酒場で4人の少女がテーブルを囲んでいた。
見当ウズメ、リセット・カラー、魔想志津香、ナギ・ス・ラガール。
その内三名は既に世界的に有名な人間だ。その名声と魔王との関係性の深さは多くの人々が知るところであり、魔王を恨む人間の中には彼女達に害意を持つ者もいる。
少なくとも、東ヘルマンの地に彼女達が足を踏み入れる事は許されない。
兵士達にはブラックリストとして顔写真を配られており、とても入国が許可されるような状況ではなかった。
ところが、今の彼女達はどうだろうか。
魔王討伐の旅の中で、教導役として知見に富んだ意見を挟んだ魔想姉妹。旅の最中でも魔王の欲望を受け止めた成熟した身体は――ぺったん、ぺったん、つるぺったんに。
着ている服は子供用そのもので、どうしようもなく似合っている。これに性的興奮を覚える人間がいるとしたら、重度の
「この前の冒険で、若返りの山というのがあったのを覚えてる? 霧の魔物を倒した時にドロップアイテムがあったのよ」
「魔法的なもので、危ないかもしれないから私とお姉様がこっそり研究してたの。色々調べて加工した結果、いつでも男湯に入れるようになった!」
「あんたねぇ……」
下らない理由で誇る妹に呆れる志津香。
このマジックアイテムは変装用として非常に優秀だった。少し魔力を注げば所有者の身体を変質させる霧を吐き、その霧を吸えば丸一日は子供の姿が維持される。
東ヘルマン入りするにあたって、志津香達はこれを使う事で兵士の目を誤魔化していた。
「これをシャングリラで早速試そうとしてたらリセ……メリモが行かなきゃ助けなきゃって言っててね、心配だから私達もついていく事にしたんだ」
「私はあの馬鹿に振り回されるのはゴメンだったんだけどね。ナギも行くって聞かなくて」
「だって面白そうじゃん。東ヘルマンになってから一度も行った事無いし、あむっ」
ナギが美味しそうに酒のつまみを口に含む。肉団子をギザ歯で根本から噛んで引き込み、むしゃむしゃと食べる。体は幼女だが、動きそのものは年季の入った酒飲みだった。
「はしたないから……あっ」
その動きの結果、志津香は口の端についた肉汁を拭こうとナプキンを取って寄せてしまい、
「へへー、拭いてくれるの?」
ナギの満面の笑みを見て、自分のやった事に気付く。
危うくウズメ達の目の前でナギを甘やかすところだった。
志津香は顔を反らしてナプキンを置いた。
「……子供じゃないから自分でやりなさい」
「ちぇー」
「……ふん」
不機嫌そうに自分の皿に手を付ける志津香と残念そうなナギ。
二人は子供である事を、自分達なりに楽しんでるようだった。
「ふふふ、二人とも仲良しさんだねえ」
「恥ずかしいから私達に先に紹介させたんじゃない。次はメリモの番よ」
「あ、はーい」
メリモ――成長した姿のリセット・カラーが、ウズメの方を向いた。
目線の高さも同じところ、良く見た可愛らしさの面影を残した、ただし美しさも備えた無邪気な表情を前に、ウズメの心臓が何故か跳ねる。
「私の場合も同じで、メリモの杖って魔法具を使ったんだよ。これは体を大人にするの」
メリモが懐から取り出したのは魔法少女が使うようなステッキだった。
「リセットがリセットのままだったら、私達より一発でわかっちゃうからね。一つだけ条件を付けて貸す事にしたのよ」
「それでメリモ・カラーでござるか」
「そのまんまだけどね。私の名前でもわかっちゃうかなーって思うから、この姿の時はそう呼んでねー」
魔法のステッキをふりふりと振り、少し照れが残る感じで笑うメリモ。
柔らかく、親しみやすく、ほんの僅かな気品を感じる笑みだ。
ウズメはつくづく痛感した。初めて見た時から全く身長の変わらない可愛らしい姉は、見逃されて来たが、いざ成長すると――
「すっげえ美人でござるよ、姉上殿……」
「そ、そうかな?」
「もう文句無し! こんな凄いの、見たことないでござる!」
完璧な美貌とやらを持つ神すら嫉妬するような、太陽であった。
魔王の子達は皆見てくれはいい。誰も彼も美少女だし、母親も美人だ。だが、その上がった美的価値観をもってしても、これは勝てるわけがない、比較にならないと感じれるものだ。
毎年数多の美少女を判定する闘神大会の受付嬢でも驚くほどの美人だ。もし今大陸美少女コンテストをやったら間違いなく一位を取る。
勇者特性に匹敵しかねない魅力が、メリモにはある。
「う、うーん。これはあくまで杖の力で私じゃないから……」
「いや、これは未来の姿を素直に映すはずだよ。リセットが成長したらこうなるんだから、素直に喜べば?」
「…………それはもっと嫌」
メリモはちらっとナギを見て、体を縮こませた。
「あー、ナイスバディじゃないもんね。今の姿を認めちゃったら私に永久に勝てないからねー」
「ナギちゃ~ん?」
ナギの言った事が図星だったようで、リセットが少し怒った。
リセットの体型はしっかりと大人のものではあるが、ことプロポーションというものでは大人形態のナギや志津香に大きく劣る。もっと言うなら貧弱と言っていい。
この形態の服は露出が激しいせいで、体のラインがモロに出る。
胸の膨らみこそ少しあるが、谷間と呼べるようなものは存在しないし、存在感だったらウズメの方がまだある。これでは早晩抜かれるだろう。
そしてカラーは大人形態になったら一生そのまま。もしこの姿で確定した場合、魔王の子の中では一番の貧弱体型という危機は全く変わらないのだ。
「そんなことないよ。ひいおばあちゃんと違って私は成長するんだし、それならお母さんも、お婆ちゃんも、カラーの女王は皆ナイスバディなんだから私もそうなる……はず」
「いやぁ……多分無いんじゃないかなあ。メリモの杖を持って、変化があった事に喜ぼうよ。私はあの時、ダメ元だったんだよねー。あの姿が大人かと思ってた」
「ナギちゃんの馬鹿っ、馬鹿っ、馬鹿っ!」
べしべしべしと、ナギの頭を指で叩くメリモ。彼女のコンプレックスの原因は主にナギだ。
幼い頃から良き親友として過ごしてきたが、時の流れは残酷だった。
こちらは成長が止まりっぱなし。あっちはすくすく育つ。会う度にナギに自慢され、比較され、胸を頭に乗せられるにあたって、遂に決意した。
大人になったら絶対に抜かしてやる。馬鹿にされた分をいつか返すと。その為に何年も様々な努力をしてきた。
だが、全く変わらない。
魔王問題を解決したら変化しないかと淡い期待を抱いたが全く変わらない。
「「「そのままでいいよ」」」
という
その上メリモの杖という抜け道を使ってもこの有様だ。どのみち詰んでいるとか嫌だ。
メリモは自分の今の身体がとっても不満だった。
ひとしきり小っちゃなナギをつついたメリモは気を取り直し、
「ま、まあ今回は変装の為仕方なくやってるけど、皆には内緒でお願いね」
「ういうい、それで姉上殿達はどうしてこちらまで?」
「それは勿論、お父さん達を止めるためだよ」
メリモはちょっと困ったような表情を浮かべ、ドリンクをストローでかき回す。
「東ヘルマンと私達が争う理由なんてもうないの。ちょっとしたすれ違いが残ってるだけだし、後は時間と話し合いで解決できるんだけど……肝心のお父さんやエールちゃんが暴れてたら、話にならないよねぇ……」
手紙を受け取った時点で、大騒動になると確信した。だから可能な限り素早く動いたつもりだ。
メリモにとっての理想は父親にとっとと会って、妹を諫め、ごめんなさいと書き置きを残して迷惑をかけた人をまとめて逃げる事だった。後から交渉でゆっくりやっていけば可能な限り不幸な人が生まれないで丸く収まる。
だが、事態は驚くべき速度で悪化を遂げていた。
「この朝刊見てみ。『救世主来たる。全世界に、魔王の子達に鉄槌を!』だって」
「街をちょっと歩いたら過激な発言だらけよ。あの勢いじゃ逃げたらどこまでも追うでしょうね。戦争という形で」
「う、う~ん……」
新勇者の出現である。
東ヘルマンはランスとバーバラを機に、本格的な戦時体制へと舵を切りつつある。片方だけをただ丸く収めれば解決する問題ではなくなってきた。
「いっそさあ、私達全員でランスに加担して今の内にボコっちゃうてのはどう? 何度も命を狙われてるし、それぐらいはやられても仕方ないと思うんだけど」
悩むメリモに助け船を出そうとして、ナギが物騒な提案を出した。
「前の襲撃では3万を跳ね返したじゃん? 今ならランスに6人もいれば30万ぐらいは……」
「だ、ダメだよ!? 確かに兵士さん達に襲われたけど、そんな事やったら普通の人に大迷惑がかかるからね!?」
「……それに、勇者の存在もあるわね」
志津香の指摘にナギは頭を掻く。
「あの子は本物でしょう。なら私達より強いかもしれないから、戦うべきじゃない」
「あー、もう戦いたくないよねぇ……でもなぁ……」
結局、問題は勇者だ。
夜の興奮を見た時点で、バーバラは真実勇者だろうと見当がついた。だからこそ厄介極まる。
勇者災害はウズメ以外の全員が苦い記憶と共に思い知っている。魔王の子を全員殺すという宣言は、魔想姉妹から楽観論を取り去っていた。
ただ、殺害予告をされた当のリセットはのほほんとしたものだ。両手を使ってドリンクを飲み、ほうと息を吐くと、
「なんとか勇者さんとお話出来ないかなあ」
「いやー……」
「それだけはやめて」
姉妹が静止の声を上げる中で、裏事情を知るウズメが口を挟んだ。
「出来るでござるよ? というかあれは工作の嘘っぱちでござる。ウラジオストックでバーバラちゃんと会ったけど、普通の女の子で、冒険者でござるよ。勇者をやる気は全くないって言ってたでござる」
三人は微妙な表情を浮かべた。
「勇者が普通の女の子……? 何かの冗談じゃないの?」
「ウズメちゃん、なるだけ詳細に教えてくれないかな。どんな仕事をしてたの?」
「ういうい。ウズメは東ヘルマンに潜入して――――」
遮音魔法の中で、ウズメの潜入事情が説明された。
東ヘルマンの人間関係、ウズメのやった仕事、ウラジオストックで出会った新勇者、そしてランス達の襲撃に話は移り――
「くんずほぐれつ絡み合って、周囲は凄い匂いがして、バーバラちゃんが甘い声を上げて――!」
「う、ウズメちゃん、もうストップ! そこ飛ばして!」
目ん玉がぐるんぐるんになったウズメを静止したりして、なんやかんやで報告が終わった。
「あ~……」
「はぁ…………」
「う、うぅ……」
報告を聞いた三者は三様だった。
まぁそうなるよねというナギ、呆れと諦めが半々になった志津香、そして途中からウズメの心中を察して抱き締めていたメリモ。全員がバーバラに同情していた。
「いやー、いつかやるとは思ってたけど……娘がいても止まらないかー」
最初に口を開いたのは、ナギだった。
「可愛い女の子と見れば見境無しよ。一緒に冒険してたらこんなのばっかり。やっぱりあそこで死んでた方が人の為だったと思うわ」
「まあ、女性の敵なのは間違いないよね。私もお姉様もずっと被害者だし」
「あの馬鹿は一生変わらないでしょうね。これからも娘の友達とか息子が好きになった女の子に手を出すわよ。ほんっと最悪」
結論、どう考えてもランスが悪い。新勇者は悪くない。
というかランスに味方する気が全くしない。
志津香は敵と考えていた勇者に同情し、一気に鼻白んでメリモに問いかける。
「これからどうするつもり? 私はもう帰りたいんだけど」
「そうだねえ。バーバラちゃんは悪い子じゃないみたいだし、話し合ってみようか」
メリモはよしよしとウズメを撫でている手を止めて覗き込む。背丈が追い付いているから、姉そのものの所作が似合っていた。
「ウズメちゃんもこのまま話せなかったら、きっと後悔すると思うの。お姉ちゃんも謝るから、これから一緒に行こ?」
「あ……あうあう、分かったでござる」
メリモの優しさにほだされて、ウズメもつい頷いてしまった。
「うん! コサックで美味しい店とかも教えてくれると嬉しいなー」
にこにこと、柔らかい笑みでウズメの手を引っ張るメリモ。
全員分のお会計を置いて、ウズメと話をしつつ酒場を出て行ってしまった。
「……はぁ」
「お姉様、お姉様、リセットって本当優しいよね」
「優しすぎよ。貧乏クジを自分から引きに行ってる。まったく、あいつの長女はなんで……」
普通ならランスに幻滅して悪口大会になりそうな流れだった。
それをメリモは場の空気を柔らかくする事でランスを庇って、ウズメをフォローした。バーバラまでも助けようとしている。
首都コサックは少し話を聞くだけでも虎口だ。リセットも分かっているだろう。
だがリセットは止まらない。鬼畜王戦争終結直後に、魔王を元に戻す旅がしたいと頭を下げた女の子は止まるわけがない。
ずっとリセットはランスの被害者の味方で、何よりもランスの味方だった。バーバラを見捨てられる訳がない。
(でもまあ、仕方ない、か……)
少しでも家族に優しい世界を作ろうと奮闘している長女が助けると決めたのだ。それが正解じゃなくても、支えるのが家族というものだろう。
小さくなった志津香は椅子から飛び降りて、二人の影を追いかけた。
アキラの私邸の入り口で、ウズメはかなり緊張していた。
魔法ビジョンの映像は嘘っぱちだ。それは知っている。
でも、犯された後で相手の娘に対する恨み節は出ないだろうか。いや、きっと出る。少なからずあるはずだ。
仕事柄、関わらなければならない。向き合っていかなければならない。忍者として、任務をこなさなければならないのだ。だが――――
バーバラが、自分に対してどんな感情を向けるだろう。それが怖くて仕方ない。
「大丈夫、大丈夫。がんばろー」
ウズメの手が震えたのを感じ取ったか、手を握り続けるメリモが声を優しくかける。
この声と笑顔があるから、今日でもアキラの家の前まで来れた。
「い、行くでござるよ」
「うん!」
ウズメは意を決して、アキラの家に入った。
既に気配を感じ取っていたか、鍵は開け放っており、入り口にアキラがいた。
「待ってたよ、思ったより速かったね。そして理由はこの方達か」
「あ、お邪魔しまーす」
アキラは一瞬だけメリモ達を見つめ、ふっと笑った。
「いらっしゃい、ゆっくりとしていくといいよ。
「あー……えへへ、じゃあメリモって事でお願いします」
「魔王討伐隊へようこそ。主様の助けになってあげて欲しい」
アキラが礼儀正しく頭を下げた。
「そちらの客間で待っててくれ。すぐに案内するよ、この上ない味方が来たってね」
そう言うと踵を返して、階段を上がっていった。
「バレッバレね」
「うん、でもアキラさんは酷い事はしないと思ってたよ。東ヘルマンで彼女の仕事もそういうものだったし」
「あの様子じゃ私達もバレてるんだろーなー……」
ウズメ達は案内された客間に入って、ソファーに座る。
魔想姉妹は念のため魔法で罠の類が無いかチェックしたり、物質調査をしたが何も無かった。
やがて待つまでもなく、どたどたどたーーーっと音がして、バーバラが姿を現した。
「ウズメちゃーん、待ってたよー!」
バーバラは手を揉みつつ、膝を地面に着いて、満面の笑みを浮かべた。
「私の討伐隊に名前が載ってて、こりゃ凄く頼りになるなーって思ってたら来なくて、またアキラが余計な事してたかなーって不安だったのよー! 来てくれてありがとねー!」
「「「「……………………」」」」
「どんどんやって欲しい事言って! 少しでも風通しの良い隊にするつもりで、隊長として頑張るから! 一緒に楽しくやっていきましょう!」
お願いお願いと両手で祈って頭を下げるバーバラ。
あまりに卑屈な姿に、ちび志津香の表情が固まった。
「…………この子が、勇者?」
「はーい、勇者やってまーす! あなたはウズメちゃんのお友達かな。ウズメちゃんの友達なら私の友達になってくれないかな?」
「…………」
「あ、ごめん! 慣れ慣れしかった!? ごめんなさい! 仲良くやっていきたいだけだから!」
魔王討伐隊隊長の作戦その1、媚びる。徹底的に媚びる。
ウズメが敵に回ったら勝ち目がない。卑屈でもなんでもいいから裏切りにくさせよう。
まずは戦う事になる魔王の子を減らすことから始めないと勝ち目がない。
人類の希望、勇者。
その勇者が見え見えの媚びを魔王の子にかましていた。年季が入ってないからド下手糞だ。
普通の女の子と聞いていたがとんでもない――――この女の子は、かなり駄目な子だ。
「っぷ、アハハハハハハ!」
「ちょっとナギ……」
「いやー、勇者と身構えたらこれって……! 前のも、前の前のも色々ヤバかったのに……!」
「あ、アリオスとゲイマルクとやら? あんな大それた事する気ないわよ。普通にお金稼げればいいの。人類の敵も味方もまっぴら御免」
両手を横に広げて、新勇者バーバラは無害をアピールする。
「とにかく強い人は歓迎です。皆すっごく強いってアキラが言ってたし、魔王討伐隊に参加してくれるなら凄く嬉しいです。なんなら数日一緒に食っちゃ寝するだけでも大歓迎です。ここにあるものは全てアキラのものだから、好きに使ってね!」
笑顔だけは可愛らしい、色々駄目な子だった。
謝罪するつもりが、完全にハシゴを外されたウズメは呆然としていたが、メリモにちょいちょいとつかれて我に返る。
「ば、バーバラちゃん! ちょっとこっち来て欲しいでござる!」
ウズメは客間から離れて、内緒話をする為にバーバラを引っ張って別の部屋へ引き込んだ。
「ウズメちゃん、どうしたの?」
「う、その、ウラジオストックでは、ごめんねでござる……」
頭を下げるウズメに、バーバラはきょとんとして首を傾げた。
「……エールから庇ってくれたでしょ? こっちが感謝したいぐらいで、謝る事なんて無いと思うんだけど」
「その、父上殿の時、止められず……」
「あっ…………! まさか……!」
一気に顔を真っ赤にして、狼狽えるバーバラ。あの時を見られていたと悟り口元に手を当てる。
「…………っ!」
ウズメは体を縮こませて、審判の時を待った。
少しの静寂と、バーバラの動揺。次にどんな悪感情がぶつけられるかと恐れる中で――
耳に、手を当てられた。
「…………その、他の皆には、内緒にしてね」
ウズメは瞼を開き、バーバラを見た。
目には涙が滲み、耳まで真っ赤にしていた。ウズメに対する悪感情というものではなく、痴態を見られたという羞恥が強い。むしろウズメの視線から逃げるのはバーバラだった。目を逸らして、まともにこちらを見れない。
「その……恨んでないでござるか?」
「ランスはぶっ殺したいし、エールも痛い目見させたいわよ。でも後は私も調子乗ってたところもあってー……」
指をもじもじと弄って、バーバラは自身の反省を口にする。
結局、勇者の力に調子に乗っていたという反省は大きかった。従者の忠告を無視し、勝手に判断し、楽勝だと決めつけて、魔王に犯される。
冒険者としては廃業ものの失敗だ。先達に口に酸っぱくして言われていた事を何一つ守れていない。他の何かを恨むよりは、自分の恥ずかしさの方が勝っていた。
「……ええい、まぁ全部過ぎた事よ! 大事なのは今これからどうするか!」
首を振って、バーバラはウズメを見据える。
「一緒に魔王討伐隊に参加してくれる? 私、あなたと戦いたくないの」
そして、手を差し出した。
あまりにも以外な展開だった。恨み言を言われたり、斬りかかられたり、何より泣かれるのが怖かった。仲良くしていた子の不幸な姿を見るのが怖かった。でも、これだ。
ウズメは苦笑して、手を握った。
「ふふっ……バーバラちゃん、変な子でござるね」
「ポンコツ言われるよりかはマシな呼び名ね、よろしくね!」
魔王討伐隊にウズメが仲間になった。
正しい事はまだわからない。でも失敗しても、取り戻せるから恐れなくていい。
後に戻ったメリモが見せた満面の笑みとVサインは、ウズメにとって忘れ得ないものだった。
「ふ、ふふふ、ふふふふふふ…………」
自室に戻ったアキラは暗い笑みを漏らしていた。
「最高の展開になってきたね。次々と魔王の子が主様の下へ集まる。よりどりみどりだ……」
アキラにとって本来の目的は別にある。あるが、第一目標とは別にエロ目標も存在する。
魔王の子とセックスがしたかった。
古今東西ありとあらゆる相手とセックスして来たアキラにとって、コンプリートは欠かせない。これまでは世界的な影響から魔王の子とは避けていたが、今なら別だ。
バーバラとだけは合意の上がいいと思っていて手加減しているが、他の子なら遠慮はいらない。
「リセット・カラー、魔想志津香、ナギ・ス・ラガール、見当ウズメ……どれもこれも最高だよ。どんなシチュエーションでやろうかな……」
人間が想像できることは、人間が必ず実現できる。それがアキラのモットーだ。そしてエロに関しては既に実現している。
ある日の事だ。
エロ仙人というものが現れて、エロ魔法を覚えたくはないかとアキラに問いかけた。
『勿論だ。どんな犠牲を払おうと習得してみせる!』
即答だった。
そこから激しい修行の末、闇と光以外の魔法が使えなくなる等の弊害はあったものの、アキラは見事エロ魔法を習得した。
そこからさらに研鑽を積み、努力に努力を重ね、外法も試し……今ではエロシーンにおいて不可能は存在しない。
媚薬、催眠、洗脳、感覚交換に始まり、触手召喚、ふたなり化、女体化男体化獣化機械化、動物使役、魔物使役、肉体改造、精神破壊、苗床……およそ人の考えられる全てのシチュが可能な不思議空間が作り出せる。
アキラのエロの方向性は、この
「システムがエロシーン判定を認めれば、僕はあの子達を……ふふふ……」
状況を考えるだけで、濡れる。
どんな快楽を与えられるだろうか、そんな考えでアキラの頭の中は一杯だ。
自部屋にあるのは、アキラ謹製のアイテム達。
感度100倍にする薬、快楽中枢を直接刺激するバイブ、一週間は男を勃ちっぱなしにする倍油など、エロに関する全てが唸っている。
「ああ、楽しみだなあ! 何も知らない女の子に快楽を教え込むのは! 誰にしようかなあ!」
他の部屋では少女達が無邪気に笑っている一方で、アキラはエロばっかり考えていた。
リセット・カラーについて
筆者はリセットをこの上なく愛しています。
故に多少歪んでるかもしれませんが、ご容赦下さい。
最後のイベント
アキラの存在意義。本二次創作アナザーエロ発動準備。ランス9オマージュ。
本二次創作はランスモードもあれば隠しバッドエンドもあります。筆者のリソースが有限だから本編進めるのでいっぱいいっぱいですし、turn終了時の休暇時に一つ作るぐらいでしょうか。