そして.....
『それともお前、あいつに惚れたか?』
あの時のグレンの言葉を思い出す。
「いやぁまさかぁ....」
柊シノアは、自室のベッドで毛布に包まり、自分の疑いに目を細めた。
「私は...」
ただ、必要とされたから。
「優....さん....」
ただ、貴方に、必要とされたから....。
「.......ん......」
・・・・・・・
『終わりのセラフ 柊シノア』
・・・・・・・
「おい!シノア!」
「っ!?あ〜、はい。お疲れ様です。優さん」
急に名前を呼ばれて慌てて振り向く。そこには吸血鬼を倒し終えて、少し疲れている百夜優一郎がいた。シノアは動揺を悟られぬように平常心を保って見せた。
「お疲れ様、優くん。敵、多かったね」
「っは、そんなにバテるくらいだったか?」
と、その後ろからは愉快な仲間たち。
「うるせぇな、お前よりは倒したよ。君月」
「なに言ってんだ、さっき追い込まれかけてたくせによ」
「あぁ?ンだと?」
「やんのかゴルァ?」
「どうします?与一さん」
「もう、止めるのも面倒だなぁ〜」
二人の間に火花が散る。ように見えるシノアと与一は苦笑を漏らした。
「お前達はまた飽きもせずにな」
呆れ顔で三葉もやって来た。
「みっちゃん。お二人聞いてませんよ」
「こらぁ!こんな所で喧嘩するな!」
シノアがため息をついて手を二回大きく叩く。二人は喧嘩はピタリと止め、武器を収めた。
「はいはい、皆さ〜ん。さっさと基地へ戻りますよ。任務終了の報告へ」
・・・・・・・
「今回は大分楽な任務だったな」
「うん。これくらいなら続けられそうかも」
シノアの前を歩く優と与一が話している。確かに今回の任務はシノアも疑問を抱いていた。あんまりにも簡単すぎるからだった。グレンから直々に貰った任務だったが周辺地域のパトロールなんて任務は意外だった。まぁ、今回はそれは無いだろうと、踏み。シノアは考えるのをやめた。すると...
「ん?」
「わ、降ってきた」
雨だ。
雲行きを見る限り怪しかったが、本当に降ってきてしまった。このまま走って、という訳にはいかなかった。まだ基地まではそれなりに距離がある。
「ひとまず、どこかでやり過ごしますか」
と、君月と三葉に促すと二人も頷いた。
・・・・・・・
「まだ、止みそうにありませんね」
「さっきより強くなってないか?」
タオルで髪を拭きながらシノアと三葉は言う。
とりあえず近くにホテルがあったのでそこでやり過ごす事にした。
「しかし、このホテルはなんでこんなに綺麗に残ってるんだ?」
「ん〜、多分吸血鬼達も利用してるんじゃないですかね?」
「アイツらってホテル使うのか?」
「あはは....」
ジト目で、答える三葉にシノアは苦笑を漏らした。
「おーい。見張り交代だぞ」
と、そこに優がやって来た。こんな時に吸血鬼が来ても困るので、念の為に交代で見張りをつける事にしていた。
「あぁ、今行く。って君月と与一はどうした?」
「ん?あ〜、なんかもう少し見張るっつってまだ持ち場に着いてる。俺は悪いが疲れたから休ませてもらうわ」
「そうか、なら、私が優の持ち場に行こう」
三葉はそう言って立ち上がった。
「あ、みっちゃん。なら私も.....」
「いや、シノアは昨日も今日も働き詰めだろう?今は休んでおけ」
「みっちゃん.....」
「私は大丈夫だ」
じゃあな、と言って三葉は出ていった。
・・・・・・・
「おぉ、三葉。来たか」
「あぁ、これからは極秘任務を開始する」
「え?何それ」
「与一お前には伝えていなかったな。今日我々はッッ!!『シノアと優見守り隊』を結成したッッ!!」
「ッ...////」(こくり)
「ええ〜......何やってんの二人とも......」
・・・・・・・
「あ〜あ、ホントに寝ちゃった」
三葉が行ってすぐに優は寝てしまった。
「優さんの寝顔って結構見てきたけど静かにしてればイケメンなんだけどなぁ....」
壁に背を預けて寝ている優の頬を何度か指でつつく。シノアも休めと言われたが、別にそんなに疲れている訳ではなかった。ただ二日、三日徹夜しただけだ。徹夜と言っても仮眠はとってあるし、そんなに問題ではなかった。
「あ...優さん、首怪我してる」
寝ている優で遊んでいると、首筋に切り傷を見つけた。
少し血が滲んでいる。痛そうだなぁ、と呑気に見ている内に前にシノアも吸血鬼に噛まれた傷の心配をされた事を思い出した。
「・・・・・・・」
あの時の優に触れてもらった首の部分を自分でなぞる様に触れる。あのドキドキは何だったんだろうか。
「やっぱり、貴方を好きになってしまったんですかね。優さん」
優の顔を見つめていると、自然と体が引き込まれるかのように優に近づいて行く。その距離はもう、キスのように近くなっている。
「優...さ〜ん?起きないと超絶美少女のシノアちゃんがキスしちゃいますよ〜?」
顔も赤い。心音が大きくなってきて鳴り止まない。
優の右手に自分の右手の指を絡ませ、徐々に優に迫っていく。唇と唇が触れ合おうとしたその瞬間.....
「ん....あ?何やってんだ?お前」
「え......あ.....」
優が目覚めてしまった。
続く・・・・・・
「うっがぁぁぁぁ!なんでそこで起きるんだよ!コンノバカ優!!」
「ホントに空気読めねぇやつだよな。あいつ」
「なんで、仕掛けたカメラが見つかってないんだろう.....ってか。なんで二人は当たり前の様に二人を観察してるの?」