「いつまでボーっとしているんですか。ポンコツ勇者」
コーラの声を聞き、バーバラは頭をゆっくりと上げた。
先程まで頭を抱えて唸っていたが、やはり何も状況は変わっていない。目の前に広がるのは魔軍による包囲。空も含めて制圧され、素人にもわかる詰みと言えるような状態だ。
「現実逃避をしていても時間はどんどん過ぎていますよ。相手は30分って言ってましたよね」
「わ、わかってるわよぉ……」
そう返しはしたが、何をするべきかが決められない。
ディフェンダー部隊はバーバラの指示によって動く。逆に言えば、指示を出さなければ動かない。今のままではでくの棒だ。
制限時間を過ぎたら魔軍は攻めて来るだろう。時間切れという形で戦闘が始まるのは最も悲惨な未来になる。動かなければならないと理解はしていた。
しかしそこから先となるとバーバラは躊躇してしまう。助けを求めるように、もう一人の従者に声をかける。
「えー、ううん……アキラ、どこか包囲の薄い方向とかある?」
「兵の報告を聞く限りでは穴がありません。地形を考えれば、あるとしたら正面ですね。山に布陣出来る絶対数には限りがあります」
「いやそれランスに突っ込むって選択じゃない……なんかいいニュースとかないの?」
「洞窟の盗賊は続々捕縛されて、もう制圧が終わるそうですよ」
「うう~~~~~そんなの全然朗報じゃない……」
せわしなく視線を動かしつつ、さらに幾つかの質問をアキラに投げかける。アキラは淀みなく答えるが、どれもバーバラが期待するような答えではなかった。
というのも、アキラは情報を伝えはするが自分の意見を挟まないのだ。バーバラに理解出来るように魔法で地形図を展開したりと補助の手間は惜しまないが、意見の具申がない。
今欲しいのは情報ではなく、この窮地から脱出する方法だ。
「飛行魔法兵の数は多くありませんが、軍事行動を起こせば即座に察知されるように配置されています。戦力としては驚異ではなくても……」
「……もういい! 私が聞きたいのはそんなことじゃないの!」
だから、痺れを切らしてアキラの説明を遮った。
「おや、では何をお望みでしょうか」
「色々難しいことを言ってるけど、私は本格的な戦争なんてわかんないのよ! だから何を言われても役に立つわけないでしょ!」
駆け出し冒険者のバーバラにとって、この状況は明らかに自分が出来る範疇を超えている。戦争になるならば、経験豊富なアキラに任せた方が絶対にいいと考えてしまう。
「もう時間がないし単刀直入に言うわ。アキラ、あなたが全部決めて!」
いつものバーバラの悪癖、困った時は従者に任せろが発動した。
従者が増えた分、このところ使用頻度は激しい。愚痴を垂れるコーラと違ってアキラは喜んで雑務をやるせいで、今ではすっかり依存しきっている。
「主様……申し訳ありませんが、それは出来ません」
しかし、そのアキラが首を横に振った。初めての明確な抗命であった。
「えっ……」
「それでは僕の役割を越えてしまいます」
「大神官で元帥でしょ!? 東ヘルマンであなたより偉い人なんてこの中にはいないわよ!」
「いえ、それ以前に主様の従者です。だからやれません」
「だったらなおのこと私の命令よ! やれって言ってるんだからやってよ!」
言葉を重ねようが、アキラは動かない。
「ああもうっ……じゃあコーラ! あんただって私よりはわかるでしょ!」
「おや、自分がポンコツなのを認める気ですか」
「バカでもポンコツでもなんでもいいから動きなさい! ううう、なんで二人ともそんなに落ちついてるのー!?」
アキラは終始穏やかで、コーラはどこか今の状況を愉しむようにニヤニヤと笑っている。時間に押し潰されてパニック気味なバーバラと違って、どこか物見遊山に来たような振る舞いだった。
無様な姿を晒す主に、コーラはやれやれと肩を竦め、
「わかってませんねー。勇者の従者が勇者より目立ってどうするんですか」
「目立つとかどうとか、そんなのどうでもいいでしょ! 従者が仕事放棄ってどういうこと!?」
「いえ、重要です。それに今のバーバラの指示は命令じゃなく、ただの懇願ですよ。この状況をどうにかしてくださいってね」
「……っ」
言葉に詰まった勇者を見て、コーラは笑みを深めた。
「勇者の従者ってのはね、あくまでサポートなんですよ。勇者のやりたい事を実現に近づける為のお手伝い。なのにポンコツは何をしたいかすら提示しない。それでは動けません」
「リーザスの時は色々やってくれたじゃない! 愚痴を言いながらも、私の思いつかない部分までカバーしてくれた!」
「その時は『ザンスを倒す。やるだけやって駄目なら逃げる』という一つの目標を出していたじゃないですか。今はその目標すら丸投げしている。逃げるか戦うか、もっと別の方法を取るのか……何らかの方針を出してください。それからなら、まあ手伝ってあげてもいいですよ」
「いや、でも……戦争とか全くわかんないし……」
「関係ないですね。重要なのは
「多少はあるけど、でも、ううん……」
バーバラは苦しげに呻きを漏らす。
確かに、ある。細かい方法論は一切無いが、それぐらいは錆びついた頭でも辿り着いている。
つまるところ、戦って勝利を目指すか、逃亡して仕切り直しか、交渉に応じるかだ。そこからの展開は色々あるが、結局最初は三択を選ぶしかない。
「それを言っちゃえばいいんですよ。そしたら私もアキラも動きます」
「でも、それって……間違ってるかもしれないし……」
「主様の選択に間違いなど有り得ませんとも。どうか恐れずにご決断下さい」
「ぐっ……うぅ……」
アキラの声色はいつもと変わらず優しかった。だからこそ、その信頼がバーバラを追い詰める。
視線はせわしなく動き続け、忙しく動き回るヘルマン兵達に注がれている。髪の毛を撫でたり、意味のない呻きを漏らすばかりで次の言葉を発せない。
何かに怯えるような勇者を眺めて、コーラは溜息を吐いた。
「はぁ……はっきり言っちゃいましょうか。命令して自分の責任になるのが怖いんですよね?」
「――――っ!」
「処女を奪われたから許せないって息巻いてたけど、自分だけでは無理だ。だから勝つ為に他の人間の力を借りて、多くの人を巻き込んだ。でも負けそうだから自分のやらかした事に後悔していると、そんなところですか」
違うと言おうとしても次の言葉が出てこない。
つまるところ、バーバラが指示を出せないのは既に失敗としか思えない状況に尽きる。
戦って勝てても、逃げられても数千の命が失われれば意味がない。自分の復讐の代償としては重すぎる。
犠牲が嫌なら降伏という考えも浮かんでしまうのだが、今度は我が身可愛さから言い出せない。
バーバラは、詰んでいた。だから他に助けを求めるしかない。
「ぐ、ぐぅっ……将軍や指揮官に意見を求めて、多数決とかはどう!?」
「それだけはお勧めしません。彼等自身の意思ではなく、東ヘルマン兵という立場と教育から特攻や死守を選ぶことになります。何よりも、主様の意見が無くなってしまうのが問題です」
「あーもう、あんた達はよっぽど私に決めさせたいのね!?」
「ええ、それしか興味がありません。ちなみに時間切れもいいと思いますよ。良いことがあるかもしれませんし」
「冗談言わないでよ、なんでこんな……!」
頭を掻いて、バーバラは苦悩する。
「主様、どうぞなんなりとお申し付けください」
「ポンコツ勇者、いつもの威勢はどうしたんですか?」
自分より優秀な従者に突き上げを喰らい、万の命がかかった決断を迫られている。時間は限られていて、こうしている間にもやれることは少なくなる。
決めなければならない。今ここで決められるのは、自分しかいないのだから。
「わ、私、私は…………」
「たっだいまー! うわー、凄いことになってるね!」
「ひゃあっ!?」
ぱたぱたとメリモが戻って来た。洞窟の奥から姿を出すと、バーバラの元へ駆け寄っていく。
「バーバラちゃん、今どういう状況なの?」
「えっと、四十万の兵で囲んでいるから30分以内に女を寄越せって、私を連れてこいって……」
「うわぁ……お父さん、相変わらず滅茶苦茶だなぁ……」
気まずそうに苦笑いするメリモ。慌ただしく動く兵士の姿や、まだ戦闘が起きてないこととかを確認し、バーバラに向き直る。
「バーバラちゃん、戦いを止めたいんだけど手伝ってくれる?」
「……っへ?」
「私がお父さんになんとか言ってやめさせれば、今ならまだ誰も傷つかないで済むかもしれない。ううん、きっと出来る」
「で、でもそれって私差し出されるんじゃ……!?」
「うーん、そこはお父さん中々譲らなさそうだよねえ。でも何とか、バーバラちゃんにとっても悪くない展開にしてみるよ」
「…………」
「私に任せてくれないかな?」
そう言って、メリモは柔らかい笑みを浮かべた。
バーバラはメリモの在り方に驚いた。ここは数万の命が吹き飛ぶ戦場一歩手前の状態だ。包囲された兵士の怒声や緊張は並々ならぬもので、普通は飲まれてしまう。緊張と恐怖で支配されてもおかしくないのに、メリモは気にした様子がない。
戦場に全く似つかわしくない空気を纏うのが、むしろ物凄く頼もしく見えた。
「……ねえコーラ。私が誰かの意見に丸乗りしたとして、あなたはそれに従うんだよね。勇者の決定にもなるんだから協力するよね」
「そりゃ、そうですがね」
「なら決めた。メリモちゃんに任せる。その方が絶対にいい」
バーバラはメリモの手を取って、頭を下げた。
「お願い。どうなっても恨まないから、なんとか丸く納めて。大変だと思うけど……」
メリモはにっこりと笑って、バーバラを抱き寄せる。
「大丈夫、大丈夫。私は外交官だからこーゆーのは慣れてるの。気にしないで」
ぽんぽんとバーバラの肩を叩くと、後ろからついて来た志津香達へと振り向いた。
「で、結局具体的にどうするつもりなの?」
「交渉するならまずは簡単に説明した方がいいと思う。ディフェンダーの指揮官さんに会って話を通そうかな。時間が無いから全部は無理かもしれないけど、一番偉い人だけは会っておきたいよ」
「丁度良く、ウズメと知り合いの人でござるよ。見た目は堅そうだけど、身内にはふにゃふにゃでござる」
「それなら内緒話が出来ればわかってくれそうだねー」
他の魔王の子達も落ち着いている。会話がスムーズでいつもの調子とあまり変わっていない。
陽気な会話の中でとんとん拍子に話が進み、様々なアイディアが出ている。全てメリモが意見を出しやすい下地を作っているからだ。
「……私が悩む必要なんて無かったじゃない」
「勇者は悩むのが仕事なんですけどね。他人に自分の力を委ねたら、その人の力になってしまう」
コーラが不満を漏らす。人間達に使い走りにされる事が確定したのが気に入らないらしい。
「リセット・カラーはそりゃポンコツよりは出来た人ですが、あれは本質的に魔王の味方ですよ。いざとなったら数千の命の為にバーバラを売りますよ。それでいいんですか?」
「いいの。この方が絶対にいい」
その姿と暖かさを見ていると、何も状況が変わってないのに景色が違って見える。どうして深刻に悩んでいたのかとすら思えてくる。
「バーバラちゃーん、一緒に説得しに行こー!」
「うん、私はここでは言いたい放題だからなんでも使って!」
メリモ・カラーが戻って来て、魔王討伐隊はようやく動き出そうとしていた。
魔軍が布陣する山岳地帯、その頂上でランスがぼやいた。
「うーむ、もう攻撃した方が良い気がしてきたな」
「え、まだ20分ほどしか立っていませんよ!?」
「飽きた。ちんたら待っているなど、やはり俺の性に合わん」
眼下にあるヘルマン軍を見るが、防御に備えるだけでやはり大きな動きはない。
大してこちらは万全の魔軍が指揮できる。山から射撃を撃ち込むもよし。下からじわじわと攻め込むのも良し。どう料理しようかと、指揮官ならば胸が躍るような状況だった。
そういえば、ランスはこれほどの規模の魔軍を指揮したことがない。いざ使えるとなると、一回ぐらいはやっておきたいと思ってしまうのも仕方のないことだった。
「でも、それをしますとミックスちゃんが……」
「っち、わかっとるわ」
ランスは視界の端の方に縛って転がしておいたミックスを見やる。約束を破ったら絶対に許さないとばかりの、敵意に満ちた目で睨み返してきた。
天上天下唯我独尊を地で行くランスだが、流石に自分の娘との関係性の破綻はどうにも面倒臭そうで、結局思い留まってしまう。
ただ、それはそれとして無為に時間を浪費させる相手には腹が立つものだ。
ランスは端のほうで跪く魔物将軍に指示を飛ばすことにした。
「……おい、そこのなんつったか」
「はっ、魔物将軍のライトハンドでございます!」
「うむ、ライトなんちゃらに命令を授ける。心して聞くように」
「ははぁっ!」
都合何十度目かわからぬやり取りなのに、感激して頭を下げるライトハンド。
「俺は勇者に慈悲を与えたつもりだが、ちっとも返事がない。こりゃノロマかアホかのどっちかだ。ノロマは時間切れになるが、アホは教育してやる必要がある」
「とすると、どのような教育を与えればよろしいのでしょうか?」
「降伏に来た奴が美女以外だったら吹き飛ばせ」
意地の悪い笑みを浮かべて、ランスは言葉を続ける。
「俺様が欲しいのは美女だけだ。あとは誰が死のうが構わん。なるだけ派手にやるんだな」
「では飛行魔物兵の信号弾絨毯爆撃というのは如何でしょうか。威力は高くありませんが、地上に生まれる花火という感じで遠くからも良く見えます」
「おお、じゃあそれで……いや、待て」
許可を出そうとしたところで、ランスの頭の中に一つの疑念が生まれた。
「お前、美女の意味がわかってるか? 俺様の好みの女のことだからな。誤爆をしたら許さんぞ」
魔物に人間の美醜がわかるかという問題だ。
人間と魔物はあまりに体のつくりが違いすぎる。悪戯目的で自分のモノになるべき女を挽肉にされたら、たまったものではない。
しかしそんな懸念は杞憂とばかりに、迷いの無い答えが返ってきた。
「魔王様の好みは14歳から29歳だと伺っております。例外として魔人の方々のような見た目が衰えない者もまた対象。熟女は好みではありませんが、気分次第で30、40代に手を出すこともある。ただし、老婆と言えるような肌の状態の者は対象ではない。以上のような規準でマージンを取って爆撃しますが、よろしいでしょうか?」
「…………お、おう。それでいいぞ」
魔王狂信者のライトハンドは、当人が引くぐらいランスについて詳しかった。
許可を出したら後は早い。魔物部隊の長所は連携が取りやすいのが長所であり、魔物将軍から魔物隊長、魔物隊長から配下の各員へと瞬く間に指示は広がっていく。
編隊の飛行部隊は周囲を探索する軌道から、山を登る不届き者を爆撃する軌道に切り替わった。
「準備、完了致しました」
「花火、花火♪」
「後5分だ。さーて、どうなるか」
準備完了の報を聞き、ランスとエールはある一点を眺めていた。まともに山を登るならばここしかないという山道だ。見晴らしも良く、双方の兵士が上と下で距離を取って睨み合っている地点である。
時間切れならばこちらから魔物兵が駆け下りる事になる。視線を移したと同時、人の波に動きがあった。
まず見えるのは白旗だった。人の波をかき分けて、白旗が前進してくる。
「お、降参か。本当のアホじゃなかったみたいだな」
「地上の花火見たいなー。美女じゃないといいなー」
ただ、前に出ても、前に出てもその者の姿が見えない。背の高いヘルマン人達の陰に隠れて姿が確認できない。兵士の視線も下を向いている。
そうして、遂に旗手が兵士の波を抜けて、山道に出た。
「………………は?」
ランスは自分の目を疑った。
白旗を持った旗手は、赤子とそう変わらぬ矮躯、青い髪と瞳、さらには額のクリスタル。
「……お姉ちゃん?」
魔王の子達の長女、リセット・カラーそのものであった。
小さい体を懸命に動かして旗をなんとか支え、山道を登っていく。
見た目には良く運べるなと信じられない構図だったが、そこは魔王の子。自分の身の丈の5倍以上はある旗を振りながら上へと走って登る。
「いや、なんで、なんでリセットがいるんだ……?」
あまりの事に、自分の娘が敵地にいる事実に、暫しランスは呆けていた。
だから、反応が遅れた。
「一斉攻撃開始!! 放て!」
「ばっ……!」
傍らの魔物将軍が指示を飛ばし、それと共に飛行魔物兵が急降下。あっという間にリセットとの距離が縮まっていく。
「降参でーす! 交渉しましょ-う! え……?」
「「喰らえっ!!」」
「――――!」
多数の飛行魔物兵による魔軍信号弾が、リセットのいる地を襲った。
閃光が次々と瞬き、世界を白く染める。
後に大爆発、煙が周囲を包んですぐに何も見えなくなってしまった。
「第二次攻撃用意! 次はもっと派手なのになりますぞ!」
「やめろぉ! 全軍攻撃停----止! 今すぐだ!」
「お、お姉ちゃーーーーーーーーーーん!!!」
「ええっ!?」
鬼気迫る表情で、ランスは魔物将軍に食って掛かった。
「どういうことだ貴様! 何故攻撃した!」
「今のは赤子当然なので、魔王様のお相手は務まらないと判断し攻撃致しました。何かマズかったでしょうか?」
「貴様の目は節穴か! あれは絶対、絶ーーーーっ対とびっきりの美女になるんだぞ! どうしてそれが判断出来ない!」
「あ、あああああああああ……! 私が間違っておりました!」
ランスの剣幕を見て、魔物将軍は自身の過ちを悟って土下座した。
「も、申し訳ございませんでしたあ! 我々魔物では人間の美醜感覚がまだ少し疎かったかもしれません! これから魔王様の好みは90cmぐらいの幼女も含まれると皆に良く言い聞かせます!」
「そういう事ではないわぁ!」
「ぶごっ!」
ランスは魔物将軍を踏みつぶして黙らせる。
びくびくと魔物将軍が痙攣しているが、そんな事はどうでもいい。愛娘が魔軍の集中砲火を受けた方がよっぽど一大事だ。
「とにかく、まずリセットだ! どうなった!?」
「わかんない!」
閃光の直前、危険を察知してリセットも飛んでいた。ただ軌道を追おうとしても近くで輝く光量が圧倒的過ぎて何も見えなくなってしまった。
「とにかく、リセットが無事かどうか確かめるぞ! その後……!?」
そう指示を出そうとした時、ランスは『何か』が来ると勘で感じ取った。上方を見上げると、物凄い勢いで廻る高速飛翔物体が来ている。
「うおおっ…………!?」
身体全体で柔らかく受け止める。威力を殺す為に自分も飛んで物体に合わせる。威力があるために崖の後ろに飛び降りるが関係ない。岩壁を蹴り上げて後ろへと進む。
何度も跳び退り、じっくりと勢いを殺してからランスは止まった。
「あう、あうあう…………」
ランスの腕の中には、目を回したリセットがいた。
服に埃が付着したり、音と光を至近距離で受けたせいで
「ふぃー……危なかった。肝を冷やしたぞ」
ぎゅっと腕の中の命を抱え、ランスは嘆息する。エールもすぐに気が付いたらしく、駆け寄ってきた。
「ランス、お姉ちゃん大丈夫だった!?」
「気絶しとるが、まあ多分無事だ。とりあえずミックスに診て貰うか」
「あ、今ので怒られるし、面倒臭いことになりそうな気がするけど……」
「構わん構わん。一旦戦争もやめだ。興が削がれたわ」
リセットは東ヘルマン側についていた。起きる前に潰したら後で何を言われるかわからない。そんな考えすらランスの頭の片隅にあった。普段の鬼畜戦士に比べたらよわよわである。
「しかしこいつもまあ、こんな状況で良く寝れるな……」
気絶のついでの走馬燈か、リセットは夢をみているらしい。何の夢かわからないが、幸せそうだ。だらしなく顔は緩んでいて、安心しきって力が抜けている。
「おとーさん、えへへ…………」
「……………………」
後ろのエールにわからないように、ちょっとだけぎゅっとして。
ランスは慎重に山を登り始めた。
リセット・カラーの幸運。
本二次創作最弱だが基本的に傷つかない。避けるし当たらないしまともに直撃しない。
ただし行動不能になる。攻撃面での本人の幸運補正は働かず、防御極振り。
エールのズルもあり、勇者特性めいている。まあ無敵ではないが……
命にかかわりそうな攻撃喰らう代わりに気絶する感じ
難産。
次はもうちょいペース上げます……
感想は明日にする感じで行きます。すいません。