2コマ堕ち的ハーレムエロす in ガルパン 作:槇村 a.k.a. ゆきむらちひろ
買ったアンクレットを手にしたオレと、腕に抱きついて笑みを浮かべているまほ。連れ立って靴屋を出ると、ニヤついているアンチョビさんと、何かにあてられたかのようにゲンナリしてる会長に出迎えられた。
「一部始終を見させてもらった。恋人からの贈り物。いいな、西住。うらやましいぞ」
アンチョビさんがからかうような口調で、でも気持ちいい笑顔でサムズアップしてくる。まほも、それに応えるように親指を立てた。
本当にノリが良くなったよね。出会ったばかりの頃とは大違いだ。
「お待たせしてすいません」
「いやいや。アンツィオ巡りをするのは西住さんの希望だったわけだし。ただ初っ端からこう、甘々なのを見せられると、ほら。こう、ね」
会長が、うまく言えない感覚をむにゃむにゃと口にする。
今回に限ったことじゃないんだけど、こちらに見せつけるつもりがなくても、周囲はそうでもないらしい。少し気をつけようと思う。自重はしないけどな。
「あ、会長。はいこれ」
「ん?」
「アンチョビさんもどうぞ」
「これ、もしかして今買ったやつか?」
みほと柚子のおみやげ用とは別に、会長とアンチョビにもアンクレットを買っておいた。
包装されたものをそれぞれ渡す。ふたりとも驚いた顔をしてる。
「アンクレットって素足につけるものらしいんで、今の会長とアンチョビさんはソックスを履いてるから合わせられないと思いますけど。ちょっといじってブレスレットにするとか、キーホルダー代わりに使ってもよさそうだなと思って。よろしければご笑納ください、みたいな感じで」
まほだけに買って、同行している先輩方は置いてけぼり、っていうのも何となく気分が悪かったから。オレは連れてきてもらっている立場だからね。
会長には杏という名前から、安直だけど赤みの入ったアプリコットカラーのものを。
アンチョビさんは、何となく浮かんだイメージでエメラルドグリーンのものを選んだ。
ちなみにオレも色違いの同じものを買ってる。少し改造してキーホルダーにしようと思ってる。
受け取った包装を覗き込んでから、会長とアンチョビさんが互いに顔を合わせた。
え、何ですかその反応。
「やばい。ちょっと嬉しいとか思ってる自分がいる」
「おい角谷。もしかして私は、彼に気に入られてしまったのか?」
まいったな、みたいな表情で顔を手で覆う会長と。
なんだか焦った様子を見せているアンチョビさん。
いや、そんな深いことを考えて買ったわけじゃないんだけども。お世話になる感謝を少しだけ形にしたっていうだけだから。
「罪作りな奴だな、俊一は」
「え、いやいやいや。ないでしょそんなこと。ないない」
「ふふ。どうだかな」
まほが何を言っているのかは、想像できる。
できるけど。
でもさすがにそれはないでしょ。うん。
特にアンチョビさんは今日初めて会ったばかりじゃない。
そもそも、この状況でどうしてまほが楽しそうにしているのか。
「実際、楽しいからな」
「まほちゃん的にはいいの? ないと思うけど、まだ増えるっていうのは」
「私をないがしろにしないなら、構わないぞ。そもそも私自身、みほとの仲に後から入り込んだ身だ。どうこう言えるわけがないだろう」
「ないがしろになんてしないよ。そんな恐れ多い。オレは独占欲が強いから、まほちゃんも、みほちゃんも柚子さんも絶対誰にも渡さない。それ以前に、これ以上増えても責任取れないよ」
「おぉ。ちゃんと取ってくれるのか」
「そりゃあもちろん。3人揃って何とかする。するつもりでいる。そのためにあれこれ模索中」
これはマジで。
何を言われても、恋人として3人とも手放すつもりはない。彼女たちに見限られないように気を張ってるし、将来彼女たちを養っていくためにはどうするべきかを本気で考えてる。後々のことも考慮して、今さらながらエッチなことも控えようと思っているくらいだ。
「エッチ禁止はだめだ。愛されてる実感が薄くなる。絶対にだめだぞ」
「いやでもさ」
「とにかくだめだ。むしろ私は毎日可愛がってほしいくらいだぞ」
「おぉう……」
女の子の方から毎日抱けと言われるのは、正直嬉しい。下半身がムラムラしてくる。
むちゃくちゃ嬉しいんだけどさ。どうなのそれ。
「お前らな、仮にも生徒会長の前で不純異性交遊の話をするのはやめてくれ。反応に困る。というか西住さん、さりげなく経験の有無をカミングアウトするのやめて」
さすが生徒会長の角谷杏。確実に突っ込んでくる。いやまぁ確かに、まほの今のセリフはツッコミどころしかないけど。会長がツッコミながらも顔を真っ赤にしているのも仕方ないと思う。
「あの黒森峰の西住が、恋人がいるだけじゃなくてあんなことやこんなことを……」
「チョビ子が壊れちゃったよ」
「もしかして私まで、いやそんな」
「止まれチョビ子、それ以上は危険危険!」
一方でアンチョビさんは何やら妄想に走り出した。会長が必死に止めようとして、身体をつかんでがっくんがっくん揺さぶる。
なんだか愉快な展開になってきた。オレの笑いは引きつってると思うけど。
「もうこの話はやめよう。やめやめ。次に行こう、次!」
微妙な流れになってきた雰囲気を、会長が無理やり、わめきながらリセットする。
でもまぁオレとしては、まほのあんな言葉が聞けたのは嬉しい。正直、興奮した。
会長やアンチョビさんまでそれに当てられた感はあるけど。
いやでも、口説こうとか堕とそうとか、そういうつもりはなかったよオレ。
「だから、たちが悪いんだ」
ナチュラルに口説くなと叱られてしまった。
とにかく。会長の言う通りに話題をぶった切って。
オレたちは当初の目的地、トレヴィの泉にやって来た。
学園艦が帰港していて人の出入りが多いのもあるんだろう。泉の周辺には、アンツィオ高校の女の子ばかりじゃなく、観光客らしい人たちもかなりいた。本家ローマでも、この泉は名スポットらしいしね。
「トレヴィの泉って、後ろ向きでコインを投げ入れると願いが叶う、ってやつですよね」
「そうだな。アンツィオにあるのはもちろん、ローマの現物を模したものだ。でも観光客にはなかなか人気だぞ」
本家のトレヴィの泉に準じているなら、後ろ向きで泉に向かってコインを投げる。
1枚の場合はまたローマに来れる。ここだとまたアンツィオに来れるってことになるのか。
2枚の場合は、大切な人と永遠に一緒にいられる。
3枚だと、恋人や妻や夫などと別れることができるらしい。
「というか、映画にトレヴィの泉って出てきたっけ?」
「周辺は出てきたと思いますよ。単にコインを投げるシーンがなかっただけで。……なかったよね?」
「確か、散髪するシーンあたりだったか。あれは地味に驚いたぞ。仮にも王女が、抜け出した先で長い髪をばっさり切ってしまうとか。思い切りがいいにも程があるだろ」
「でもオレ、最初のロングな王女よりも、髪を切った後の方がいいと思う」
「それは分かる」
「悔しいくらい、可愛いよなぁ。女からみてもあれはすっごく可愛かった。映画がカラーじゃないのがまた、美貌を引き立ててるというか」
オレと会長とアンチョビさんで、オードリー談義に花が咲く。
……あれ?
「まほちゃん?」
話にまほが入ってこないことに気がついて。
周囲を見回すと、またどこかのお店にフラフラと引き寄せられている。
っておい、美容室じゃねぇか。
「まほちゃん、待って待って。これ以上短くしてどうするの」
「俊一は、オードリーみたいなショートが好きなんだろう? それなら」
「いやいや、十分似合ってるよ。今のまほちゃん、すっごい可愛いから」
衝動的に散髪しようとする彼女を止める。気持ちは嬉しいし、耳を出すくらいのショート姿も見てみたい気もするけれど、今のまほの髪形もすごく似合っている。勢いだけで切ってしまうのはちょっと惜しい。
「それに、理容師にナンパされたら気分が悪いから。やめとこうよ」
まほの頭を撫でながら、似合っているボブカットっぽい髪に指を差し入れる。梳くように手を動かすと、まほは気持ち良さそうな顔をした。
「確かにそうだな。ダンスパーティにでも誘われたら困ってしまう」
「それより、泉で一緒にコインを投げよう。ふたり揃ってやれば効果も2倍だぞ、きっと」
「ふふ。みほと柚子の分もちゃんと投げないとな」
「それはもちろん。想いを込めて投げるとも」
「力み過ぎて外すんじゃないぞ。外したら泣くからな」
「あれ、なんだか急に緊張してきた」
というわけで。
まほを美容院から引きはがすことに成功して、会長とアンチョビさんのところに戻る。
「なんというか、大瀬良ってすごく女慣れしてるんだな」
「そりゃあ、三股かけて全員に認めさせてるくらいだから。マメさは一級品でしょ」
「ちょっとおふたりさん。人聞きの悪いこと言わないで」
そんな言葉を返してくるお姉さん方2人。
アンチョビさんは呆れたように、でも少し顔を赤くして。
会長は、何か達観したような感じで、でもやっぱり少し顔を赤くしながら。
……さっきのやり取りに顔を赤くされるような要素あった?
「チョビ子、これがバカップルだ」
「あー。確かに、こんなのが朝からずっと横にいたら辛いな」
あ、まほの頭を抱きながら撫で続けてた。
確かにこれはバカップル扱いされても仕方ないかもしれない。
「私は明日の聖グロ行きと、さらに大洗への帰り道でも、このふたりの横にいなきゃいけないんだぞ。チョビ子も一緒に行かない? 歓迎するよ、主に私が」
「行けるわけないだろ。もういっそのこと角谷もくっつけばいいじゃないか。自分もバカップルの仲間になれば、少なくとも辛くはなくなるぞ」
「やめて。ちょっとだけそれでもいいかなとか思っちゃったから。他人の色恋沙汰に口出しはしないけど、私は普通がいいんだよ」
「お前が、普通の恋愛ねぇ……」
「何が言いたいのさ」
「べっつにぃ。大瀬良の前ではお前、かなり素だからな。そんな角谷は見たことないと思っただけだ」
「チョビ子こそ。今日会ったばかりなのに、ずいぶん大瀬良くんのこと気に入ったみたいじゃん? あぁ、チョビ子の方が気に入られたんだっけ」
会長とアンチョビさん、当人の目の前で変な会話しないで。
もしかして逆に聞かせようとしてるんだろうか。
「ふたりとも、せめて聞こえないように気を回してくれないかな」
あ、もっと顔が赤くなった。ふざけて聞かせようとしていたわけじゃないらしい。
やっちまった、というか不覚を取ったみたいな表情。ふたり揃って「ぐぬぬ」みたいな顔をしているのに、羞恥で赤くなっているのがとてもいい。ぶっちゃけ、すっごく可愛い。
「そんな顔を赤くして睨みつけても、可愛いだけですよ?」
「なぁ、大瀬良くん。なんでこんなに女たらしなんだ。キミには小山がいるだろ。甘い言葉は小山に向けときなよ。なんでわたしにまでそんなセリフが出てくるのさ」
「アンチョビ、ドゥーチェと呼ばれる私が、こんな……。これが恋愛小説に良くあるトキメキというやつなのか」
お姉さん方、大混乱の模様。
いやなんというか、ふたりの反応が本当に可愛くて、つい。
「いや待てチョビ子。落ち着け。オードリーを褒めてたってことは、大瀬良くんの好みはショートヘア。つまりわたしたちは好みから外れるということだ」
「おぉ、なるほど!」
なんだか、自分の頭を抱えながら威嚇してくる会長とアンチョビさん。長い髪の自分たちは、オレの悪しき毒牙(?)から逃れられると言い合っている。ひどい言い草だ。
「でもさ。大瀬良くんの好みはショートヘアだってことなんじゃないの? 西住さんも、まぁショートだしさ」
「え、なんだかオレの好みの話になってる?」
会長が、からかい交じりの言葉を向けてくる。何かの意趣返しなのか、それともいつものペースを取り戻そうとしてるのか。オレを弄る気満々だ。
「映画の中のオードリーいいよね、ショートカット似合ってるよね、っていう話だったじゃないですか。オレの好み云々で言うなら、どんな髪型でも似合ってればいいじゃん、としか言いようがないし」
「当たり障りのない、日和った答えだねぇ」
「どうしてそう攻撃的な言い方に。というか、ショートじゃなきゃ嫌とか、ポニテじゃなきゃ嫌とか、そんなんで女の子の好き嫌いを決めてたら相手に失礼じゃないですか」
「あ、そうか。小山はポニーテールだもんね。そうか、守備範囲広いなぁ」
「なんですか、守備範囲って」
「なんなら、私もポニーテールにしてみてあげようか?」
「ちょっと見てみたい気もするけど、そのニヤついた顔が気に食わない」
いい加減にしろ、と言わんばかりに実力行使に出る。
会長の頭を両手でつかんで、ぎりぎりと締め上げた。
「うあー。キズモノにされるー」
「ふはは、己の口の悪さを悔やむがいいわー」
まぁ、締め上げるといっても、マッサージよりも少し強いかなくらいの力加減。互いにふざけ合ってるのは分かってるので、会長の非難の声もどこか棒読みだ。
ノリで頭をつかんでみたけれど、思ったよりも会長が拒否反応を見せなくて驚いた。さっきまでお褒めの言葉を向けていたせいか。もしくは、これまで重ねてきたコミュニケーションのおかげかな。桃ちゃん先輩を一緒に弄るくらいしかしてない気もするけど。
「そういえば」
つかんでいた会長の頭を解放して。
会長とアンチョビさんを交互に見る。
「会長もアンチョビさんも、形は違うけどツインテールなんですね」
「言われてみれば、そうだね」
「気にしたこともなかったけどな」
「……うん。会長もアンチョビさんも、似合ってますよ」
うん。オレは好き。
思ったことをただ口にしただけなんだけど。
「くぅ。汚い。不意打ち過ぎる」
「……あー、なんだ。お世辞に決まってると思っていても、ほんのり嬉しいぞ」
ふたり揃って、胸を抑えるオーバーアクション。
口説くとかそういうつもりもない誉め言葉。
でも、どうやらストレート過ぎたらしい。
「気分を悪くしたならすいません」
「いや、別に、そういうわけじゃないんだが」
「うん、まぁ、嫌というわけじゃ」
「次からはもっと回りくどく褒めることにします」
「そういう問題じゃないだろ」
アンチョビさんの鋭いツッコミ。世界が取れるぞ。なんの世界かは分からないけど。
「大瀬良くんはこれで、口説いてるつもりはないんだぞ。むしろその分、悪質だ」
「おい角谷。私は女子校暮らしだから知らないだけで、もしかして世間には彼みたいな男子でいっぱいなのか?」
「落ち着けチョビ子。そんなわけあるか」
「そうだよな。大瀬良が妙に女慣れしてるだけだよな」
素直に会長とアンチョビさんを持ち上げただけなのに。えらい言われようだった。
そんなオレの横に立って、楽しそうに肩を叩いてくるまほ。
なに、その「全部分かってるぞ」みたいな優しい笑顔は。
告白したけど答えを保留にされたクラスメイト同士みたいな、微妙な空気を醸し出しながらしばらく歩いて。目的地のトレヴィの泉(アンツィオ版)に到着する。
着くや否や、これまでの空気がすっかり吹き飛んだ。
「いくぞ、俊一」
「よしきた」
まほとオレはそれぞれ500円玉を2枚取り出して、後ろ向きに放り投げる。
無事着水を確認し、喜びを露にして抱き合った。
さらに、大洗にいるみほと柚子を想いながら再度、500円玉2枚投げを試みて、これも成功。
ガッツポーズをしてみせて、まほから拍手とお褒めの言葉をいただいた。
このやり取りに、会長はもちろんアンチョビさんまで呆れて半笑い。
「500円玉2枚って、勇気があるな」
「それを2回やるんだから、相当だね」
「何と言おうか、とりあえず大瀬良が恋人さんたちを本気で想っているのは伝わってきた」
「やっていることは結構おバカなんだけどねぇ」
「恋人のためならピエロにもなるか。そういうのもなかなかいいな」
「チョビ子、恋愛小説っぽいねその言い回し」
「恋愛小説が好きで何が悪い!」
「いや悪くはないけどさ」
オレたちをネタにしてまた何か言っているお姉さん方ふたり。もっとも、こちらはこちらでテンションが上がっているので、オレとまほは気に掛けていなかった。
「おい、お前たち。盛り上がるのはいいが、めちゃくちゃ注目されてるぞ」
アンチョビさんに声を掛けられるまで、むっちゃふたりの世界に入ってた。
頭の中で「My Heart Will Go On」が流れていたもの。
「すいません。周りに迷惑かけちゃったかな」
「そこまではいってないから安心しろ。コイン2枚投げで盛り上がる奴が珍しいだけだ」
「え、そうなんですか?」
彼女いわく。アンツィオ高校にあるトレヴィの泉では1枚投げの人が圧倒的だという。
なんでもアンツィオ高校は、中学生の進学したい高校ランキングで1位なるような学校らしい。アンツィオ高校入学を目指す中学生がやってきて、「春になったらまた来るぞ」と願いを込めてコインを投げるんだとか。
観光客にも開放しているのでカップルが来ることももちろんある。けれど女子校ということもあって、恋の成就を願ってコイン投げをする人は少ないらしい。
「出会いの場が多いというわけでもないしな。それ以前に、ウチは仲間内で盛り上がるだとか、派手なものを好む生徒が多いから。どちらかというと地味なトレヴィの泉は、生徒の間では今ひとつ……」
「女子校だからそういうのがもてはやされるかと思えば、女子校だからこそそういう話題で盛り上がれないということか」
「色気より食い気なところもあるしな……」
「確かに、露店の多さは半端ないですね」
「新学期前の人の出入りが多い時期だから、何割か増しで出店してるぞ」
「たくましいなぁ」
「でも、皆楽しそうだな」
確かに。すれ違う人たちが誰も彼も笑顔なのが印象的だ。時折アンチョビさんを見掛けて声を掛けてくる人たちも、みんな明るく楽しそうにしている。雰囲気はこの上なく開放的だ。
それにしても。
「アンチョビさんが歩いてるだけで方々から声が掛かるけど。アンチョビさんって有名人なの?」
「自分で言うのもなんだが、アンツィオ高校の中では顔が広いと思うぞ。戦車道は周囲の認知と理解が大切だと考えている。入学した時からチームのために各所へあれこれと働きかけていたから、自然と、な」
すごいな。
自然にとか言ってるけど、誰からも広く好かれるような人には普通、そうそうなれないと思う。アンチョビさんの人となりとか、そういうのがあって受け入れられてるんじゃなかろうか。率先して人を引っ張るような姉御肌なところとかが、アンツィオ高校の人たちを引きつけているのかもしれない。
「おいおい大瀬良。そんなにおだてても何も出ないぞ」
「今日会ったばかりですけど、アンチョビさんを嫌うような人はそういないと思うけどなぁ」
そんなオレの言葉に、アンチョビさんは笑いながら謙遜してみせる。でも結構、嬉しそうだ。
オレ、割りと本気で言ってるんだけどね。
「ベクトルは違うけど、会長も似たようなところありますよね」
「私?」
「周囲に気を配りながら、率先して人を引っ張っていこうとするところとか」
同じリーダーシップを取る人でも、タイプは異なるけどね。
アンチョビさんは、他の人にも分かるような明るく大きなアクションで引っ張る。
対して会長は、人の見えないところで万全の準備をしつつ、結果で人を引きつける。
みたいな。
……あれ。会長もアンチョビさんも、手で顔を覆って悶えてる。耳まで真っ赤。
どうやらまた誉め言葉が、ふたりの胸をえぐってしまったようだ。
「どうして私はこんな羞恥責めを。誰かあいつの恥ずかしいセリフを止めてくれ!」
「と言うか西住さん、うんうんとかうなずいてないで彼氏を止めてよ!」
「なぜだ。止めるような内容じゃないだろう?」
会長とアンチョビさんが、オレのセリフに頭を抱えながら吼える。
さらにふたりは、まほにまで突っかかってきた。
すごい迫力だけれど、まほは涼しい顔をしてまったく意に介さない。いつでも変わらないその動じなさは感心してしまう。なのに、みほやオレの前では、それが少し緩むのがまた可愛らしい。
でも正直なところ、その煽るような物言いはいかがなものか。
「別にいいじゃないか。この際、溺れるくらいに褒められて、なだめられて見るといい。全部委ねてしまって甘えるのは、思いの外気持ちいいぞ?」
なぁ?
なんて具合にオレの方を見る、まほ。
いやいや、同意を求められても困る。確かに甘やかす接し方は、まほ、みほ、柚子の3人には好評だけど。恋仲でもない女の人にそういうのを勧めるのはどうなの。
まほに釣られて、会長とアンチョビさんが、オレに目を向ける。
すぐ横にいることを失念していたのか。あるいは、まほの言うオレの褒め倒しを想像したのか。
「あ……」
「あぅ……」
目を合わせたまま、顔を真っ赤にさせるふたり。
可愛い。
ちょっと、まほ。してやったりみたいな顔をしないでくれ。
『ローマの休日』ツアーを始めて何度目かの、いたたまれなくも甘酸っぱい感じの微妙な空気がオレたちを包み込む。
遠くでこちらを見ながらキャーキャー言ってるアンツィオ生徒には、気づかないふりをした。
―続く―
主人公、たちが悪いな(お前が言うな)
槇村です。御機嫌如何。
はい、『ローマの休日』ツアーが終わりませんでした。
本当は今回、スパーニャ広場とコロッセオと真実の口まで書こうとしてたんだけど。
トレヴィの泉しか書けなかった。
しかも気がつけば、ひたすら会長とドゥーチェを称えるような話に。
どうしてこうなった。
アンツィオ編、まだ続くよー。
※誤字の指摘、ありがとうございます。すっごい変な誤字してた……。