非エロです。
書いているうちに頭おかしなったで。
「さぁ!今日の執務も終わった!!飯でも食おうか?」
時刻は19時をちょうど回ったところだ。夕食でも一緒にどうかと秘書艦に声を掛ける。
「いえ、結構です。先約がありますので…」
「おお!そうか!なら仕方ないな、ご苦労様!」
「いえ。それでは失礼します」
そう言って今日の秘書艦は足早に執務室から出ていってしまった。
「さてと、俺も飯食いに食堂へ行くか…」
俺がこの鎮守府に着任して数年が経った。執務にも大分慣れ、今日も何事なく一日が終わりそうだ。まだ19時過ぎだが…。
幸い俺が着任してから、この鎮守府が壊滅状態になったり、艦娘が轟沈したりということは一度もなかった。
それだけここの艦娘たちは優秀なのだろう。
だから、俺もここで指揮を執ることに不満はない……。
「うわ、提督だ。本当に勘弁して~」ヒソヒソ
「暑苦しいんだよね~あの人」ヒソヒソ
「夏場とか秘書艦やるの拷問じゃない?」ヒソヒソ
「言えてる~」ヒソヒソ
「あ~冬場なのに暑いわ~。クーラーつけよ~」ヒソヒソ
「聞こえるよ!」ヒソヒソ
うーむ、一つ不満…というか解決しないといけない問題がある。まあ原因は俺にあるのだが。
俺は昔から暑苦しかった。熱血漢、側にくるな暑苦しいと言われたことは数知れず。
だが、自分で言うのもなんだが、決して無理を通そうとする根性論者ではないはずなんだ!その証拠に轟沈者は未だかつていないし、俺は中破撤退賛成派だ!
だが、訓練や演習で手を抜くことは絶対にさせなかった。それこそキツイ言い方をしてしまったことは何度か…いやほとんどキツかったかもしれない。
しかし、訓練や演習は後々彼女たちを助けることになる。実戦は訓練や演習ほど生温くない。下手をしたら命を落とすかもしれない。だから、気を抜かないで欲しかった。
だが、どうやらそれは俺の独り善がりだったようだ。
艦娘たちは俺みたいな雑草魂は敬遠したいらしく、執務以外ではほとんど話をすることはない。業務連絡のみ。
俺はそれが嫌だった。それこそ俺の我が儘だが、仲良くしたかったんだ、艦娘たちと。
平和が続くと忘れてしまいがちだが、ここは戦場だ。いつこの平穏がなくなってもおかしくない。だからこそ、この平穏な毎日を艦娘たちと大切にしたかった。
俺はお正月会、豆まき大会、スイカ割り大会、ハロウィンパーティー、クリスマスパーティー、年末の大掃除(これは違うか?)など、様々なイベントを開催した。
艦娘たちと楽しい時間を過ごしたかったから。だが、参加者は誰一人居なかった。
艦娘たちの嫌悪感に溢れた視線に居たたまれなかったが、せっかくの飯の時間だ。食堂の隅の方に座って、手を合わせる。近くにいた艦娘たちが別の座席に移動していったが、気にしない………気にするもんか。
それでも。それでもいつか仲良くすることが……。
Graf「今日の秘書艦はこのGraf Zeppelinだ。よろしく頼む」
「ああ!よろしく頼む!!!」
Grafか…。確か彼女はドイツの航空母艦だったな。ドイツ語はさっぱりだが。
「グ、グラーフ。最近はどうだ?」
Graf「どう、とは?」
「いや、任務外で何をしているのか少し気になってな…」
Graf「……それは教えなければならないことなのか?」
「そ、そんなつもりで言ったのではない。ただ、少し話でもと…」
Graf「…執務に関係がないのなら、控えてほしいものだな」
「あぁ…すまない…」
はぁ、グラーフは艦娘の中でもかなり取っ付きにくい。
だが……。
正直、彼女は今日が秘書艦初なはずなのだが、書類を流れるように処理している。
とても優秀で美しい。所謂、完璧そのものだな。それ故、彼女を慕う艦娘は多いのだ。彼女が大勢の艦娘に囲まれている姿を何度か見ているしな。
俺自身、彼女がいたお陰で何度か窮地を救われている。
そんなことを考えながら彼女をチラッと見る。
Graf「……なんだ?」
「す、すまない。あまりに集中していたんで、つい」
Graf「…上官である貴方にこんなことを言うのもなんだが、先程から手が止まっているぞ」
「そ、そうだな…す、すまん」
Graf「……貴官はなんのためにここにいるのだ?」ボソッ
うぐっ!そ、その通りだ…。まずは執務が先だよな。
執務が落ち着いたら話してみるか……。
「ふぅ、そろそろキリがいい。お昼でもどうだ?」
Graf「そうだな」
「何を食べようか?」
Graf「一緒に食べるのか?」
「あ、ああ…そのつもりだが…嫌か?」
Graf「……構わない。食堂へ行くのだろう?我も同席しよう」
「!! お、おお!よし!すぐ行こう!!」
なっ!?グラーフが応じた!?今まで秘書艦を飯に誘っても絶対断られていたのに…。
俺は舞い上がってしまった。
「よーし、食うぞー!!!」
Graf「…急に大きな声を出さないでくれ」
「す、すまん」
食堂に着いた俺たちはとりあえず今日のオススメ定食を頼んだ。待っている間、周りの艦娘たちがGrafに話し掛ける。
「グラーフさん!一緒にご飯どうですか??」
「グラーフさーん、私たちともご飯食べてくださーい」
グラーフの周りを黄色い声が飛び交っている。すごい人気だな。
Graf「すまないな、先約がいるんだ」
えぇーーという落胆の声があちらこちらから聞こえる。
「誰と食べるんですかー??」
Graf「Admiralだ」
その一言で周りの温度が一気に冷えたように感じた。
「えぇ」ヒソヒソ
「なんでグラーフさんが?」ヒソヒソ
「シッー!提督近くにいるから聞こえるよ!?」ヒソヒソ
「なんかの間違いじゃない?」ヒソヒソ
くっ!艦娘たちがすごい顔で俺の方を見ている。ここは、残念だが……。
「グ、グラーフ。せっかくだが、他の娘が一緒に食べたいようだぞ?俺のことはいいから一緒に食べてこい。食べ終わったら執務室に…」
Graf「何故だ?先に約束したのはAdmiralだろ?それとも他の娘も交えて一緒に食べるのか?」
「い、いや。俺はいい」
Graf「? 意味が分からんな…」
「いいんだって!!」
俺はつい大きな声を出してしまった。グラーフが目を丸くしてこちらを見ている。うぅ。
「と、とにかく!グラーフはゆっくり食べて、終わったら執務室に来てくれ。以上だ!」
俺は逃げるようにその場を離れ、食堂の隅の方に座った。我ながら恥ずかしいことだ。怒鳴ってしまうなんて……。
「何あれー」ヒソヒソ
「逆ギレ?」ヒソヒソ
「サイテー」ヒソヒソ
「大丈夫ですか?グラーフさん」
Graf「大丈夫だ」
「グラーフさん、よかったら一緒に食べません?提督も行ってしまいましたし…」
Graf「いや、悪いが先約はAdmiralなのでな。また誘ってくれ」
そう言って定食を受けとると、Grafは提督のいるテーブルの方へ向かっていった。
「・・・」
Graf「・・・」
「他の娘はどうした?」
Graf「断った」
「そうか…」
俺は内心とても嬉しかった。Grafが約束を守ってくれたのも、もちろん嬉しかったが、誰かと一緒に飯を食べられるのがとても嬉しかった。
Graf「むぅ…」
「どうした?」
Graf「いや、なんでもない」
見るとGrafがぎこちない手付きで箸を持ち、ご飯を口に運んでいる。ああ、なるほど…。
「スプーンかフォーク持ってくるか?」
Graf「大丈夫だ。やってみたいんだ」
そう言うグラーフの顔は真剣で、本当に美しかった。色白の肌の中に、瞳の色が映えている。
よくよく見ていると、箸を持つ手が少し震えているようだが、懸命に使いこなそうとしていて、そして、なんとか口に運んだ時、凛とした顔が少しほころぶのがとても綺麗だった。
容姿端麗な娘は他にもたくさんいるが、グラーフのそれは最上といえるものだ。
俺は彼女に釘付けになってしまった。
Graf「なんだ?」
「お、おお!すまん!つい見とれてしまって…」
Graf「何を言っているんだ、貴官は?」
照れも見せず、静かに目を閉じ食事を味わっているグラーフ。さすがに冷静なものだ。女神というのは彼女のようなものを指すのかもしれないな。
俺はグラーフに見とれつつも、箸を進め、俺が食べ終わってからしばらく経った頃にグラーフも食べ終わり、執務室へ戻った。
時刻は17頃。
「今日はありがとう!ご苦労様!」
Graf「お役にたてたのなら何よりだ」
「またよろしく頼むな」
Graf「了解した」
あ、そういえば…。
「どうして今日グラーフは秘書艦を引き受けてくれたんだ?」
というのは、元々うちの秘書艦制度は任意制だったのだが、あまりに誰もやろうとしないので、各部隊で話し合いをしてもらい、この日にはこの娘が秘書艦という感じで分担して今までやってもらっていた。
だが、各部隊の主力艦は任務を言い訳に秘書艦を逃れようとする娘が多く、大体非番の娘や練度の低い娘が嫌々秘書艦をやることが常だった。
なので不思議だったのだ。グラーフのような主力艦が秘書艦を引き受けたのが。
Graf「ああ、我もやってみたかったのだ、秘書艦というものを。ただ、なかなか機会に恵まれなくてな。だが、今回はまだ秘書艦が決まっていないということだったので、立候補したのだ」
「そ、そうか…」
Graf「では、Admiral。今日は楽しかった。ありがとう。Dank」
「ま、待ってくれ!」
Graf「どうした?」
今日初めて彼女が秘書艦としてこの執務室に来た時にはなかった彼女の穏やかな顔が俺を見ている。
「ま、また秘書艦をやってくれ…。そ、それに俺もとっても楽しかった。ありがとう!!」
Graf「うむ、了解だ!」
彼女はそう言うと、初めて優しそうな笑顔を見せてくれた。先程の穏やかな顔よりもさらに柔らかいそれは、時が経つのを忘れさせるほどのものであった。
彼女が部屋に戻った後、俺は自分の胸の鼓動がいつもより早いことに気付き、しばらく黙っていた。
それからというもの、グラーフは何度も秘書艦として執務室を訪れてくれた。グラーフは執務中は厳しい表情をしているが、一度休憩になると柔和な顔を見せ、話もちゃんと聞いてくれている。
最近はグラーフの方からも色々と話してくれるようになった。
…前は気付かなかったが、きっとグラーフは何事にも真剣で真面目なのだろう。冷たいように感じるのは、執務など任務に集中しているだけで、本来の彼女は、今のように、慣れない手付きで箸を握りながら、はにかむ彼女なのかもしれない。
俺は意を決して、彼女に尋ねてみた。
「なぁ、グラーフ」
Graf「どうした、Admiral?」
「次の非番の時、俺に少し付き合ってくれないか?見せたいものがあって…」
正直、任務以外のことなので断られるのを覚悟していたが…。
Graf「構わないぞ?どこかへ出掛けるのか?」
俺は耳を疑った。しばらく黙ってしまって、グラーフも不思議そうにこちらを見ていたが、ハッと我に帰る。
「ほ、本当にいいのか?」
Graf「ああ。特に予定もないしな」
俺は、にやけそうになるのを必死で抑え、彼女に待ち合わせの時間など詳細を伝えたが、少し挙動不審だったかもしれない。
その後の執務も落ち着かなかった。
当日。時刻は16時を回った頃。
「今日はありがとう、グラーフ」
Graf「どこへ行くんだ?もう夕方だが…」
「これで行くんだ」
俺はモーターボートを指差した。
Graf「ほお…。これはAdmiralの物なのか?」
「ああ、君に見せたいものがあるって言っただろ?これでそこまで行こうと思っているんだ」
Graf「なら、我はモーターボートに乗った方がいいのか?艤装も出せるが…」
「いいんだ。君にぜひ乗って欲しい」
Graf「了解した!」
そう言ってグラーフはモーターボートに乗った。そして俺たちはお目当ての場所に向かった。
Graf「ここか?海の上だが?」
「ああ、あれを見てくれ」
俺が指差した方向にはもう海に沈みかけている夕日があった。
Graf「ほお…これは」
夕日がゆっくりと沈み、水平線の向こうに消え行く様は言葉では言い表しがたい美しさ、壮大さを感じさせる。俺はこの風景が大好きだった。心が挫けそうになった時、これを見ては再び頑張ろうとしたものだ。
しばらく俺たちはそこでその壮観な様子を見ていたが、グラーフが唐突に口を開いた。
Graf「Admiral…素敵な眺めだった。ありがとう」
「いや、こちらこそ。グラーフと見れて良かったよ」
Graf「フッ、それはプロポーズか?」
「なっ!?か、からかうなよ」
俺は自分の顔が熱を帯びていくのを感じた。きっと今真っ赤になっているのだろう。ただ、日が沈んでいたので、辺りは薄暗く、顔色は分からないと思うが……。
Graf「なに冗談だ。Admiralはウブだな!痛快!痛快!」
グラーフが腹を抑えて笑っている。くそ~!
だけど、俺もグラーフが笑っているのを見て、嬉しさが込み上げ声を出して笑ってしまった。
「さて、そろそろ戻ろうか…」
Graf「ああ、それにしても本当に素晴らしい眺めだった」
「また来よう、絶対に」
Graf「また…。また我でいいのか?」
「ああ!むしろグラーフじゃなきゃダメなんだ!」
Graf「そ、そうか…」
その後グラーフは押し黙ってしまった。さすがに嫌だったのだろうか?俯いてしまって表情は見えなかったが。
グラーフと別れてからもその事がしばらく頭から離れなかった。
まあその後もグラーフは秘書艦として執務を手伝ってくれたのだが。
そして、ある日。
「ふぅ、ご苦労様!上がっていいぞ」
「はーい。失礼します」
その日の秘書艦が部屋を後にするのを見送り、自分の執務をもう少しやろうと俺は机上の書類に目を落とした。
グラーフは今、この鎮守府の近海から少し離れたところへ出撃している。
深海棲艦が最近目立って目撃され、不穏な噂も流れている。
そこで、俺の艦隊の主力部隊をその海域へ送り、情報収集をしてもらっているのだ。そして、その情報を元に本格的な作戦を立案し、進撃していくことになるはずなのだが………。艦隊はなかなか帰港しない。
俺は艦隊が予定時刻になっても戻らないことを心配しつつも、主力部隊であること、そしてグラーフがいることを考え、執務に集中しようとしていた。
そんな時だ。
執務室のドアが唐突に開けられ、息を切らした艦娘が走り込んできた。その艦娘はひどく傷ついている。
「どうした!!」
俺は叫んだ。なぜならその艦娘は主力部隊の一員として出撃していたメンバーだったから。
「た、大変です……。例の海域を調べていたところ、多数の深海棲艦に奇襲を受け、部隊は散りじりに……。なんとか合流するも……激しい攻撃を受け、後退。それで、それで……。グ、グラーフさん、グラーフさんが………」
「グラーフ!?グラーフがどうした!?」
その艦娘は泣きそうな顔で続ける。
「グラーフさんが皆を逃がそうと、殿を引き受け、その海域で皆が撤退するなか戦闘を………」
俺は血の気が引いた。呼吸が浅くなり、心臓が激しく鼓動を打つ。目の前が文字通り暗くなるような気がしていた。
Graf「…上官である貴方にこんなことを言うのもなんだが、先程から手が止まっているぞ」
Graf「では、Admiral。今日は楽しかった。ありがとう。Dank」
Graf「なに冗談だ。Admiralはウブだな!痛快!痛快!」
…………………………。
だめだ。だめだ!ためだ!!絶対にだめだ!!!
グラーフは絶対に沈めさせない!!!!!
俺はすぐにこの鎮守府の艦娘たちに放送を入れた。
「全艦娘に告ぐ!!ここに深海棲艦が攻め込んでくる可能性がある!!この鎮守府の後方には市街地がある。つまりここが防衛ラインだ!!!全員、艤装を展開し、この鎮守府を中心に近海の哨戒、防衛に当たってくれ!!!健闘を祈る!!!!」
俺は叫ぶようにそう言うと、目の前の傷ついた艦娘をドックに運び、ある場所へ向かった。
鎮守府内は警報が鳴り響き、艦娘たちが慌ただしく動き回っている。すでに近海には多くの艦娘が展開しており、着々と陣形を作っているようだった。
そんな中、俺は息を切らし、走っている。そして、辿り着いた。
目の前にはあの時グラーフと一緒に乗ったモーターボートがあった。
「まってろよ、グラーフ!」
俺はそれに飛び乗ると、急いでグラーフの元へ向かった。
途中にすれ違った数名の艦娘にどこへ行くのか尋ねられたが、俺はきっと傷ついた主力部隊が帰投してくるはずだから、ドックへ連れて行って欲しいと伝え、先を急いだ。
Graf「クッ!!被弾した!!飛行甲板、誘爆を防げ!!!」
Graf「稼働機は全て発艦!部隊が安全区域へ逃れるまで、このGraf Zeppelinが相手だ!!!」
Graf「我の砲はまだ健在だぞ!こちらを見ろ!!!」
孤軍奮闘。迫り来る深海棲艦に、砲弾の雨、着実にグラーフの体はボロボロになっていく。それでも決して退かずに、果敢に戦うその姿は軍神の様であった。
だが、時間が刻々と進むにつれ、艤装が煙をあげ、激しく損壊し、もはやグラーフはただ海に浮いているだけとなった。
Graf「チッ!我もここまでか…」
グラーフは静かに目を閉じる。凛とした彼女の顔。死を覚悟し、自分の命の火が消えるその時まで、グラーフの顔は麗しい。
だが、彼女の顔に歪みが生じる。グラーフ自らもその可憐な顔を曇らせたことに気付いたようだ。
Graf「な、何故だ…。死など、恐れるに足らないはずなのに…………」
だが、すぐにその答えに気付いた。
Graf「Admiral……Admiral!!我は……我はまだ死ねぬ!!Admiralともう一度あの景色を見るまでは、死ねん!!」
死が、最愛の人との別れが怖かったのだろうか、グラーフは大粒の涙を流していた。
Graf「あ、ああ…。Admiralに、会いたい………。Admiral…………。」
「……らー………!!」
「グラ…………!ど……だ!!!」
Graf「ああっ!ついに我も沈むのだな……。Admiralの声が……。幻聴でも、嬉しいもの…だな」
「グラーフ!!!!どこだあああーーーー!!!!!」
Graf「Admiral?Admiral!!」
「グラーフ!よかった無事だったか!!!」
Graf「な、何故Admiralがここに…」
「そんなことはどうでもいい!」
俺はグラーフを強く抱き締めた。
Graf「あっ、Admiral!///」
「逃げるぞ!絶対に生きて帰る!」
Graf「ダメだ!Admiral!この数を相手に何を言っている!!何故ここに来た!!!」
グラーフが睨み付けるように俺の顔を見る。
しかし、その顔もすぐに優しく穏やかになり、諭すように俺に語りかける。
Graf「……最後にAdmiralの顔が見れてよかった」
「最後なんて言うな!!」
Graf「我は今最高に幸せなんだ。Admiralに会えて、Admiralに抱き締められて!Admiralは我の大切な人だ…。我が囮になる!その間に逃げてくれ!!」
「バカ野郎!それじゃ意味がないんだよおお!!」
Graf「ありがとう……Admiral…。さようなら」
グラーフが俺のことを押し退けて、敵の方へ行こうとしている……。俺は……。俺は!!!!!!
「諦めんなよ…」
「諦めんなお前!!どうしてそこで諦めるんだそこでえ!もう少し頑張ってみろよ!?ダメダメ!ダメだダメだ!諦めたら!!お前のこと想ってる人のこと思ってみろって!!あともうちょっとなんだって!!!俺だって大好きな人を助けにここまでやって来たんだぞ!!?絶対やってみろ!必ず帰れる!!だからこそ、Graf Zeppelin!!!」
俺はそう思いっきり叫ぶと、彼女を無理やり抱き上げモーターボートに乗せた。
Graf「あ、Admiral?」
そのまま俺はエンジンを思いっきり吹かしてこの場からの撤退を図る。
いつかみたあの景色を今度はグラーフと並走しようと考えていた俺は、明石に頼んで、モーターボートの速度を限界まで上げてもらっていた。行ける!今なら行ける!!
「さぁ行くぞ!!!」
Graf「あの時のAdmiralはとても、そのかっこよかったぞ///」
「ありがとう、グラーフ」
俺たちは再びあの場所に来ていた。夕日が水平線に沈もうとしている。
なんとかグラーフを連れ鎮守府まで戻った俺たちは、哨戒に当たっていた艦娘たちに保護された。激しい迎撃戦になることが予想され、俺もすぐに指揮に当たろうとしたが、結局深海棲艦が攻めてくることはなかった。
グラーフもすぐにドックへ運ばれ、事なきを得た。ただ轟沈寸前だったらしい。
それで、俺がグラーフを助けに行ったことは艦娘の間ですぐに噂になり、いろいろと聞かれたが、グラーフが顔を真っ赤にして皆を追い払っていた。それからしばらくはグラーフのおいかけっこを見ることになったのは今ではいい思い出だ。
Graf「Admiral」
「なんだい?」
Graf「Ich liebe dich.」
グラーフが俯きながらそう言う。もう沈みかけている夕日に照らされてか、グラーフの顔が赤い。
「すまん、ドイツ語はさっぱりなんだ」
Graf「なっ!?」
「冗談!痛快!痛快!」
そう言って俺はそっとむくれる彼女を抱き締める。
彼女の髪からはほんのりいい香りがした。
「Ich liebe dich.俺もさ」
俺がそう呟くとグラーフは小さく笑った。