ、め……」
ㅤびく、びく、と僅かに、それでも確かに反応する桜の身体。まだ接触は控えめなものだが、恥じらいからか桜はいつもより感じているようだった。
ㅤそれが嬉しくて、舐めているだけでは足りずにそれを口に含んだ。
「ふあっ……!ㅤ先輩……っ、そんな、なめちゃ……あっ……」
ㅤ羞恥と快楽が混ざった桜の声。ちらりと盗み見た赤い桜の顔は、明るさでいつもよりはっきり見える。
ㅤそんな桜をもっと快感に染めたくて、片手の指と舌先で乳首をくりくりと転がす。すると、桜は何度も身体を震わせて淫らな声を上げてくれる。
ㅤ声を押し殺すように口元に手を当てながらも、唇の隙間から滑り落ちるように喘ぎ声が漏れていた。気持ちよくなってくれているのは確かだけど、まだ幾分か恥じらいが残っているようだった。
ㅤ俺はそれをなんだかもう少し見たくなって、空いていた片手を桜の下腹部に触れさせた。
「んっ……せんぱ……い……」
ㅤ俺の意図を感じ取ったのか、桜は僅かではあるものの明確な反応を示した。それに応えるように、なめらかな素肌の上でゆっくりと手を滑らせる。
ㅤそしてやがてスカートにたどり着き、さらにそこを通り過ぎて膝へ。そうしたら今度は折り返し。でもさっきとは違って、スカートの中へと手を入り込ませる。
ㅤ桜はそれに「あ……」と声を漏らした。そこにはそれとない期待の色が混じっていた。
ㅤそれに導かれるように、するすると手を移動させていく。他の誰にも触れられない、秘密の場所へと。柔らかい太ももの感触を確かめながら、少しずつ。
ㅤそして、俺の手は脚の付け根までたどり着いた。「そこ」にはほんの少し指を伸ばせば触れられる距離。
ㅤでも。
「あ……え……?」
ㅤそこには指先で触れることすらせず、そこを通り過ぎて反対の脚に触れた。戸惑う桜には構わず、今度は下へ手をずらしていく。そして膝まで来たら折り返し。再び桜の脚の付け根へと。でもやはり「そこ」には触れないで、また反対の脚へ移動して同じことを。
ㅤそんな、少し子供じみた悪戯心でその戯れをスカートの中で繰り返す。それは快楽は伴わないものだったが、俺の手が「そこ」に近付く度に、桜の声に扇情的な色合いが混じる。
ㅤしばらくそうやって桜の反応を楽しんでいたが、我慢できなくなったのか、桜は切なげな声で言った。
「あ、あのっ……先輩、そこ、触ってください……っ」
「ん……?ㅤ『そこ』って、どこだ?ㅤ桜」
ㅤもちろんわかっているが、あえて聞く。普段はこんなことしないのだが、明るいところだからか、桜の恥ずかしい顔が見たかった。
「……先輩、いじわるです……」
「はは、悪い。……でも、桜の口から聞きたい。桜、どこを触って欲しい?」
ㅤ桜はそれで観念したのか、羞恥で顔を真っ赤に染めながらも俺に答えてくれた。
「うう……そ、その……私の……ぉ、おまんこ、先輩に触って、気持ちよくして欲しい、です……」
「──うん、わかった。言ってくれてありがとな、桜」
「もうっ!ㅤ本当に恥ずかしいんですから──ひゃあっ!」
ㅤここまで来たらもう焦らすような真似はしない。軽く湿った布を横にずらして、指を桜の花びらに触れさせる。
ㅤ胸への愛撫と先の焦らしのせいか、もうどろどろに濡れていた。その入り口を開いて、中指を中へ入り込ませた。大した力を入れなくても、桜の膣は指を奥へ奥へと導いていく。
ㅤそうして根元までそれが飲み込まれたら、軽く引き抜いてから再び挿入する。
「あっ……ひぁっ、は、んっ……せん、ぱ……っ……」
ㅤ浅く指を抜き差しする度、その快感で桜はびくん、びくん、と強い反応を見せてくれる。焦らしたせいか、桜の身体はいつもより敏感になっているようだった。
ㅤ時々、ほんの戯れにと激しく指を出し入れさせると、快楽に染まりきった嬌声を上げてくれる。そのせいで俺も段々と歯止めが効かなくなってきて、次第にその速さが増してしまう。
ㅤさらに、一本だけでは飽き足らずに、人差し指もそこへ挿入した。中指をきつく締め付けていた膣口は、にゅるりと容易くもう一つの異物を受け止める。
ㅤそうして挿入した二本の指で、激しく桜の性器を愛撫する。抜き差しをするのはもちろんのこと、時折指を折り曲げてざらついた天井にも刺激を与える。
「ふぁ、あ……それ、すご……い、あん……せんぱい、きもち、いい……ひあ、ぁ、ん……」
ㅤもはや桜は、表情や声からすらも恥じらいは消し飛んで、ただただ与えられる淫楽に浸っている。目は焦点が定まらない様子で、その淫らな声は俺のことを酔わせることさえするようだった。
ㅤいつの間にか、俺の手は指だけでなく掌までも桜の蜜で濡れ、その行為の激しさを物語っていた。でももう加減はできない。それに、今手の動きを緩めたら、また桜を焦らすことになってしまう。あれだけいじわるをしたのだから、ちゃんと満足させなくちゃだめだ。
「せ、せんぱい……っ、わた、し、ふぁっ、あ、や……っ、わたし、もう、いく……んむっ!?」
ㅤ桜の絶頂を手伝うように、その唇を奪った。そして強引に舌を滑り込ませ、熱くぬめった桜の舌と触れ合わせる。
ㅤその感触を確かめるように数度つついた後、まだ驚いて固まったままのそれと自分のを絡み合わせた。その瞬間、挿入した指で桜の膣がひくついたことを感じ取った。
ㅤそれをもっとと促すように、舌で激しく桜を貪り始める。歯茎などに舌を這わせることはせず、ただひたすら桜の舌を愛撫する。
ㅤ深く絡ませたまま、舌の隅々まで犯すように濃厚に桜を味わう。その快感に耐えられなくなったのか、時折舌が逃げようとするが、それは許さない。今はただ、桜をいかせてやりたかった。
ㅤ絡めた舌と突き入れた指で貪欲に桜を求める。そうしていくうちに、桜の反応が絶頂寸前のそれに変わっていく。キスの端から漏れる声は切なげな色を帯びて、指を包む膣はきゅんきゅんと強く締め付ける。
ㅤそれに応えるように、激しく指を抜き差しする。じゅぷ、じゅぷ、と淫らな音が響くほどに。
「ん、んんっ──!」
ㅤそうして、びくびく、と激しい痙攣と共に桜は絶頂した。口の中には気持ち良さそうな声が響き、膣は指を逃がすまいと強く締め付けていた。
ㅤまだその絶頂が続いている間、桜がそれに気持ちよく浸れるようにと、俺は出来るだけ優しい刺激を与えていた。突き入れた指は動かさないで桜の中に入れたままにして、絡めた舌は張り詰めた力をほぐすように甘い接触を重ねる。
ㅤそしてその余韻もそこそこ抜けた後、俺は舌と指を桜から引き抜いた。その時桜の蜜が糸を引き、まるで離れないで欲しいとねだっているようにも思えた。
「ふあ……先輩、すごかった、です……」
ㅤとろん、と溶けた目のまま、まだおぼつかない口調。
「そっか、それなら良かった」
「はい……で、でも、その、ああいうことを言わせるのは、い、いけないと思いますっ」
「ん?ㅤ『ああいうこと』って、何だ?ㅤ桜」
「先輩っ!」
「うっ……すまん、ふざけすぎた」
ㅤ軽く頬を膨らませて、割と本気で怒った様子の桜に、反射的に謝る。
ㅤある程度冷静になった今なら、ちょっとどうかしていたんじゃないかとも反省する。
ㅤでも、普段の数倍恥ずかしがる桜を見られたことは、なかなか貴重な体験かもしれない。
「それじゃあ、先輩。お詫びに……っていうのは何だかヘンですけど、ひとつお願いを聞いてくれますか?」
「うん?ㅤいいぞ、なんだ?」
ㅤ言いたいことは大体わかっている。そもそも、この流れならひとつしかないだろう。しかし、だからと言ってそれをこちらから言うような無粋な真似はしない。
「先輩とひとつになりたいです。二人でつながって、一緒にいっぱいいっぱい、気持ちよくなりたいです」
「ああ、そうだな。俺もそうしたい」
ㅤそっと口付けを交わす。二つの柔らかいものが触れ合うだけで気持ちがいい。
ㅤでも深いキスはまだだ。名残惜しさと共に唇を離す。
「桜。下着脱がしていいか?」
「はい、お願いします」
ㅤ脚の辺りにまで移動して、スカートの中に手を入れる。そして両手で下着をするするとゆっくりと脱がす。スカートの中はなるべく見ないように。別に今更そんなことどうだっていいような気もするが、桜が制服姿の状態だからかなんだか躊躇ってしまった。
ㅤ脱がし終わったそれを、軽くたたんでブラジャーの近くに置く。そのあと、俺も下を脱ぎ始めた。ベルトを外して、下着ごと下ろしたら再びたたんで脇に置く。
ㅤそうしてお互いに準備ができたところで、俺たちは布団の上で重なり合った。桜は仰向けのまま軽く脚を開き、そこに導かれるままに俺がその上に覆い被さる。
ㅤそして、握った肉棒をスカートの中へ入れて、桜の濡れた陰部と触れ合わせた。その快感で、お互いの身体がぶるりと震える。
ㅤそして、ゆっくりと力を入れて挿入していく。桜の中は一度絶頂したおかげですでにとろとろだから、しようと思えばすぐに入る。
ㅤでもそうはしない。桜が痛みを感じるから、というのもあるが、こうしてゆっくりと膣の感触を確かめながら挿入するのも、とても気持ちがいいからだ。
ㅤそれは、中で生殖器を抜き差しするのとは違う快感。あれは絶え間のない快感に心と身体が侵されるものだが、これは段々と快楽で染まっていくもの。
「んっ……は、あ、ぁ……先輩の、き、て……」
ㅤそうしているうち、あっという間に最奥までたどり着いた。こつん、と少しだけ子宮を押す感覚がたまらなく気持ちいい。これだけでも射精してしまいそうなほど。それでは桜が満足できないからそんなことはしないが。
「先輩……うごい、て……ほしい、です……」
「ああ……っ、おれ、も……」
ㅤいつも以上に濡れ、ほぐれている桜の中。そんな状態で止まったままなのは、お互いに無理があった。
ㅤぬぷぷ、とカリの辺りまで引き抜いて、再びゆっくりと挿入する。そんな僅かな動きだが、桜の無数のひだが大きな快楽を伝えてくる。
ㅤ愛液と先走りでぴたりと吸い付くそれのせいで、生殖器同士はまるで溶け合っているかのよう。その感覚を味わいながら、優しく腰を動かす。
「あ……あっ、は、せん、ぱい……いい、です……すご、く……」
ㅤ一度達して感度が上がっている桜は、この遅い動きでも十分に感じてくれている。しかし、それは桜だけじゃなく、俺もだ。
ㅤ溶けたような感覚のせいか、それとも真っ昼間で制服姿の桜としているというシチュエーションのせいかわからないが、とにかく俺もいつもより感じてしまっている。
ㅤだからこれ以上早い動きはできない。桜もこの動きでも十分満足そうな表情をしてくれているし、今日はこのまま最後までしよう。
「あ、あの……先輩……っ」
ㅤそんな中、不意に桜が僅かに理性の入った声を上げた。
「ん……どうした?ㅤ桜」
「きす、して、ください……先、ぱ……っ、ん、む……ぅ、ちゅ……」
ㅤ桜がその言葉を言い終わる前に、唇で塞ぐ。桜は話している途中だったから、俺が舌を侵入させるのは容易かった。
ㅤそして挿入させるなり、すぐに桜の舌を捕まえて、何の遠慮もなく絡めとる。桜もすぐに俺に応えるように自分のものを突きだしてきた。
ㅤぴちゃり、ぴちゃり、と湿った音をたてながら、二人で互いの舌を愛し合う。そこに激しさはあまり伴っていない。それは、俺たちが欲しているものが、快楽よりも熱や感触といったものだからだろう。
ㅤそうして、舌同士、生殖器同士で優しく求め合う。でも、もう少し繋がりたくて、俺たちは両手も重ね合わせて、ぎゅっと握った。
「んっ、せん、ぱ……い、ちゅ、ん、んっ、も、う……」
ㅤでも、そうやって全身で重なって繋がり合ったことで、精神の方に限界がきてしまった。身体の奥からぞくぞくと絶頂がのぼってきているのがわかった。俺も、桜も。
「ん、は……ああ、おれも、だ……」
「せんぱい、この、まま……あっ、ん、いっしょ、に……」
ㅤそれに返事をする代わりに、再び口付ける。そしてより深く舌を絡ませ合い、唾液と唾液を混ぜ合わせる。そうすると生殖器と同じように、舌でさえも溶けているような感覚に包まれる。
ㅤそうやって快楽と温もりを求め合ううちに、生殖器の中でふつふつと沸き上がる射精感。そして、そんな俺と同じように桜の膣も射精を促すように、締め付け、擦り上げてくる。
ㅤそれに耐えるのも、もう限界だった。一番快感が高まった瞬間、俺は桜の一番奥でとぷん、と射精した。
ㅤそして、それによって桜も同時に絶頂してくれたようだった。
ㅤそのまま、いつもよりも長い絶頂に二人で身を委ねる。俺は弱い勢いで、とく、とく、と精を注ぎこみ、桜はその度に心地よさげに身体を痙攣させる。絡め合う舌は先端だけで軽くつつき合い、甘い感覚を共有する。
ㅤ暖かい日差しも合わさり、優しく、心地の良いその時間に、二人でしばらく浸っていた。
「あ……学校、行かなきゃ……」
ㅤ繋がりを解いた後も、三十分程二人とも言葉も交わさずに横たわり、せいぜい吐息が漏れる程度の時間が続いていたが、隣で寝ていた桜は突然思い出したように口にした。
「え?ㅤ今から行っても部活に出るくらいしか──ってそうか、桜はもう部長だもんな」
「はい、体調を崩してる訳でもありませんし、休んでいたら部長として面目がたちませんから」
「まあ確かにそうだな……でも、今日くらいはいいんじゃないか?」
ㅤ桜はある意味体調を崩していたとも言えるのだから、別に行かなくてもいいのではないかと俺は思う。それに、桜は部長として十分頑張っていると、遠坂やこの間に会った美綴から聞いている。
「そう、ですか?」
「うん。だって今ので疲れただろ?ㅤ弓道部だって桜はいつも真面目にやってるんだから、一日くらいは問題ないと思うぞ」
ㅤ桜はそれに少し考える仕草をした後、うなずいてくれた。
「じゃあ、先輩。もう少しだけ、ここで一緒にいてくれますか?」
「ああ、いいよ。あったかくて気持ちいいもんな」
「はい。でも、あんまり気持ちよくて寝ないように頑張らないとですけどね」
ㅤ少し困った微笑みを浮かべる桜。俺はその髪に手を伸ばす。
「別に眠っても構わないぞ。夕方になったら俺が起こすから」
「それなら……お言葉に甘えてちょっとだけお昼寝、しちゃいます」
「ああ、おやすみ、桜」
「はい、おやすみなさい、先輩」
ㅤゆっくりとそのまぶたが落ちる。俺は頭に置いた手で優しく撫でながら、陽だまりに桜の寝息が溶けるまで見守っていた。