一方、その頃――――新たな騒乱のきっかけが生まれていた。
東ヘルマン、ゴーラク北に存在する名も無き山岳地帯。
全世界から反ランスの人間が集まり、人口が大きく増えて栄えた東ヘルマン。だが、法の網が届かないところはある。この山々はそんな辺境の土地であり、大した意味の無い地域だ。
そういう場所こそ、ならず者が集まる治安の悪いところになる。その中でも、最も有力な盗賊団達が集う洞窟があり、周辺の村落に対して、軍隊のような戦力を背景に威張り散らしていた。
――――しかし、今はもうその面影がない。五百人以上が集う盗賊の拠点は、4人、ないしは3人と一匹の集団によって壊滅させられていた。
数多の冒険者用に張られた罠、効率的な守りやすい配置、頼りになる腕利き達。全てを正面から踏み潰され、暴風のような破壊と暴虐を味わい……盗賊団の頭目達は、揃って縛られていた。
「絶世の美女はどこだ! お前の娘は良かったが、俺様が探しているのはハーレムだ。ネオ桃源郷はどこにある?」
口のでかい、緑色の服に鎧を着込んだ冒険者が、盗賊団のボスである壮年の男に詰問する。レス盗賊団の頭領は、呆れつつも間抜けな冒険者にささやかな仕返しをする事にした。
「ネオ桃源郷というのは、儂らが流した真っ赤な嘘でさぁ。ここは何の変哲もない洞窟ですぜ。本当に信じてここまで来たのは、あんたらぐらいですなぁ」
「死ねーっ!」
「ぎゃああああああああああああ!」
盗賊団の総頭領、マット・レスは死んだ。
「ほら、やっぱり自由都市の桃源郷の方が当たりだったってー!」
「ボクもそう思ってたー。大陸の崖から落ちた先にある秘境って、具体的だったし」
「だよなー!? 俺が聞いていた話の方がそれっぽかったよな!」
「だよねー、本物っぽいよねー。あーあ、無駄足になっちゃったなー」
「ぐ、ぬぬぬ……プリンスタイルの情報屋め。適当な情報渡しおって……」
茶髪の少女、エールとその相棒である長田は、あからさまにリーダーを責めていた。
この冒険者達は桃源郷、そこにあるという男の夢、ハーレムを求めた集団だ。手がかりを探す中で、ヘルマンと自由都市、二つの情報があった。エールの父親は美女も新しい方が良いに違いないと言って、ネオ桃源郷を選択した。だが、進めど進めど盗賊と鉢合わせるだけ。最奥まで踏み込んで探しても、ハーレムなど影も形もなかった。
「つまんなーい。盗賊団じゃボク達に勝てるわけないし、さっさと他いかない?」
結果、こうして父親の威厳は形無しになり、エールにニヤニヤと弄られていた。エールは、他人を弄るのが好きな悪戯娘だ。今もこうして、父親に貝を乗せている。
「……って、からから貝じゃないか! どこで見つけた!?」
「そのへん。あげるよー、もっと状態良いの持ってるし」
「む、むむむ……素晴らしい。素晴らしい、が……いかん……」
リーダーにとっての収穫が盗賊の娘と、からから貝に増えた。だが、エール達には何もない。大見栄切った手前、得したのが自分だけとなっては形無しだった。
「残念でしたね。幸いにも候補はもう一つある事ですし、エールちゃんが言うように、そちらに向かいましょうか……」
冒険者の奴隷、絶対服従の奴隷であるべきシィルまで追従した事で、冒険者は絶対にそっちに行くものかという意地が生まれた。
「いや、俺様の勘は常に正しい。だからこっちで正解だ。正解にしてみせる」
「はぁ? つまりどうするんだよ。ここにはもう何もないだろー!」
「うむ、まずここを足掛かりにするのだ。それで、それで……」
とりあえず今までの行動が無駄にならない方針を探す内に、一つのアイデアを思いつく。
「……おお、俺の明晰な頭脳は素晴らしい答えに辿り着いたぞ。ネオ桃源郷、無ければ作ってしまえばいい。そうすれば最初に辿り着いた俺様が独り占めしたという真実になる!」
「つまり、ここにハーレムを作るということでしょうか?」
「うむ。そうだ」
「いや無理だって。たくさんの女の子養うのどうするんだよ!? 俺達4人だけじゃとてもとても……」
「手頃な雑魚がそこそこいたではないか。こいつらをハーレムの為の奴隷にしてこき使おう」
「雑魚って……盗賊達?」
そうして、冒険者は縛られた盗賊達に向き直ると死体に剣を向けて問いかけた。
「おい、この死体の次に偉い奴はどれだ? 遅いと殺す」
「頭領の息子の俺、バウンドです。副長をしていました」
盗賊達の中から、茶髪の若い男が即座に口を開いた。
「よし、お前は盗賊共をまとめて俺様に従え。出来なければ殺す。そして同じ質問を次の奴に繰り返すぞ」
「……次のお頭があなたという事ですか?」
「おう、そういうことでもいい。とにかく雑用をする奴が欲しい」
ちらりと自分の隣のもう一人の副長を見ると、顔面蒼白になって涙を流していた。バウンドの目線に気づき、縋るような目で見返して、頭をぶんぶんと横に振る。
普段鼻持ちならない奴がこの有様では、自分がやるしかなかった。なによりも、妹の事が気になる。縛られた中で精一杯頭を下げて、バウンドは冒険者に服従を誓う。
「……わかりました。命を賭けて、お頭の為に働かせて頂きます。これからよろしくお願いします」
「うむ、よろしい。他の奴等も従うか? まぁ死ぬか生きるかだが」
それに続くように、他の盗賊の頭目達も次々と服従の言葉を続ける。弱肉強食の世界において、圧倒的な力とはそれだけで頂点に立つだけの権利を有する。
強引だが鮮やかな手並みで盗賊達を配下に置いた冒険者の手筋に、エールと長田君は呆気にとられた。
「潰した盗賊団のボスになりやがった……お前の父ちゃん、本当に滅茶苦茶だな」
「うん。……でもこれはこれで面白そう!」
「この流れでなんでテンション上がってんの……やっぱりエールもおかしいよ!逃げようぜ?」
「えー、盗賊はやった事ないからやってみたい。何事もやってみるものだって母さんが言ってた」
「あの人物事の良し悪し教えなかったのー!?」
漫才を始めている二人を放置して、着々と冒険者は自分が盗賊の頭になる準備を進めていく。生き残っていた山賊を蹴り起こし、あるいはトドメを刺して一つのところに集めていく。
やがて、半壊した――200名程の集団となった盗賊団は、土下座で冒険者達を迎えた。
「ちゅうもーく! 今日から貴様等の主が変わった。俺様だ! で、横にいる奴等は俺様のものだ。手を出したら殺す。逆らったら殺す。頭目共は部下が逃げたら殺す」
次の頭領は、絶望的な暴君だった。魔物界でもここまで横暴な縦社会はないであろう絶対遵守の規則を定めていく。
「貴様等は俺様のハーレムを作る為の奴隷だ。可愛い女の子は全て俺様のもの、美女を見つけても先に手を出したら絶対に殺す。略奪とかは勝手にしろ」
既に声を発する元気もないまま、盗賊達は新しい主達を仰ぐ。彼等の圧倒的な戦闘力はほとんど全員が目にしており、死んだ目で現状を受け入れていた。
「この盗賊団の名前も変える。自分から俺様のハーレムに加わりたくようなものにするのだ。この盗賊団は今日からランス団と名乗れ! 以上、解散してよーし」
(どこかで聞いた気がする……)
ぞろぞろと、力なく盗賊達が去っていく。バウンドは必死に、部下の盗賊達をまとめようと走り回っている。頭目達も死にたくないがために、それぞれが団結、連帯して様々な知恵を出し合う。圧倒的な恐怖は人をまとめる。以前より遥かに堅い鉄の組織が生まれようとしていた。
奴隷達が自分から便利な手足になろうと努力する姿を見て、冒険者は満足そうにシィル達に語りかけた。
「俺様の華麗な掌握術を見たか? 見事だっただろう!」
「は、はい。見ていました……」
「そうだ。ハーレムというのは他人に用意されるものではない。自分で築き上げるものなのだ。それをこれからお前らに見せてやろう」
「今言ってることだけはまともに聞こえるけど、他全部滅茶苦茶だろ……あんっ」
遂に長田が冒険者に割られた。慣れた調子でエールがセロテープを取り出して駆け寄っていく。割るのも一番多いが、治すのも一番多い。これが二人のスキンシップらしい。
「やるべき事は決まったな。盗賊共をこき使って美女を集めてハーレム作成。うむ、素晴らしい。ここから今回の俺様の冒険が始まるのだ。シィル、エール、ついてこいよ! がはははははは!」
「レンジャーだし、盗賊稼業も頑張るよ!えいえいおー!」
「あはは…………」
「盗賊団かぁ……マジかよ……マジかよ……」
目をキラキラと輝かせて、次の遊びを楽しもうとするエール。こうなったら止めようとしても止まらない事を悟っているシィル。盗賊団に堕ちた事に茫然とする長田。三者三様の在り方をもって、リーダーの判断を眺めていた。
馬鹿笑いをする冒険者の名はランス。数週間前までは全魔物の絶対支配者、魔王だった。
勇者フェイズ
RA15年8月前半(0ターン)終了
メインプレイヤー総数 2億0980万0000人
人類死亡率 30%
逡巡モード 人類30%死滅で発動、魔人を殺せる力
あはははははは! この剣と勇者って凄いよ。今ならなんでも出来る気がする!
魔王や魔人なんてどうでもいい。危ない橋を渡る必要はないでしょ?
私の冒険者活動はここからが本番だー! まずは、盗賊退治とか気楽なのをやりたいな。
新勇者バーバラ 所持技能 剣1、魔法1、『不幸1』
2部終了後の世界で鬼畜盗賊王ランス+東ヘルマン+魔王の子大集合+新勇者視点が本作品のコンセプトです。
エール・モフス(レンジャー)
織音展(前半)より
織音展では4人のエールが出演しており、それぞれに職業が書かれている。
男はヒーラーとガード。女はレンジャーとガードとなっている。
レンジャーエールは冒険者舐めてるような装備をしているように見えるが、羽織っているものはレディチャレンジャーという女性用冒険服であり、冒険者でもおいそれと手を出せない高価な装備。(ランス9、クルックーの装備説明より)
もっとも、クルックーがしていた本来の着方を考えると、明らかにサイズが合ってない上に着崩している。
デザイン、色合いも微妙に違う事から新品なのだろうが、身長が伸びても着れるようにかなり大きめのものを買うあたり、前代法王に比べてそこまで裕福ではないかもしれない。
『最終年』であるのにも関わらず、その後の事を考えた服を用意するのは、母のエールに対する深い愛情が感じられる一品。
全てを受け入れますと言っていても、本心では娘に戻って来て欲しいと思っていたのだろう。
長田君 lv30
ハニー、エールのソウルフレンド兼ベストフレンド。ノリが良く、ただし善悪や常識ははっきりしている。ランスにとってのシィルであるように、エールにとってのアクセル兼ブレーキ役でもある。
ただし、エール自身がはっちゃける為に、ブレーキ役としてはあまり役目を果たしていない。
三人称視点では君はつけられない為に違和感が凄い。
シィル lv80
ランスの奴隷。
レベルが高いのは、ケイブリスとの決戦時の状態が残って氷漬けで止まったせい。レベルは魂依存らしい。歴代女王がパステルの憑依時のカードを見ればわかるが変動する。
実はランスの事が好き。盗み聞きの魔女、クレインが知っている秘密。
ランス lv400
この世界の3人の主人公の一人、奴隷のシィルと共に冒険中。
新しいハーレムを作る為に、絶世の美女を求めて桃源郷を探していた。
セックスの為にはなんでもするし、なんでもやる。
今回は盗賊の頭として、女を求めて暴れまわる。
プロローグ RA15年8月上旬はこれで終わりです。
この物語は、ランスX,ハニホンX、『1.01からの???』までしっちゃかめっちゃで作られたものになります。拙い文章ですが、自分なりにランスシリーズの愛、あるいは末期の禁断症状を詰めたものです。なんとか良くしていこうと頑張りますので、誤字脱字、批評等も歓迎です。
オリ要素はたっぷりぶち込んでますが、それは自分が追加して欲しい要素をぶち込みまくった、かつぶち込まれるとしたらこういうのだろうなぁというものです。つまり、おふざけと10マグナム(あってくれー頼むよー)に対するガチ予想が混じってます。
例えば今回のエスクードソードに対する設定については、原作の文章表現におけるトリックから予想したものです。ゲイマルクが消滅して勇者システムが終わったように思われますが、肝心のエスクードソードについての記述は本当にありません。
そしてゲイマルクの消滅はエールの選択であって、分岐のない一本道。つまりどちらでも新勇者が発生するように構成されているとも考えられるのです。
あの剣と、従者がいる限り勇者が新しく発生する可能性は大いにあります。勿論、数多の予想の中で数打てば当たる的な予想ではありますが……当たって欲しい。
だって勇者も犯したいじゃないですか、魔王も魔人も法王も王女も皇帝もやってますから職業的にコンプリートなら外せません。ランス様ならやってくれる。
次章 TURN1 RA15年8月後半