2コマ堕ち的ハーレムエロす in ガルパン 作:槇村 a.k.a. ゆきむらちひろ
19:フニクリ・フニクラ/真面目にアンツィオ入り
アンツィオ高校と聖グロリアーナ女学院への視察について行くことになった。それが決まった、というか知らないうちに決まっていたのが一昨日。
先方の2校と、大洗学園側で視察の許可が下りたのが昨日。
そして今日。朝5時起きで出発し、アンツィオ高校へ。1泊して明日、続けて聖グロへ行くというスケジュールになっている。なんだこの強行軍。
大洗学園の舵取り役のひとりである生徒会長・角谷杏いわく。
「ウチもそうだけど、3月末から4月頭は、新入生の受け入れとかでいろいろ忙しいんだよ。余計な仕事をしている暇はないんだから、ちゃっちゃと終わらせないと」
とのこと。
学生の中では一番忙しいだろう生徒会長の言葉だ。説得力がある。
そんなわけで。今回、視察に向かうメンバーである会長、まほ、そしてオレの3人は、朝の6時前に大洗を出発し、陸路で静岡県へ。
東京まで特急、静岡まで新幹線と乗り継いでいき、静岡県・清水港に着いたのは午前10時前。乗り継ぎ時間も含めておよそ4時間をかけて、清水港に停泊しているアンツィオ高校学園艦までやって来た。
「やっと着いた……」
港でもひと際大きな威容を見せている学園艦を前にして、会長さんが心底疲れたような声を漏らす。まぁ4時間も電車に乗ってれば、誰でも疲れるよね。
「平気か会長。電車に酔ったのなら、少し休むか」
「気分が悪いなら、水でも買ってきましょうか?」
「あー。いや、平気。気持ちだけありがたくもらっとくよ。電車に酔ったわけじゃないし。というか、疲れてるのはキミらのせいだから」
まほとオレが気遣ってみせれば、返ってきたのは予想外の言葉。
オレたち何かした?
まほと顔を合わせる。彼女も分からないようで、首をかしげている。
「寝てても起きててもイチャついてるキミらのすぐ横に4時間もいたんだぞ。ひとりもののわたしには、ちょーっとツラい時間だった……」
「そんなにイチャついてるつもりはなかったんだが」
今度は、まほの方がオレに目を向けてくる。オレとしても、首をかしげるしかない。
そんなオレたちに、会長はでっかい溜め息を吐いた。幸せ逃げるよ?
「東京までの特急に乗って早々に寝ちゃったかと思えば、肩を寄せてもたれ合って、しかも手をつないでて。しかも西住さんは、寝言で大瀬良くんの名前呼んでたし」
「……覚えがないな」
「聞きたかったな、もったいない。起きてればよかったオレ」
「夢の中でもイチャついてるとは恐れ入ったね」
会長のボヤキはまだ続く。
「起きてれば常に寄り添って、会話しながらさりげないボディタッチを自然にしてるんだもの。イチャイチャしてる、を目の当たりにした。無理に話を振ってキミらの空気に入るのも壊すのもはばかられて、黙ってるしかなかったし」
「妙に静かだったのは、そんなことを考えてたのか」
「普通にお喋りをしてただけのつもりなんだけどな」
「うむ。ただ楽しい、嬉しいと思うことをしているだけだ」
「くっそぅ。ひとり身には出せない空気を振りまきやがって……」
会長が、らしからぬ荒れた言葉をもらしている。そんなに居心地悪かったのか。
この場合は、すいませんと言うべきか、ありがとうと言うべきか
どうしたものかと考えていると。
「おーい、角谷ぃー」
どこからか、会長の名前を呼ぶ声が聞こえた。
周囲を見回してみれば、手を振りながら近づいてくる女性がひとり。紺のスカート、白いシャツ、ネクタイという制服姿に、なぜかマントを羽織っている。会長の知り合いって人かな?
会長はうなだれていた頭を上げて、呼んだ相手に向かって歩き出す。ずいぶんと重たい歩調で。
「チョビ子ぉ。今日はありがとねぇ」
「チョビ子って言うな。……というかお前、平気なのか。無茶苦茶疲れた顔してるぞ」
「大洗から4時間、横でずっとバカップルを見せつけられていれば疲れもするさ……」
紹介するよー、と。本当に疲れた声を出しながら、会長が俺たちを手招きする。
あと初対面の人にバカップルとか言わないで欲しい。
「いろいろあって、今回同行してくれているウチの生徒」
「西住まほだ」
「大瀬良俊一です」
「安斎千代美だ。アンツィオ高校戦車道チームの隊長を務めている。アンチョビ、と呼んでくれ」
手を差し出して、フレンドリーに握手してくる女の人、安斎さん。
でも、アンチョビって……。魚のアンチョビ?
いやまぁ、本人がそう呼べと言ってるんだから、いいんだろうなそれで。
「えーっと。じゃあ、アンチョビさんで」
「うんうん。素直なのはいいことだ。ウチは女子校だからな。男子にそう呼ばれるのは新鮮だ」
はっはっは、と、ツインテールにした長い髪を揺らしながら、アンチョビさんは大らかに笑う。すっげぇ人当たりが良くて、いい人オーラを感じる。
次いで、彼女は少し表情を引き締めてから、まほに目を向ける。
「人違いだったら済まない。西住というのは、もしかして西住流の?」
「そうだ」
あぁ、なるほど。
戦車道に関わっている人からすれば、西住という名前は相当知られているみたいだし。そのことを改めて実感する。
でも、まほは特に気を悪くした様子もなく。淡々と言葉を返す。
「少しワケありでな。黒森峰から、一時的に大洗に転入している」
「今回、角谷がアンツィオに来たのは、新しく戦車道を始めるにあたっての視察だと聞いている。黒森峰、というか、西住流が絡んでいるのか?」
「いや、そんなことはない」
まほは、少しだけ可笑しそうに笑った。
今の自分やみほの状況を知っていれば、そりゃあね。
「どちらも絡んでいないさ。私が同行しているのは、次に立ち寄る聖グロとの仲介役としてだからな。私個人としては、アンツィオにお邪魔するのは半ば以上、観光だよ」
「そうか。……私も去年の全国大会決勝のことは知っている。まぁ、詳しくは聞かずにおこう」
戦車道の名門校の隊長が、戦車道のない学校の生徒としてやって来たわけだから。ワケありですと言っているようなもの。いろいろ考えてしまうだろう。でも想像はしても、当人に突っ込まない心遣いは、いい人だなぁと思わせる。
「観光だというなら大いに楽しむといい。我らアンツィオは歓迎するぞ。もっとも、たった1日では味わい尽くせないだろうがな!」
難しそうな顔から一転。思い切り手を広げ、気持ちのいいドヤ顔で母校を誇るアンチョビさん。ぶわさ、と、マントをひるがえすのも様になっている。カッコいいなオイ。
「じゃあ早速案内しよう。3人ともついてくるといい。あ、大瀬良、だったか。ウチは女子校だが、停泊中の今は男性の出入りもそれなり以上にある。変に緊張する必要はないぞ」
「ありがとうございます」
ちょっとした気遣いが嬉しい。素直に礼を述べると、彼女はうんうんとうなずきながら親しみやすい笑みを浮かべる。なんというか、頼れる姉御みたいな感じでとても好感度が高い。
アンチョビさんは先導するように、会長と並んで歩き出す。気安く会話をしている姿は、後ろから見ていてもとても仲が良さそうで、微笑ましい。でも基本的に、会長さんが弄り倒してるみたいだけど。
……そういえば。
「アンツィオ高校って、戦車道の世界ではどんなもんなの?」
ちょっと気になったこと。
まほに顔を寄せて、話しかける。
「正直なところ、名を馳せているというわけではないな。確か、彼女がスカウトされてアンツィオに入り、同好会レベルだった戦車道チームを立て直したと聞いた覚えがある。新興と言ってもいいかもしれない。それでも、去年の全国大会には出場していたはずだ」
「ということは、入学からたった1年で、大会に出られるくらいにしてみせたってこと? それってすごくない?」
「あぁ。私もすごいと思う。そのあたりは、今の大洗と重なるところがあるな。だから会長はアンツィオに話を聞こうと思ったのかもしれない」
「なるほどねぇ」
もうね、「すげぇ」としか言いようがない。
というか、戦車道に関わる女の子って、誰も彼もいろいろレベルが高すぎる気がするんだけど。みほしかり、まほしかり。
「どうした?」
じっと見つめていたオレに、首をかしげるまほ。
思わず苦笑しながら、何でもないとごまかす。
こんなレベルの高い女の子たちがオレを好いてくれてるんだから。一体どうなってるんだろうね。
男としては、そんな彼女たちにふさわしい奴でありたいと思う。見限られないように気負いながら、日々精進していくしかないんだけど。
ハードル高いなぁ、と、また苦笑が漏れそうになる。
今度はそれを、胸の内だけに留めてみせた。
アンツィオ高校の戦車道について、アンチョビさんによる説明が始まった。
まず、学校で所有している戦車の格納庫に案内される。戦力をさらすことになりかねないとのことで、全部を見せてもらったわけじゃない。でも初めて戦車を間近に見て、触れて、思わず興奮してしまった。一番の部外者なのに、一番盛り上がっているオレ。アンチョビさんはもちろん、まほと会長にも、微笑ましい感じの表情を向けられてしまった。
大きいんだなぁと感心していると、驚きの事実が。見せてもらったものは戦車の中では小型で、むしろマメ戦車と呼ばれている部類だと聞かされて、驚愕。マジかよ。
もっとでっかいのを、学生が乗って操ってるの? しかも何輌も?
素で驚いた。
そんなオレに、アンチョビさんはやたらと「小型戦車は弱くない」というアピールをしてきた。確かに高火力の大型戦車も欲しいが、金銭的にそうホイホイ導入できるわけじゃないんだとも。
だんだんトーンが落ちてくる語り口に、あぁ、切実なんだなぁと察せられた。会長も、予算に関しては他人事じゃないせいか、難しそうな顔をしている。
まほは、黒森峰での経験からいろいろと話を付け加えてくる。
ことに、小型戦車の運用について。確かに小型で大型を撃破するのは難しいが、それも戦略次第だと。そもそも本当に小型戦車が役に立たないのなら、大会に出場できるまで立て直すことはできなかったろう、とも。
それを聞いた途端、アンチョビさんが復活。むっちゃ明るい顔で、ありがとう、ありがとうと言いながら、まほの手をブンブン振り回していた。
「じゃあ次は、実際にチームを稼働させるまでの話だな」
戦車の現物を見てから、戦車道チームに割り当てられているという部屋のひとつに通される。いろいろな書類や記録などの束を積み上げて、アンチョビさんは説明を始めた。
時折ノートやら書類やらを広げて、会長の前に差し出す。さらにホワイトボードまで用意してあれこれ書きながら、解説を重ねていくアンチョビさん。会長もそのひとつひとつに目を向け、耳を傾けて、真面目に説明を受けている。
まほも、アンチョビさんの話を真剣に聞いていた。別チームの所属がはっきりしている以上、さすがに書類などを見るのは、はばかられるんだろう。あくまで耳を傾けているだけだ。
彼女いわく、すでに形が出来ている戦車道チームではなく、ほぼゼロから今の形にしていったアンチョビさんの話はとても興味深かったらしい。
「みほを連れてくるべきだった」
後でそんなことを言っていたくらい。大洗の新生戦車道チームに関わるであろうことを考えると、自分よりもみほが聞いた方がためになる話だった、という。なるほど。
でも正直なところ、オレは一事が万事ちんぷんかんぷんだった。
とはいっても、彼女たちの熱量は分かる。アンチョビさんをはじめとして、戦車道というものに真剣に取り組んでいる、取り組もうとしているのは、とても強く伝わってきた。
いいなぁ。
オレにはまだ、そこまでのものがないことに改めて気づかされて。
少しうらやましくなった。
―続く―
1時間後(20時)にもう1話、投稿します。