2コマ堕ち的ハーレムエロす in ガルパン 作:槇村 a.k.a. ゆきむらちひろ
角谷杏という人の性格を考えれば、覗きくらいはするかなーという気も確かにする。なんというか、こちらをからかうこと前提で。
でも見られた側としては、どう反応すればいいのやら。
だって、恋人と裸でイチャついていたら、学校の先輩が雪崩れ込んできたんだぞ?
どこから見ていたのかは分からない。けどスカートの中に手を差し込んでいたから。ついつい自分で慰めてしまったってところか。
もしこれが逆に、オレが覗いていた立場だったらどうだろうか。つい覗いてしまい、扉が開いて、チ○コを弄っているところを見られてしまったというのに等しい。
うん。死にたくなるなコレ。
「いや、その、これはだね」
慰める云々はともかく。こんなにテンパってる会長は珍しい。初めて見たかも。
生徒会長っていう立場もあるのかもしれないけど、普段の彼女は、堂々としているというか、ふてぶてしいというか、そんなところを表に出している。あとは悪戯好きな、人の悪さみたいなところも。
それが今は絶賛パニック中なのが見て分かる。
まぁ、後輩の情事を覗き見ながらオナニーをしていて、それがバレたなら無理もない。
おっと。決めつける前に一応確認しておこうかな。転げ出た勢いで偶然、手がスカートの中に入り込んだだけかもしれないしね。うん。
「会長。何してたんですか?」
ごく普通に声を掛けた、つもり。
でも会長は大袈裟なくらいに身体を震わせた。びくっ、という感じで。
スカートの中から手を抜き出して、体勢を整えた。正座になって。
……えーと。何それ。
片や、風呂場で正座をする制服姿の女子校生。
片や、全裸で抱き合っている恋人同士の男女。
なんだろう。むっちゃシュールな光景だな。
まぁいいや。それはいいとして。
「ちなみに、どこから覗いてました?」
「えーと。大瀬良くんが、西住さんの身体を洗い始めたところ、かな」
あ、正直に答えてきた。
そりゃそうか。いまさらごまかしても覗いていたのは確定だもんね。
というか、どうすんのコレ。
変に気遣って、このままなかったことにしたところでどうなるか。
会長とオレの間の空気が、これからずっと微妙なものになってしまう。明日の聖グロ行きはおろか、大洗学園に戻ってからもギクシャクしてしまいそう。
それは避けたいなぁ。
会長との悪友っぽくて緩い関係は、結構好きなのだ。オレが一方的にそう思ってるだけかもしれないけれど、気安く接することができる間柄は失くしたくない。
ならどうするか。
……会長自身がやらかした恥ずかしさを、上塗りしてみようか。
少なくとも、オレにやらされて恥ずかしい思いをしたってことに置き換われば、オレのせいってことで会長の気が楽にならないかな。
ならないかね?
いつまでも会長を正座させておけないし。
オレとまほも湯冷めしてしまいそうなので。
それの線でいこうか。
「会長。いつまでも風呂場で制服姿ってのもアレなので」
ひとつ提案をして、ひとまず脱衣所に戻ってもらった。
あくまでも、お願いだ。
お願いだよ? うん。
「弱いところを見つけてすかさず突いてくる。さすがだな俊一」
「まほちゃんのその言い方、すっごい人聞きが悪いんだけど」
「素直に感心しているんだが」
「悪意がないなら、なおさらタチが悪いよ」
まほがオーガズムから少し落ち着いて。絶頂で少し意識を飛ばしながらも、何があったかは把握していた彼女と他愛のないおしゃべり。会話をしながら、髪を洗う彼女をわしゃわしゃと手伝っていると。
再び、風呂場の扉が開いた。
「来たぞ、大瀬良くん」
「おぉ……」
現れたのは、制服を脱いで、下着姿になった会長だ。
彼女に言ったのは簡単なこと。
覗き見るくらいなら、一緒に風呂に入って堂々と見なよ。
裸になるのは恥ずかしいだろうから、下着姿で入ればいいんじゃないかな。
さすがに制服が濡れるのは困るだろうし、替えの下着はあるでしょ?
だったらもう、一緒に入っちゃおうぜ!
みたいな。
……我ながら「何言ってんだオマエ」と突っ込まずにはいられない。
かえって関係が悪くなるんじゃないかと、今さらながら思ってしまう。オレの方も、乳繰り合ってるところを学校の先輩に見られて慌ててたのかも。
でも会長の方も、オレの頭の悪い言葉に従ってしまっていた。負けず劣らず混乱したまま、妙な空気に呑まれてしまったのかもしれない。
なんてことを考えていても。女の子の下着姿を見て喜んでしまうあたり、単純でダメ男と言われても反論できない。
だって下着姿の会長が、恥ずかしそうにもじもじしてるんだよ?
むっちゃ可愛いじゃない。
「あんまりじっと見るな」
「いやいや。会長には悪いけど、それは無理でしょ」
「そもそも、西住さんや小山に比べたら、見ても面白くないだろう」
なんて自虐的なことを言う会長。
んー。まぁ。
小柄で身長も低く、はっきり言うと身体的な起伏に乏しい。柚子さんとか桃ちゃん先輩とか、すぐ近くにいる人が、制服の上からでも分かるくらいスタイルいいから。余計にそう見えてしまうのは仕方ないと思う。
じゃあ会長に魅力がないのかといえば、そんなことはまったくない。
転入してから、柚子さん絡みでそれなりにつき合いが増えた。なんというか、仲良くなるほど面白くなるタイプじゃないかなこの人。一緒にいて飽きない。
そんな会長が今、目の前で下着姿になって、恥ずかしそうにしてるんだもの。
普段とのギャップが、なんというか、うん。クルね。
あまり飾り気のない、白のシンプルなショーツとブラジャー。スリムな身体をさらに縮ませて、見られる範囲を少なくしようとしているような仕草が可愛らしい。
恥ずかしそうに顔を赤くしているのも新鮮だ。まぁそれは、何より下着姿だからね。仕方ない。
もっと恥ずかしがらせて、覗いていたとか、自分で慰めてたとかを有耶無耶にしてしまおう。
なんてことを、考えたわけなんだ。
そういうわけで。
3人で仲良く……仲良く? お風呂に入ることになった。
「なんで一緒に入ることになったんだ……」
「裸のつき合いという奴だ」
「普通は同年代の男女でそんなものはないだろ」
オレの真ん前で、まほと会長が言い合いをしてる。湯船を満たすお湯の心地よさと、彼女たちのやり取りの微笑ましさ、密着する女の子の身体の柔らかさに、頬が緩んでくる。
今のオレたちは、3人揃って同じ湯船に浸かっている。
一番外側で、オレが浴槽に寄り掛かり。
まほは、オレの前に座って背中をあずけてくる。
会長が、さらにその前に座って、身を縮めていた。
ちなみに会長は下着姿のままお湯に浸かっていて。オレとまほは当然、裸のままだ。
浴槽はゆったりとしているけれど、3人も連なって入ればさすがにぎゅうぎゅう。でも女の子とぴったり密着できるから、オレとしてはむしろウェルカムだ。
間にまほがいるから、会長に股間を押しつけるようなこともない。まほはむしろ、オレにお尻を押しつけてくるから気持ちいい。ありがとうございます。
「下着姿でお風呂に入ってるのって、ものすごく変な感じがする」
「じゃあ脱ぐか? 今なら間に私がいるから、俊一に裸は見られないぞ」
「脱ぐわけないでしょ。何言ってんの西住さん」
「会長、遠慮するな。手伝ってやろう」
「だから脱がないって。手を回さないで、おい、こら!」
同じ湯舟の中で、年上のお姉さんふたりがじゃれ合う。
眼福だ。
うん。仲良きことは美しきことかな。
「いやいや、どこが仲良く見えるのさ!」
「あれ、会長に心を読まれた?」
「口に出してたよ! 大瀬良くん素ボケか!」
おや、それは失礼。
会長が、顔だけオレの方に向けて吼える。
といっても本気で嫌がってるようには見えない。ノリとツッコミの勢いで声が高くなってしまったような感じ。
でもまぁ、ボケっていうよりもさ。
「年上のお姉さんたちと一緒にお風呂、とか想像したこともなかったから。頭が少しのぼせてるのかもしれないなぁ」
「ふむ。嬉しいか? 俊一」
「むっちゃ嬉しい」
「よし。大洗に戻ったら、また一緒に入ろう」
「ぜひお願いします」
「……わたし、なんでこのバカップルと一緒にお風呂に入ってるんだろう」
目の前の、まほのうなじに唇を寄せるオレ。
くすぐったそうに身をよじる、まほ。
そんなオレたちをよそに、溜め息を吐く会長。
会長は、すぐ目の前にある浴槽の縁に、額を乗せる。脱力した感じの背中が、まほの身体越しに見えた。
哀愁漂う、と言えばいいのかもしれないけれど。見えるのはブラジャー姿の背中と、華奢で細い肩。オレとしてはご褒美としか言いようがない。
「……あー。なんだか、あれこれ考えるのも馬鹿らしくなってきちゃったな」
うなだれながら、会長はそんなことをこぼす。
うん。学園のために考えなきゃいけないことはいろいろあるんだろうけど。根詰めて考え事してると疲れちゃうよね。
「戦車道チームをイチから立ち上げようとしてるんだからな。考えることも、やらなければいけないことも山積みだろう。大変だというのは良く分かる」
「そっちの方面では、オレは何も手伝えることがないからなぁ。疲れてるところに、甘いものを差し入れるくらい?」
「気持ちは嬉しいんだが。あまりそういうものが続くと、いろいろ気になってしまうぞ。体型とかな」
「まほちゃんのどこに気にする要素があるのさ」
「男には分からない、見えないところだ。これはみほもそうだぞ?」
「乙女心を察しろというやつか。難易度高いなぁ」
軽い口調で、言葉のキャッチボールをするオレとまほ。
あえて、難しく考えないようなことを口にしてみたんだけれど。
「ふたりとも、気遣いはありがたいんだけど。ちょーっと、違うんだよねぇ」
どうやらオレたちが考えてたこととは少し違うらしい。
今の会長が頭を悩ませてるって、戦車道のことじゃないの?
なんというか、踏ん切りがつかずに言いよどんでいる、みたいな感じの会長。
らしくない、という気もする。
でも、そういう弱いところや素の部分を見せてくれている、と考えれば。ちょっと嬉しくなってくる。まぁその場の流れとはいえ、下着姿で一緒に風呂に入るのを良しとするくらいの親密度はあるということだろう。
……普通に考えて、それってもう恋人レベルじゃないかな?
「もうさ、この際だからぶっちゃけるけど」
そんな風に切り出して。会長いわく。
友人であるアンチョビさんが、今日会ったばかりの後輩とくっついた。
まさかの急展開に驚きながらも、「ローマの休日」ツアーでのオレとのやり取りを見て、乙女チックなところのあるアンチョビさんが揺れてしまうのも無理はないと思ったらしい。
でも、会長の中で何かモヤモヤしたものが残った。
自分の方が、オレとのつき合いは長いのに、と。
「ローマの休日」ツアーでも、自分も同じような扱いをされて、やり取りをしていたのに。アンチョビさんが、オレに素直な感情をぶつけてきたのが悔しかった。
なんてことを、会長は言う。
……えっと。それってつまり。
「ようやく自覚したというか。わたしも、キミのことが好きっぽいんだよね」
会長、杏さんが。
告白してきた。
湯船に浸かったまま座り込み、オレの方を振り向いて。
たはは、と、彼女はどこか脱力した顔で笑う。
「正直、むちゃくちゃ嬉しい。嬉しいんですけど」
なんで、オレなんだろうか。
ご存じの通り、オレは女の子を何股も掛けている男だよ? みほ、まほ、柚子さんの3人と同時につき合ってるのに、さらにアンチョビさんが加わって。四股が確定しているスケコマシだ。さらに言えば、会長の羞恥心やら何やらにつけ込むように、下着姿になって一緒に風呂に入ろうぜ、とか言っちゃう最低男ですよ?
「どう考えても、オレって恋人候補にはならない奴でしょ」
「そうだねぇ。事実だけ並べたら、むしろ女の敵だよね」
うん。オレもそう思うわ。
じゃあ、どうして?
「なんかさ。大瀬良くんと一緒にいると、心地いいんだよね」
「ふむ。それは分かるぞ。ちょっとした気遣いや、ふとしたところできちんと自分を見てくれていることに気づくと嬉しくなる。安心感のようなものがあるな、俊一には」
「あるねー。あと私の場合、ちゃんと同年代の女扱いしてくれるのも、大瀬良くんが初めてだったんだよね。ほら、わたしって見掛けは幼い感じで、結構グイグイ先導するタイプだから。男の子から距離を感じることも多くてね」
なんてことを、杏さんはニヤつきながら言う。
……えっと。これはどういう状況なんだろうか。
旅先の旅館の風呂場で。
全裸の恋人を間に挟んで。
半裸の先輩に告白されている。
しかも目の前で、ふたりからオレのいいところを挙げられながら褒められる。
訳が分からないぞ。なんだこれ。
「昼間にさ。西住さん、身も心も任せちゃえば気持ちいいみたいなこと言ってたでしょ」
「言ったな」
「大瀬良くんの無意識な口説き文句。女の子として、かなり胸にキュンときたんだよね。で、チョビ子がさ、うらやましくなって。さっきも西住さんが身体を洗ってもらってるのを見てさ。いいなー、なんて思っちゃって」
「なるほど。会長、もう堕ちてるじゃないか」
「うん。もう駄目だわ」
まほと、杏さんが、顔を合わせて笑う。なんだか通じ合ってる様子。
男として、女の子に好かれるのはものすごく嬉しいし。向けられた好意にはきちんと向かいたいし、返したいと思っている。
オレ自身は、彼女の想いに応えたいと思う。
でもオレって、もう何人も女の子に手を出してる男なわけで。
「会ったばかりの会長の友だちを口説いて、4人目の恋人にしちゃうような男ですよ? となると、会長は5人目の恋人ってことになっちゃうんだけど。それはいいの?」
「んー。まぁ、思うところがないと言ったら嘘になるけどね」
普通はそうだよ。みほも、まほも、柚子さんも、アンチョビさんも、できた女過ぎて頭が上がらない。でもオレ自身は、彼女たちを手放すつもりは毛頭ないし、好かれるように努力するし、嫌われそうなことはしないように心掛けている。
「それ。それだよ、大瀬良くん」
こちらを振り向きながら、杏さんが何かを指摘する。
え、それってどれ?
「女の子への接し方。恋人のために自分を磨く、みたいなつもりなのかもしれないけどさ。それ以外の娘にも変わらないその態度はさ、女の子にしてみれば悪い気はしないんだよね。普通に好感度上がるよ?」
男の数が少ない元女子校ならなおさらだ、と。杏さんは言う。
いやいや、そんなこと言われても。
「実際、わたしも悪い気はしなかったし。大瀬良くんとの掛け合いみたいなのも楽しかった。男の子の友人も特にいなかったから、なおさらねぇ」
それって比較対象が少ないから、オレが良さげに見えただけなんじゃ……。
「前にも言ったけどさ。女性関係を除けば、大瀬良くんっていい男だと思ってたんだよ。逆に言えば、女性関係に納得できるんならすごくレベルの高い男の子なんだなって」
「納得って。むしろそこが大問題なんじゃ?」
「でもさ。大瀬良くんって、恋人たちにはすっごいマメだし、気遣いもすごいでしょ」
「慕ってくれてる女の子たちなんだから、当たり前じゃない?」
「当たり前だと言えるのがもう、ポイント高いよねぇ」
続けて彼女いわく。
オレは、一緒にいて楽しい異性。
女の子が増えて、自分との仲が薄くなるんじゃないかと考えて寂しくなった。
そのきっかけが友人だったということで、焦ったのは認める。
でも、もっとオレと密な関係でいたい、と思ったことは事実だと。
「だからさ」
杏さんが立ち上がって、こちらを振り向いた。
お湯に濡れて透けた下着を隠そうともせずに、オレを見つめてくる。
「わたしも、キミの恋人にしてくれないかな」
改めて、正面から。
告白してくれた。
普段でも見せる、少し不敵な感じの笑みを浮かべながら。
でも、どこか、少し不安っぽい感じの陰もにじませて。
「杏さんが好意を寄せてくれるのは、すっごい嬉しい。でも、さ」
我ながら、変なところで言葉を切ってしまった。
杏さんが、顔色を変える。
ごめんなさい。そんな顔をさせるつもりはないんです。
「オレ、むちゃくちゃ独占欲強いよ? みほちゃんも、まほちゃんも、柚子さんも、アンチョビさんも、みんな手放すつもりはないし。杏さんも、もう離さないよ?」
杏さんも受け入れたい。
でもそれで恋人たちが悲しんだり怒ったりするのはどうかと思う。
腕の中に納まっているまほを、抱きしめる。
「昼にアンチョビさんを受け入れて、その日の夜に今度は杏さんって。この見境のなさ、まほちゃんとしてはどうなの? どれだけ増やすつもりだこいつは、とか思わないの?」
「昼間も言ったが、私としては、何人増えても構わないと思っている。ちゃんと私も構ってくれるのならな」
ずっと可愛がってくれるんだろう? と。オレの方へ振り向きながら、まほが微笑む。そして頬にキスをしてくる。
あぁ、甘やかされてダメになっていくような感覚……。
でもこれが、心地いい。
「みほも、俊一が構ってくれて、甘えさせてくれれば、特に非難はしないと思うぞ。柚子は、私と同じように横から入ってきた負い目みたいなものがあるからな。きちんと話せば、関係を荒らすようなことはしないだろう」
「アンチョビさんも、なんだか大らかと言うか、男前と言おうか、他に女がいても構わんみたいなこと言ってたし」
「アンチョビも、私と同じく横入りだという自覚はあるみたいだからな」
「なんだその男に都合がいい考え方。マジでダメになっちゃいそうなんだけど」
本当に、みんな天使。可愛くて、もう、可愛い。いいのか本当に。
ダメって言われても、どうにかして全員抱きしめ続けられるよう頑張るけどね。
なんてことを考えていたら。
「そういうわけだから、な」
まほが裸のまま、正面から抱きついてくる。おっぱいがオレの胸板でむにゅりと潰れて、形を変える。とても眼福だ。
さらに手を首に回してきて、柔らかな膨らみをもっと押しつけてくる。
「会長が、杏が加わったとしても。お前の恋人たちは受け入れてくると思うぞ?」
可愛らしく、オレを見上げながら。まほはそんなことを言ってくる。
……正直なところ。自分の中ではもう、杏さんを他の男にはやりたくなくなってる。もっと、オレのことを見てもらえるようにならなきゃ、と思っている。
同時に、また恋人たちに土下座でも何でもして説得しなければ、とも。
どんどん、土下座の価値が下がってくなぁ。
とにかく、だ。
「杏さん」
今は、彼女に答えを返さないと。
返事はもちろん、決まってる。
「大事にするからさ。オレの恋人になってくれない?」
杏さんに、手を伸ばす。
彼女は照れ臭そうに。でも、嬉しそうに。
オレの手を取ってくれた。
「いやぁ、なんというかさ。照れくさいね」
愛の告白、それを受け入れた、受け入れられた、っていう場面だから。照れくさかったり恥ずかしかったりするのは当たり前。でもそれ以上に、喜びだったり、嬉しさだったり、感情が満たされていく気持ちの方が強い。全裸と半裸で向き合ってはにかんでいる、意味不明な状況も気にならない。
……いやちょっと待て。意味不明過ぎるよね。
同じ湯船の中で、まほにしがみつかれている。さらに手を、杏さんに取られたまま。裸の年上お姉さんと、下着姿の年上お姉さんに、同時に迫られているような体勢になっていた。
「なんだおい、この状態は」
少し我に返って、逆に混乱をきたすという。わけが分からない。
もちろん嬉しいんだけどね。
と思っていると。
手を握ったままの杏さんが、オレに顔を近づけてきた。
抱きついているまほの上を通り過ぎて。
顔を赤くした杏さんの、唇が。
「いやちょっと待って」
「もがっ」
重なりそうになったところを、もう片方の手で拒む。
杏さんの顔を容赦なくつかんで、唇まで距離ゼロになる寸前で接近を阻止した。
くぐもった変な声をあげる杏さん。手のひらに唇の感触が広がったのが、ちょっと気持ちいい。
じゃなくって。
「ちょっと大瀬良くん。シチュエーションはともかく、雰囲気はいい感じだったんだからさ。今はキスするところだったでしょ。しかも女の方からファーストキスに行こうとしてたのに。なにさ、この仕打ちは」
「いやいや、気持ちはすっごく嬉しいよ? 赤くなりながらキス顔で近づいてくる杏さん、めちゃくちゃ可愛かったし」
本当に。いいもん見れた。胸キュンものです。
ファーストキスと言ってくれるのも、すっごく光栄。
でも。
「申し訳ないけど、まだキスはできません」
きっぱりと告げる。
虚を突かれたからか、杏さんは少し呆けたような顔をして。
すぐに、ふくれたような顔になる。
あ、その顔は初めて見た。
ふくれっ面でも可愛いとか、反則でしょ。
「わけ分かんないことで褒めてもごまかされないからね。女の子のファーストキスを拒むなんて、何が気に入らないのさ」
杏さんのふくれっ面が、赤くなったぞ。あれ、可愛くて反則とか声に出てた?
でも本当のことだから仕方がない。くるくる変わる表情もいいね。とてもいい。
「俊一。さすがに今のは、私もどうかと思うんだが」
頭の中でひとり悶えていたら。
まほが、オレと杏さんに挟まれながら非難の声をあげてくる。
確かにね、言わんとすることは分かるんだけどさ。
「先に告白してくれたアンチョビさんとは、まだハグしかしてないんだよ? それなのに、杏さんと先にキスしちゃうのは、アンチョビさんに申し訳ないじゃない」
できればキスは、アンチョビさんと先にしたい。してあげたい。杏さんは、微妙に裸のつき合いを先にしてしまった感はあるけど。申し訳ないけれど、ここで変にサカってしまうんじゃなくて、同じ恋人の気持ちを大事にしてあげたいんですよ。はい。
ということを口にしてみれば。
目の前に迫っていた杏さんが、悔しそうに身を引いてくれる。
「悔しいけど、乙女心としては理解できる。くそぅ、チョビ子め」
「杏さん、くそぅとか言わない」
「でもね大瀬良くん。わたしの中でも結構、乙女心が盛り上がってるんだけど」
自分でも、こんな気持ちになるなんてびっくりだ、という杏さん。
確かに、男とベタベタするってイメージは湧いてこないな。
「小山がしてたみたいな、イチャイチャができると思ったのにさ。意を決して告白したらこんな扱いをされるなんて」
「人聞きが悪い。何を言われようと、今日はおあずけです。せめてアンチョビさんに話をつけてからじゃないと。あともちろん、エッチもダメだから」
「あ、いや、そこまではさすがに。告白したその日にシちゃうには、まだ勇気が足りないよ」
「濡れて下着がスケスケな状態なのにか?」
「西住さん、そう言うことは言わないで。これは不可抗力だから」
「そもそも下着で入浴する羽目になったのは、杏が覗きながら自慰」
「言わないで! 言わないで西住さん! ほじくり返さないで!」
まほの容赦のない茶々に戦慄し、声をあげる杏さん。
せっかく、オレも忘れようとしてたのに。思い出しちゃったじゃない。
これだけでは収まらず、まほはさらにぶっ込んでくる。
「ん? ということは、私も今日はおあずけになってしまうのか?」
「あー。そうなるのか、な?」
「ちょっと西住さん、新入りの恋人仲間の前で乳繰り合おうとしてたの?」
「そもそも、覗いてるくらいなら間近で堂々と見ろ、という流れで風呂を一緒にすることになったんだろうに」
「え。大瀬良くん、変なこと言ってるのってわたしの方?」
「いやいや、まほちゃん。それって自分から見せてやるぜってことになるよ」
「それこそ今さらだろう。みほとも柚子とも、一緒に抱いてもらってるんだからな」
「言われてみれば、そうかも」
「ちょっと待って。いきなりハードルの高いこと言われてるんだけど」
「いずれ杏も通らなければいけない道だ。受け入れろ」
はい。複数プレイとか着たままエッチとかが好きなんです。
ハードルの高いことが好きな男でごめんなさい。
「とにかく。今日のところは、杏さんはキスはダメ。エッチもダメ。ハグならオッケー。明日以降どうするかは、朝になったらアンチョビさんと話をしてみて」
ただでさえ遠距離恋愛確定なんだから、アンチョビさんの気持ちを重視します。
でもまぁ、杏さんをおあずけしっ放しってのもアレだから。そのあたりのすり合わせは明日にでも。いや、風呂から出たらすぐ電話して、事情説明をした方がいいか。
なんてことを言って譲らないオレに、杏さんは苦笑い。
「律儀だねぇ、大瀬良くん。それとも、わたしの身体が魅力に乏しいから、後回しでいいやとか思った?」
オレは本気で、先に告白してくれたアンチョビさんに義理立てして、迫る杏さんに待ったを掛けた。杏さんも理解はしてくれたんだろう。おちゃらけた態度と自虐で、場を流そうとしたんだと思う。
でも、なぁ。
「……あー、なるほど。まほちゃんたちが、オレが自虐気味になるのを嫌がる気持ちが今さらだけど分かった」
「だろう。俊一もちゃんと改めるんだぞ? 惚れてる私たちも侮辱していることになるんだからな」
「いちいちごもっともなんだけど。みんながイイ女過ぎるから、こぼしたくなるのも仕方ないと思うんだけどなぁ」
まぁ、オレのことはいいんだよ。今は棚に上げておいて。
杏さんの言葉に、カチンときてしまったわけだ。
「まぁ、さ。西住さんとか小山に比べたら抱き心地も悪いだろうけど」
「はいストップ。そんなことないでしょ」
腰を上げて、湯船から立ち上がり。杏さんに顔を近づける。
いきなりだったからか。少し身を強張らせた彼女。
その隙に、杏さんの頬に手を添えて。
手の方とは逆の耳元に、口を寄せた。
「スタイルがどうこうじゃなくて。杏さんだから、オレは、受け入れたんだよ?」
「あぅ……」
小さな声で、囁く。
添えた手で彼女の頬をそっと撫でる。
耳に、ほんの少しキスをする。
「オレも人のことは言えないんだけどさ。あんまり自分を卑下すると、好きになったオレの気持ちを蔑ろにされてる気分になっちゃうよ」
「そんなつもりじゃ、ん、ない、ん、だけど……」
「じゃあ、もう、そういうことは言わないこと。分かった? 杏さん」
「んっ……。分かった」
いい子だ、と、褒めるように囁きながら。耳元にまた軽くキスをする。囁いてる時にも動く唇が、杏さんの耳にこしょこしょと触れていて。そのたびに彼女は身体を震わせていた。
可愛い。
普段の姿からはうかがえない、しおらしい態度にゾクゾクしてしまう。
杏さん可愛いなぁ、と、こみ上げてくる気持ちのままに。
彼女の頬を撫でて。
指先で耳たぶをくすぐる。
……やばい。このままいろいろとシタくなってしまう。
というか、今のもギリギリアウトじゃない?
杏さんが可愛くて、チ○コもかなりギンギンになっちゃってるよ。
待て。クールになれオレ。ここはステイだ。アンチョビさんを思い出せ。
杏さんにもっと手を出してしまいそうになっていた、その時。
「あむっ」
「ふおっ」
勃起したチ○コが、温かくてヌルヌルした気持ち良さに包まれた。
「んむ、んっ、ん……」
まほが、オレのチ○コを咥え込んでいた。
立ち上がって、杏さんにちょっかいを出していて。まほの目の前でチ○コをぶらぶらさせていたせいか。
何度されても気持ちいい、まほのフェラチオ。
思わぬ不意打ちに腰が震える。まほとの身体の洗いっこと、杏さんの告白とかが重なって、オレも相当興奮していたから。いきなり襲ってきた快感に足の力が抜けてしまう。
「くぅ、うぉっ」
「ひゃっ」
「うわっ」
踏ん張ろうとしたところで。
足をすべらせてしまい。
ばっしゃーんっ
流れるように身体が倒れて、盛大な水音を立てながら湯船に沈んだ。
もちろん、まほと杏さんを巻き込んで。
湯船に沈むオレと。
腰に抱きついていたまほは追いかけるように。
顔に触れていた杏さんは引き込まれた形で。
3人揃って、もつれるように湯船の中でもがく。
「まほちゃん、なに、げほっ、うおぁ」
「ああああ、平気か俊一、ごほ、無事かっ」
「ごほ、ごほっ、かは。西住さん、この、くぅ、このぉ……」
さっきまでの雰囲気はどこへやら。
あわや溺れて息絶え絶えになるという、全裸と半裸の男女3人だった。
―続く―
会長、まさかのおあずけに憤る。(あと読み手も)
槇村です。御機嫌如何。
今回は全編、「裸、裸、下着姿」でお送りしました。
杏さん、恋人の中でも悪友チックな立ち位置になりそうです。
飄々としながら距離感が近い感じ? いいよね。
女の子が赤くなるようなシチュエーションを妄想するの、楽しいなぁ。
やっと聖グロへ行けますよ……。
※ちょこーっとだけ、文面に修正入れました