※この作品はR-18です。

新勇者バーバラの冒険   作:ランスロス・マッキ

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 turn0~1のまとめ。


間章
バーバラの冒険日誌(ダイアログ)


 深夜。

 体を清めたバーバラは、浮かない顔で冒険日誌を覗き込んでいた。

 この日誌は、あまりにミスの多い冒険者に「少しは自覚しろ」とキースが与えたものだ。

 日記とするには小さく薄いが、冒険者が本日どのような活動をしたかという記録を残すのに便利な手帳だった。戦闘記録、稼いだgold、現在の所持金、任務についての記入……実用的な種々の記入欄があり、他人が見ても、自分が見ても即座に思い出せる。

 バーバラは冒険者として成功する為に、合間合間で自分の活動を書き連ねていた。少しづつ日誌は埋まり、今では月区切りの最終日のページに入っている。

 継続は力なり。本来ならば多少の満足感と共に埋めきるはずだったが――

 

「…………はぁ」

 

 何を書けと言うのか。

 とてもではないが、全く書けるような内容でも、残すものでもなかった。一生墓場に持っていくべき失敗だった。

 バーバラはページを戻し、自分の記録を眺めつつ、これまでの日々を思い返す。一日一日失敗の日々をめくり、ある日のメモで、手が止まった。

 

 8月10日

 翔竜山視察撮影任務、移動日。昼間をシャングリラで過ごす。

 賑やかな冒険者のパーティを発見。とても楽しそうだった、いいな。

 

「あ、エール・モフス……!」

 

 あの時の記憶と、今日の顔が繋がった。

 レディチャレンジャーを羽織り、悪戯っぽい笑みを浮かべて執拗に追ってきた戦闘狂。魔王の子の中では好感度最悪の少女に、あの時は見惚れて、憧れていた。

 

「大体あの子が変な条件持ち出さなければ戦わずに済んだのに……!」

 

 頭を抱えて髪をかき回す。あの輝きが偽物に見えて、何より今日に繋がってしまうことが嫌だ。戦う以上自己責任だという理解もあるが、どうしても恨み節を漏らしてしまう。

 

「ああもう、次々!」

 

 8月11日。

 翔竜山視察撮影任務、移動日。なにもなし。

 8月12日

 翔竜山視察撮影任務、移動日。ランクバウ着。

 ペルエレねーさんと会い、翔竜山へ向かう事になる。成功報酬3000goldを渡す事を約束した。

 魔王は今いないらしい。

 8月13日

 翔竜山視察撮影任務、移動日。なにもなし。

 8月14日

 翔竜山視察撮影任務、翔竜山着、任務開始。

 任務成功も麓を魔軍の占拠に巻き込まれて袋のネズミに。

 死ぬよりはマシと城に避難しようと思って逃げてたら途中で伝説の剣を拾った。

 コーラに言われた通りにやったら勇者になりました。滅茶苦茶強くなった。

 世界最強でしょこれ。この力を利用して大金持ちになろう。

 討伐 ハニー一匹、魔物兵と魔軍中隊。魔物多数。

 失敗 コーラに翔竜山から叩き落される。NASUの毒にやられて溺れる。つらい。

 

 このあたりは勇者となる契機だ。バーバラは剣に選ばれて、勇者となった。

 バーバラは翔竜山撮影任務を受け、使徒のペルエレ・カレットと知己な事を利用して穏便に任務を済ませようとした。

 ところが魔王軍と敵対している軍隊に挟まれてしまい、無理やり崖を登ったり魔物の群れを強行突破したりする羽目に陥ってしまった。その無理が祟ってペルエレは負傷し、バーバラが勇者になるキッカケになったのだが。

 

(……このあたりから、凄く痛い目とか、辛い事増えた気がする)

 

 勇者特性、勇者は基本不幸。そんなコーラの言葉が過ぎる。

 とにかくここからの二週間、休む暇が一日たりともなかった。

 ページをめくれば、ここから失敗と戦闘の日々が目白押しになる。

 

 

 

 8月15日

 魔物界の森のどこか、迷った。

 8月16日

 魔物界の森のどこか、迷った、ここはどこ……

 8月17日 

 なんとかパリティオラン到着。熱い。

 メドロ・クラウンからゼス第一応用校卒業試験のパートナー依頼を請ける。500goldだけど将来のコネにもなりそう。ゼス第一王女のスシヌ大好きな子。

 ゼス三英傑の二人目、ペッパーと出会う。夢見がちなハンサムボーイ。

 失敗 パチルに金を盗まれてほぼ文無し。メドロの依頼を告白と勘違い。

 

 8月18日 

 ゼス第一応用学校卒業試験。魔物弱過ぎ、楽勝。

 いつの間にやらスシヌ誘拐事件になっていた。

 目の前で攫われかけてたけど私が颯爽と助けたからセーフ。

 スシヌちゃんを救出。

 普通の子。第一王女って感じがしない。

 討伐 雑魚魔物大量、聖骸闘将たっぷり、スーパーハニー×3

 失敗 電撃罠、転移罠にかかる。勇者になっても罠って痛い。

 

 8月19日 

 ゼス卒業試験終了。

 ゼス横断回廊を使って味太郎迷宮到着、海路で帰るためにテープ到着。

 スシヌちゃんと文通友達になっちゃった。

 任務久しぶりに成功。やっぱり勇者の力って凄い。

 討伐 雑魚魔物大量。

 失敗 カジノ船ですっからかんで飯抜き。これからは全財産賭けるのは辞めよう。

 

 

 

「まあ、勇者の力は凄いけど、凄いけどね……」

 

 ゼスでは勇者の力を思い知る日々だった。軽く腕を振れば人が吹き飛び、世界がスローに感じられる。最高難易度のダンジョンの魔物も楽勝。これならいくらでも楽が出来ると思った。

 だが、世の中は広い。地形を変えるような魔法の使い手もいる。

 

 スシヌ・ザ・ガンジー。

 ゼス王位継承者にして、魔王の子。

 最初は少し怖かった。特別な選ばれた人間はどんなものかと話しかけるのに躊躇した。

 だがスシヌは『凄い、凄いよ! ザンスちゃんみたい!』と朗らかに笑っていた。普通の女の子だった。傷んだ冒険者服を見ても何も思わず、自然体で接してくれた。優しい友達だ。

 バーバラはスシヌの笑顔を思い出し、手紙を送ろうかと一瞬考える。

 

(でも、魔王の子……つまり、あのランスの子供、かぁ……)

 

 今日、あなたの父親に犯されましたという手紙を送るのか? 論外だ。

 他の事を書くべきだと考えても、思考は全て性行為に塗り潰されている。フラッシュバックの如くがはは笑いが聞こえ、ニヤけ顔が見え、体内にあった異物の感触を思い出す。

 バーバラは頭を振り、今日の失敗を少しでも考えないためにページをめくった。

 

 

 

 8月20日 

 船上

 飯抜きで干上がる。

 8月21日

 船上

 飯抜きで干上がる。辛い。

 8月22日

 船到着。CITYの帰宅途中で力尽きるが、サチコさんに助けられる。

 トリダシタ村に寄り、礼の形で盗賊退治を請ける。

 明日はサチコさん、クルックーさん、ミルキーさんとパーティを組んで盗賊退治。

 

 8月23日

 盗賊退治だったが、何故か元締めが魔軍だった。

 悪魔回廊入り口にてダークランスと、ヌークさんと出会い、ダークランスに敗北する。

 悪魔回廊内にて、復活したらしい魔物大将軍ピサロとやらを討伐。

 金運大凶というゼロスリースキルのせいでgoldが拾えなくなった。最悪。アリスマンレディー許すまじ。

 

 討伐 魔物兵、モンスター、悪魔、盗賊多数。魔物大将軍ピサロ。

 失敗 盗賊の罠にかかる。魔法で自滅する。ダークランスに不意打ちを喰らう。

 8月24日

 翔竜山依頼任務、達成。

 CITYで穏やかな一日を過ごす。

 スラルって人からお弁当と高額報酬を貰う。お得意様になりそうだし、記憶しておこう。

 もふいリスの店番の子の店って覚えておけばいいかな。

 コーラに雑用を任せたら、3万近く稼いだ。ここ二日で5万ゴールドとか、夢みたい。

 aliceman銅貨を使う為に明日はリーザスに行ってみよう。

 

 

 自由都市の冒険。戦闘は一日だけで、比較的穏やかな日々である。

 盗賊退治は楽だった。村人だらけで大丈夫かと危惧していたが、蓋を開けてみれば熟練の冒険者顔負けの人達に囲まれて、バーバラは随分失敗をフォローして貰えた。

 特にダークランスとの遭遇戦には居合わせた事に礼しかない。

 

 ダークランス。

 悪魔回廊で鉢会った、魔王の子の長兄で、悪魔。

 初対面の背筋の凍るような視線と、歪な大剣が喉に当たる感触、そして勇者になってからの初めての敗北。

 バーバラにとって、魔王の子には絶対に戦わないと決心する程度に絶対的な存在だ。正直ピサロも手柄を譲ってるだけで、その気になれば自分だけでやれたはず。

 ただ、どこまでも弟妹バカな姿も見ており、魔王の子内では頼れる兄なのだろうと想像がつく。

「今思えば、ランスにそっくりね。そりゃダークランスって言われるわ」

 

 顔の造形、体格、何もかもが今日戦った男と瓜二つだった。ただ、ダークランスは落ち着いた雰囲気と緩んだ笑顔で安心させてくれるが、ランスはエゴイストの極み。性格が対極過ぎる。

 

(…………ランス、ランス、ランス! ああもう……!)

 

 ランスの事を考えないようにする為に、バーバラは冒険者日誌を開いているのに、結局ランスの事を考えてしまう。

 全て、魔王の子が日誌について回るためだ。

 バーバラの冒険には、常に魔王の子がついて回る。ページをめくればまた出てくる。

 

 

 

 8月25日 

 リーザス着。

 aliceman銅貨を使って冒険者の加護で戦闘狂を押しつけられる。お金が欲しい。

 武器屋で理想の防具を発見。衝動買い。

 金を稼ぐ為にコロシアムの権利を探す。中々見つからず徹夜する羽目に。

 

 討伐 ユニコーン、アンデット系魔物たっぷり

 失敗 酷い墓穴に埋まる。尿管結石でのたうち回る。もういっそ死にたいとすら思った。

 

 8月26日 

 リーザス城内、最悪の一日。

 コーラが有り金全部をコロシアムでの連戦全勝に賭けた。

 状態異常に苦しみながら4連勝したらザンス・リーザスが乱入して来た。

 犯されたくないから全力で拒否して逃走。もう二度とやらない。特に薬はもう飲まない。

 脱出したら軍隊の包囲の上にルール変更って、どれだけ勇者に本気なのよ。

 

 討伐? 院外の翁、古代兵器桜花、鬼ヶ島ゴン太、ガッツ藤堂。ザンス(一応引き分け)

 失敗 薬は飲んじゃ駄目。絶対ダメ。体治るけど酷い副作用が来る。

 

 8月27日

 スラルから貰った氷菓子を食べたら気が遠くなってチルディさんの家に運ばれた。

 ザンスは童貞だったから犯される心配が無いので降参した。怒鳴って来たけどアーちゃんが止めてくれて万歳。

 リーザス脱出。ザンスが案内してくれたけど代わりにこれでもかとボコボコにされた。

 ザンスのスカウトが破格なので部下になることに。

 安定したお金持ち待ったなし!

 占いを信じてウラジオストックを目指す。

 失敗 スラルちゃんの手料理、猛毒だから食べるの厳禁。

 

 8月28日 

 リーザス国内を移動。

 プリティリアで転売。

 

失敗 騙されて毒を飲まされて金を失う。知らない人から飲み物奢られても飲まない。

 

 

 

「ここはもう本当地獄だったなあ……」

 

 結局、バーバラがこの日誌を書いたのは27日からだった。

 徹夜で窒息死と悶絶を味わい、全身をバラバラにされるような一撃を受けて、薬の副作用で猿になる。この間、全くモノを書く余裕なんて存在しない。

 リーザスに来た事で初期装備は卒業出来たが、そこから金を稼ぐ為に王立コロシアムを利用したのが運の尽き。戦闘狂の魔王の子と戦う羽目になってしまった。

 

 ザンス・リーザス。

 リーザス王国第一王子にして、赤の軍将軍を務める魔王の子。

 バーバラでも聞いた事がある世界最強の一人との決闘。相手のホームで、性豪王なんて仇名のある王子との戦い。

 負ければ犯される。勇者とバレたら玩具にされかねない。

 そんな追いつめられた状況下でバーバラは足掻き、汚い手を散々使い、遂にはコロシアムを廃墟にして――勝敗不明に持ち込んで、逃げ出した。

 傷を負った中で逃げる為にハイポーションを使って治療したのだが、これが酷かった。

 理性も何もかも押し流すような媚熱に屈し、バーバラは一匹のケモノと化して――

 

(…………駄目、なんでこっちを考えるのよ!)

 

 慌てて首を振り、氷砂糖の夜から時を進める。

 結局のところ、ザンスの風聞は世間で広まった誤解だった。王子という立場の手前、否定する訳にもいかずに虚勢を張っていた。

 ザンスは戦闘狂だが、同世代の若者らしいところがあり、まだ好感の持てる男だった。

 魔王の子の末っ子、アーモンド・シャープが話す彼の逸話は勇ましくも、微笑ましい。いい兄であり、立派な王子と言えた。

 だからスカウトが来た時、値段も良かったので頷いた。ザンスの下で働くのも悪くないと考えていた。

 

(……どうせ奪われるなら、まだザンスの方がマシだったかもね)

 

 他方、ランスは最悪だ。

 眠っているカーマの唇をペニスで奪おうとする鬼畜。乙女心を全く解さない。部下を斬り殺し、女を奴隷と公言して憚らない。

 ランスが自分の初めてを奪った男なんて、記憶を消せるなら消し去りたい事実だ。

 今のバーバラは仮とは言えザンスの部下だ。自分が犯されたと知ったらザンスはどうするのだろうか。仲間想いの男は怒るかもしれない。やはり、話せる事ではない。

 日誌のページはもう残り少ない。

 バーバラの冒険は東ヘルマンに入る。

 

 

 

 8月29日

 バラオ山脈を山越え。

 崩落に巻き込まれたけどミックスに出会う。東ヘルマンで一緒に旅をする事に。

 討伐 雑魚魔物多数

 失敗 山彦はしない。

 

 8月30日

 東ヘルマン観光、ウラジオストック着。

 ランス団退治を受ける。半年前のリベンジだ!

 勇者になった今なら行ける!

 ウズメに出会う。ザンスの部下仲間だった。

 カーマさん(先輩冒険者)と出会う。伝説の魔剣、カオスを持てるかという肝試しがあったので、やったら持てた。

 でもあのエロ剣はいらない。

 

 

 

「……二人はどうしてるんだろう」

 

 ミックス・トー、見当ウズメ。

 二人はウラジオストックにいた。バーバラは逃げ出したが、彼女達は分からない。

 ランスに出会って、酷い事をされていないだろうかと不安になる。

 ミックスは自分を心配してついてきてくれたお人好し。ウズメは同僚だった。

 深夜にウズメと話をしたら、『バーバラちゃんは信じられるでござる』と言って、自分がスパイだとあっさりバラしてしまった。

 どこまでも甘く、お人好しが過ぎる二人。

 

「……こうして思い返すと、魔王の子って皆いい子なのよね。ただ一人を除いて」

 

 この二週間で、バーバラはミラクルから聞いた世界最強達、魔王の子の半分に出会っていた。

 エール・モフスを除いて、バーバラは彼等と会えた事を嬉しく思っている。

 皆が頼りになり、有力者だ。冒険者として成功する為にも、バーバラ個人としても是非仲良くしていきたい。

 

 遂に、最後のページが来てしまった。

 バーバラは震える手でペンを持ち、ページをめくる。

 

8月31日

 

 今日だ。

 今日は昼前から盗賊の襲撃があり、対応に出たらエール・モフスと戦闘になり。

 そして、そして――――

 

「……う、うう」

 

 ランス。

 元第八代魔王にして、魔王の子達の親。

 彼と戦い、バーバラは犯されて、初めてを奪われた。

 ウラジオストックは盗賊の手に落ちて、陥落した。

 

 それしかない。それしか思い浮かばない。

 初めてを奪われ、精液を注がれ、あられもない嬌声を上げ、どうなったか分からない程ぐちゃぐちゃにされて、余す事なく奪われた。

 手帳に涙が滲む。

 手が震え、適当な事を書こうと思っていたのに出来ない。

 

「……もう寝ましょう。明日になったら、切り替えて……」

 

 結局、バーバラは手帳をしまって床に戻った。しかし、後に眠(・)っ(・)て(・)し(・)ま(・)っ(・)た(・)こ(・)と(・)を後悔することとなる。

 バーバラはこの夜、久しぶりに悪夢を見た。

 魂に刻まれた、黒色の悪夢が始まる。




 その他
 7月31日
 エール・モフス率いる魔王討伐隊、魔王討伐を決行。
 リセットビンタ成功し、ランスは正気に戻る。
 シィル解凍、大怪獣クエルプラン襲撃、魔王の血、クエルプラン初期化、魔王魔血魂消滅。
 第三代魔王スラル復活。ランスは逐電。

 8月1日
 一日も長く皆と一緒にいたいエールがお別れ旅行開催。
 お姉ちゃんと離れるのがイヤで仕方なくて牛歩戦術。
 8月10日
 姉との別れ。抵抗。
 8月11日
 帰宅。本編エンディング。
 8月12日
 長田と冒険に出発。
 バスワルド暴走。アムの村に突っ込み汚染人間達を吹き飛ばす。
 即日ランス鎮圧、アムが仲間になる。
 8月13日
 ランスと出会い、桃源郷を目指すことに。
 8月14日
 オルブライト派、アメージング城を包囲(4年ぶり4回目)。


 8月20日頃
 ランス団、名もなき山岳地帯近辺を掌握。
 8月31日
 エールちゃん、セクハラによって暴走。危うく世界が滅びかけるが長田君が起こして救う。

 簡易まとめ。再開前に今までの展開をちゃらっとおさらい。
 プロットは概ね二週間の行動分で、これは後からの適当なでっちあげではある。
 どんなんだったっけって確認用。
 次回、17日。turn2、はじまり。
 長い戦いだけど頑張る。
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