※この作品はR-18です。

新勇者バーバラの冒険   作:ランスロス・マッキ

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 頭でっかち説明回。
 これでようやく、同格っぽい戦いが書けるようになる。
 というかここまで強くしないと本気エールちゃんとは戦いにならない。


システム② 強スキルを覚えろ

 ただっぴろい平原しかない異空間で、勇者がもがいている。体は血に染まり、末期の患者のように指先が痙攣し……止まった。

 傍らにいる暴行犯が剣を引き抜き、何事かを唱えると光が満ちる。

 次の瞬間、バーバラの傷は完全に治癒されていた。

 

「…………もう、いやーーーーーーーーーーーーーーーーー!」

 

 何度目になるかわからぬ叫び声が、Aの地平に響き渡った。

 

「もう本当やだー! なんで私ばっかりこんな苦しい思いしなきゃいけないのよー!」

 

 勇者と従者の修行――というにはあまりに凄惨な惨劇、その何度目かの蘇生後の事だった。

 正気に戻されたバーバラはエスクードソードをぶん投げて、これ以上の修行を放棄する。

 

「アキラはレベル上げを言い訳にして私を嬲りたいだけでしょ! やってられるかー!」

 

 少女の心は、もう限界だった。

 初めての修行の要請から数日、メリモ達と仲良く遊ぶ裏でもバーバラはアキラに拉致され続け、嬲られていた。

 恩恵としてのレベル上げは順調だ。身体能力は上がっているし、戦い方も痛い目を見ながら学んでいる。前より上手のやりたい事がわかってきたし、実戦経験はやるとやらないでは天地と言えるだろう。

 だが、全く強くなった気がしない。

 対戦相手はバーバラの身体能力に合わせて絶妙に出力を上げ続けている。ミスったら一撃死ギリギリで攻めて、あの手この手で嬲られ続けて、どうして自信を得られるのか。

 何もない平原で大の字になって、空を見る。もう何もやる気になれなかった。

 

「困りましたね……」

 

 アキラが自分の頬を手で押さえて、どうしたものかと思案する。

 

「残念ながら、エール・モフス相手だとまだ勝ち目が薄いんですよね。経験値的(レベルアップ)にはキリがいいから別の事を覚えるのもいいかもしれませんが、しかし勝率が……」

「はいそれ行きましょう!」

 

 バーバラは跳ね起き、アキラを指差した。

 

「座学でも魔法でもなんでもいいから、それにしましょう! たまには気分転換も必要よ!」

 

 どんなキツいものであっても今の地獄よりはマシだろう。そんな思いからバーバラは他の選択肢に縋る。

 普段なら剣を放り投げたら徒手空拳の練習と言って殴りかかって来る女だ。止められるならなんでもよかった。

 バーバラの真摯な想いが通じたか、アキラは剣を大地に突き刺して座り込む。

 

「主様が望まれるのならそうしましょうか。もう少し物理的死因を喰らう可能性を減らす為に受けを上達させたかったのですが」

「そうだ、まずは座学からにしましょうよ。まずアキラは私を強くしたいようだけど、どう強くしたいのか全くわからないもの。物理的死因とか時々わけのわからない事を呟くし」

「システムを利用して強くしてるんですが……ああそうか。これは僕が説明不足でしたね」

 

 アキラが頭を掻き、急ぎ過ぎていたかと苦笑した。

 

「そうですね。まず僕が今までやっていた事を説明しましょう。主様にはレベル上げの中で、徹底的に受けを学んで貰いました。それは物理的死因を避けるためです」

「物理的死因ってなに?」

「四肢欠損、内臓貫通、そういった致命的な被害を喰らう攻撃です。それを喰らった上でまともに戦えますか?」

 

 バーバラは首を横に振った。

 そんな攻撃は喰らった時点でアウトだ。勇者だから死なないが、まともに体が動かせなくなる。

 そんな重傷ではなくても、火傷や脚を挫くような怪我をした時点で十全に戦うのは難しい。若干なりとも戦闘能力は落ちる。

 

「そういう事です。体力(HP)ではなく生命(いのち)を脅かす攻撃、それが物理的死因です。大抵の魔物相手なら主様でも技量差や圧倒的な身体能力差によって一方的に奪えますが、同格ならそうはいきませんし、今のままでは魔王の子相手では逆に削られて奪われる技量でした」

「だから、殺し続けて覚えさせたと……」

「はい。勇者は理論上稼働可能な状態に再生し続けるはずですが、ゾンビになって勝てというのも無理な話です。生命(いのち)が削れるような致命傷を受けた状態では状態異常もそうですが、体力(HP)の最大値も削れるので勝ち目が消えます」

 

 この世界では現実側にシステムが辻褄を合わせる。

 例えば殺しても死なないような英雄でも、ギロチンやナイフで首を落とせるし死ぬ。そうなればシステム的に残りHPが残ってようが関係なく死亡判定になる。

 

「ま、それ自体は当たり前の話ね。殺せば死ぬを難しく言ってるだけに聞こえるわ」

 

 この手はむしろシステムを知らない方が直感的に受け入れられる世界だ。生命の奪い合いなんて日常的にやっている。バーバラにとっては、システムの方がまどろっこしく感じてしまう。

 主の微妙な表情を察しつつも、アキラは残酷な事実を口にする。

 

「今の主様と前衛組の魔王の子が戦えば、身体能力もそうですが技量差によって捻り潰されます。技量の差が大きすぎますから、素直に戦えば勝ち目はありませんよ」

「……ブンブン力任せに剣を振り回してたエールって子にも?」

「はい、ちゃんと戦えばわかりますよ」

 

 納得せず、アキラを不満気に睨むバーバラ。むしろ満足そうに黒い瞳が細まり、上機嫌そうな声が帰ってきた。

 

「両者の本気を見ている僕が断言します。主様とあの子の間にはまだ埋めきれない技量差がある。でも、それはシステムとの最適化によって埋まる差です。僕が埋めてみせますよ」

 

 自信ありげなアキラの判断は、バーバラにとって好ましくない部分がある。

 あの糞餓鬼の拙い二刀流に負けと断じられては良い気がしない。

 バーバラは若干眉根を寄せて問いかける。

 

「具体的にはどうするつもりよー?」

「段階を分けて説明しますが、大元の目的は体力(HP)を強スキルで削って、相手から余裕を奪って生命(いのち)に届く一撃を先に与えるという形になりますね。このシステム、理不尽な手が色々ありますので」

「それで強スキルを覚えろ、ねえ……あんまり強さは実感できないんだけど」

 

 バーバラはAの地平以外の修行で、アキラがあれこれ口を挟んでいた事を思い出す。

 コーラとの時もそうだ。光魔法を覚えるはずが口を挟んで雷魔法にしてしまった。だから現時点で新しく覚えた魔法は雷の矢だし、これからも雷系統を伸ばす事になっている。

 それ以外にも寝る前に瞑想や、気を充実させたりする修行法を指導している。全て有用なスキルを覚える為の努力だと言っていた。

 

「この世界のシステムは色々あります。ある程度は主様も知っているでしょうが、数字までは殆どの人が知りません。ブースト、コンボ、状態異常、属性……ダメージを増加させるシステムが多数ありますね。まずはコンボから行きましょう」

 

 アキラは懐から黄金色のペンを取り出した。

 

「主様がバリアを覚えてから、僕は何を教えていましたか?」

 

 地獄そのものの修行を思い出し、バーバラの目が濁る。

 

「三連突き、相殺出来なきゃ殺される同時斬撃を撃ちこまれた……」

「そう、三連突き。コンボシステムを説明するには最高の強技ですね」

 

 アキラがペンを動かすと、空に文字が浮かび上がる。

 

 3連突き 攻撃1倍、三連撃、準備2、発動後隙4。

 

「スキル的には概ねこんな感じでシステムに規定されています。攻撃の倍数はその人本来の攻撃がまともに当たった話と考えてください。準備も隙も本人依存です。次に別のスキルを書きますね」

 

 突撃3 攻撃3倍、準備4、発動後隙2。

 

「この二つのスキル、同じ人が撃った場合どっちが威力上になりますか?」

「そりゃ同じでしょ」

「ところがどっこい、三連突きの方だとシステムがダメージを付与します。突撃3だったらそのままですが、コンボ補正によって三連突きはこうなります」

 

 3連突きダメージ。

 一撃目1.0+二撃目1.1+三撃目1.2=3.3倍。

 

「これがコンボシステム、立て続けにダメージを与えると10%ずつダメージ倍率が付加します。どこまでがコンボなのか判定するのは相手の当たり方とシステム次第ですが、少なくとも三連突きみたいな連撃系は一撃目の時点で確定です。持っているだけで損がありません」

 

 朗々と語られるシステムは数字の世界で、この世界の構造を解き明かすものだ。

 これらの情報は現実で生きているバーバラにとっては味気なく感じてしまう。普通ならその三連突きが深いか浅いかで考える生命(いのち)の奪い合いだ。苦労して身につけた技をシステム的に評されると無味乾燥で良い気がしない。

 

「応用編行きましょうか。敵との駆け引きの中で今の二つの技を立て続けに撃ち込める状況を築きました。どちらから行くのがいいですか?」

「システムが正しいなら先に三連突きじゃない。隙と準備を考えたら普通逆だけど」

「流石主様、聡明でいらっしゃいますね。既にシステムに適応し始めています」

 

 突撃3→3連突きの場合のダメージ。

 一撃目3.0+二撃目1.1+三撃目1.2+四撃目1.3=6.6倍。

 3連突き→突撃3の場合のダメージ。

 一撃目1.0+二撃目1.1+三撃目1.2+四撃目(3×1.3)=7.2倍。

 

「このようにコンボを繋げてから大技を一発撃ち込む順序で一撃分近い差が出ます。これは体力の削り合いに大きな差を生みます」

「まあそりゃ知ると知らないとじゃ違うかもしれないけど、前提条件がねぇ……」

 

 戦いの中でそれだけの隙を作るのは、非常に骨が折れる。

 スキルには威力があるがそれだけの隙が伴う。戦闘では全力斬りを撃ち込む為に鎬を削って隙を作るのが実情だ。スキルを避けられたら目も当てられず、モロに痛撃を喰らう事になる。

 そもそもHPの削り合いに素直に乗ってくるのは、よっぽどの馬鹿かプロレス男だけだ。

 HPのダメージレースとは言わば泥試合。仕留めきれないから仕方なく削り合いになるものだ。実践を少しでも知る者ならば有利に立ち回れる材料の方が欲しくなる。

 落胆を隠せずに、バーバラは肩を竦めた。

 

「使う時があるかもしれないけど、学者が考えるだけの話って感じね。実践で役に立つ機会があるならその時点で勝ちでしょ。もっと純粋に使うだけで立ち回りで強い技とかないの?」

 

 その問いを待っていたかと言わんばかりに、アキラが笑みを深くした。

 

「ありますよ、知らない相手に対して絶対に有利を取れる超必須スキルが。多くの人が気づかず、されど冒険者ならば何度も見た事があるスキルです。主様の修行はこの為にありました」

「そんなのあるなら皆使ってるはずよ」

「いえ、使いませんし使えません。というのも魔人級の世界に踏み込まないと、ゴミスキル扱いを受けてしまうからです。術者の魔力や相手の反応速度が一定以上で、初めて意味が出来る技、その名も……」

 

 スキルの名が、空に書き込まれていく。

 自信満々に、アキラはその名を紡いだ。

 

「――――魔法攻撃、魔法衝撃とも言います」

 

 魔法攻撃 攻撃1倍、準備0、発動後隙1。

 

「このスキルの特徴は唯一つ、詠(・)唱(・)破(・)棄(・)魔(・)法(・)です。簡略化も高速詠唱も必要とせず、詠唱そのものを破棄した魔法、魔力をそのまま力に代えて打ち出す原初の技になります。まずは差をご覧ください」

 

 そう言うと、アキラは一枚の式札を取り出した。

 アキラの祈りと共に式札は別れ、一つ一つが形を変じて無数の紙飛行機と化す。それぞれが無軌道にひらひらと飛び回り、Aの地平に幾百のターゲットとして浮かび上がる。

 

「これから僕は右手で詠唱魔法を撃ちつつ、左手で魔法攻撃を撃ち続けます。最小威力に調整するのでどちらが多く落としたか確認をお願いします」

 

 そして、七色の矢が飛び交った。

 一つ一つの光線は過たずにそれぞれの紙飛行機に着弾し、最小のシミを作って空に舞う白の数を減らしていく。

 もうこの時点で察することが出来る。明らかに左手の方が数が多い。手を掲げて下げる間にも幾本の光線が発生し、敵手へと向かう。一方で右手から繰り出される闇の矢は等間隔のタイムラグがある。

 右が闇の矢で統一されている一方で、左手の射撃には統一感が存在しない。黄、闇、光、赤、青……五属の光が走り、一つのデコイには紫電を走らせ、一つのデコイには炎を与える。

 術者の圧倒的な技量故か、瞬く間に全てのターゲットは落とされてしまった。

 

「今ので何か分かりましたか?」

「魔法攻撃の方が速いって事ぐらいかな、後はどうにも……同じ魔法なのに効果が違う?」

 

 アキラは首を傾げるバーバラを見て、静かに笑った。

 

「そうです。属性付与すら放棄しているので勝手にシステムがランダムでつけてます。これは見た目だけで属性は本人に依存するので、僕の場合だと全部闇属性の攻撃なんですね」

「つまり右と左は結局同じ魔法だったと。でも速さは無詠唱の方が速いから使えるわね」

「そうです。普通なら詠唱速度の差が習熟度の差になりますが、この魔法は習得した時点で初撃の速度が変わりません。さらに熟練すれば属性付与も威力強化も出来ますし、極めれば別(・)の(・)魔(・)法(・)を(・)詠(・)唱(・)し(・)な(・)が(・)ら(・)無(・)詠(・)唱(・)魔(・)法(・)を(・)撃(・)て(・)る(・)――――そろそろ話が見えてくるのではないですか?」

「っそれは……!」

 

 バーバラは瞠目した。無詠唱魔法はこれまでの常識を破壊する魔法だと気づいたからだ。

 魔法には詠唱が必要である。高度な才能を持った人間は高速詠唱や詠唱破棄が出来るが、残念ながらバーバラにそんな才能は存在しない。一つずつ魔法を唱えて打つしかない。

 この状況に無詠唱魔法が加われば、話は劇的に変わる。

 近接戦闘でも暴発を恐れず気兼ねなく打てる。詠唱魔法の隙を消す為に無詠唱魔法を間に挟める。不利な状況になっても飛び道具として体勢を立て直す為に打てる……ちょっと考えただけでも、無数の用途が思いつく。

 

「詠唱という儀式を挟まず、相手が次に何をするのか予想出来ず隠蔽性も高い。主様のような近接主体の魔法剣士には必須のスキルと言えるでしょう」

「滅茶苦茶重要じゃない! この技がなんで広まってないの!?」

「これは人間の技術じゃないんですよ。魔物が本能で使うものであって、技術体系として理解して習熟する人間は皆無です。そして……燃費がとっても悪いんです」

 

 アキラは少し苦笑して、「これが何とかなってたら人類はもう少し戦えましたよ」とぼやいた。

 

「人間が使おうと思うと普通に炎の矢打つより10倍から20倍の魔力使うんですね。こんなもの使ってたら人類最精鋭でもすぐに魔力が枯渇します。火力が高くて必中なのが魔法の取り柄なのに、火力も落としてコスト撃高では誰も使おうとは思いません」

 

 アキラの言わんとする事がわかってきて、バーバラも頬が緩む。

 これは、選ばれた人の為の技だ。

 

「でも、私達なら普通に使える。炎の矢なんて何百発でも撃てるからね」

「その通りです。火力の高さを犠牲にしても、発生速度が必要な理由もわかりますね?」

 

 バーバラは頷いた。

 レベルの上昇に伴い、必中魔法の絶対性は崩れ始めている。反応速度や行動速度が魔法の速度に追いつきだして対応出来るようになっている。

 例えばザンス・リーザスは魔法を斬る事によってまともに喰らわない。

 例えばアキラは移動している間に簡単な魔法を唱えて相殺してしまう。

 バーバラも魔法抜きで凌げと言われたらエスクードソードを盾にして受ける。それだけでダメージはそこそこ軽減が出来る。

 要は必中魔法は追尾するだけで、他の何かに当てさせれば対応は不可能ではないのだ。

 魔人級の世界ではわかっている強力な魔法より、詠唱という前触れのない魔法が飛ぶ方が遥かに脅威だ。受けようもなく直撃すれば、生命(いのち)に届く痛撃になり得る。

 

「これから主様には無詠唱魔法を中心に習熟して貰います。そして属性魔法、強魔法攻撃を使いこなせるようになれば、また別のシステム的な有利を活かせるようになるでしょう」

 

 黒髪の少女は常に自信に満ちている。システム利用でメタ的に強くする方針に嘘はなかった。

 バーバラはアキラの手を強く掴んだ。空色の瞳の中に、爛々と燃える炎が宿っていた。

 

「覚えるわ、その魔法。それでランス達にぎゃふんと言わせましょう!」

「はい、主様」

 

 バーバラの想いに応えるように、アキラは強く握り返す。

 

「それで、どうやって覚えるの? 普通に覚えられるものじゃない気がするけど」

「はい、ちょっとコツが要りますね。でも戦う必要はありません、こうやって……」

 

 戦う必要はないという言葉に拍子抜けしたバーバラは、アキラの為すがままだ。

 アキラはバーバラの両手を自身の両手に重ねて向かい合わせになった。端正な顔が近くに来て、バーバラは気恥ずかしさから目を逸らす。

 Aの地平で、膝を合わせて黒と金、二人の少女が向かい合う形になっていた。

 

「いいですか、これから主様の掌に魔力を集中して流します。なので全力で抵抗してください」

「わかったけど……それってどういう……?」

「いきますよー、10、9、8……」

 

 カウントダウンが、始まった。

 バーバラは言われた通り、魔力を掌に集中させる。瞑想はこの日の為にあったのかと流暢に出来ている自分に驚きつつ、ファイヤーレーザーを撃つ時並みの魔力を集約させた。

 

「いつでもいいわよー」

「3、2、1……ゴー!」

「…………!?」

 

 前触れもなく、圧倒的な魔力が身体に流し込まれた。

 バーバラが保持していた魔力など瞬く間に流し込まれ破断。そのまま暴力的なエネルギーの塊が身体に渦巻く。

 

「ばばばばばばばばばばばあっ!!???!??!??!?!」

 

 全く体の状態が保持できず、バーバラは倒れ込んだ。

 痙攣が止まらず、呼吸すらも出来ず、痛みにのたうち回る。

 痛い、痛い、痛い、とんでもなく痛い、感情の全てが痛みに支配される。痛いとしか感じない。何も見えない。何も感じない。

 キリキリと、全身が激甚たる苦痛を伝えている。全身を細かい桐で削られされ、骨を露出させて肉を抉るようだ。痛みでその部位が溶ける。

 最早自分の体がどうなっているかわからない。大声を上げているのかもわからない。だれかこの痛みを止めてくれ、楽にしてくれ、そんな思いがあるばかりだ。

 刹那の時間が永遠になったように感じてしまう。そんな苦役が続く。

 だが、ふっ……と痛みが消える感覚があった。いつものアキラの治療だと察したバーバラは、顔を向ける。

 

「このように、抵抗できないと神経がズタズタに腐って末期の虫歯の時のような痛みが体中の至るところから群発します。頑張りましょうね!」

 

 アキラはいつも通り、若干興奮した笑顔だった。

 

「……………………もう、いやぁ」

「一度に大量の魔力を使う感覚を覚えるにはこれが一番効率良いんです。それじゃ二撃目行きますよー! カウントダウン開始しまーす! 10、9、8……」

 

 瞬く間にボロ雑巾となったバーバラの手を、アキラは掴んで離さない。

 次の地獄は、すぐそこまで迫っていた。

 

(結局こんなのばっかあ……)

 

 勇者は白む意識の中で、涙と胃液の味と共にそんな事を考えるのだった。

 

 

 かくして、ポンコツ勇者はシステムを学習し、メタ的に優秀なスキルを覚えつつある。

 魔王の子との戦いは近い。彼女が報われる日は来るのだろうか。




本二次創作システム、戦闘編
 まず、異世界リアルタイム戦闘がベースである。システム①やアキラが言うように、物理的死因、技量、欠損のある世界。ここで土俵に上がれなければまず勝てない。
 その後で個人戦集団戦両方が採用可能な10システムがベースに置かれている。
 『相手が避けもせず真正面からHPの削り合いに乗ってくれる』という前提の元ならば、HPを減らすには10システムの強行動に従うのが良策と言える。コンボ補正も属性も存在するのでダメージが増える。
 ただしターン、apの概念がぶっ壊れている。リアルタイム戦闘なので可能な限り自分の持っている手札(カード)から、魔力や身体能力の限界を考慮してコマンドを素早く入力する形。apは魂の力、エールだけがズル可能な本人固有の力という解釈であり、攻撃力、魔法力の元。
 ブーストは1.5倍、弱点属性、特定対象、必殺は倍撃以上判定、必殺はリアル状況依存、ブーストは運では発生せず状況依存。(お父さん応援とか)

 支援、地形については一旦ここでは解説しない、また次回以降。
 単純じゃなくリアル依存になっているとは言っておく。土嚢や防御が魔人相手に役に立つのか。

 その上で、派手にする為に各シリーズシステムがところどころ導入されている。
 01の冒険者功績やチップ(まともに当たるのならね?)、状態異常を加えたり。
 回避したり、悪口を言って相手の頭に血を昇らせて真正面から殴り合いとか出来たり。
 ゼロスリースキルを導入してたり。
 HPがゼロになっても死ぬわけじゃなくLPがあったり。
 ランスがハーレムを持っていたり。各キャラにアイテムを持たせられたり。
 レベルアップとスキルの習熟度による上位技書き換えが存在したり。
 ランスとセックス時に才能限界や基礎能力値が上がったり。蟹玉猿玉があったり。
 一応各キャラに部隊戦闘値、内政値が設定されてたり。
 ATHPを解体して、HP、攻撃、魔法、衝撃(→行動阻害に変換)、耐性、素早さ、防御、魔低が各キャラに設定されてたり。回避はリアル戦闘判定に全振り。
 受け流し、(重)装甲、粘り、熟練ポイントなどもあったりする。

 概ねそんな感じ。後は調整もあるが全シリーズのアイテムが使用可能になっており、ランスの都合がいいように唐突に出現する。

魔法攻撃。
 魔法兵どころか魔法の才能がないDD、ガルティアだろうが使う。
 ap0を利用した独自解釈の強システム魔法、詠唱の出来ない、知識を持たない魔物の為の魔法。
 ここからシステム的な炎魔法、雷魔法へと繋がっていく。


新勇者バーバラ lv79 
 ボコボコにされる日々。人生ってこんなに辛いものだったっけ。
 ボロ雑巾を絞りに絞る日々の中で、技量はともかく実践経験だけはたんまり入ってる。
 いい加減、少しは魔王の子達に勝てる要素が欲しい。

 3連突き
 魔法攻撃

(コーラの指導で雷の矢を取済済み)



 基本的に戦闘は自由度が高く、そういやこんなのあったなと思えるようにしました。
 バーバラは剣と魔法を中心に、高度な才能が必要な技以外の全てを使える可能性があります。
 例えばヘルマンパンが好物なのでパン泥棒を覚える可能性があります、それぐらい自由で可能性に満ちてます。

 次回、29日目標。ラスト日常回。

 ちょっと遅れます、好きなキャラだから拘りそう。
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