※この作品はR-18です。

2コマ堕ち的ハーレムエロす in ガルパン   作:槇村 a.k.a. ゆきむらちひろ

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主人公の一人称に戻ります。



23:真実の口にて/アンチョビ、まほ&杏

 スパーニャ広場でアンチョビさんが恥ずかしさから絶叫。逃げ出すようにその場を離れたオレたち。観光客どころか同じアンツィオ高校の生徒たちからも注目を浴びて、アンチョビさんがものすごく取り乱していた。あちこちから名前も呼ばれてたし、有名人みたいだから、あっという間にその様子が広がっちゃうかも。友人らしきジェラート屋の店員さんが大笑いしてたのが、遠目からも見えた。

 

「まぁ、それだけ愛されてると思えば」

「大瀬良。自分が同じ状況で、奇声を上げたとか学校中に噂されても耐えられるのか?」

「……ごめんなさい。それはちょっと」

「チョビ子は元々有名人みたいだし、いいじゃん。武勇伝が増えたと思えば」

「有名税というやつか。異性関係ならなおさら盛り上がるだろう」

「なんだ武勇伝って。嬉しくもなんともないぞ。それと西住、そういうんじゃないから」

「違うのか? 私はてっきり俊一を」

「言うな。頼むから言うな」

「明日から話題になるぞ。あのアンチョビ先輩に恋人が、みたいな感じで」

「……角谷。お前は本当に、他人事だとイキイキするな」

「だって他人事だし」

 

 アンチョビさんと会長が仲良く言い合いをしながら。

 時折まほもそれに口を挟んで。

 最初はオレも混ざっていたけど、恋バナみたいな展開になってきてからは一歩引き。

 そんな緩くも楽しげな雰囲気で、オレたちは次の目的地へ向けて歩く。

 次に向かうのは、真実の口。

 というか、こんなものまであるアンツィオ高校すごいな。感心するやら呆れるやら。

 

「でもじっくり見ると、これって結構怖くない?」

「手首を切り落とされるとかいうくらいだからねぇ」

 

 丸くてでかい、コイン状の石の彫刻。立てかけられているそれの全経は、男のオレの身長よりもある。その中央に顔が彫られていて、目と鼻、口の部分に穴が開いている。

 正直、想像以上に大きかった。その上怖い。

 

「暗くなってからこれを見たら、泣くな」

「夜な夜な噛みついてくる、とかないよね?」

「あってたまるか」

「ないから。そんなホラー展開ないから」

 

 でも「本心じゃなかったら手を落とされる」とか、ホラーチックだよね。というよりも、寓話っぽいのかな。

 ともあれ。

 嘘を吐くと手を切り落とされてしまう。ということは。手が無事ならそれは心から思っている本当の事なのだ、という証明になる。

 

「だよね?」

「そういうことだな」

 

 まるで示し合わせたかのように、一歩踏み出すオレとまほ。

 オレはためらうことなく真実の口に手を突っ込んで。

 

「まほちゃん大好き。もちろん、みほちゃんも柚子さんも大好きだぞ」

 

 胸を張って、言ってのけた。

 照れ? そんなもんは恋人たちへの思いに比べれば気にするほどのことじゃない。

 ゆっくりと穴から手を引き抜く。当然、傷ひとつない。

 無傷の手を掲げてドヤ顔をするオレ。まほが称えるように拍手をする。

 

「私も行こう」

 

 まほも同じように、真実の口に手を差し入れて。

 オレへの愛を堂々と言葉にして、熱い視線を向けてきた。

 何事もなく手を引き抜く。もちろん、彼女の手は無事だ。

 

「まぁ当然だな」

 

 笑みを浮かべて、どこか誇らしげですらあるまほの姿に感動しきり。

 胸のうちが温かくなる感覚を覚えて。

 

「まほちゃん」

「俊一」

 

 オレたちは自然と抱き合った。

 

「……私は何を見せつけられているんだろう」

「なにこれ。コント?」

 

 アンチョビさんと会長が何か言っている。トレヴィの泉みたいに、オレたちのテンションについてこれなかったみたいだった。

 というか、さすがにコント呼ばわりは失礼じゃなかろうか。

 

「コントじゃなきゃ、寸劇? どちらにしても、ふたりともすごいなとしか言えない。感心しちゃうよ」

 

 会長は呆れ口調でそんなことを言う。

 恋人が喜んでくれるなら、これくらいは大したことじゃないでしょう。もちろん時と場合によるけどね。

 

「俊一。みほと柚子にさっきの写真を送っておいたぞ」

「いつの間に撮ってたの?」

 

 まほはどうやら、ついさっき真実の口に手を突っ込んだところをスマホのカメラで撮っていたみたい。愛を口にして手が無事だった云々の本文を添えて、みほと柚子にメールを送ったと言う。

 

「早いな。もうメールの返事が来たぞ」

 

 同時にオレのスマホにもメール着信が。

 みほと柚子から、それぞれ「私も大好き」というメールが届いた。

 照れるぜ。

 

「なんというか。幸せそうっていうよりも、楽しそうって言った方がいいかもな」

「青春ってやつだねー」

 

 楽しんでるっていうのは確かにその通り。滅多に来れないようなところで、なかなかできない経験をしているんだから楽しまなきゃ損だ。

 そういうわけで。改めて、真実の口をまじまじと観察する。

 

「こう言っちゃうと身も蓋もないけど。これって、レプリカですよね」

「そりゃあそうでしょ」

「さすがにローマから本物は持ってこれないだろうしな」

 

 オレの素朴な疑問。会長もまほも同意してくる。

 仮に、本心じゃないことを言うと本当に手が持っていかれるとして。公式にレプリカを作ったら、手を持っていくナニかも複製されるんだろうか。分霊みたいな感じで。

 

「イメージとしては、呪いのビデオをダビングするみたいな?」

「おい大瀬良。本当にそういうのがいたら怒るぞきっと、その例えは」

「俊一は本当にホラーものが好きだな」

「例えとしては分かるけどね」

 

 ひょっとしたら本当に手を切り落とされちゃうんじゃないか。そんなわけないと思っていても、不安になる気持ちはあるよね。敢えて口から出まかせを言って、手を突っ込む気にはならないし。

 

「わたしはあんまり、そういうのは信じない方かな。ゲン担ぎみたいなことも強いてしようとは思わないし」

「あー。分かる気がする」

 

 会長は確かに、現実主義というかなんというか、占いとか言い伝えみたいなものは気にしない印象がある。石の割れ目が手を食いちぎるわけないだろ、とか言うのが目に浮かぶ。むしろ他人をからかう道具にしそうだよね。

 

「それなら会長も、手を入れてみるか?」

「いいよー」

 

 まほの言葉にあっさりとうなずいて。

 会長は真実の口に手を突っ込んで見せる。

 行動が男前というか、無頓着と言おうか。

 夢も何もないな、という言い方もできそうだけど。

 

「そうだな……。じゃあ、俊一のことは好きか?」

「はぁ?」

 

 まほが、予想外のタマをぶっこんできた。

 さすがの会長も少し呆けている。

 というか、まほが少しにやけているように見えるのは気のせいか。

 

「そうだねー。嫌いではないよ。ウン、アイシテルヨシュンイチー」

「うわ、むっちゃ片言で言ってる」

「あはは」

 

 会長は笑いながら、真実の口から手を引っこ抜く。もちろん、傷なんて少しもついてない。そりゃそうだ。

 でも、本当の事を言ってるから何ともないんだ、と考えれば。つい顔がにやけてしまう。例え棒読みでも、ふざけた言い方でも、抵抗なく「好き」と言われるのはすごく嬉しい。

 

「じゃあ次はチョビ子だねー」

「はぁ?」

 

 話の流れからしてみれば確かにそうだけど。

 まぁ、アンチョビさんの反応は正しいと思う。

 どうして、嘘を吐くと手が抜けなくなるなんていわくのあるところで、男の好き嫌いを口にしないといけないのか。わけが分からないだろう。

 でも。今日会ったばかりだけど、アンチョビさんの言葉や態度の端々に好意っぽいものを感じてはいる。まほいわく、オレの対応の仕方というか、無意識でやっているらしい口説きが、彼女をその気にさせているらしい。

 明るくて楽しくて頼りになって、しかも性格まで可愛らしいお姉さん。そんな人に好意を向けられて嬉しくないはずがない。

 アンチョビさんに目を向ければ、ばっちりと目が合って。

 

「っっ!」

 

 たちまち顔を赤くしてしまう彼女。

 可愛い。

 

「おやおやぁ? チョビ子もまんざらじゃないみたいだねぇ」

「角谷ぃ……」

 

 聞いてみたい気持ちはある。アンチョビさんみたいな魅力的な人に好意を持たれているかどうか。出来るのなら確認してみたいに決まっている。

 でも、無理強いするのは違うだろう。しかも相手が目の前にいるんだ。内容がどうだったとしても気まずくなってしまう。

 

「アンチョビさん、別にやらなきゃいけないってわけじゃ……」

「いいや。ここまで言われたらこのアンチョビ、ドゥーチェの名がすたる。やってやろうじゃないか!」

 

 フォローに入ろうとしたら、当人に一蹴されてしまった。

 いやいや、そんな恥ずかしそうな顔で意気込まれても。どれだけ胸キュンさせるつもりなのかこの人は。

 とりあえず。煽るだけ煽ってニヤついている会長と、良く見ると少し口元を上げているまほにお仕置きをしておこう。

 ふたりの頭をがっしりとわしづかみにして。軽く力を込めて、握りしめる。

 うわー、やめろーとか、笑い半分の声を上げる会長。全然意に介していないのが丸分かりだ。

 まほは、むしろつかんだ手に自分の手を添えてきた。なにそれ。

 あー。馴れ馴れしいやり取りが、あまり経験のないスキンシップになってるとか。そういうのかもしれない。

 なんて風に。見方によってはイチャついてるように映る俺たちを、アンチョビさんはジト目で見つめてくる。真実の口に手を差し入れた姿と相まって、なかなかにシュールな感じ。

 

「お前たち。私にこんなことをやらせておいて、何をしてるんだ……」

「見ての通り、イチャついてるんだ」

「違うから。まほちゃん、違うから」

「平気だぞチョビ子。無事に手が引き抜ければ仲間に入れるから」

「だからそういうんじゃないって言ってるだろ!」

 

 アンチョビさんが吼える。恥ずかしさで顔を赤くしっ放しの彼女からは、迫力よりも可愛らしさしか感じられない。うん、眼福だな。

 というか、会長。さりげなく自分もイチャつく仲間に入れてたけどいいの?

 

「そもそも角谷、お前は」

 

 ある種の羞恥プレイに耐えられなくなったのか。アンチョビさんは手を引き抜こうとする。そして、まほと会長に突っかかろうとした。

 したのだが。

 

「え?」

「ん?」

「どうしたアンチョビ」

「チョビ子、まさか」

 

 真実の口に突っ込んだままの手を、アンチョビさんが凝視した。

 信じられないものを見たように。

 それからゆっくりと、オレたちの方に目を向けて。

 

「……手が、抜けないんだ」

 

 マジかよ。

 え、ふざけてるんじゃないの?

 羞恥で赤くなっていたアンチョビさんの顔が、焦りで青くなっていく。

 

「本当に効果あるんだねぇコレ」

「すごいな。ローマから分霊が来ているわけだな」

「いやいやいやいや。何言ってんの」

 

 何を「納得した」みたいな顔で冷静にしてるのふたりとも。

 真相がどうあれ、手が抜けなくなったのは大問題でしょ。

 慌ててアンチョビさんに近寄って、彼女の手を咥え込んだ穴を覗き込む。

 ……よく分からん。

 拳を握ってるから手が出てこないとか、そういうこと?

 アンチョビさんはもうパニック状態だ。無理やり引き抜こうとして、力を込めてグイグイ腕を引っ張り始める。

 

「いやいやいや待ってアンチョビさん。強引に引っ張ったら、手が傷ついちゃう」

「でもな大瀬良、本当に抜けないんだぞ! どうする、どうしたら!」

「あー。はいはい落ち着いて。クールクール」

 

 あわあわと大混乱のアンチョビさん。というか、もう半泣きになってる。申し訳ないけど、慌てふためく様子がむっちゃ可愛いと思ってしまった。

 

「俊一を好意的に見ていない、と言ってしまったからかもな」

「つまりチョビ子が本心を言わなかったから、真実の口が噛みついたわけだね」

「そういうことだろう」

「いやー、すごいなー」

「ふたりとも煽るのはやめて頼むから」

 

 まほと会長が覗き込んでくる。どうしてそんなに落ち着いていられるのか。

 しょせんは岩の切れ目でしかないんだから、落ち着けば抜けるはずなのに。まほと会長の言葉を聞いて、アンチョビさんがまた慌て出す。

 でも、手が抜けなくなった焦りとはちょっと違うような気がするんだが。

 

「アンチョビ。本当の気持ちを言えばきっと手は抜けるぞ」

「チョビ子。素直になりなよー」

 

 告白を強要するような真似をしないでくれ。嬉しいけど、嬉しくない。

 つまり「気になる異性として見ていない」というセリフが、真実の口に咎められたのだと言いたいんだろう。

 分かるよ。分かるけど。

 無理に好意を向けさせるみたいで、なんかイヤだ。

 3人とも落ち着け、と言おうとしたら。

 

「むがっ」

「俊一は、少し大人しくしていような」

 

 まほに背中から抱きつかれ、そのまま口を手でふさがれた。

 その横で、意地の悪そうな笑みを浮かべた会長が、アンチョビさんに囁く。

 

「チョビ子。本当に、そういうんじゃないの?」

「くっ……」

 

 さっきの、オレに対する好意だとかイチャつくだとか、それに対して言ったことについてだろう。アンチョビさんは、会長の問い掛けに言いあぐねている。

 ということはつまり、「そういう」ことなのだと。答えているようなものだった。

 オレにも分かってしまう。

 まいったな。

 胸がドキドキして、鼓動が速くなる。

 

「……今の自分にとって、一番近いところにいる男になっているぞ」

「つまり?」

「好きに、なりかけてる」

 

 小さな声で、つぶやくアンチョビさん。

 それはしっかり、オレの耳にも届いた。

 会長が、アンチョビさんの手を取ってそっと引っ張る。

 さっきまで騒いでいたのが嘘のように、あっさりと、真実の口から抜けた。

 アンチョビさんが、自分の手をさすりながらこちらを見つめてくる。恥ずかしそうに、同時にどこか悔しそうに。ふてくされるように見上げる彼女は、なんというか、とんでもなく可愛らしかった。

 でも、さ。

 

「まほちゃんも会長も、さすがにひどいでしょ今のは」

 

 とりあえずひと言言っておかないと。アンチョビさんに告白を強要するような真似はどうかと思う。しかも当人の前だぞ。逆の立場だったら恥ずかしくて死ぬかもしれない。

 これはお仕置きすべき事案だろう。

 改めて、ふたりの頭をがっしとつかむ。さっきよりも少し力をこめて。

 

「いやさ、どう見ても好意があるのは丸分かりだったからさ。いっそはっきりさせた方が大瀬良くんのためにも、チョビ子のためにもなる、ってイタタタタタ待ってギブ、ギブ!」

「好意を抱く相手と通じ合えないままでいるのは辛い。戦車道と同じく、落とせる時に確実に落としておいた方が……。む、俊一強いぞ、頭を握る手が強い、待て、ちょっと待ってくれ」

 

 いやもう本当に、何を言ってるんだこのふたりは。思わず呆れて、両手にすんごく力をこめてしまったよ。ギリギリと。

 正面から頭をわしづかみされて、悶える会長とまほ。少し反省しなさい。

 さて。

 お仕置きを実行してから、アンチョビさんと向き合う。

 びくりと、身を縮める彼女。

 ……ずっと見せていた明るさと元気さが、鳴りを潜めてしまっている。

 まいったな。

 身勝手かもしれないけど、そんな表情は見たくないなぁ。

 

「アンチョビさん」

 

 彼女の前に膝をついて、真実の口にかまれた手を取る。労わるように、優しく包み込んで、撫で、さする。

 

「今日初めて会ったばかりなのに、そこまで言ってもらえてすごく嬉しい。ありがとう」

 

 細い指、柔らかな手を慈しみながら、アンチョビさんの気持ちに感動していることを伝える。嬉しい。本当に嬉しい。

 でも。その気持ちに応えてしまっていいのか、とも思ってしまう。

 オレにはすでに恋人がいる。しかも3人も。

 世間的には、女の子を三股掛けている最低野郎なのだ。

 彼女たちと別れるつもりは微塵もない。女の子たちを弄ぶクズ野郎という誹りは甘んじて受け入れるし、彼女たちが「あんな奴に騙されて」などと言われないような男になろうとも思っている。

 

「アンチョビさんに好かれるのは、踊り出したくなるほど嬉しい。でもさ、端から見たら、クズ男の4番目の女、になっちゃうよ?」

 

 年頃の男はオレだけってわけじゃないし。オレよりもイケメンやイイ男なんてのはたくさんいるだろう。アンチョビさんみたいな女性だったら、いい男がより取り見取りでも不思議じゃない。

 オレ自身は他の女の子に目移りしてるのに、彼女には他の男に惹かれてほしくないっていう、馬鹿みたいな独占欲も持っている。もちろん、他の男に目移りされないように、オレの方が捨てられないように、常に精進していくけれど。

 好きになった女の子は全員抱きしめたい。

 そんな奴だからオレは。

 女の子から見たら、ロマンチックからは程遠い男だと思うよ?

 

「アンチョビさん、それでもいいの?」

 

 オレ、その気になったら手放さないからね。

 なんてことを言ったら。

 

「大瀬良。お前が私を気遣ってくれてるのは分かる。それこそ『ローマの休日』みたいに、離れた方が私のためだなんてことを考えてるだろう」

 

 当たりだ。

 オレの方の中では、とても複雑な感情が入り乱れてる。アンチョビさんをひとり占めしたいと思う一方で、オレなんかにはもったいない女性だとも思ってる。

 アンチョビさんは、さっきまでしぼんでいたのが嘘みたいに堂々と胸を張った。見くびるな、と言わんばかりに。

 

「角谷や西住に煽られた勢い、というのは否定しないが。お前に対する好意はきちんとある。むしろ自覚してみて、今の気持ちは悪くないと思っているぞ」

 

 これから先のことは分からない。

 だが今一番、一緒にいて心地いいと思える異性。

 それがオレだと。

 

「今日会ったばかりだし、他にも女がいても、その。す、好きと言うのも、やぶさかじゃないぞ」

 

 好き、というところで、自信満々だった態度が途端に可愛らしくなる。相変わらず顔を赤くして、少しもじつきながら。アンチョビさんはそう言ってくれた。

 ……覚悟を決めるか。

 オレは手を取って立ち上がり。彼女のおでこに、額をつけた。

 身長差から、オレの方が少し見下ろすような形になって。至近距離で見つめ合う。

 アンチョビさんは少し驚いた顔をするも、目線は外そうとしない。

 

「こんな女たらしを好きになってくれて、ありがとう」

「お前、自覚はあったのか」

「自覚はあるけど、意識はしてないから。ナチュラルに口説くなって言われる」

「実際に私を堕としに掛かってたろ。あれが無意識なんだから大したものだな」

 

 まぁそのおかげで、アンチョビさんという素敵な女性と仲良くなれたんだから。万々歳だよね。

 

「こいつはもう、本当に……」

 

 苦笑するアンチョビさん。呆れられてしまった。

 でも、彼女の表情は柔らかい。しょうがないなぁ、と、年上のお姉さんが世話を焼いてくれるような。そんな雰囲気を見せてくれる。

 うん。やっぱり魅力的だな。

 

「オレも、アンチョビさんのこと好きだわ」

「ふぁっ!」

 

 おでこ同士をくっつけた距離でいきなり告白。素っ頓狂な声を上げたアンチョビさんがすっごく可愛い。やべぇ。誰にも渡さないぞー、って力いっぱい抱きしめたいくらい。

 そうしたいのやまやまなんだが。その前にやっておかないといけないことが。

 4人目ができてしまいましたと、恋人たちに土下座しないと。

 まほと、みほと、柚子に、許しを乞わないといけない。

 

「だから、今はまだ『友達以上、恋人未満』でお願いします」

 

 すぐ恋人になれるよう努力するので。

 情けないというか、クズいことを言っているとは我ながら思うけど。オレなりに誠心誠意を込めて、より良い関係を保っていきたいという一念なので。なにとぞご容赦を。

 

「なんだろう。恋愛小説で感じたようなものじゃない、奇妙なむずがゆさが」

 

 言ってるセリフはなかなか最低なのにな。

 そんなことを言うアンチョビさん。いやもうまったく、おっしゃる通りで。

 

「分かった。やることを済ませて、さっさと奪いに来い。あんまり遅くなると拗ねるからな」

「はい。頑張ります」

 

 オレは再び、アンチョビさんの手を取って。

 真実の口にかまれたところに口づけをする。

 彼女は驚き。

 表情を緩めて。

 まぶしいくらいの笑顔を見せてくれた。

 

 

 

 そんなオレとアンチョビさんの後ろで。

 会長とまほが何やら話している。

 

「確かに煽りはしたけど。まさかこんな流れになるとは思わなかった」

「ようこそアンチョビ。私は歓迎するぞ」

 

 会長は、男女の恋仲が成り立つ瞬間を目の当たりにして驚きかつおののき。

 まほは、新しい友人が違った意味でも真の仲間となったことを純粋に喜んだ。

 

 

 ―続く―




ドゥーチェはしばし、プラトニックな遠距離ラブを強いられることに。
槇村です。御機嫌如何。


想像した以上に長くなってしまったアンツィオ編。
「エロが続いたので今度はイチャイチャをテコ入れしよう」
そう考えたはいいが、変に独自設定も入って長引いてしまう始末。
エロとイチャイチャを、バランスよく偏らないようにしないと。反省。
次話、ちょっと思いついた話が入ります。
その次で聖グロ入りです。

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