光に拘って遅れた。
申し訳ない。
バレバレの伏線をバンバン張りますが、ここまでついて来た方は大概悟っちゃうでしょう。精々すっとぼけてください(笑)
魔王討伐隊隊長の朝は遅い。
陽が高く登ろうが、人々が勤勉に働いていようが関係ない。天上人であるバーバラにとって、労働や雑務は下々に丸投げするものである。
従者が偉い人間ならば、主はもっと偉い。そう結論付けてバーバラはベッドの中でだらける事にした。そうじゃなきゃやってられなかった。
昨日は、最悪だった。
必勝法という甘い言葉に騙されて、散々に嬲られ、人としての形を留めているか怪しい状態にさせられた。ところが戻ってみると、傷一つない状態になっている。
アキラ曰く、魂だけ飛ばされてるからあっちでは治しやすく、行き帰りで完全回復のオマケ付きだから便利だとか。これからもやる気らしい。
絶対に嫌だったが、その足でレベル屋に連れていかれ、レベルが大幅に上がっているのを確認し、アキラが趣味でやっている訳ではないと理解してしまい、何も言えなくなってしまった。
もうこうなれば、修行の時以外は徹底的にだらけると決めた。王様気分でもやらなければ割に合わない。
「あー、世の中金ねえ……幸せぇ……」
枕を抱き締めて柔らかさを堪能し、バーバラはだらしなく笑う。
アキラの私邸はそこまで大きくはなく、家具類も質素だが、寝具だけは非常に良質な物が使われていた。柔らかさだけで天上の心地に浸れる代物だ。
下着姿の少女は朝方に運ばれて来たカステラを口に放り込む。甘味を口の中で溶かしつつ、寝具の柔らかさを堪能して頭に被る。そしてまた夢の世界へ。
ポンコツ勇者は、つかの間の幸福に浸っていた。
大事なのは次の作戦だ。魔王討伐などという本作戦を前に休息したってバチは当たらない。準備段階の修行で心を壊してどうするのかと思い、今日は食っちゃ寝を決め込んでいた。
そんな感じで、勇者が世界の破滅に繋がる恐ろしい選択をしていたところ、ノックの音がした。
「あー、アキラ。お昼はお寿司かステーキかうな丼がいいな。討伐隊所属希望者は適当にそっちで決めといて」
扉に全く目を向けずに、ごろんと転がったままで指示を出す。朝はこれで引き下がったのだが、今回のアキラは扉を開けた。
「主様、来客が来ます。準備の方をお願いします」
「面倒くさーい。そっちで処理してね」
「いえ、そうもいきません。相手が相手ですので……」
アキラは少し申し訳なさそうに頭を下げ、着替えの衣装を運ぶ。
それはいつものバーバラの一張羅だけではなく、昨日ふざけて着た白いローブに仮面のコスプレセットもあった。
「……なにこれ、なんでこんな格好するの? 誰だか分かんないと思うんだけど」
「昨日ですね。聖女って言葉使ってしまったじゃないですか」
「ああ、私の言葉が一言たりとも反映されてないアレね」
バーバラとしては甚だ不満な放送だ。ヨイショの中で聖女認定をアキラがノリでやって、そのまま台本に反映されていた。
「アレはどういう事だと怒る人間が出まして。これがRECO教の教祖、ザンデブルグなんですね」
「はあ!?」
「というわけで、普段レコサルバーションにいる引き籠りがやって来ます。僕より偉いので止めようがありません」
「全部あんたのせいじゃない!!」
バーバラはがばりと跳ね起きて、アキラの肩を掴んでガクガクと左右に揺さぶった。
「その手の面倒臭そうなのを独断でやったら文句が来るに決まってるでしょ! なんでやった!」
「いやー、主様があまりに美しいので聖女認定したらまさかこうなるとは。美を解さないとか頭おかしいですよねあいつら」
「おかしいのはあんたの頭よ!」
ぱっかーんと頭を叩いて馬鹿な従者を黙らせる。
教祖ザンデブルグ、ミックスの資料にあった名前だ。新興宗教の教祖なんてロクなものじゃない事ぐらい、バーバラにもわかる。可能な限りお近づきになりたくなかった。
「どーすんのよこれ! 宗教裁判とかあるんじゃないの!?」
「はい、RECO教はありますね。ですが心配はないかと思われます」
これから会う奇特な相手を考え、アキラは少し苦笑した。
「ザンデブルグはね……酷い面食いなんですよ。良いか悪いかは分かりませんが、きっと主様を気に入ります。例え何を言っても、そう気にしないでしょう」
アキラは「とりあえずこれに着替えてください」と言い、ローブと仮面を手渡す。
バーバラは渋々服に袖を通すが釈然としていなかった。ザンデブルグが面食いならば、この装備はおかしい。
「RECO教の服って、全部着ると顔も体も分からなくない? ローブを着て仮面で顔を隠したら面食いも何も無いと思うんだけど」
そもそも魔法ビジョンの時点でバーバラの顔は東ヘルマン中に放映されている。面食いであるのならば、その時点で惚れているはずだ。
腑に落ちない主の疑問に対しても、ただにこやかにアキラは黙るばかりだった。
百の言葉より、彼を前にすれば分かると言うように。
はたして、アキラの言う事は正しかった。
「ああ、ああ、なんと素晴らしい! なるほど、これは聖女とするのも納得します!」
場にいるのは四名、全員が黒と白のローブに仮面。仮面の裏で視界があっても誰かはわからない。その状況で、巨漢の男はバーバラを見るや否や感動に打ち震えた。
巨漢の男――いや、大きすぎると言った方が適切か。人間のスケールをいささか逸脱した男だ。
身体を傾がせなければ家に入らず、座っている今もバーバラの背丈よりやや高い。肥大した体は肉の塊として息づき、見るものを圧倒させる。息も荒く、その存在感だけで部屋の温度を上げている。
ローブが金の刺繍が混じって豪勢だとか、仮面が満月の刻印の下に黒い鯨が書かれているとか、そんなものが無くても二度と見間違えないだろう。
ザンデブルグは、その体格だけで二度と忘れ得ないような異形だった。
ぶくぶくに太って、大きい。ヘルマン人にもこれ程はまずいない。
「なんと素晴らしい祝福なのでしょう! 純粋で、一つの色に染まった綺麗なものです! こんなものがあるのですか! これもまさしく主のお導きなのでしょうね!」
そんな巨体が、少女を舐めるように覗き込み、大仰に動いて叫ぶのだ。バーバラが生理的な嫌悪を感じるのも仕方のない事だった。
それでも失礼にならないように気を取り直し、なんとか言葉を紡ぐ。
「は、初めまして。ザンデブルグ様、私は魔王討伐隊隊長のバーバラと申しま……」
「この子の年齢は幾つなのですか!? まだそれほど年は取ってないはずです!」
ザンデブルグは全く人の話を聞く気がなかった。自分の興味のある質問を、隣の付き人に対して問いかける。
三日月の付き人は手元にある資料を捲り、
「えーと……ビュートン様から頂いた資料によると、14歳みたいですねー」
「おおおおおおおおお! 素晴らしい、丁度倍ではないですか!」
「良かったですねー、ザンデブルグ様」
「まさしく福音! まさに吉兆! 主の降臨は彼女の働きによっていよいよ速まるでしょう!」
全く常人には理解の出来ない領域で、興奮をありありと見せるザンデブルグ。祝詞を唱えたり、頭を振ったり忙しい。
ひとしきり暴れて落ち着いたところで、アキラが声をかけた。
「ま、この子がバーバラだ。勝手にやった事は謝るけど、聖女と呼びたくなるのはわかったんじゃないかな」
「確かに、確かに教義には例が無く反しています。これは罰せられるべき事なのかもしれません。しかしこの尊さを聖女と号する大神官の気持ちも理解しました。ならば彼女の意を汲み、新たなる仲間を迎えるべきでしょう。その方がきっと主もお喜びになるはずです」
「わかってくれて嬉しいよ。つまり不問という事でいいんだね?」
「言うまでもありません。貴方は時に速すぎ、時に遅すぎますが、間違える事はない。この件に関して全て貴方に任せましょう」
バーバラは心の中で安堵の溜息を吐いた。
何を言っているかは全くわからないが、とりあえず助かったらしい。あとは適当に合わせてお帰りを願うのみだ。
アキラは異形を相手にしても実に落ち着いた体で話を進める。
「とりあえず、今は教義も何も知らないから暫くは勘弁してあげて欲しいな。魔王討伐隊の仕事に集中させたいんだよ」
「私としては希望という呼び方は気に入りませんが、信徒に予期せぬ死があっては本末転倒です。なるだけ早く収束する方が喜ばしいですね」
「それなら結構信徒の力を借りる事になるけど、事後承諾でいいかい?」
「指揮官が彼女で、貴方も参加するのです。何を気にする必要がありましょうか。聖戦として、存分に使いなさい」
見た目は人のカデゴリーを外れた者だったが、身内には話が分かる方らしい。それとも、アキラが扱い方を心得ているのか。
とにもかくにも、バーバラにとって都合の良い方向に話は進んでいた。
教会は好きに使って良いし、バーバラは尊い存在として認められ、国内における不自由はない。調子良くさせる為に時たま相手の言う事に頷くが、どうせ口約束だ。仕事が終わったらトンズラすればいい。
任せられたアキラは従者の役目を全うしている。話すべき事を詰め、協議を終わらせにかかっていた。
「後は君とビュートンとの問題だね。今日はその為に来たんだろう?」
「当然です! 私の本分は大天使の声に耳を傾けることです。あの男が面倒事を起こさなければ救済の地で祈っていますよ! 彼自身は素晴らしいのに、どうして私の妨げをするんでしょう?」
「君の言う事を全部聞いたら、国家として成立しなくなるからだよ。バランスを考えて欲しいな」
「ははは、これは手厳しい。ですが主の降臨こそが私に与えられた責務。導き手が歩みを止めてはきっと堕落します! 新たな神の降臨は急がねばなりません! でなければ死が世を覆います!」
「あ、しまった。スイッチ入れちゃった」
異形が動き、鋼鉄製の椅子が嫌な音を立てる。
協議はザンデブルグの狂乱によって終わりを迎えた。
「ああ死! 死が世を覆う! 死生の無い世界を築かねばなりません! 祝福によって死を遠ざけ、使徒と共に世界を変えねばならぬのです! 祝福を! 新たな神の祝福を!」
ザンデブルグは勢い良く立ち上がり、頭部は天井に激突し、全く気にする様子もなく陶酔をありありと見せて叫び回る。
「死生を廃し、肉を捨て、新たな神の下へ集いましょう!
ゴツゴツゴツッっと頭を振る度に石造りの家屋に激突する。彼にとっては頭の痛みより、今の感動を表現する方がよっぽど重要なようだった。腕をあちこちの方向に振り回し、節操がない。
狂気としか言いようの無い態度のまま、腰をぐぅっと折り曲げてバーバラへと体を寄せた。
「祝福の聖女よ!」
「は、はい…………私?」
「そうです! 貴方は美しい! この上なく美しい! それは貴方の祝福がたった一つだからです! 怒りも憎しみもなく、ただ罪悪と自責だけがある!」
意味は半分もわからないのに、バーバラの心臓が跳ねた。
自分の本質を鷲掴みにされたような託宣を前に、目を逸らせない。
「一体どれだけの道を歩めばそうなるのか想像出来ません! 人は様々な祝福を受け、形を変ずるはずなのに貴方は全く変わらない! 真円の宝石となって輝いています! このようなものは、過去に例がない!」
狂乱の中に真実があり、真実の中に狂乱があった。
ザンデブルグは何かを見抜き、逃げようの無い言葉の暴力をもって少女を追い立てている。鼻先まで近づけられた仮面から、例えようもない圧力がある。
「いいですか、自分を責めなさい! この世に起きる理不尽は全て貴方が原因です! 自らを戒める事で神は貴方に力を与え、新たな世を築くでしょう! そうして祝福を授かり、試練も耐えて、大神官のように世を導き――!」
「……この辺にしておこうか」
アキラはバーバラを抱き寄せ、ザンデブルグから遠ざけた。
「こっちはこれから仕事が色々あるし、そっちもビュートンに呼ばれてるんじゃないかな。いつものように、後は頼むよ」
「はいはーい、お任せくださーい」
付き人は軽い調子でばいばーいと手を振った。
「ああああああ聖女よ! 聖女よ聖女よ! 祝福を忘れるなかれ! 貴方と共に神はおります!」
「はーい、ザンデブルグ様もそろそろ落ち着きましょうねー」
「新たな世を! 死生の無い世界を! 祝福を!!!」
未だ興奮の坩堝にあるザンデブルグを放置して、アキラに肩を貸され、バーバラは部屋に戻る。
「暫くすれば彼女が落ち着かせてくれて帰るでしょう。そうしたら僕達も動き出しましょうか」
答えはない。
「……主様?」
仮面を外すと、バーバラの表情は蒼白に近かった。未知なる恐怖に遭遇して、狂気を充てられたような状態に近い。正気度が下がっている。
「…………なに、あれ」
そう絞り出すのが精一杯だった。
別に狂人や、理解出来ない者はこれまでも見てきた。だがあの男は、バーバラにも知らない何かを無遠慮に覗き込む力があるようで――恐ろしかった。
何一つ嘘を言っていないと、無理やり理解させられてしまう。そんな力が、言葉にあった。
「祝福って何……? 私にそんなものがあるの……?」
「RECO教の祝福はこの世界に降り注ぐ呪いです。多かれ少なかれ誰もが持っています」
「私の聖女って……? RECO教ってなに……?」
「……あの男の言葉を真に受けてはいけませんよ。所詮一宗教のペテン師です、彼自身はちょっと変わった人間に過ぎません」
「………………」
バーバラは、若干自分を見失っていた。
ザンデブルグの狂気は健康的な人の精神を蝕む力がある。それを至近で受け続けて、一時的に凹んでいる状態だった。
「……えいっ」
アキラは放心して力無いバーバラの身体を抱き締めた。慈しむように頭を胸元に持ち寄せ、頭を撫でる。
「……アキラ?」
「主様…………」
そうして、慈しむような笑みと共に目を合わせ、
「心が参っていますね。セックスしましょう」
台無しな事を言ってのけた。
「……………………」
「こういう時こそスポーツです。ここはベッドですし、やるスポーツと言ったら一つでしょう。セックスは心と体を健康的にします。僕と組んずほぐれつすれば全身が熱くなって、何もかもどうでも良くなりますよ」
「お断りよ!」
「ぎゃふっ!」
裏拳が顔にクリーンヒットし、アキラは吹き飛んだ。勢い良く柱の角に直撃して、頭を押さえて蹲る。
「ぐ、ぐぅっ……慰めセックスが失敗した……ザンデブルグの後なら行けるはずだったのに……」
「あんたホンット最悪ね! もしかして全部わざと!?」
「とんでもございません。全ては偶然です。だけど僕はセックス出来るチャンスがあるなら体が勝手に動いてしまうんです」
「あ~もう…………! 一瞬だけ優しいと思った私が馬鹿だった!」
手首をしっしっと振って、エロい事しか頭にない従者を遠ざける。
バーバラは平静を取り戻すと、サボりを続ける事にした。
「昼ご飯を持ってきたら、コーラと一緒になって私の仕事をやっといてよ。速く強くて役に立つ奴を連れて来てね」
現在、従者二人がやっているのはバーバラがやるべき作業だ。
表向きの前に出る仕事はアキラが、それ以外の書類仕事コーラに丸投げしている。変な来客があったから滞っていたが、この家は魔王討伐隊の中核メンバーの為のものだ。
それが昼になっても誰一人も呼ばれてないのは、少し変でもあった。
「それとも、東ヘルマンにはいないの? エール達相手じゃ全く役に立たない雑魚だけなの?」
「いえ……本当は初期メンバーに一名いるんですが、彼女が理由を作って避けてまして」
「なんだ、いるならさっさと連れて来てよ。どんな子?」
「見当ウズメ、魔王の子ですね。本討伐隊の副官になります」
「まっ…………! なんでいるの!?」
バーバラは驚愕に目を見開いた。
敵であるはずの魔王の子がこちらにいるという事実。ここは反ランスの本丸、東ヘルマンの首都コサックだ。アキラに魔王の子とバレているのに何故いるのか。
「元々僕の部下ですし、戻ってきたら居ました。そして僕は魔王の子だからと言ってクビにする気はありません。だから皆には伏せて使っています。こちらに所属するのでしたら、実力順では間違いなくトップなので入れました」
「うっ、うーん……」
「正式に決めるのは主様です。彼女ではご不満ですか?」
「いや、本当に味方なら凄く心強い、けど……」
スパイの可能性はどうしてもある。
バーバラはウズメと襲撃前の夜に話をしたから、ある程度は知っている。
四人の兄妹による主君を持ち、忍者稼業に憧れる女の子だ。
バーバラもリーザスに任官予定だから同僚でもある。あの夜に打ち解けたし、エールの襲撃の時も庇ってくれた。そう酷い事はしないだろう。
だが、エール・モフスを主君と言っている相手を連れて行って大丈夫なのか。
彼女が裏切りを命令したらウズメはどうする?
バーバラは珍しく難しい事を考えて、頭を悩ませた。
「とにかく会って話をしたいかな。まずそれからね」
「僕もそう思って呼んでいるのですが、別の仕事を入れたり露骨に避けてまして。彼女も思うところがあるみたいです」
「…………なに考えてるのかな、あの子」
味方ならこの上なく心強い。敵として減ってくれるだけでも有難い。
にゃはは笑いの忍者を思い浮かべ、バーバラは溜息を吐くのだった。
コサック市街にて、ウズメは仕事をしていた。
「ウズメ殿、ご協力ありがとうございました!」
「これぐらいの事、当然であります」
敬礼を交わし、ウズメは東ヘルマン兵と別れる。
仕事そのものは簡単な雑務だ。昨日の勇者騒ぎによって起きた混乱の事後処理だった。そんな事よりも、アキラに任された新討伐隊のお目通りの方が重要だろう。
アキラには終わったら来てくれと言われている。今すぐ向かうべきだった。だが――
「うぅ……」
行く気がしない。
ウズメは屋根に飛び移り、体を隠すようにして寄りかかり、コサック城壁を眺める。
時折行かねばと腰を浮かせるが、結局一歩を踏み出せず、また腰を落ち着ける。さっきからそんな事の繰り返しだ。
このウズメらしかない行動には理由がある。
バーバラが父親に犯されたのを知っていて、どんな顔で会えばいいかわからない。
ミックスの命令でランスを捜した時、ウズメは暫く忘れられそうにない光景を見てしまった。
昨日打ち解けた同世代の友人が、男に犯されていた。身体のいたるところに白濁液が付着し、むせ返るような性臭があった。
犯している人間はウズメの父親だ。実に楽しそうに、気持ち良さそうに動き、女の子の尊厳も欠片もない言葉責めを繰り返していた。
年頃の女の子ならば、父親に一生幻滅しても仕方ないものだった。それを至近距離でがっぷり、呆然とするままそれなりの時間眺めていてしまった。
意識して避けていたエロ関係の直視、それが脳裏に焼き付いて離れない。
エールや他の魔王の子ならまだ平常心を保てるが、ランスとバーバラに対してはまともに顔を見せられる気がしない。それですっかり避けている。
(あの時、主君どのを強く止めていればあんな事には……ううん……)
特にバーバラには気が引ける。
ウズメが止めるチャンスはあったのだ。エールは悪戯をする時の顔だったし、ランスはウズメの胸を揉むように女好きだ。もっと考えればあの事態は避けれた。
同僚で、友達を図らずも父親に売ってしまった。そんな罪悪感がウズメの心に尾を引いていた。
「むー、母上殿ならこんな時でも迷わずに任務を完璧にこなすはずでござるが……」
つくづく、自分でも弱いと思ってしまう。
レンジャーとしての腕なら自信があるし、技術ならそれなりのものになったと自負出来る。仮に東ヘルマンにバレても何の問題もなく脱出出来るだろう。
でも、実際の忍者の任務は技術や肉体だけではない。心こそが重要だと思い知る毎日だ。
ウズメはまだまだ未熟だ。見当かなみの足下にも及ばない。
いつまでもウジウジ悩む性格ではないから数日したら思い切って行けるのだろうが、今日はまだ無理そうだった。
「とりあえず、昨日貰ったお給金で買い食いでもするでござるか」
いつまで悩んでいても仕方ないと考えたウズメは、城壁とは反対方向に踵を返し、コサックの街並みへと向かった。
雑然とした人混みの中でも、忍者の鋭敏な嗅覚は様々な匂いを教えてくれる。今日の昼ご飯を決める為に、アンテナを張って美味しそうな匂いを探していく。
焼き芋にクレープ、ドーナッツにぶたマン肉マンイカまんまん……幾つかを買い込み、口に含めば多少は気が紛れる。
そんな時だった。
「んにゃ。この、匂いは……!?」
何度も嗅いだことのある優しい香りがあった。
柔らかい木漏れ日をイメージさせるような、どこまでも安心感を与えるような、近くにいるだけで幸せを感じるような香り。
(……リセット姉上!?)
ウズメの主君の一人、リセット・カラーの匂いに他ならななかった。
そんなはずはないと嗅ぐが間違いない。彼女は近くにいる。
ここは東ヘルマンの中心コサック。目立たないウズメならともかく、世界的に有名な幼女であるリセットがいればたちどころに騒ぎになる。そうなれば、ただでは済まない。
ウズメは慌てて、匂いの元を追いかけた。
メインストリートを抜けて、人込みを掻き分けて匂いの元へと向かう。少しづつ人通りの少ないところへと行き、真昼間からやっている酒場に辿り着いた。
「なんで酒場を選んだと思ったら、完全に忘れてたのね」
「そういえば、この姿だとお酒頼めないかー」
「まあまあ、ここのジュースでも美味しいよ」
この時刻なら酒場に人は少ない。はたして、聞いた事のある声の三名がテーブルを囲んでいるだけだった。
この時点でウズメは三人を良く確認もせず、久しぶりに会えた嬉しさから匂いの元へと飛び込んで抱き着いていた。
「しゅっくんどのー! お久しぶりでござるーーー!」
「わ、わわっ……ウズメちゃん……!?」
ローブ姿の少女に、しなだれかかる。
この時点でウズメは違和感に気づいた。
「……ん、抱き、着ける?」
ウズメの腕は少女の胴に回され、背中にしっかりと頭を寄せられていた。
そして見上げれば、困ったような、再開を喜ぶような大人びた口元がある。
つまり、ウズメとそう変わらない背格好の少女だった。
「しゅくん、どの……?」
「ほらね、ローブ被ってて良かったでしょ」
「観念して説明しなさい。なんでこんな姿かって」
逆に、いつもの二人の姉妹は幼く小さい。まるで15年時を巻き戻したかのように、声も幼い。椅子に足を余らせて、座っていた。
「う、うぅ……わかってるよぉ……」
大きな告白をするように少女は大きく息を吸い、吐き、ウズメに向き直る。
「久しぶり、ウズメちゃん。会えてとっても嬉しいよ」
そして、少女がローブを脱ぐ。
「リセット、姉上……?」
そこにいたのは、太陽かと見紛うような完璧な美少女だった。
長髪と眼、クリスタルの色は変わらない。ただ、止まっている時を順当に進めたような、可愛らしい年頃の少女の顔立ちがある。華奢ながらも女の子特有の丸みがあり、ミニスカートによって剥き出しになった生足は色気を感じさせる。
カラーの少女は恥ずかしさで頬を赤く色づかせながら、にっこりと笑った。
「でも、今の私はメリモ・カラーということで、よろしくね」
ザンデブルグ
RECO教教祖。
外見のイメージは大帝国のマッキンリーを人間にした感じ。
立場はトルーマンに近い。神を自称するような不届きをする事はない。
キングコアルートは色々考えさせるから好きです。直視してると性癖が歪みかねませんが。
単体では使いにく過ぎるが、付き人がいつもいるからなんとか。
メリモ・カラー lv303
ミニスカートで長髪の美少女カラー。ナイスバディじゃない。
闘神大会のパートナーとして登録されたこともある、動物に好かれやすい女の子。
メリモ・カラー…一体何王の子なんだ……?
ハニホンX参照。
志津香 lv260
謎のスーパー幼女その1。
こんな小さな女の子が誰かの情婦なわけがないだろ。
今回の自衛手段。
ナギ lv260
謎のスーパー幼女その2。
こんな小さな女の子が誰かの情婦なわけがない。
いつも一緒。
むっず……新キャラはちゃんと作っていても、いざ喋らせるとなると苦労がダンチ。
やーーーーーーーーーっと出せる。この日を夢見ていた! ああ、愛している!
ビジュアルを見たければ大人リセットでツイッター検索すれば画像があるかも。
次回、31日に上げたい。