※この作品はR-18です。

新勇者バーバラの冒険   作:ランスロス・マッキ

22 / 76
AL 友情フェイズ ランス A

 ランス盗賊団の朝は早い。しかしそんなことは知ったことじゃない。

 ベッドと枕の柔らかさこそが、何よりも大事だ。

 

「……ル! ……うぜ!」

 

 何かが、ボクの体を揺らしている。敵だ。

 

「むにゃ……死ね」

「ぎゃーー!」

 

 寝返りざま、力に任せてぶん殴る。

 何かが砕けた感触があり、うるさい何かは黙った。これでまだ寝れる。

 

「すやすや……」

「ぶはっ! エール、起きてくれ! 今日はヤバいんだって!」

「………………うぅん」

 

 即座に復活した長田君が、また揺らして安眠を邪魔してくる。ウザい。

 これは剣を抜いて本気でハニワ叩きをする必要がある。剣どこだったっけ……

 

「ほら、朝弱いのは知ってるけど秘書やるんだろー? シィルさんが食事に呼んでるし、もう来るぞー」

 

 長田君はボクの体を起こして、肩を貸してどこかへ運ぼうとしている。瞼の裏が光で明るくなり、また少し意識が引き戻される。

 秘書。ああ、そういえばそうだったような。

 起きないといけないのか。

 

「ほら、頭を洗っておけよ。寝癖も酷いぞー」

 

 霞む目を開けると、洗面台が目に入った。

 蛇口を開いて水を掌に溜め、とりあえず顔に一撃。

 冷たい感触とともに少し頭が働きだして、自分がやった事を思いだす。

 昨夜の夕食で話題になり、やった事がなかったから立候補したのだ。

 

「あー、そうかー……今日からボクは……」

 

 ボク――エール・モフスはランス団の幹部、兼ランスの秘書だ。

 

 

 

 

 

 ここはランス団本部、魔法ハウスの一つ。ボク達用の家。

 他にはハーレム用、奴隷用、その他用と3つぐらいは並べて立てられている。

 ランスは魔法ハウスを5つぐらい所持していた。世界総統や魔王になった時に手に入れたらしい。

 

「あ、エールちゃん。おはようございます」

「おはよー……」

 

 寝室から降りると台所からシィルさん――ランスの恋人が声をかけてきた。

 エプロン姿で料理を並べ終えており、もういつでも食事が出来る状態だった。

 

「……ランスは?」

「ランス様はもう食べるだけ食べて隣の、その……」

「ハーレム用かー……」

 

 またえっちな事をやっているらしい。

 席に座るとシィルさんがコーヒーを煎れてくれた。砂糖二つを入れるあたり、本当に気が回る人だなあ。

 コーヒーを飲めば早朝でも行ける。朝食をぱっぱとかき込んでとっとと行こう。

 

「はむはむごくごく…………いただきました! ごちそうさま!」

「くすっ、いってらっしゃい」

 

 ここからは無敵の冒険者による秘書の時間だ。

 ボクは立てかけてあった帽子を被って家を出た。

 ランスの秘書である以上、ランスが必要だ。よってランスを呼び出すべくハーレムハウスの入り口を叩く。

 

「ランスランス。速く出て来てよー」

「ちょっ……エール、ストップだ! ぎゃー!」

 

 長田君が止めに来たので、とりあえず一回割って治す。

 今回はセロテープを貼っていく。ヒーリング、放置、ハニワ叩きで粉々にする。何故か治るのが長田君の長所だ。

 

「お前なー、秘書ってどういうものか分かってる?」

「長田君がいっつもやってたことでしょ? つまりボクと遊ぶこと」

「違うわ! なんでそこ自己中になるの!?」

 

 長田君はぺちぺちとボクの足を叩いて突っ込んでくる。うん、調子が出てきた。

 

「ソウルフレンドが突拍子もない事を言い出すのはいつもの事だけど、今回は無理だろ……」

「どうしてそう思うの?」

「秘書ってのはな、誰かのサポートに徹する役なんだよ。そういうの得意じゃないだろー?」

「やってみなければ分からないよ。大丈夫大丈夫」

 

 大体の事を成功させてきたし、今回の秘書だって楽勝だろう。

 

「ホント相棒の自信はどこから来るんだよ……だが、それを成功させてやるのが良い相棒ってもんだぜ。俺がエールの秘書をやってやんよ! 秘書の秘書だ!」

「長田君がボクと一緒にやるのは当たり前でしょ。そうじゃなきゃ楽しくないもの」

「へへっ、だよなー? とりあえずお前の父ちゃん待つ間に話したい事があるんだよ。昨日の戦いでなー……」

 

 長田君とボクは、【男入室禁止】の家の前で雑談を始めた。内容はやはり、ランスとの冒険の話になる。

 

 ランス団結成直後、ランスがやったのは近隣の村への美女探しという名の略奪だった。適当にランスが選んだ村は、たまたま別の盗賊団のシマと被った。シマ荒らしに文句を言いに来た盗賊達を殺害。逆にその盗賊団を攻めて吸収してしまう。

 同じ事があっても面倒臭い。先に同業者を潰そうという方針になり襲撃襲撃また襲撃。周囲の盗賊団は全壊滅。ランスはこのあたりのアウトロー共を全て支配下にしてしまった。その過程でたっぷり死んだし、元々いた盗賊は半分もいないだろう。でも最初の盗賊団から考えれば、千人以上もいる現状はちょっとした大所帯だ。

 

 それだけの勢力ともなれば、姿を見せるだけで近くの村は従った。美女は総取り、近隣の村はランス団の支配下。流石にそうなれば、貴族や軍が動く。東ヘルマン兵が千人ぐらいで攻めて来たけど、それはボクが壊滅させた。十名ちょっとに対して三万も集めて襲いかかる卑怯者に情けはない。お姉ちゃんに攻撃した時点で万死に値する。あいつらだけは絶対に許さない。

 

 軍隊が壊滅した事によって、このあたりをまとめていた貴族は大慌て。報復として攻めたランスに降伏して、土下座で領主邸を明け渡した。

 ただし、これは罠だった。貴族は近隣から腕利きをかき集めて、女を餌にして暗殺を仕掛けてきたのだ。結果は当然返り討ち。貴族は死亡。ランスは貴族の娘をお持ち帰り。

 その時のランスのあまりの強さに下っ端達は畏怖を込めて、盗賊王とか呼びだした。

 

 これがランス団結成からたった一週間ちょっとの出来事。

 おかしな、面白い……そう、他に遊ぶ暇もないぐらい忙しい日々をボク達は過ごしている。

 日記帳に書くことが毎日1ページを超える濃厚な日々。長田君と語るネタも尽きるわけがない。

 

「なーにやってんだか、ガキ共は……」

 

 雑談をしている内に扉が開かれ、鎧を着た男が姿を見せる。

 目の前にいるのがボクの父さん――ランスだ。

 ランスが剣を持つ方に回り込んで、二人で横に立つ。

 

「あっ、ランス。今日からボクがランスの秘書をしてあげるねー!」

「俺は秘書の秘書だー! 秘書るぜー!」

 

 さあ、秘書の始まりだ。

 ランスはボクの方を見るとにやりと笑って――――頬を引っ張った。

 

「ほえっ?」

 

 額をつんつんする。頭を撫でる。そのまま体中をくすぐってくる。

 

「あ、あはははは! わ、脇腹はやめてよ! な、なんでやるのー!?」

「お前が秘書だからだーーー! ラーーーンスフィンガーーーー―!」

「あははははははは! や、やめてーーーー!」

 

 秘書の仕事その一、全身を弄られる。長田君は開幕割られていた。

 何故か一切の抵抗が出来なかった。お腹が苦しい。

 

「こ……これ何なの……?」

「いや、エールはこれ以上に酷かったからな? リセットさんを弄り倒したろ」

 

 ああ、そうだったような。

 はしゃぎすぎて志津香に禁止されたっけ。

 

「秘書とは奴隷みたいなものでな、俺様はやりたい放題になるのだ。サテラを騙して秘書に同意させた時は楽しかったぞ。ぐふふ……」

 

 ボク達は無敵の冒険者のはずなのに、ランスの手を振り払えない。逃げることもできない。

 まるで世界(システム)がそうしなければならないと定められた絶対的な力があった。

 ランスは上機嫌にボクの両頬をつまんだ。やり返したいのに何もできない……!

 

「さーて、この悪ガキにやーっと言いたい事が言えるぞ。少しはお父様を敬わんか!」

 

 ランスはぐにーっと頬を横に引っ張っていく。

 

「ひゃだー!」

「他の奴等は違いがあるにせよ父親と呼んでくるが、末っ子のお前がいつまでも呼び捨てとはどういうことだ!」

「だってー、そんなすぐに敬うわけないでしょ。他の兄弟も半年ぐらいだし皆呼び捨てだよ」

「リセットは?」

「お姉ちゃんは特別! ふぇんほぉばぁひぃ……」

 

 ランスは頬をやりたい放題してきた。まともに喋れない。

 母さんは物心ついた時から母さんだった。だから母さんと言う事に違和感はない。

 でも、いきなりあなたの兄弟です。仲良くしてねーって言われてお兄ちゃんお姉ちゃんって甘えられるだろうか?

 恥ずかしいに決まってる。魔王の子達は今では大事な家族だけど、それでもすっかり馴染んで、今でも呼び捨てばかりだ。

 最初にお姉ちゃんって呼んでねーって言って、ボクを暖かく包み込んでくれたリセットだけは本当に大好き。だからお姉ちゃんは特別なのだ。

 

「お父様の凄さ見せてやるって言ったでしょー? できたら父さんって呼んであげるよー」

「減らず口め。歯の形以外全然俺様に似てないな!」

「いや、結構そっくりっすよコイツ……あんっ」

 

 ランスは魔王退治のせいでランス呼びですっかり定着。ボクの父親だとは分かってるけど、尊敬するところがあるかって言うと……ない。

 今のボクの中では、ランスはえっちが好きな面白い人。そんな感じだ。

 

「お頭、大変ですぜ!」

 

 ボク達が弄られているところで盗賊達の実質的なまとめ役、バウンドが駆け込んできた。

 盗賊団は前より大きくなり、哨戒は有機的なチーム構成で行われている。こっちまで報告が来るということは、彼等の手に負えない事があったという事だろう。

 

「どうした? どうでもいい事だったらしばくぞ」

「お頭に会いたいって奴がこっちに来ています。凄く強くて、俺達じゃ追い返せません」

 

 凄く強い、という言葉に反応したランスは興味がそそられたらしく、どこか期待するような表情でバウンドを見た。

 

「ほう、美女か?」

「いえ、男です」

「こういう時こそ秘書の仕事だな。任せた」

 

 一瞬で興味を失ったランスはボクを解放して丸投げしてきた。

 秘書の仕事……なんだろうか。いつもの仕事な気がする。

 凄く強い、というのはボクも興味はある。見てみよう。

 

「どこにいるの?」

「こちらです。ついてきて下さい」

 

 ボク達はバウンドが先導する方へ向かった。

 盗賊達が手に負えないとは言ってるが、lv40もあったら手に負えないだろう。

 そして、その程度はボク達では一撃だ。ランスも昨日の襲撃の際、主力だった無心アイヌを一瞬にして無力化してしまった。

 今回も概ねそんな感じなんだろうなとは思うが、そうじゃない時は楽しめそうだ。

 やがて、盗賊達が倒れているところに辿り着いた。その元凶もこちらに気づいた。

 

「ぐわはははは! 俺様の盗賊団を騙る奴がいるから様子を見に来たら、お前等だったか!」

 

 下品な馬鹿笑をする半裸の男だ。赤髪、暴力的な風貌、筋骨隆々。身長はランスより高い。殴り合いなら、もしかしたらランスより強そうに見えるかもしれない。

 

「………お前は! どうしてここにいるんだ!?」

 

 長田君が驚きの声を挙げる。そう、この男は初対面ではない。

 冒険の時に二度会った事がある。倒すべき盗賊の首魁として。闘神大会の出場者として。

 男はふんと鼻を鳴らし、斧を肩に担いだ。

 

「ここは俺の故郷だ。久しぶりに帰って来たら村は盗賊の支配下だった。むしろ俺様の方が聞きたいぐらいだぜ。どうしてお前らが盗賊団なんてやってんだあ?」

「ボク達の勝手だ」

 

 油断はするべきではない。日光をすらりと抜く。いつでも戦う準備はできている。

 

「おおっと……いや、今回は戦う気はないぜ。下っ端共がうるさいから、撫でてやっただけだ」

「じゃあ何しに来たんだよ……」

「くくく……喜べよ。俺様も仲間になってやる!」

「…………仲間ぁ?」

 

 かつては盗賊退治の敵。闘神都市でも突っかかって来た男が、仲間?

 

「おうよ。闘神都市で負けてから、俺様はさらに修行した! もはや盗賊で俺様に勝てる奴は存在しねえ! ここはそこそこ工夫してたみたいだが、この有様だ!」

 

 周囲には50人ばかりの盗賊が倒れている。致命傷を避けて多くが昏倒されており、余裕をもって戦力を減らさないように配慮したのだろう。

 実力を前よりつけたというのは間違いなさそうだ。

 

「この盗賊団の動きは見ていた。確かにお前等も強くなったみたいだな。だが、盗賊の経験が薄いだろう? 数ばかり増やしたみたいだが、まとめる奴が少なすぎる」

「………………」

 

 返す言葉もない。バウンドが駆けずり回って頑張ってるけど、ある程度の強さを持つ盗賊は不足していた。そして、この男はバウンドより圧倒的に強い。

 

「そこで、俺様だ。実力は今見た通りだ。盗賊の頭として200人以上をまとめた実績もある。お前らにとって、喉から手が出る程欲しいだろう?」

「エール……バウンドの徹夜っぷりを考えると、楽はさせてやるべきだぜ……」

 

 長田君はくいくいと袖を引っ張る。一理はあると考えているのだろう。

 だが、一番大事なものが抜けている。裏切らないかだ。

 

「ボク達の盗賊団に忠誠を誓える?」

「忠誠? 笑わせんなよ。力こそ全てだ。お前らが寝首を晒せばブスッと行くぜえ!」

 

 獰猛に笑って、ボク達から目を逸らさなかった。

 牙は折れていないが、嘘も吐いていないと確信できる。

 

「……いいよね、長田君」

「問題ないぜ!」

 

 ゆっくりと、新しい仲間に近づいていく。彼に対する言葉は一つしかなかった。

 

「「誰だお前は!」」

「ドーーーーギーーーーだーーーーーーー! いい加減覚えろーーーーーーーー!」

 

 元偽ランス団首魁、ドギがボク達の仲間になった。

 

 

 

 

 

 

 アジトに戻ると、車椅子の少女に出くわした。

 この冒険を始める時にいた5人目のメンバー、アム・イスエルだ。

 

「あら、エールちゃん。こんにちわ」

「こんにちわー」

 

 最初に会った時、なんか変な事になったけどランスが叩いて禁止した。

 母さんの匂いがするけど、どこか違う、怖いくらい安心する人だ。

 

「下半身、大分戻って来たねー」

「そうそう、もう少しで膝の再生に取りかかると思うの。turn2には動けそうね」

 

 言っている意味が分からない。

 世界の崩壊を三度見ただの、この黒衣の少女はどこか違う世界の人のような事を言っていた。

 

「ここはifの世界だもの、何が起こってもおかしくないの」

「えー……そんな滅茶苦茶なこと言われても……」

「こことバルハラは本当に近いわ。手始めに、そこにいる女神aliceを倒しに行きましょうか。ああでも、最後の戦-ツー・クンフト・パトローネ-まで待つのもいいかしら。うふふ……」

 

 そろそろ世界が壊れそうな事を言っていた。

 こういう時は叩けって言われてるので叩こう。

 

「目を覚ましてね。ばしーん」

「エールちゃん、痛いわ」

「そんなことより、アムさんはランスを見なかったっすかー?」

「あの山を登っていたわよ。今から頑張れば頂上で追いつけるんじゃないかしら」

 

 アムが指差したのは、この山岳地帯で最も高い山だった。

 仕事を他人任せにして一人でどこか遠くへ行くのは酷いと思う。

 

「まーたランスはすぐいなくなる。長田君、早く行こー」

「エールちゃん」

 

 山登りに向かおうとしたところで、とても優しい声がかかった。

 振り向くと、アムが吸い込まれそうな瞳でボクを見ている。

 

「ランス君、悩んでるみたいなの。力になってあげて」

「…………わかった!」

 

 あの人の言う事はあっさりと信じられる。きっと間違ってない。

 でもランスの悩みってなんだろう。あれこれ考えながら、ボク達は山登りを始めた。

 

 

 

 

 最初は長田君と登っていたけど、もう諦めた。

 ランスがいつまでいるか分からないので、長田君を背負って駆け上がっている。

 

「ひぃーっ、ふぅーっ……こんな速さで、登るの、無理だって……」

「こっち渡るとショートカットだから行こうか。ぽいっ」

「ひぃーーーーーっ! ぎゃーーー!」

 

 頂上に長田君を先にぶん投げて割ってご到着。ボクが降り立つ頃には復活していた。

 そして、アムの予想通りランスが立っていた。

 周囲にこれより高い山はない。一番見晴らしの良いところにランスはいる。あたりを見回せばこの山岳地帯の周辺、ボク達の支配地域。遠くを見ればウラジオストックやゴーラクも見渡せるし、バラオ山脈も遥か遠くに見える。まさしく絶景だった。

 ただ、そこに立っていたランスはそれよりも遠く、むしろここには無いものに思いを馳せているようで―――ー見たことのない表情をしていた。

 

「ランス、ここにいたの」

「おお、エールか」

 

 ボクが名前を呼ぶと、いつものような不敵でふてぶてしい顔に戻った。それでも、悩みがあるというアムの考えは正しいんだろう。

 ここは秘書なら指摘するべきだ。そして、ボクにしか気づけないランスの悩みがある。

 

「何か悩みがあるんでしょ? ボクならわかるよ」

「……ふん。お前のようなガキが崇高な俺様の考えを理解出来るわけがあるまい」

 

 違う。理解出来るのは家族しか、ボク達しか無理なんだ。

 

「――――自分が、強すぎる」

「………………っ!?」

 

 ランスは驚愕して目を見開いた。

 ここ最近のボクの悩みでもある。そしてランスの悩みだろう。

 

「わ、わかるのか……?」

「当然。だってこうなんだよ?」

 

 ボクは地面を蹴りつけて割った。適当な岩をランスに投げて、ボクも同じぐらいの岩を持つ。

 日光を何度か振り、適当な大きさにする。その岩を力一杯に握りしめて粉々に砕いた。

 

「……まあそうだな。お前ならわかるのかもな」

 

 ランスは岩をぶん殴って粉々にし、最後に握りつぶした岩は砂になった。

 流石にそれはボクにも無理だ。

 

「――――弱い。皆弱い。弱すぎる」

「まったくだ。強すぎるのも問題だな」

 

 そう……ボク達のレベルが上がり過ぎて、戦ってもつまらないのだ。

 技術を使う必要もなく、剣すらいらない。

 ここまで来ると、ただの遊びでもつまらない。長田君は関係なく楽しいけど、それでもレベルが関係ない事になりがちだ。

 でも、ボクが秘書なら違う。ボクはランスと競い合える。たくさん遊んで楽しめる。

 ランスに向けて手を伸ばす、ここから退屈な戦いはもう終わりだ。

 

「遊び相手がいないのが悩みなんでしょ? ボクとたくさん遊ぼうよ。そのために秘書として一緒にいるから」

「アホか、全然違うわ。ガキの悩みだな」

 

 あっれぇ~?

 どこかまで合ってたんだけど、ズレた。おっかしいなぁ……

 ランスは僕に対して呆れつつも、話す気にはなったようだ。腕を腰に当てて、アジトを見下ろしながら語り始めた。

 

「俺様の悩みはもっと深刻なものだ。この冒険における重大な欠陥に気づいてしまった」

「重大な欠陥って、やりたい放題やってただけだろ!? あんっ」

「俺は桃源郷を築いた。まだまだ全然足りないが、数の上ではハーレムと一応呼んでもいい。だが、決定的に足りないものがあるのだ」

「は、ハーレムの話になるの……?」

「当然だ。この冒険の目的はハーレムを見つける事だっただろう」

 

 そりゃそうだ。でも迷走していつのまにか盗賊王なんてやっている。

 ランスは息を深く吸い込み――――大声で叫んだ。

 

「俺様の悩みとは……ハーレムを築いたのにも関わらず、思いっきりセックスできる女がいないことだーーー!」

 

 いないことだ………いないことだ………いないことだ……

 とんでもない発言が、山彦となって山岳地帯に響いた。

 

「俺様は強い。とんでもなく強い。だけど強すぎるせいで、女を慎重に抱かねばならない。水風船を割らないように気をつけて、慎重に腰を動かす必要がある。エール、お前ならこの苦しみがわかるだろう?」

「う、うん……わかるけど……ちょっと、えっちなのは……」

 

 盗賊を驚かせようと肩を叩いてたら岩にめり込ませちゃったとかある。

 ランスも同じように、えっちの時に手加減するんだろう。

 どう手加減するかは考えたくもないけど。

 

「勿論俺はテクニシャンだ。その程度の事は楽勝だ。あんあん喘がせて、ぐちょぐちょに気持ち良くさせてやってる。女たちをどんどんメロメロにしている。だが……肝心の俺は、心の底から気持ち良く動けないのだ!」

「う、う、うう……」

 

 頬が熱くなる。具体的な話はやめて欲しい。

 裸とか、そういうのだったらまだ許容できるけど……それはボクには刺激が強すぎる。

 お願いだから想像させないで。

 

「俺はハーレムを作ったつもりだったが、どちらかと言うと奉仕する側になっているのだ! これでは矛盾している! 俺が強すぎて、女達が弱すぎるせいだ!」

 

 なんということだ……とランスは頭を抱えた。本気で、本気で悩んでいるようだった。

 

「俺様は強い。強すぎる。暫くはこのままだろう。本気で女を抱けない現状がとてつもなく辛いんだ。今日もシィルも含めて全員ヤリ尽くした挙句に真っ先に目を覚ましたのは俺だけだった。ハイパー兵器がヤリ足りないと言っている。ここのところ、ずっと寝不足だ……」

「だから最近、若干テンション低めだったのか……」

「ぐぬぬぬぬ……女だー! 女をよこせー! シルキィやホーネットのように丈夫で、俺が全力で動いても元気な女をよこせー! 思いっきり射精をさせろおーーーー!」

 

 魔王討伐隊が相手にした魔人の中でも、一番強い二人の名を挙げている時点で無理だろう。そこに比肩するのは、ボク達とランスしかいないのだから。

 

「む、無理な願いだよね。このあたりにそんな強い子なんているわけないよ」

「あれ? でもそれってエールは該当するんじゃね?」

「えっ…………?」

 

 確かにボクはAPコッポスによって神魔法を無限に使える。回復を挟んで全力で頑張れば二人に張り合えなくもない。いや、無敵の冒険者なんだから戦えば勝つはず。

 でもそれはつまり……今のランスはボクにとって危険なんじゃないか?

 この状況って、もしかしてヤバい!?

 ボクは後ずさりでランスから距離を取り、体を抱きしめて縮こまった。

 

「いや、ランス、ボクは、その……!」

「俺は近親相姦はしない。娘なんかに手を出せるか。ましてやこんな精神ガキなんか勃たんわ」

 

 ホッするような、ムカッとするような事を言ってきた。

 ガキは余計だ。ガキは。

 

「あ、そこはまともなんだな」

「近親相姦は駄目。子供も駄目。世界中の美女は俺様のものだが、外道な事はやらん。エールは全部に該当して駄目駄目だ」

 

 ザンスは全員孕ませるとか言う一方で、そこはしっかりしているようだ。

 ボク達兄妹間で恋愛とか起きたら、どうするんだろうか。

 

「今日はどうするんだよー? そんな簡単に強い女なんていないぞー」

「うむ。思いっきりヤレる女は探すとして、今日はアイヌちゃんだな。今一番強い子を落とす」

 

 悩みを吐き出して少し楽になったらしく、スッキリしたみたいた。いつもの調子に戻って迷いがない。

 ランスはアジトのある方とは反対方向、世界の崖側へと歩き出す。

 

「アイヌちゃんは魔物隊長ブロビオの首を持ってきたら俺の女になってもいいって言った。だから適当な魔物隊長を殺して、ブロビオという事にするぞ」

「そんなんでいいの!?」

「魔物隊長の顔なんて誰もわからんだろう」

「いや、そうだけど……流石にそれで納得はしないだろ!?」

「ボクは改名が出来る神魔法が使えるよ。鑑定と合わせれば誤魔化せるんじゃないかな」

 

 ぎょっとした顔でランスと長田君がボクを見た。

 エールという名前に不満はないが、もし変えるとしたらという興味本位で昔覚えたのだ。

 

「そんなんあるのか……神魔法パネー……」

「これでバレる心配もないな。魔物兵を探すぞ」

「このあたりに魔軍なんていないと思うけどー?」

「俺様のカンだが、こっちにいるような気がするのだ。明日にはアイヌちゃんを俺の女にしてやるぜ。がーっはっはっはっはっは!」

 

 ランスが馬鹿笑いしながら、山を駆け下りていった。

 

「長田君、行こうか!」

「おうよ! 俺達の秘書はまだ始まったばかりだ!」

「「れっつごー!」」

 

 ボク達は秘書としてランスの後をついていく。今日も女を求めてまた冒険だ。

 ランスは……ボクの父さんは、えっちな事、セックスが本当に大好きだ。

 母さんはどうしてこの人の事を好きになったんだろうか、まだわからない。




ドギ・マギ lv45
 元ネタは闘神都市シリーズの噛ませ犬なのだが、今作は何気に成長している。
 闘神都市Ⅲでは一年経とうが一切修行してねぇと言い放つが、10では修行して強くなったらしい、精神的に改善している。
 真面目にちゃんと相手してあげるとエールに対して好感を持っているのが分かるが、うちのエールちゃんは誰だお前しか言わなかった。多分今後も会話をする度に言い続ける。

無心アイヌ
 闘神大会出場者。父の仇であるブロビオと一回戦で当たった。
 毒によって為す術無く負けて、そのまま公衆の面前でレイプされた。

アム・イスエル
 バスワルドによって下半身吹っ飛ばされてランスと出会い、そのまま旅に同行。
 流石に上半身だけで戦う気はないので、盗賊達の『メンタルケア』をしている。
 生きとし生ける者全ての味方、勿論エールの味方でもある。様子見中。

ランスの悩み
 今のランスは03最終戦ランスより強い。強すぎて思いっきりヤレる女がいない。
 魔王化によって底上げされたランスの肉体は超絶倫の底なし状態。
 シィルによって心は充足しても、自分の性欲の強さに苦しんでいる。
 どこかに上位魔人並みの身体能力を持った女はいないものか。

自分のエールちゃんエロ関係
 冒険前はコウノトリ以前の無知状態。
 シィ―ウィードの体験がトラウマと化してえっちな事はダメダメ。
 中途半端に強烈な体験をしたせいで、童貞(ザンス)弄りは自爆も孕んだチキンレース状態に。


 やっと主人公サイド登場。世界の主人公は書いていて凄く楽しくて明るい。
 強すぎるからこそのセックスの悩みでランスは動く。ある意味禁欲モルルン状態。
 コラボで動くシーラ見て課金レベルで食指が動いているが我慢我慢…… 
 そんな暇があるなら一生懸命過去作やってネタ探せ、まだ01も03も鬼畜王も4.0~4.2もあるぞ状態なのだ……
 次回、5日までには。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。