2コマ堕ち的ハーレムエロす in ガルパン 作:槇村 a.k.a. ゆきむらちひろ
朝、起きると同時に感じたのは、身体に押しつけられている柔らかな感触。
目を開けてすぐ、ホテルの浴衣を着た杏さんの姿が飛び込んでくる。仰向けになったオレの上から抱きつくような体勢で、気持ち良さそうに眠っている。オレも浴衣姿だから、互いに薄着なのもあって。杏さんの身体の感触がほぼダイレクトに伝わってくる。むにゅむにゅとか、ふにふにとか。
「無防備だなぁ」
杏さんがオレの上に。横手には、まほが、可愛らしい寝息を立てている。ゆるく胸を押しつけられていて。ほのかに柔らかさが伝わってくる。
彼女も浴衣姿だ。というか、浴衣が少しはだけていて、胸のふくらみと谷間が際どい感じで見えている。朝からいいものを拝ませてもらって、感謝しかない。素晴らしいものは、何度見ても素晴らしいのだ。つまり、まほのおっぱいは素晴らしい。
いいものというなら、杏さんのリラックスした寝顔もとても可愛い。眺めているだけで幸せを感じてしまう。これはあれか、恋仲になったからこそか。
寝ている間にオレの浴衣も少し緩んで、胸元が少しはだけてしまっていた。そこに杏さんが頬を押しつけていている。杏さんの寝息が直接吹き掛けられて、くすぐったい。
もっと言うと、うつぶせになってる杏さんの胸が、お腹に押しつけられているのも気持ちいい。確かにボリュームがあるとは言えないけど、ふくらみが潰れている感触はあるし。女の子の身体の柔らかさはしっかり感じられる。
「つまり、最高ってわけだな」
胸板に乗っかった杏さんの頭に手を置いて、起こさないように、軽く髪を梳く。撫でられたせいか、彼女は目を閉じたまま少し身じろぎをした。
さて。ここで気づいたことがある。
昨夜は、やや変則的な裸のつき合いがあったものの、なんのかんのでエッチなことはしていない。ぶっちゃけて言えば、盛り上がりはしたけど射精してない。
そのまま朝を迎えたおかげで、朝勃ちそのままにビンビンになっているわけ。下半身が。
しかもそのイチモツを、杏さんのお腹が押しつぶしていた。
浴衣越しとはいえ、彼女の身じろぎで擦られる。その動きに反応してしまう。
杏さんの寝顔を見ながら、無意識に股間を擦られる気持ち良さ。勃起せずにいられようか。朝っぱらから、天国のような地獄。
「困ったな。さっさと起こして危機から脱出すべきか。少しでも長く耐えて寝顔を堪能すべきか」
「……さすがに寝顔の観察は、趣味が悪いんじゃない?」
「え、だって初めて見るレア顔だったから。すっごい可愛かったし」
何気なく声を掛けてきた杏さんに、さらっと言葉を返すオレ。
おはようございます、杏さん。
目を覚ました杏さんに目覚めの挨拶。彼女も「おはよう」を返してくるけれど、少し恥ずかしそうな顔をしている。でも、にやけているのを隠しきれていない。まさか寝たふりをしてたんだろうか。
「これはかなり恥ずかしいな。でも、悪くないね」
顔を伏せて、オレの胸元にぐりぐりと顔を押しつけてきた。その仕草がもう、可愛くて仕方がないぞ。甘えてくる杏さんをしたいようにさせつつ、オレは彼女の頭を撫でる。
普段ツインテールにしている髪は、今は何も留めていない。ストレートにしたままだ。その姿も初めて見たので、すごく新鮮。
慈愛を込めて、撫でながら、長い髪を梳く。杏さんも気持ち良さそうに、さらにぐりぐりと顔を押しつける。
しばらく、そんなゆったりとしたスキンシップを続けていると。脇腹あたりをくすぐられるような感覚。
目を覚ました、まほだった。
「おはよう、まほちゃん。朝からくすぐりって、かなり罰ゲーム感あるよ?」
「おはよう、俊一。なに、目の前でイチャつかれているのを見ていたら、こちらも見てほしいと思ったからな。つい」
確かに、意識はまほに移ったわけだかた、目論見としては成功してるね。
一方で、杏さんとも「おはよう」の挨拶を交わすまほ。
「杏、ずいぶんと吹っ切れたようだな。私が寝ている横で、ひとりでイチャつこうとするとは」
「なに言ってるの。西住さん、とっくに起きてたじゃない」
なんて感じで、オレに引っついたままやり取りを始めるふたり。甘えられるのは嬉しいし、いくらでも歓迎。
だから。
杏さんの髪を梳いていた手をそのままに、オレの胸元に頭を引きつける。
まほは、つかまれていた腕を引き抜いて、彼女の首に回して抱き寄せた。
ふたりの頭を両腕でかき抱く形になる。まさに両手に華状態。まほも、杏さんも、嬉しそうに頬ずりを始めた。タイプの違う年上のお姉さんふたりに甘えられる。朝イチから幸せ一直線だ。
でも。さっきも思ったけど、朝だから。股間が立派に自己主張してるんだよね。
さらに、まほと杏さんが同時に身体を擦りつけてくるから。ふたりの可愛らしさと柔らかさに、もっと反応してしまう。
圧し掛かってる杏さんは、オレが勃起してるのにもう気づいてるはずなんだよな。押しつけてるお腹の下で、チ○コがひくひく動いてるんだもの。
「ねぇ、杏さん。そろそろ本気でどいてくれないかな」
「まだいいじゃん。ひょっとして、抱き着かれるのはイヤだった?」
「そんなことないよ。むしろこちらから抱きしめたいくらい。でもそろそろ、股間がヤバいことに」
もうね、ストレートに言ってしまう。キスもまだなのに、寝起きでぶっかけ未遂してしまうのは、オレとしてもできれば避けたい。
なんて内心は、悲しいことに伝わることもなく。
「大きくなってるねぇ。男の子のアレって、こんなにたくましくなるものなんだ」
軽い言葉で返してくる杏さん。
でも恥ずかしさが消せていないのが、見ただけで分かる。少し顔が赤くなってるからね。
そりゃあそうだろう。杏さんには直接的なことは何もしてないし。まだ着衣でのハグ止まりだから。昨夜は一緒に風呂に入ってしまったとはいえ、杏さんは下着姿だったし。まほとは洗いっこをしたけれど、杏さんとは裸で身体を押しつけるようなスキンシップはしていない。
風呂場で足を滑らせて溺れかけ、何か劣情を催すとかそういう気分はなくなってしまったので。何もせずに出てしまったし。
先に風呂を出た裸のまほと、濡れた下着姿の杏さんの後ろ姿にムラっとしてしまったけど。少し時間を置いて出たら、まほと杏さんが浴衣に着替えてベッドに座っていたのを見て、胸キュンしてしまって。ムラっとしたのがどこかへ行ってしまった。
そのまま3人でベッドの上に座り込んで、ダラダラとおしゃべりをしたり。
なぜか、まほとオレの馴れ初めの話になったり。
杏さんが、大洗学園に来たばかりの頃のオレの印象を話し始めたり。
まほとオレが、黒森峰と大洗で離れていた際の話になったり。
気がついたら、3人同じベッドの上で雑魚寝してしまって。
朝を迎えたと。
明らかに友人以上な男女のやり取りだけど、どこかロマンチックじゃないな。でも、はだけた浴衣姿のまほと杏さんに抱きつかれたまま朝を迎えるとか。ほのかなエロスを感じる。
……なんかもう、ふたりを抱きしめられるんなら、細かいことはどうでも良くなってきた。
「それにしてもさぁ。西住さんの言ってたことが良く分かったよ」
「ん? 何がだ?」
「相手に身を任せると云々って奴だよ。これって相手を決めて、触れられることに抵抗がなくなるとさ。全部もたれ掛かっちゃうのが、こんなに心地いいもんだとは」
そんなことを言いながら、杏さんはオレの身体の上で脱力している。ぐだーっと、ものすごく緩んだ表情でもたれ掛かっていた。
まほも、オレの横で抱き寄せられた状態で、うんうんとうなずいている。
「受け止めてくれる相手がいると、安心する。肩ひじを張っていた自分から、こわばりが溶けていくような気持ちになるな」
「柄じゃないけどさ、守られたいとか、甘えたいっていう女の子の気持ちが分かる気がするよ。そりゃあ小山も、デレデレのバカップルになるわけだよ」
「恋人とのハグはもう日課になってるからね。お望みなら今日からいくらでもしてあげるよ」
「それで嬉しくなってるんだから。わたしって結構チョロかったんだなぁ」
心地良さげに頬ずりしてくる杏さんを、優しく撫でる。
告白をして吹っ切れたおかげなのか。べったりと密着するのが気に入ったご様子。オレとしても、女の子に抱きつかれるのは嬉しいので大歓迎。いつでもどこでも、どんとこいだ。
「あー。わたし、自分がこんな色ボケになるなんて思ってもみなかったよ」
「杏、次は私の番だ。私も抱きしめられたいんだぞ。正面から」
「え。ちょ、うわっ」
まほが、早くどけとばかりに杏さんの身体を押して、オレの身体の上から転がり落とす。次は私だ、と、オレの上に乗っかかり抱きついてきた。腰をまたいで、はだけかけた浴衣からこぼれ落ちそうなおっぱいを押しつけながら、頬ずりをしてくる。
「改めて、おはようだ。俊一」
「おはよう、まほちゃん」
ふたりのやり取りはじゃれ合いにも見えるので。オレは鮮やかにスルーする。場所を奪われた杏さんは、少しだけまほを睨みはしたものの。すぐにオレの横手に移動して、寝転がる。
「西住さん、今のはちょっとひどくない?」
「一晩中抱きついていたじゃないか。起きたのなら変わってくれてもいいだろう?」
じゃれ合いならいいけれど、変に空気が悪くなるのも困るので。
こういう時のオレは、総じて抱きしめてごまかすのだ。
「おっ」
「ひゃっ」
オレの上に圧し掛かっているまほの腰に手を回して、抱き寄せる。そのまま彼女の首元に顔を埋めた。
添い寝するような体勢の杏さんは、頭に手を回して、オレの胸板に引き寄せる。サラサラの長い髪を梳きつつ、頭を撫で回す。
「んっ……」
「ん。ちゅ、ちゅっ」
「おぉ……」
まほが顔を上げて、唇を重ねてきた。
さほど長くないキス。いきなり至近距離で見たせいか、杏さんが声を上げる。単純に驚かされた、みたいな感じで。
そんな彼女に、まほが先輩風を吹かせるように。
「杏。ハグだけじゃなくて、キスも日課だからな。早いうちにアンチョビと話をつけておかないと、大洗に戻ってからの楽しみが半減するぞ」
「なるほど。よし、頑張ろうじゃないか」
煽るようなことをいう。
杏さんも、オレに腕枕をされながら、「望むところだ」みたいな言葉を返した。
キスもハグも大歓迎、と受け取れる、年上のお姉さんたちのやり取りに、幸せを噛みしめる。まほを抱きしめ、杏さんを撫でる手につい力がこもる。
同時に、猛っていた股間にも力が入ってしまい。
「……そういえば。昨夜は結局、何もしないままだったからな」
感づいたまほが、勃起したオレのチ○コに太ももをおしつけてくる。
浴衣の上からでも感じる柔らかさ。
というか、浴衣がはだけて、肌が直接触れているような気もする。
気持ちいいし、嬉しいし、もっとして欲しいのはやまやまなんだけど。
今日は、これ以上はよろしくない。
「まほちゃんストップ。今日はエッチなことはダメ。さっきはつい許しちゃったけど、もうキスもおあずけだからね」
まほの頭を撫でながら、これ以上迫ってくるのを止めさせる。
正直なところ、オレの方が我慢できなくなっちゃう。
「……義理堅いところと、他の相手の気持ちを大切にするところは、私も好ましいとおもってるんだが」
「おあずけされた本人としては、ぼやきたくもなるよねぇ」
まほは、オレの胸元に頬ずりしながら、拗ねるような言葉をこぼす。
杏さんは、自分もその理由の一端と自覚しているせいか、苦笑しきりだ。
まぁ、申し訳ないけれど我慢してもらおう。
チェックアウトまでまだ時間は十分、というわけでもないので。
もう少しだけ、ベッドの上でダラダラとイチャついてから。
静岡を離れる準備を始めるオレたちだった。
午前8時過ぎ。ホテルをチェックアウトした杏さん、まほ、そしてオレの3人は、次の目的地である聖グロリアーナ女学院の学園艦を目指して、横浜へと向かう。
でも、その前に。
「おぉーい」
アンチョビさんと待ち合わせだ。
昨日と同じ、港の周りを見渡せる場所。紺のスカート、白いシャツ、ネクタイという制服姿に、マントを羽織ったアンチョビさんが、大きく手を振りながら近づいてくるのが見えた。
彼女の声に応えて、こちらも手を振って見せる。気づいたアンチョビさんが、いっぱいの笑顔を浮かべて小走りで向かってくる。
シチュエーションとしては昨日とほぼ同じ。だけど今日のアンチョビさんは、オレと恋人同士という関係なのだ。そう思うと、なんだかついつい、にやけてしまう。
「昨日ぶりだな、大瀬良」
少し息を切らせながら、微笑むアンチョビさん。
うん、可愛い。
「可愛いなぁ、アンチョビさんは」
「ひあっ」
つい抱きしめてしまう。
こみ上げてくる気持ちが抑えられなくて。
「おおおおおおおおせらっ、いきなり過ぎるぞっ」
「こみ上げてくる気持ちが抑えられなくて」
思ったことがそのまま口に出てしまうくらいに。
いきなりハグされたアンチョビさんは、真っ赤になって硬直してる。
でも、腕の中から逃げ出そうとはしない。
気を許してくれてるんだなぁと、実感する。
でもその一方で、ね。
「気持ちに嘘はないんだけど。都合が良過ぎるだろこのスケコマシが、ってひっぱたかれても文句は言えないんだよね」
「あー……。角谷のことか」
杏さんの告白とかあれこれ。昨夜、風呂から出てすぐにアンチョビさんに連絡を入れてある。杏さんに告白されたことと、受け入れたことを電話越しに告げた。もちろん土下座で。本当にもう、オレの土下座にどれだけの価値があるのやら。
オレの土下座コールに続いて、杏さんも話に参加した。自分から、オレに告白して、受け入れられたことを、同じ電話でアンチョビさんに告げている。お前の勢い任せなアタックのおかげで自分の気持ちに気づかされたとか、いろいろと事情やら何やらを加えながら。
その流れで、オレの携帯電話を通したガールズトークが始まり。まほ、杏さん、アンチョビさんの女の子サイドでうまいことまとめられた。
もちろんオレが何かを言えるわけもない。その間ずっと正座である。電話代ももちろんオレ持ち。オレをネタにしたガールズトークを傍で聞かされるという、羞恥責めを受けながら。
むしろそれぐらいで皆の心情が落ち着いてくれるなら、万々歳だ。
そんなこんなで一応、納得済みで話はまとまったのだけれど。
実際に顔を合わせたら、いろいろ申し訳なさとかもこみ上げてくるわけで。
「何度もぶり返すようで申しわけないんだけど」
「なんだいきなり」
「オレ、アンチョビさんのこと大好きです」
「ふわっ!」
「でも、杏さんも好きなんです。まほちゃんも、みほちゃんも柚子さんも大好きなんです」
みんな大好きで、誰にも渡したくない。
呆れた独占欲だけど、オレの偽らざる気持ちなわけで。
そんなオレの、男に都合のいい物言いにアンチョビさんは微笑みを返す。仕方のない奴だな、みたいな表情で。
「それについてもはもう呑み込み済みだって言ってるだろう。何股云々と言うなら、むしろ私や角谷の方が許しを乞う立場じゃないか」
「まぁ確かに、冷静に言えばそうだね」
恋人のいる男に言い寄ったんだからな。
アンチョビさんの言葉に、背中の方から杏さんが同意する。彼女の方を見ていなくても、杏さんが苦笑いしているのが簡単に想像できた。
「でもこういう場合は、自制しない男の方が悪者になるもんじゃない?」
「まったく、お前は……」
いきなり、ぐいと。
アンチョビさんが、オレの背中に腕を回して。
「ん、ちゅっ」
「あ」
頬に、キスをした。
少し背伸びをしたアンチョビさんが、顔を赤くしたまま睨んでくる。
「大瀬良。他ならぬ私自身が選んで、お前がいいと決めたんだ。私を手放す気はないんだろう? なら、見限られないように精進すればいいだけじゃないか」
気遣ってくれるのは嬉しいけどな。と、男前なことを言ってくるアンチョビさん。自信満々でキリッとした物言いだけど、頬を染めてるのがむしろ可愛さを強調させる。
まいったね、どうも。
オレの周りにいる女の子は、どうしてこんなにイイ女ばかりなんだろうか。
「これからもっと、アンチョビさんに惚れてもらえるように頑張ります」
「ん。それでよろしい」
アンチョビさんはもちろんだけど、みんなと釣り合うような男でい続けるのは大変だ。
でも。
頑張りますよ。
オレの答えがお気に召したのか。アンチョビさんが抱き着く力を強くする。
彼女に倣って、オレも彼女の腰に腕を回す。細い腰を抱き寄せて、身体を密着させた。さらに覆いかぶさるように、顔を近づけて、頬と頬をくっつける。
「アンチョビさんは本当に、イケメンだなぁ」
あまりの男前振りに惚れてしまいそうだ。
いや、もう離したくないくらい好きになってるんだから。何も問題ないか。
「……大瀬良。それは褒めてるのか?」
「めっちゃ褒めてるよ。イイオンナで、可愛くて。もうね、好き。大好きだよ」
抱きしめたアンチョビさんの頭に頬を、グリグリと擦りつける。
さっきの男前振りはどこへやら吹き飛んで。途端に、女の子の恥じらいが前に出て慌て出す。はわわわ、って感じで、どうすればいいのか分からずパニクる姿も可愛い。
「なんていうかさ。チョビ子を贔屓し過ぎてない?」
「仕方ないだろう。私たちはアンツィオから離れてしまうわけだし。過剰なくらいにスキンシップをして、俊一成分を溜め込む必要がある」
オレがアンチョビさんとスキンシップを取っている後ろで、まほが遠距離恋愛の辛さをとつとつと語っていた。
「わたしたちは同じ学校だから、慌てる必要もないってことか」
「遠距離で会えないっていうのはな、辛いぞ? 触れられなくて、触れてもらえなくて。抱きしめてもらえないし、キスもできないんだ」
「いやまぁ確かにそうだけどさ。西住さん、口調が重いよ?」
「経験者だからな」
まほは黒森峰で、戦車道絡みの突き上げを受けていたことより、オレと顔を合わせられないことの方が辛かったって言ってたしね。果報者だよオレは。そういうのを聞いて、ハグや身体の触れるスキンシップが多くなってるのもあるかな。
なんてことを考えていたら。
「そうだ、私だけ離れることになるんじゃないか。そう考えると、角谷が憎たらしくなるぞ」
アンチョビさんがふたりの会話にツッコミを入れてくる。
ちなみに今の体勢は、アンチョビさんに背中から抱きついて、腕を回し、彼女をあすなろ抱きにしている。肩ごとつかむように抱きしめているオレの腕を、アンチョビさんが手を置いて握りしめていた。
これはオレでも分かる。明らかにバカップルだわ。
でもまぁ、まほと杏さんの言う通り、アンツィオから離れてしまうわけだから。少しでもスキンシップを取っておきたいというのも事実。
「私の方が先に告白してるのに、どうして恋人っぽいことを先取りされてるんだ」
納得いかん、と、アンチョビさんが吼える。オレにあすなろ抱きされたまま。
あ、そっちなんだ。
つまり昨夜の電話の後、杏さんがオレとイチャイチャしてたのが面白くなかったと。
「まぁ、うん。イチャついてたのは認めるよ。あれはいいね。好きになった男の子とベタベタするのはいいもんだって実感した」
「くそぅ。妬ましいな」
「でも、エッチなことはしてないよ。ハグ止まり。キスもしてないし」
「え、そうなのか?」
アンチョビさんが、腕の中からオレを見上げてくる。
その「そうなのか」はどういう意味ですか。想像はつくし、言い訳もできないけど。
とりあえず、告白された順番を考えて、アンチョビさんを差し置いて杏さんと関係を深めるのはどうかと思ったこと。そのためにキスはなし、ハグのみ許可を出して雑魚寝したこと。エッチなことはもちろんしていないこと。まほも、その流れでおあずけを食らってぼやいたことなど話した。
すると。
「……男に特別扱いされるっていうのは、こう、嬉しいものなんだな」
アンチョビさん、ガチ照れ。
顔を真っ赤にして、すっごいニヨニヨした表情を浮かべる。
さらに、恥ずかしそうに顔を伏せてしまう。
まぁ、顔を埋めているのはオレの腕なんですけど。
可愛い。
特別扱いとは言っても、普通だったらする必要のないタイプの気遣いなんだけどね。
もちろん言う必要のないことなので、口にはしない。
オレはデキる男になるんだからな。
「それにしても、角谷が男に告白とはなぁ。恋愛に興味を持つとは思わなかったぞ」
「ひとのことを何だと思ってたんだチョビ子は。わたしだって女子の端くれだからな。気になる相手ができたんなら、相応に乙女なことを考えたりもするさ」
アンチョビさんと杏さんが、憎まれ口の応酬を始める。お互い様だなと笑ってオチを決めるあたり、いがみ合うような剣呑さはまるでない。
と、思っていたんだけど。
「でさ。大瀬良くんは、チョビ子のために、わたしの決意のファーストキスを拒む真似までしてくれたんだけど。いやさ、そういう義理堅いところは好ましいから、納得はしたよ。でもわたしの乙女心的には、モヤモヤするわけ」
杏さんが、絡むようなことを言い出した。
その気持ちは男のオレでも分からんではない。
「ぶっちゃけるとさ。チョビ子が先に進んでくれないと、わたしが乙女的におあずけされ続けることになるんだよねぇ」
「いや、昨日の今日でそんなことを言われてもだな」
「チョビ子。お前に、ファーストキスを拒否られた友人の気持ちが分かるか?」
「うぐっ」
あすなろ抱きしているアンチョビさんの身体が硬直する。
いやでも、それってオレを責めるべきで、アンチョビさんを責めるのは違うのでは。
と思って杏さんを見てみれば。オレの視線に気づいたのか、杏さんがニヤリと笑う。
この人、分かってて言ってやがる。
でもまぁ。このあたりはアンチョビさんと杏さんの間で折り合いがつくのなら、オレとしては何も言うことはない。オレの気持ちを正直に言えば、むっちゃキスしたいです。
「いやでもな角谷。私としては、もっと段階を踏んだ交際ってやつを堪能したいんだが」
「じゃあさ、チョビ子より先にキスしてもいい?」
「それはダメだ!」
アンチョビさん、即答。
少し間を置いて、自分の言ったことに気づいて赤面した。
可愛い。
杏さんの方は、してやったりみたいな顔でニヤついてる。本当にこの人は……。
対してアンチョビさんは、素直でピュアだなぁとか。もうなんて言えばいいのやら。
「アンチョビさんは本当に、可愛いなぁ」
後ろから抱きしめたまま、アンチョビさんの耳元から頬に掛けて、唇を落とす。軽いキスを、ちゅっちゅっ、ちゅっ、と連続して。可愛くてたまらない。
「オレの方から、唇を奪いたくなる」
「え、おいっ。こら、大瀬良っ」
ふざけるように、アンチョビさんの頬にちゅっちゅするオレ。柔らかくて、ぷにぷに。これが唇だったら、もっとドキドキとか、気持ちいいとか嬉しいとか。
そんなことを思いながら。
「あっ」
アンチョビさんのあごに指を添えて。
くい、と。
オレの方に顔を向けさせる。
「アンチョビさん。オレと、キスしよ?」
「……うん」
抱きしめながら、あごクイをキメて。
強引に迫るオレに、アンチョビさんは熱のこもった瞳を返す。
オレはゆっくりと、唇を近づけて。
触れる前に、ちょっと止まり。彼女と目を合わせながらひと言。
「千代美さん。大好き」
名前を呼びながら、唇を重ねた。
彼女の呼吸まで呑み込むつもりで。
「ん、ふ。んぅ……。ふぁ」
オレとアンチョビさんの口元が、互いの唾液で濡れる。
唇、柔らかい。
少し早い息継ぎが伝わってくる。
うっとりした、どこか焦点があっていないようなアンチョビさんの蕩けた表情。
かなり、クル。ゾクゾクする。
「その表情、オレ専用だからね?」
「あぁ。大瀬良だけ、だからな」
その返事が嬉しくて。もう一回、アンチョビさんに口づけ。
ちゅっ、と軽く触れるだけの口づけに、彼女の顔が笑顔で緩む。
「優しいタイプの男に、強引に迫られるのってドキドキするな……」
「普段はキリッとしているお姉さんが、オレの前ではトロトロに甘えてくるっていうのもドキドキするよ?」
「お互い様か。いいことじゃないか」
「気が合うようで何よりだね」
息が吹き掛かるほどの距離で、互いの目を見つめながら。くすりと笑った。
でもまぁすぐに、アンチョビさんも気づくだろう。
今いる場所が、さえぎるものが何もない場所だということに。
キスを迫られていた一部始終を見られていたことに。
その最前列にいた、まほと杏さんは、さすがに空気を読んだのかこちらに絡んでこない。
「どうしよう。今のがちょっと羨ましいと思ってる……」
「してもらえばいいじゃないか。遠慮せずに」
「え、いやでもさ」
「私は後でしてもらおう」
「本当に、自分の感情に素直だよね。西住さん」
「ちゃんとできると思うぞ? この通り、録画したからな」
「うおぉい西住! 何やってるんだお前はぁっ!!」
前言撤回。
すごく絡んできた。
特にまほが。
「安心しろアンチョビ。ちゃんとお前にもデータは送っておくからな」
「そういう問題じゃないだろぉぉぉ!」
「じゃあ、消すか?」
「いや待て消す前に私だけに送っておいてほしいでもああああああ」
「チョビ子が壊れちゃったよ……」
ツインテールを振り乱して、ガチで悶えるアンチョビさん。
スマホを掲げたまほの、おそらくは好意からだけど容赦のない仕打ち。
あんまりなやり取りに呆れた声を漏らす杏さん。
どうにもならないその惨状に、オレは苦笑するしかなかった。
ちなみに。
アンチョビさんが、オレに抱きしめられたのも。
唇を奪われたのも。
羞恥で悶えるところも。
実際に、それなり以上の人に見られていた。後でアンチョビさんに聞いたところによると、新学期が始まると同時に変な意味でも有名になってしまったらしい。
また奇しくもそのおかげで、戦車道チームにえらく大勢の新人が入ってきたとか。
そして「彼氏持ち!」「さすがドゥーチェ!」とか囃し立てられ、悶絶したという。
でも、そんなことをこぼすアンチョビさんは、どこか嬉しそうにしている。
もちろん、オレはそれを指摘することなく、微笑ましく見るだけだ。
オレは指摘してないよ?
うん。オレはね。
まほとか、杏さんが何を言ったかまでは知らない。
知らないってことにしておく。
―続く―
気がついたらこんな内容になっていた……。
槇村です。御機嫌如何。
このお話って、誰に対しても「可愛い可愛い」って連呼してる自覚があるんだけど。
特にドゥーチェにはやたら「可愛い」って言ってるような気がする。
あくまでイメージだけれど。
ドゥーチェは、ロマンチックな雰囲気で強気に押されると弱そう。
杏さんは、ふたりきりになると途端に甘えたり拗ねたりしてくる感じ。
イメージというより願望じゃないのかこれは……。
評価を入れてくれた方、ありがとうございます。励みになります。
感想を書き込んでくれる方、ありがとうございます。めっちゃ嬉しいです。
次回こそ、聖グロ入りです。
引き続きよろしくお願いします。
※誤字のご指摘ありがとうございます。