※この作品はR-18です。

新勇者バーバラの冒険   作:ランスロス・マッキ

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ウラジオストック⑦ 暴走が終わって

 クレーターの中央に、全員が集っている。

 ウズメ、ミックス、アキラ、人間体となった日光、長田。彼女達は創造神だったエールの状態を眺めていた。

 

「すやすや……」

 

 エールは穏やかに、長田の手を握ったまま眠っている。

 

「一部怪我もあるけど、疲労で寝てるだけ。医学的には異常なしよ」

「あれだけ暴れれば、そりゃ疲れるわなー」

 

 長田が白いくじらからエールを引き剥がすと、くじらは溶けるように消えてしまった。エールの光も、零れ出す光球も穏やかに自然消滅し、世界は穏やかさを取り戻している。

 終わってみれば、創造神の暴走は無人のウラジオストック西地区を吹き飛ばす程度だった。

 

「さて、一件落着と言いたいところだけど……」

「色々聞くことがありそうね」

 

 ミックスが聴診器を解き、アキラを睨む。

 

「まーそうなるよね……」

 

 アキラは折り目正しく座る。地面の上に膝をつけ、背筋を伸ばして魔王の子達を眺め、

 

「僕がエールちゃんにセクハラしたらこうなりました! 本当に申し訳ありませんでしたあ!!」

 

 平身低頭、土下座した。

 

「暴れてたので、お仕置きを兼ねてエロい言葉責めをしたらエールちゃんがパニクってこうなりました。まさかセクハラでこうなるとは夢にも思いませんでした」

「…………本当に、それだけなの?」

「はい、僕はちょっと戦ってセクハラしただけです。そうだよね、日光?」

 

 苦々しい表情の日光が言葉を継ぐ。

 

「……嘘は吐いていません。暴走した時のエールさんは軽傷でしたし、アキラは酷い言葉で罵倒しただけです」

「マジかよ!? それでこうなんの!?」

「いやもう魔王の子を侮ってました。まさかこうなるとは」

 

 アキラは頭を上げて、ミックスを縋るように見る。一見許しを請うような表情だが、違う感情もあるとミックスは察した。この面子では話せない事が多すぎるから選んで欲しいと。

 

「……はあ。何はともあれ、エールが優先ね」

 

 創造神は簡単に全てを明かしていいものではない。物事によっては負担になり得る。知る人間を絞りたいと考えるのは当たり前の事だった。

 

「ウズメは教会に長田ごとエールを運んどいて。後で治療するから」

「ういうい、分身担架ー」

「わっ、ちょっ、あれー!? 俺の意思無視ー!?」

 

 わっせわっせと二人はウズメに運ばれていく。エールが長田の手を強く握って離さないため、まとめて運ぶしかなかった。

 

「これでいいわね?」

「うん、君は本当に辿り着いているんだね。正解だよ」

「……エールが本当にそうなら、自分の記憶を封印してる。つまりエールが知ると都合が悪い」

 

 ぱちぱちという拍手が天才少女に贈られた。

 ミックスは分かってしまったが、ウズメは創造神の知識など持っていない。今ならまだ強大な力をエールが持つぐらいでしかない。そしてその方がいい。

 ミックスの考える限り、二人は真実を知ってもエールに対して変わらないだろうが、別の問題が出る。ウズメには主君に言えない秘密が出来るし、長田は隠し事など出来ない。隠し通さなければならない真実を知る人間は少ない方がいい。

 

「ま、僕も予想の範疇だけどね。何を知りたい?」

「再発防止と、東ヘルマンの『病気』と、あんたについて」

 

 アキラは眉をひそめた。

 

「む……欲張りめ」

「あたしの治療費は高いわよ。踏み倒しをするの?」

 

 ミックスは教会の方に目を向けて、これから受け持つ患者についても示唆する。

 

「わかった、わかった。でもある程度だよ。知らない方がいい事もあるから」

 

 戻れなくなるからねと前置きして、アキラは口を開いた。

 

「再発防止は簡単だ。やらかした立場が言うのもアレだけど、彼女をパニックにさせたり、絶望的な状況に叩き込んだりしなければいい。楽しく明るく過ごす分には何の杞憂もない。だけど――」

「楽しい事ばかりじゃいられない。悲しいことも、辛いこともあるでしょうね」

「その通りだ。例えば親の死はいつかある。あの子はそれが耐えられないから東ヘルマンの攻撃に走った」

 

 冒険を通してエールには様々な友人が出来た。仲が良く、面白い身内が出来た。彼女にとって守りたい人間が多すぎて、潜在的に脅威な東ヘルマンを積極的に排除しようという意識が生まれていた。アキラはそれを見抜いているからこそ、エールという少女が可愛くて仕方がない。

 

「これからエールに求められるのは精神的な成長だよ。まあそんなに杞憂はしてないんだけどね。君がいるから」

 

 アキラの微笑みに対して、ミックスの目は逸れた。

 

「…………私があの子の首輪をつけろってことね、次」

「東ヘルマンの『病気』は喋れない事が多すぎるから、喋れる事だけ喋って判断は任せるよ。質問には答えられないけど、真実しか言わない。後は自分で埋めてくれ」

 

 ミックスが頷くと、アキラは淡々と語りだす。

 

「RECO教団は悪魔崇拝の組織だ。悪魔の加護を使って東ヘルマンを栄えさせている。ザンデブルグは国民の魂の汚染率をある程度上げて、悪魔が回収し易いようにしている。ホワイトは利用できるものはなんでも利用して、魔王ランスを倒そうと考えている人だ」

「……そう」

 

 ミックスにとって真新しい情報はない。今までの下調べと予測から分かっていた事だった。

 だが、意味が無いわけではない。重要なのは『その情報をアキラが喋れる』という事実だ。悪魔との契約にはデスペナルティを付属させる方法もあるので、隠したい事実はそれで隠せる。それでアキラが死ぬとも思えないが、言いたい事は見えてくる。

 RECO教が悪魔崇拝とバレても構わないと悪魔側は考えている。

 予想よりも東ヘルマンの『病気』は根が深い。

 

「三巨頭なんて言われてるが、実権はザンデブルグとビュートンにある。僕はそれに従って微調整するだけで、国民を比較的マシにしただけ。例えば魔王襲来時の地下シェルターを各都市に配置したりね。だからもう辞めたかった。言えるのはこれぐらいかな」

 

 アキラの言っている事は一つだ。

 東ヘルマンを潰したければ二人を潰せ。自分は潰しても意味がない。

 まるで東ヘルマンを潰す前提の情報に、ミックスは眉根を寄せた。

 

「……最後に、あんたの事ね」

「僕は大神官アキラ、元勇者の完全汚染人間で人類の味方だ。詳しくは日光からでも、ランスと一緒にいるアム・イスエルからでも聞けばいい。というかそうしないと突っ込みが入るよね」

 

 流し目を送られた日光は悩まし気に目を泳がせる。

 

「……アキラは身分も姿も変えて嘘もつくので信用してはいけません。ですが、人類の味方というのは間違いありません。私が見てきた彼女は、常に人の為に働いていましたから」

「まあそんな感じになるかな、目立たないように人助けをしてたんだ。ほんのちょっとだけね」

「くれぐれも、絶対に、気を許さないでください」

 

 こうなるよなあとぼやいたアキラは、手紙を取り出して何事かを書き込んでいく。

 

「僕のやりたい事は話せないし、過去の所業があるから信用も無理だろう。だから一方的にやる」

 

 手早く二枚の便箋を書き上げると、日光に渡した。

 

「これはエールとウズメ、二人の魔王の子宛てだ。後で渡して欲しい」

「中身を改めますよ」

「構わないよ。柔らかい挑発とスパイの勧誘だから」

 

 その時点で、ミックスはアキラの目的を悟った。

 

「あんたまさか、東ヘルマンをエール達に落とさせるつもり!?」

「その通りだ。僕は東ヘルマンを裏切って、君達は活躍してこの世界の問題が解決する。エールの次の遊びとしては面白いんじゃないかなー?」

 

 へらへらと笑って、大乱に魔王の子を巻き込ませようとするアキラ。ミックスの主義には全く合わない存在だった。自分から乱を起こす側には絶対に回りたくない。

 

「冗談じゃない! あの子の首根っこ引っ掴んで帰るから勝手にやってろ!」

 

 踵(きびす)を返して立ち去ろうとしたミックスに、真剣な声がかかった。

 

「三ヶ月、僕が精一杯やってエールの存在が悪魔に漏れない時間だ。東ヘルマンは悪魔と通じてるから、それが漏れたら全世界で戦争になる」

「――――ッ」

 

 振り向くと、アキラは頭を深く下げていた。

 

「暴走を起こしたのは僕のせいだ。そのせいで世界に危険をばらまいてしまった。後始末を魔王の子達に頼む形になって申し訳ない」

 

 エールの暴走は阻止しなければそれだけで世界が滅ぶ危機だ。だが暴走を止めてもそれだけでは終わらない。創造神の分体がいるかもしれないという情報が悪魔に渡っては、また世界の危機に繋がる。

 それでもアキラは動けないから魔王の子達に頼るしかない。

 

「お願いだ。もう一度君達で世界を救ってくれ。人の死を未然に防いでくれ」

「………………」

「僕がある程度コントロールする。民間人の死傷者は出さないように、絶対に巻き込まないようにする。だから、どうか……」

 

 ミックスはやりたくない。平穏な日々が一番だ。

 ただ、言わんとする事は理解してしまう。いずれ各国の指導者は東ヘルマンを滅ぼす。リーザスは半年以内にやるという確信すらある。今ここで加担して相手のトップと連携を取って滅ぼすかと、大規模正面戦争の末滅ぼすか、どちらが不幸な人を産みにくいかという話になってしまった。

 

「…………一度きりよ、こんなこと」

 

 結局のところ、知ってしまった側がどこまでも損をする立場だった。

 ミックスはこれから死者を増やさないよう心を痛めながら、エール達の暴走を止めきれない戦いに身を投じる事になる。

 

「ありがとーーー!」

 

 がばっと跳ね起きたアキラがミックスに抱き着こうとして、

 

「絶対に、近寄らないでください」

 

 日光に体を張って止められた。

 

「ぐぐっ、感謝の礼を示そうとしたのだけれど!」

「…………手紙を破りますよ」

 

 その言葉を聞いて、アキラは諦めて離れた。

 

「仕方ない、次の機会という事にしよう。ま、魔王の子にランスまでいるなら安心だけどね」

 

 肩の荷が降りたというように朗らかに笑う。

 

「大丈夫大丈夫、東ヘルマンが三ヶ月以内に潰れるなら魔軍が攻めて来ても楽勝だよ。創造神もあれだけいい子なら向こう1000年は人類は平和に争えるんじゃないかな」

 

 アキラの笑顔は善良な人間と何も変わらない。考え方も多少ミックスに近いものがある。

 だ(・)が(・)、(・)そ(・)れ(・)は(・)お(・)か(・)し(・)い(・)の(・)だ(・)。(・)

 

「……ねえ、もう一つだけいい?」

「何だい?」

「これだけ生き残っている理由は、執念はなにがあるの?」

 

 ミックスには、目の前の存在が一つだけ理解が出来ない。

 不老不死不劣不病の人間。ミックスの人生を賭した研究テーマであり、その為に不死の存在である汚染人間も少しだけ学んだ。

 だがあれは駄目だ。老化を防がなければ肉体は保てず、いずれ汁のような存在となる廃棄物でしかない。その上汚染人間は皆どこかが狂っている。心が病んでない方が異常なのだ。

 神魔法で肉体を誤魔化してるが、アキラはどこかが狂っていない方がおかしい。

 ア(・)キ(・)ラ(・)は(・)正(・)常(・)に(・)見(・)え(・)る(・)か(・)ら(・)こ(・)そ(・)、(・)異(・)常(・)だ(・)っ(・)た(・)。

 

「遠い先の話だから君達には関係ないよ」

 

 一瞬だけ、アキラの表情が消えた。そんな気がした。

 

「6000年後に魔王が復活するって聞いてもどうでもいいだろ? 僕の目的はそれ以上に気が長い話なんだ」

「…………今、なんて」

 

 ミックスが言葉を継ごうとしても意に介さず、アキラはどこかへと目線を変えた。

 

「スキンシップが出来ないのなら今日はこれで失礼するよ。セックスしたいから」

「……は?」

 

 そう言い残して、アキラは消えた。

 

 

 

 

 

 

 

 遥か彼方。

 コーラはアキラを眺め続けていた。

 窮地であろうと前を向き、身体を吹き飛ばされてもすぐに立ち向かい、活路を見出そうと努力し、自身が傷つくのを厭わない。

 そして創造神の動きを封じ、暴走が収めた時に笑うその姿。

 全てを滅茶苦茶にしつつも、慮外の結果を出して屈託なく笑う姿は、美しかった。

 史上最高の勇者アキラは、コーラが最後に会った時から全く変わらなかった。

 人が大好きで、明るくて、諦めが悪く『勇者(おもちゃ)』であらず、真の勇者。

 コーラがただの神々だった頃より、変質を避けられなかった存在に目を奪われ続けた。

 

 そしてそのアキラが、こちらを、見た。

 

「あ、あ…………」

 

 アキラはニヤリと笑って、コーラの下に突っ込んだ。

 

「……ーラ……」

 

 あの速度では逃げる事は敵わない。捕捉された、捕捉されてしまった。

 物凄い勢いでまっしぐらに、欲情を隠そうともせず、スカートから下着を素早く脱いでコーラの下へと突っ込んでいく。

 

「コーラ、コーラ、コーラ♪」

 

 あの頃から全く変わらない。

 アキラは人が好きで、従者が性的に大好きだった。勇者時代に毎日犯す程度には。

 アキラは突貫した勢いそのままに抱き着いてコーラを押し倒した。

 

「遂に僕を見てくれるって事は神を辞めたんだよね! それで僕の下まで来たって事はセックスが忘れられなったってことだよね! 嬉しいなあ!」

「……あなたに会いたくはありませんでしたよ。変態アキラ」

 

 顔を背けて、罵声を飛ばすぐらいしかない。

 アキラはコーラが見て来た中で間違いなく最高の勇者だった。だが性が酷過ぎた。勇者の従者という役割は性奴隷になった。

 あの頃は勇者の立場を利用した脅しだったが、今は絶対的な力の差でコーラを犯さんとしている。先程の戦いを見せつけられては戦うだけ無駄だろう。

 アキラは慣れた手つきで裸に剥かんとフードや荷物をぽいぽいと剥いでいく。

 

「言い訳をしないでよー。翔竜山でゲイマルクと引き籠っているのが嫌になって、遂に勇者の従者も辞めたんだろ? セックスレスで溜まった欲望を、僕が存分に消化してあげるよ!」

「いえ、んむっ……」

 

 何か言おうとした唇を奪い、暴力的に舌を絡めて口腔内を犯す。舐るような、じっくりと溶けるような濃厚な息使いで歯磨きをする。

 一分以上絡めてから、唾液の糸を一本線残して口を放しコーラを陶酔した目で眺めた。

 

「セックスしに来たんだよね。素直になって、いいんだよ?」

 

 もう止めようとしても無駄だった。最後の質問は解答如何(いかん)に関わらず、いつかのようにコーラは犯される。ただ、それでもコーラは職務を放棄されたと考えられるのは癪(しゃく)だった。

 

「……違います。私は勇者の従者です。新しい勇者がこの地に来ただけですよ」

「――――新しい、勇者?」

 

 アキラの手が、動きが、止まった。

 勇者時代の記憶に無い、コーラが見た事がない、感情が抜け落ちたような表情をしていた。

 

「ええ、ゲイマルクが消えまして、エスクードソードが所在不明になったところを拾った子がいたので勇者に……?」

 

 アキラはコーラを放ってどこかへと駆け出した。

 

「……アキラ?」

 

 セックスの最中に何かを放り投げるなんて有り得ない。人間牧場の潜入がバレようがセックスを優先した女が消えた。

 答える声はなく、汚染人間はどこかへと向かった。

 

 

 

 

 

 コーラは知り得ない事だったが、アキラは二千年間全ての勇者を品定めしていた。

 今回も何よりも優先してそれをやったに過ぎない。

 舞台はバーバラへと移る。エールが暴れている間、彼女は何をしていたのか。




前作の説明欄解放

 ツクヨミ。
 魔人討伐数5。アキラの塵時代の切り札の一つ。
 魔封印結界と月餅の法のアレンジ相乗使用。用途はかなり本人の感覚で切り替える。
 魂を剥離させた上で強度が落ちた肉体を殲滅するのが主要目的。行動不能に特化してる為に採用した。封印用なら別の技がある。
 アキラは勇者時代の三つの技、それ以降の四つの技を持つ。

 神話級(武器、アイテム)
 実は公式で存在する表現。
 ランス9、真田透琳の所持武器雪斑より。
 本二次創作はインフレがすざましく、伝説級が当たり前のように出て来る為に採用。
 アームズのせいで魔王の子ほぼ全員に伝説武器が渡されまくってます。並のバランスブレイカーじゃ格が釣り合いませぬ。
 運命武器は基本的に不壊の伝説武器としております。

アームズの伝説の武具 実は9で全部出てきている。
 首切り刀(かなみ運命武器)
 パランチョ(ピッテン)
 焔(ヒューバート不知火破壊後)
 リーザス正剣(チルディ初期武器)→支給品、おかしい
 プライオス(マイトレイア武器)→ヘルマンの三番目の武器、絶対おかしい
 

 イブニクル2体験版が出たので遅れました。
 ぶたパンパラが悪いよ。あれシリーズ史上最強のぶたパンパラだよ。
 次回、難しい盗賊退治、14日までには。
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