ㅤ九月。夏の暑さも薄まって、気持ちの良い夜だった。
ㅤ虫の音と涼しい風が吹く縁側は、風呂上がりに心地いい。
「涼しいですね、先輩」
ㅤ隣に座っている桜がふと呟く。それに振り向くと、桜は吹き込んでくるそよ風に目を細めていた。
「ああ。すっかり夏も終わりだな」
「ええ。──ライダーもそう思うでしょ?」
ㅤそう言って桜は俺とは反対側にいる、彼女のサーヴァントの方へ顔を向けた。
「そうですね」
ㅤと、ライダーは少し考えるように、コップに注いだ酒で唇を湿らせる。
「夏が終わるのはいささか寂しいものですが、こうして季節が移ろうのを感じるのもなかなか良いものですね」
ㅤそう、彼女は穏やかな笑みと共に言った。聖杯戦争以来、ライダーもこういう柔らかな一面も多く見せるようになった。
「なんか意外だな。ライダーがそういうこと言うの」
「似合いませんでしたか?」
「いや、そうじゃないよ。ただ、ちょっと珍しいなってさ」
「うん、とても素敵だと思うわ。ライダー」
ㅤと、桜も楽しそうにそう言った。
ㅤそれに照れたのか、ライダーはまた酒を一口飲み、
「まあ、先日読んだ小説の引用ですが。──そう言って頂けると嬉しいです」
ㅤと優しく答えた。
ㅤそれからしばらく、その穏やかな時間が続いた。そして、ライダーのコップが空になった頃だった。
「時にサクラ」
ㅤとくとくと一升瓶から二杯目を注ぎながら、ライダーがぽつりと言った。
「ん、なあに?ㅤライダー」
「サクラは士郎のことを名前で呼ばないのですか?」
「ええっ!?」
ㅤ突然のことに驚いて、持っていたお茶をこぼしそうになる桜。
ㅤそんな桜にはお構い無しに、涼しい顔でライダーは続ける。
「二人が現在のような仲になって久しいですし、プライベートでは名前で呼んでも良い頃合いと思ったのですが──」
「で、でもその、まだ私たちは学生だし、名前で呼ぶのはまだ失礼かなって……えっと……」
ㅤあたふたとした様子で捲し立てる桜を見て、俺も少し考えてみる。
ㅤ桜が家に来るようになってからずっと「先輩」と呼ばれているから、それ以外の呼び方なんて考えたこともなかった。
ㅤ名前呼び──例えば「士郎さん」という感じならどんなイメージだろうか。
『──士郎さん、起きて下さい。朝ですよ?』
『──朝ごはんできましたよ。士郎さん』
ㅤ──そんな朝が待っているんだろうか。
「っ……」
ㅤぼっ、と顔が赤くなるのが自分でもわかった。
ㅤなんていうか、これじゃまるで夫婦みたいだ。桜があんなに慌てるのもわかる。当の桜もまだライダーに向かって色々と言っているし。
「どうやら、まだこういった話は不躾だったようですね。申し訳ありません、サクラ」
「いや、えっと、そんなことは……無いん、だけどね……」
ㅤごにょごにょとしている桜の顔はもう真っ赤だった。
「それでは、私はそろそろ失礼します」
ㅤと、飲みかけのコップを残して立ち上がるライダー。
「えっ」
ㅤ思わず口に出てしまった。今この状態で桜と二人っきりというのは、些か困る。
「せっかくの良い夜なのに、これ以上二人の邪魔をする訳にはいきませんので」
ㅤなんてことを言って、ライダーはすうっと霊体化してしまった。
「……」
ㅤそして取り残された俺と桜。さっきの件で互いにどこか気まずい。
「あの、先輩……」
ㅤとりあえず落ち着こうとお茶をすすっていると、桜が呟くように言った。
「先輩はその、私に名前で呼ばれるのは、どう、ですか……?」
「えっと、そうだな……」
ㅤ確かにいきなり名前呼びなんて、驚くしどぎまぎするしで大変だろうけど──
「そう呼んでくれると、俺は嬉しいかな」
ㅤもちろん、今すぐでなくて良い。いつかそんな風に呼ばれるようになったなら、それは幸せなことだ。
「そっ、そう、ですか……」
ㅤ桜はそう言ったっきり、黙ってしまった。そしてなにやらもじもじとし始め、それが終わったかと思うと、今度は急にこっちの方に顔を向けた。
「あっ、あのっ!」
「はっ、はい」
ㅤびっくりして「はい」とか言ってしまった。
ㅤ桜は、恥ずかしいのか顔を赤くして「うぅ……」と唸っている。
ㅤそれが少し続いたあと、桜は震えた声で口を開いた。
「し……」
「し?」
「しろうさんっ!」
ㅤ……数秒、固まった。俺も桜が見つめ合って硬直してるその光景は、それはそれは奇妙だっただろう。
「ご、ごめんなさい……その、まだすごく恥ずかしくて、上手く言えなくて……」
ㅤようやくまともになってきた頭が、少しずつ状況を把握し始める。
ㅤ今桜は俺のことを「士郎さん」と呼んだ、で合っているだろうか。でも、どうして今急に?ㅤ確かに名前呼びの話をしていたところだったが──
「で、でもそのっ、ちゃんと自然に呼べるように頑張りますから……!」
ㅤ……そうか。今の桜の言葉でわかった。
ㅤ俺はさっき「そう呼んでくれると、俺は嬉しいかな」と言ってしまった。これじゃ今日、今からそう呼んでくれと言っているようなものじゃないか。
「あー……その、さ。悪い、桜。別に今からそう呼んでくれって訳じゃないんだ」
「え……?」
「さっきのは、もしそう呼ばれることがあれば嬉しいって意味でさ、いつかでいいし、無理なら呼ばなくても構わないんだ」
「あ……そ、そう、だったんですか」
ㅤほっと、安堵の息を吐く桜。
「すみません、私、早とちりしてしまって……うぅ……恥ずかしい……」
ㅤよほど堪えたのか、桜はうつむいて悶えている。
「ま、まあ、俺も言葉足らずでごめんな。ほら、お茶でも飲んで落ち着けよ」
「はい、そうします……」
ㅤ桜は側に置いてあるコップを手に取り、ぐびぐびと飲み始めた。
ㅤそんなに急いで飲んだらむせるんじゃなかろうか。そんな俺の心配もよそに、コップの中の透明な液体はあっという間に無くなった。
「ん?」
ㅤあれ。桜が飲んでたのはお茶だよな。じゃあ透明な液体っていうのはなんだ。
「ちょっ!ㅤ桜、それライダーの酒だ!」
「えっ!?」
ㅤ桜は驚いた顔でコップから口を離した。
「あ、本当です。なんだか味が変だなあって思ったんですけど……」
ㅤ多分恥ずかしさのせいだとは思うが、さすがにちょっと抜けてないか。
ㅤまあ、桜が飲むさまを見ていて気づかない俺も俺だが。
「……でも、おいしいです。これ」
「え?ㅤあ、そうか?」
「ええ。藤村先生がおいしいって言うのもわかる気がします」
「ん、そっか。でも、藤ねえみたいにぐびぐび飲むようにはなっちゃダメだぞ?」
「ふふ、わかってます」
ㅤあの飲みっぷりを思い出したのか、桜は楽しそうに笑った。
「あの、先輩」
「ん?」
「お酒、まだありますよね」
ㅤ桜は傍らに置いてある酒瓶を見て言った。
「ん、ああ。ライダーが持ってきた一升瓶か。ライダー一杯しか飲まなかったもんな」
ㅤなかなか良い酒だから明日の料理に使えればいいな、なんてことを考えながら答える。
ㅤああ、でも多分ライダーのものだから勝手に使う訳にはいかないか。寝る前にでも台所に戻しておこう。
ㅤだが、俺がそんなことを思っていると、桜が少し恥ずかしそうに言った。
「これ、飲んじゃいませんか?」
ㅤ何故か。年齢的に良くないだろう、とか、ライダーの酒を勝手に飲むのはまずい、とか言って断らなくちゃいけないところなのに。
ㅤどうしてか、俺は肯定してしまったのだった。
「せーんぱい」
ㅤやっぱりダメだと言った方が良かったのかもしれない。
ㅤ肩に寄りかかった桜を見て、そんなことを思った。
「なんだ?ㅤ桜」
「ふふっ、なんでもないです。先輩のことが呼びたくって」
ㅤそう言って桜はくすくすと笑う。このやり取りも三回目だ。
ㅤ桜はあまり酒に強くないようで、大して飲んでいないのにもう酔っている。
ㅤおかげでさっきからやけに距離が近い。こんなに積極的な桜なんて初めてだ。俺も少し酒が入ってるせいか、そこまで緊張しないのが救いか。
「先輩、先輩」
「ん?ㅤ今度はどうした?」
ㅤまたか、なんて内心で思いながら、酒を口に運ぶ。
「好きです。先輩のこと、大好きです」
ㅤ思わず酒を吹きそうになった。
「……急にそういうことを言うのはよしてくれないか」
ㅤいつも桜は「好き」とか言うのを恥ずかしがるから、余計に衝撃が大きかった。そう言われるのはもちろん嬉しいが、心臓に良くない。
ㅤ本当、飲んでいいなんて言うんじゃなかった。
「あー、先輩照れてます。ふふ、可愛いです」
「う……桜にそんなこと言われるのはなんか変な感じだな」
「いつもは先輩に言われてますから、お返しです」
ㅤえへへ、とはにかむ桜。その可愛らしい顔に、何も言えなくなってしまった。
ㅤ桜はそんな俺に構わず、何杯目かの酒を飲み干した。
「あ」
ㅤ空のコップに酒を注ごうとしている桜が不意に声を上げた。
「ん?ㅤどうした?」
「お酒、終わっちゃいました」
ㅤ空になった一升瓶を見て、桜は少し残念そうな顔をした。
「先輩、この後、どうしますか?」
ㅤもう時間も遅いし、もう寝よう。そう言おうとして、振り向いたが、そこで思わず固まった。
ㅤさっき俺に寄りかかっていたせいか、白いワンピースが少しずれて肩が露出している。さらに、少し傾いた顔は酒のせいで赤く火照りを見せ、その目は酔いにとろけている。
ㅤそんな、色気を隠す素振りすらない無防備な桜の姿に、俺の目線は釘付けだった。
「あー、先輩の目線、なんだかいやらしいです」
ㅤ見透かされてる。それゃあそうだ。あんな姿を見せられて、普通にしてろって方が無理だ。
「──もう、先輩のえっち」
ㅤさすがに我慢の限界だった。
ㅤ俺は桜の両肩をつかんで、そのまま引き寄せて唇を奪った。
「んっ──」
ㅤくぐもった桜の声が漏れるが、そんなことは構わない。今はただ、目の前の桜が愛しくて仕方がなかった。
ㅤ唇だけの触れ合いじゃまるで足りなくて、すぐに深いキスに切り替わった。無遠慮に桜の口内に舌を挿入して、その感触を味わう。
ㅤ温かくてぬめった感覚と、舌同士が擦れる快感。それは、きっと酒瓶十本よりも俺を酔わせるほどのもの。
ㅤ事実、俺はどんどんその行為に没頭していった。アルコールの刺激的な感覚の混じった、桜の口内と舌を犯すその行為に。
「んっ、んぅっ……!」
ㅤそしてようやく、その桜の苦しげな声でようやく我に返った。
「っは──」
ㅤ唇を離すと、混じって溶け合った唾液が橋をかける。それが月明かりでいやらしく銀色にてらついていた。
「ん……先輩のきす、すごく気持ちいいです……」
ㅤ甘ったるい声で言う桜の表情は、熱く火照っていている。
「桜……もう、止まれないからな」
「ええ、私もさっきのキスで、もう……」
ㅤ酒気を含んだ俺と桜の声は、どうしようもない情欲を伝え合っていた。互いの身体を、心を欲していると。二人で愛し合いたいと。
ㅤばたん。桜の部屋のドアを閉めたその音が合図だった。
ㅤ桜の身体を抱き締めて、そのままベッドに押し倒した。
「せんぱ──んんっ!」
ㅤ開きかけのその唇を奪う。さっきと同じように、自分の舌を桜の中に侵入させた。
ㅤでも、さっきと違って、桜の方も舌を突き出してきた。それを互いの口の間で受け止める。そうして、そのまま欲望のままに絡ませ合った。
ㅤ酒のせいか、桜の動きはいつもよりも積極的で、俺の舌に深く絡み付いてきた。熱くぬめったもの同士が擦れると、それだけでぞくぞくとした快感が俺たちを包む。
「んぅぅっ!」
ㅤその快感に歯止めなんて効かなくて、たまらず桜の舌を吸い上げる。桜は驚いて声を上げたが、それと同時に両手を俺の首に回してきた。
ㅤその反応に、もう遠慮なんていらないと悟った。俺は口の中に入れた桜の舌を好き勝手に味わい始めた
ㅤ唇で桜の舌を逃げられないように捕まえて、舌先から全部その舌をなめ回す。その快感に桜の舌が時々逃げようとするが、それは許さない。
ㅤそのせいか、桜はキスの端から悩ましげな声を漏らし、時々びくん、と身体を震わせている。その反応に、桜の舌を自分の思うままに犯している、という背徳感が沸き上がってくる。
「ぷは……っ、は、ぁ……ふぁ……」
ㅤしかし、さすがに息が限界で、桜のを解放した。
「せん、ぱい……はっ、あ……きす、すごい、です……」
ㅤ乱れた呼吸と、快感に溶けた瞳。 その桜の姿に、情欲は収まるどころか、膨れ上がっていく一方だ。
ㅤ俺は一旦シャツを脱いでから、再び桜に覆い被さった。そうして今度は両手でその胸を包んだ。
「や、ぁ……せんぱい……っ!」
ㅤ一際強く跳ねる身体。興奮で敏感になっているのか、嬌声もいつもより大きい。
ㅤそれが一層俺の欲望を掻き立てる。その気持ちに任せて、豊満な乳房を愛撫する。
ㅤワンピースの上からだが、その感触は十分過ぎるほどに伝わってくる。少し力を入れるだけでも、指がずぶぶ、と沈み込んでしまうほどの柔らかさ。そして強く揉みしだくと、その弾力が手のひら全体に伝わってきて気持ちが良い。
「あっ、ん……は、ぁっ、せんぱい、もっと、おっぱいさわってください……っ」
ㅤ俺はその言葉に頷くと、ワンピースの紐をほどき、スカートをたくしあげた。そしてそこから手を入れて、下着の上から両胸を包んだ。
ㅤでもその感触じゃ足りなくて、俺は手を桜の背中に手を回した。
「桜、背中少し上げて」
ㅤ耳元で囁く。それがくすぐったいのか、桜は少し身を震わせた。
「んっ、はい……」
ㅤホックを外して、ブラジャーを抜き取る。そうしたら再び胸への愛撫を始める。でも今度はさっきと違って直接だから、柔らかな胸の感覚が全部伝わってくる。
ㅤそんなものに我慢なんかできるわけがなくて、俺はさっきよりも強く刺激を与え始めた。片方の手で乳首をくりくりと転がして、もう片方はぐにゅぐにゅとその形を歪める。
「ふぁんっ!ㅤや、あんっ、せんぱ、あ、すご……いっ……」
ㅤより熱を増す桜の嬌声。俺が手や指を少し動かしてやるだけで、身体を震わせて感じてくれる。
ㅤその反応をもっと見たくて、俺は桜の首筋に顔を埋めて、舌をそこへ這わせた。
「ひゃんっ!」
ㅤ驚きと快感が混ざった桜の声。でもそんなの構わずに、さらに舌を動かす。そうすると、びくん、びくんと何度も桜の身体が痙攣する。
「だっ、だめ……ですっ、それ、ぞくぞくって、して……!」
ㅤだめと言われても今さらそんなこと無理だ。 それどころか、そんな桜の反応が可愛くて仕方がない。
ㅤ舐めるだけなんて止めて、唇で吸ったり、甘噛みしたりと、より強く愛撫をする。そうすると、胸からの快感も合わさり、桜の反応はさらに激しくなっていった。
「んっ……!ㅤん、あっ、せん、ぱい……きもち、いいっ……」
ㅤでも、そんな風に昂っているのは桜だけじゃない。俺だってそうだ。こんなに乱れている桜を間近で見て、触れているんだから、興奮なんて最高潮に達している。
ㅤ俺は一度桜から手と唇を離した。
「桜──もう、桜とひとつになりたい」
「はい……私も、ほしくてほしくて、切ない、です──」
ㅤ桜は一度ベッドから降りると、ベッドの端に手をついてその臀部をこちらへ向けた。さっき俺がたくしあげたせいで、可愛らしい下着が全て俺の目に晒されている。
ㅤ俺はその光景に、昂る欲望を押さえながらズボンと下着を脱いだ。
「桜……下着、脱がせるからな」
「はい……」
ㅤそして俺はその言葉通り、下着に手をかけて膝の当たりまで下ろした。すると、桜は自ら片足を上げて下着から引き抜いた。
ㅤそうして互いの性の象徴が露になった。
「せん、ぱい、ください……っ、せんぱいの、欲しくて──」
ㅤ切なげな桜の声。その声で俺も限界だった。
「ん……っ」
ㅤ桜の柔らかい尻に両手を添える。そして、自分のものの先端を入り口へと触れさせた。
ㅤそこから伝わる、桜の熱と濡れた感触。それはどうしようもない桜の情欲だった。
「入れる、ぞ……」
「ん、はい……ふぁっ……!」
ㅤ桜の返事なんか待たないで、挿入を始める。とろとろに濡れた肉を掻き分けて、肉棒を突き入れていく。
ㅤそして、入れたところから伝わってくる、桜の膣の感触。濡れたものが擦れると、無数のひだが肉棒を愛撫して容赦ない快楽が俺を襲った。
ㅤそれに抗うように奥へ奥へと進んでいく。突き入れていく度に違う快感が襲ってきて、どうにかなってしまいそうだ。
「んっ、あ、ぁ……っ、せんぱいの、おくに……き、て……っ」
ㅤそうして、やっと最後まで挿入し終えた。最奥までたどり着いた先端が、桜の子宮口に触れている。
ㅤそれが桜とひとつになっているという実感を伝えてきて、甘い幸福感に包まれた。
「桜……我慢できない、から、もう動くから、な……」
「は、い……激しくして、いいですから、ね……」
ㅤ俺はその言葉に甘えて、腰を動かし始めた。遠慮なんかもうできないから、最初から激しく桜の中で抜き差しをする。尻の肉を鷲掴みにして、欲望のままに腰を振って桜の膣を味わう。
「あっ、や……っ、あっ、はぁっ、んぁっ!ㅤあ、すごっ……せんぱいの……いっぱい、きて……っ!」
ㅤそして、俺の動きに合わせて桜がいやらしい声を上げる。そこには恥じらいなんか無くて、あふれ出てくるその可愛い声を全部俺に聞かせてくれている。
ㅤその声と、腰を打ち付ける音が混ざったものが、部屋を淫らな空間へと変えていく。そしてそれは俺と桜の情欲をどんどんと加速させ、その行為へ溺れるように没頭させられてしまう。
ㅤでも、それで良い。このまま二人でおかしくなるほど愛し合っていたい。頭の中はその気持ちでいっぱいだ。
「んっ、あっ、ふぁっ!ㅤせんぱいっ、もっと、してっ……!ㅤわたしのこと……もっとはげしく……っ!」
ㅤアルコールのせいか、桜はいつもの数倍は乱れて、自分の欲望を全部俺にさらけ出している。だったら俺ももっと応えたい。
ㅤ俺は両手を尻から腰に移動させて、がっしりと掴んだ。そしてそのまま桜の身体を自分の好きなように揺らす。引き抜くときは前へと揺らし、突き入れるときは強く自分の腰へと引き寄せた。
ㅤそれが、先ほどとは比べ物にならないほどの快楽を生む。腰をしっかり握っているせいか、肉棒を締め付ける強さがいつもより増し、射精感をどんどん引き上げてくる。
ㅤそれに加えて、桜の身体を自分の好きなように動かしているという背徳感がたまらなく気持ちいい。
「やんっ、あ、ぅあっ、は、あんっ!ㅤあ、きもち、いいっ、ですっ……!ㅤわたし、こわれちゃい、そう、で……!ㅤせんぱいっ、だい、すき──大好きです……っ!」
ㅤその言葉は、さらに俺の気持ちを昂らせていく。桜に「好き」と言われるだけで、これ以上無いほど嬉しいんだ。それを性交中に言われてしまえば、理性なんかどこかに吹きとんで、桜のことしか考えられなくなってしまう。
「さくらっ!ㅤく、ぁ……桜──好きだっ……!ㅤさくら、さく、らぁっ……!」
「ふぁっ、あん、あっ!ㅤあ、うれ、しいっ……!ㅤわたしも、だいすき……っ、あいして、ます……!」
ㅤもう、声も、心も、身体も限界ギリギリまで高まっていた。舌足らずに互いの名前を呼びながら、何度も気持ちを伝え合う。擦れ合う生殖器は、快楽で染まりきって今にも爆発してしまいそうなほど。
ㅤもう今にも終わってしまう。だから俺は、両手を桜のお腹へ回して抱き寄せた。
「桜っ、さくら……!ㅤもう、限界、だ……!」
「は、い……!ㅤわたし、も、イっちゃい、そう、ですっ……!」
ㅤそのまま、桜の身体を抱き締めながら腰を桜へと打ち付ける。ぱん、ぱん、と乾いた音が絶え間なく響いて、俺たちの快楽は絶頂に向かって昇っていく。
ㅤそして、もう欲望をとどめるのも限界になったその瞬間、一際桜の深いところまで性器を突き入れた。
「う、ぁ、桜──!ㅤでる……っ!」
「ふあぁあっ!ㅤせん、ぱぁい……!」
ㅤどくん、と大きく脈を打つ感覚。そのまま、俺たち二人は張りつめた力を解放した。
「あ、ぁ、は──で、てる、せんぱい、の……」
ㅤごぽごぽとあふれ出る大量の精液。絶頂して軽く痙攣している桜の膣へ、余すことなく注ぎ入れる。
ㅤ桜はそれが気持ちいいのか、抱き締めたその身体がぴくん、ぴくんと反応している。その動きが生殖器に伝わって心地良い。
「ん……あ、先輩、きもち、良かったです……」
ㅤそうして射精が終わった頃、甘い吐息と共に桜が呟いた。
「ああ……俺も、どうかしそうなくらい、気持ちよかったよ……」
ㅤでも、どうしてか、俺はまだ足りていなかった。気持ちは桜とたくさん愛し合ったからあふれるくらいに満たされたけど、身体の方はまだまだ欲しがっていた。
「先輩……あの、先輩の……まだかちかち、ですね……」
「ん……そう、だな……」
ㅤそれに気付いた桜が、どことなく嬉しそうに言う。
「あのさ、桜。もっと、桜のこと欲しい。……いい、かな」
「はい、もちろん良いですよ……私も、本当はまだ足りなくて……」
ㅤ少し恥ずかしそうに桜は言う。
ㅤだったら、ここで終わりにする理由は無い。満足のいくまで二人で愛し合うだけだ。
「先輩……このまま、また好きなようにシてください──」
ㅤ甘えるような桜の誘惑の言葉。
ㅤそれがスイッチになって、俺は再び腰を振り始めた。イった直後で敏感だから、あまり激しい動きはできない。
ㅤだからその代わりにと、後ろからその両胸を愛撫する。
「あっ、せんぱいのて、おっぱい、に……っ」
ㅤそれに気持ち良さそうに身体を震わせる桜。
ㅤその反応を楽しみながら、後ろから桜の性器をぱん、ぱん、と突く。桜の中は、愛液と精液でさっきよりもどろどろになっていて、動かす度にその感触が絡み付いてくるようだ。
「んっ、は、あっ、ひぁっ……せんぱい、あ、とっても、いい、ですっ……」
ㅤ性器と乳房、二ヶ所から伝わる快感で、遅い動きでも桜は気持ち良さそうにしてくれている。
ㅤ俺はそんな桜をもっと悦ばせてやりたくて、腰の動きを少し速めた。時間が立って性器も刺激に耐えられるようになってきたし、俺自身ももっと快感が欲しかった。
ㅤさらに俺は、抱き締めていた桜の身体をベッドへ押し倒した。
「ひゃっ!ㅤせんぱ──あっ!ㅤん、あっ、やっ、く、は──すご、いっ……!」
ㅤそうしてそのまま、激しく腰を振り始めた。後ろから覆い被さり、桜の尻に容赦なく腰を叩きつける。抜き差しを何度もしたせいか、混ざり合った液が漏れだし、それがいやらしい水音を立てる。
ㅤさすがに少し苦しいのか、その声に苦痛が混ざり始めるが、もうそれに構ってなんかいられない。ただ自分の欲望のままに生殖器を抜き差しすることしかできなかった。
「あっ、あんっ、せんぱいっ!ㅤあ、それっ、もっと、シてください……!」
ㅤでも、桜はそう言って嬉しそうに尻を揺らしてきた。そんなことをされたら、もう何も考えられなくなってしまう。
ㅤ無意識に加減するための枷が外れてしまい、さらに激しく桜の身体に欲望をぶつける。肌と肌がぶつかり合う音の間隔がさっきの性交よりも短くなり、互いの快楽は限界なんかとっくに越えて高まってしまう。
ㅤそれは、獣の交尾よりもいやらしい交わりだった。理性なんか欠片もない、本能だけの性交。
「あっ、あ、せんぱいっ、わたし、またイきそう、で──あっ、やんっ、ふぁっ!ㅤだめっ、だめです──!」
ㅤそんなことをしていれば、絶頂なんかすぐに訪れてしまう。
ㅤ互いの生殖器はびくびくと反応して、快楽が破裂する寸前だ。
「あっ、あ、あ、あっ──!ㅤイ、くっ──!」
ㅤきゅうう、と締め付ける桜の中。激しい桜の絶頂に、俺も同時に射精した。びゅくん、と溜まりに溜まった熱い欲望が桜の中へあふれ出す。
ㅤでも、俺はそれに構わずに腰を振り続ける。
「あっ、や……っ!ㅤせんぱいの、でてる、のに……!」
ㅤその快感で、勢いを弱めることなく桜の中へ精が注ぎ込まれる。それが堪らなかったようで、桜の身体がびくん、と跳ねて再び絶頂を迎えたようだった。
「は──ぁ」
ㅤだが、しばらくそうしているうちに腰の動きも弱くなっていき、次第に射精の勢いも弱まってきた。
ㅤそうして最後に、勢いよくどぷん、と精液があふれてその勢いを止めた。それで力が抜けてしまって、思わず桜の身体の上に倒れこんだ。
「ん……っ、あ、先輩、気持ち良かった、ですか──?」
「ああ……全部からっぽになるくらい、良かったよ──桜は?」
「ええ……わたしも、とっても気持ちよ──」
ㅤそこで唐突に言葉が途切れた。
「桜?」
ㅤ声をかけても返事がない。あわてて桜の顔を覗きこむと、桜は可愛い寝息を立てていた。
「あ……眠っちゃったのか」
ㅤようやく頭の方も冷静になってきて、さすがにやり過ぎたことを反省した。酒のせいで俺も桜もちょっとどうかしていた。
ㅤそう思いつつ、俺はつながりをほどいて、桜の身体をベッドへちゃんと寝かせた。俺も体力が限界だったから、少し狭いが桜の隣に入って共に毛布を被った。
「おやすみ、桜」
「……う」
ㅤ翌朝、目が覚めた俺を襲ったのは、強い酒気と頭痛だった。
ㅤとりあえず身体を起こすと、隣に桜がいることに気付く。それに互いに服を着ていないことも。
「えっ……と、昨日は……」
ㅤ頭痛と酒のせいか、眠る直前の記憶が曖昧だ。でも、かすかな記憶と俺たちの状況でその、そういうコトをしたのは思い出せた。
「……朝飯の準備しないとな」
ㅤ時計を見ると、そろそろ藤ねえがやってくる時間だった。
ㅤ桜を起こさないように、そっと布団から出る。
「んっ……」
ㅤその時、桜の声が耳に聞こえた。起こしてしまったか、と思い振りむく。
「……なんだ、寝言か」
ㅤ覗きこんだ桜の顔は、可愛い寝顔のままだ。そのさまに思わず頬が緩む。そうして、寝息をたてている桜の髪をそっと撫でた。
ㅤ
「ん……しろう、さん……」
「っ──!」
ㅤ──不意打ちはやめてくれないか、桜。
ㅤ声を我慢するのに必死だった。
「まったく……」
ㅤまあ、すごく嬉しかったからいいか。
ㅤいつか、こんな風に何気なく名前で呼んでくれる時が来たらこれ以上ないくらい幸せなんだろう、と。そんなことを思いながら、俺は桜の寝顔をしばらく見ていた。