2コマ堕ち的ハーレムエロす in ガルパン 作:槇村 a.k.a. ゆきむらちひろ
28:ファーストコンタクト
アンチョビさんの見送りを受けながら、いろいろあったアンツィオ高校から離れるオレたち大洗学園一行。
まぁいろいろあったのはほとんどオレなんだけどね。
次はいつ会えるか分からないアンチョビさんの唇をやや強引に奪って、彼女の蕩けた顔を堪能したり。
天然ぶりを発揮して、と言えばいいのか、まほのおかげでその場が騒がしく掻き回されたり。
杏さんが、アンチョビさんと両手をがっつり組んで力比べをしながら何か言い合いしてたり。
本当に騒がしかったなぁ。オレが言うのもなんだけどさ。
特に杏さんは、キスの順番云々とかもあって、アンチョビさんとえらくエキサイトしてたみたいだけど。どうやら折り合いはついたらしい。
「いやー、なんていうかさ。自分の好きなタイミングでファーストキスをあげられるって考えると、いろいろシチュエーションを考えちゃうね」
キス解禁が出たことで気持ちに余裕ができたのか。杏さんは「すぐにキスしろ」みたいなことは言わず、ごく普通に接してくる。
むしろ自分でいかにファーストキスの場面を作るか、なんてことを考えてるみたい。
アンチョビさんのことを言えないくらいのロマンチック思考だと、当人は気づいているんだろうか。もちろんオレはそんなことを口に出したりしないけど。
でも、オレに面と向かってそれを言うのはどうなの?
しかもむっちゃ楽しそうだし。イタズラを考えてるようなニシシ顔をしてるし。
まぁ、飾らない素の部分を見せてくれていると思えば、嬉しいと感じられる。
杏さん、可愛い。
さてさて。
本来、オレたちは戦車道チームの視察を目的にここまで来たわけで。これから第2の目的地、聖グロリアーナ女学院を訪ねるべく横浜へと向かう。
静岡の清水港から神奈川の横浜港まで、約2時間ちょっと。道中は杏さんがやや浮かれ気味だったので、あれこれ楽しくやり取りをしている間に着いてしまった。
特に新幹線に乗ってた時。3人掛けシートの真ん中にオレが、その両隣をお姉さんふたりが挟むように座った。昨日の杏さんが言うところの「イチャイチャ」に彼女自身も加わって、楽しい時間を過ごすことが出来た。うん、良きかな。
横浜についてから、港へ向かう時もそれは変わらない。凛々しい美人タイプのお姉さんと、小柄な小悪魔タイプのお姉さん。そんなふたりに両腕を取られて、抱き着かれた状態で歩く。
正直、目立つ。めちゃくちゃ目立つ。男の嫉妬混じりな視線はもちろん、女性の興味深げな視線まで突き刺さってきた。でもふたりの手を解いたりはしなかったけどね。
オレたちのイチャつく姿はまさに堂々としたもの。まほの友だちだっていう、出迎えてくれた聖グロリアーナ女学院の人が呆れ顔をするくらいに。
「……私はなぜ、知人のバカップルぶりを見せつけられているのかしら」
「おぉ。お前でもバカップルという言葉は知ってるんだな、ダージリン」
「もしかしてバカにしてますの? まほさん」
「私はいたって真面目なんだが」
「なんだか調子が狂いますわね……」
黒森峰にいた頃のまほを知っていれば、男にべったりと引っついてる今の姿はそりゃあ意外だろう。戦車道が絡む真面目な用件だと思っていたら、男連れでやって来たんだから。驚くのも無理はない。
「まほさん。貴女、わざわざノロケに来たのかしら?」
頭痛をこらえるかのように、額に指を置きつつ顔をしかめる、ダージリンと呼ばれた女性。
まぁ確かに、「何しに来たんだこいつ」と思うのも無理はない。だって、まほはまだノロケの類しか口にしてないもんな。
「えーと、ダージリンさんだっけ? 黒森峰の頃の西住さんは知らないけどさ、大洗に来てからの彼女はずっと恋愛脳丸出しだから。無理にペースに乗ると疲れちゃうよ?」
自分の知るまほとのギャップに苦しむダージリンさんに、杏さんが笑いながらフォローに入った。これ以上脱線する前に、本来の要件に入ってしまおうと思ったのかもしれない。……フォローなのかなコレ。
「大洗学園の生徒会長、角谷杏だよ。今日は視察を受け入れてくれてありがとう」
「ダージリンですわ。聖グロリアーナ女学院、戦車道チームの隊長を務めています」
ダージリンさんも、杏さんに乗っかってきて。互いに挨拶を交わして握手をする。
「このたびはよくいらっしゃいました。歓迎いたしますわ、角谷さん」
「新入生の受け入れとかで忙しい時期に面倒なお願いをして、済まないね」
「いいえ。新たに生まれる戦車道チームの一助になれるのですから、先達としてこれくらいはなんでもありません。交流という意味でも、意義のあることですわ」
「そう言ってもらえると助かるよ」
にこやかに、柔らかい物腰で対応するダージリンさん。一方で杏さんの方は、かしこまった態度をしながらも、失礼にならない程度に口調を崩している。特に咎めるような雰囲気もないから、問題ないんだろう。そういう気配りみたいなのは、杏さんはできる方だし。
「で、気になる彼だけど。ウチの後輩で、大瀬良俊一くん。実を言うと視察そのものには関係なくてさ。ちょっと事情があって同行してくれてるんだ」
ちょっとぼかしてオレを紹介する杏さん。まぁ、まほがアンツィオ高校で『ローマの休日』ごっこをしたいから連れてこられた、とか言えないよね。
もちろん、オレもそのあたりを表に出すことなく。
「大瀬良です。よろしくお願いします」
「こちらこそ」
ごく自然に挨拶を交わす。ダージリンさんの方も、礼儀正しく挨拶を返してきた。
……なんだろうか。礼儀正しくはあるんだけど、初めて会った時のまほのような、圧みたいなものを感じる。とっつきにくいというか、つき合うのが面倒そうな貴族のお嬢様っぽいというか。美人さんなのでとても様になっている。
そもそも、女子校だと分かってるのにノコノコ着いてきた男って時点で、気に掛けるレベルも低くなるかもしれない。それなら仕方ないかもな。
でもその割に、興味深げな目を向けられてる気もするけど。
「とりあえず、まほさんとの関係は後でうかがうことにしますわ」
気のせいじゃなかった。
むしろ興味津々じゃねぇか。
「あと、こちらはアッサム。チームの副官のような立場なので、今日はご一緒させていただきますわ」
「よろしくお願いします」
アッサム、と紹介された人が、言葉少なに礼をする。
ややツリ目でキリッとした見た目のせいか、少しキツい印象を受ける。でも、ロールのかかった長い髪を大きなリボンで留め、おでこが出るようなひっつめにしているおかげか、雰囲気が少し柔らかく感じられる。
とまぁそんな風に、ひと通り挨拶も済んだところで。
「さて、まほさん。こんな格言を知ってる? 『愛とは一種の花。種子が風に吹かれ、落ちたところで開花する』。ちょっと見ない間に、貴女にどんな風が吹いたのか。興味があるわ」
いきなりダージリンさんがぶっこんできた。
せっかく話を真面目な方に持っていったのに、と、杏さんが笑顔を引きつらせる。
アッサムさんは、隠す素振りも見せずに溜め息を吐いた。
あ、もしかしてこの人、柚子さんみたいな苦労人タイプなのかも。
そして、まほはここでも自分のペースを崩さない。
「何がと言われれば、お前の言う通り。最たるものは恋人ができたことだな」
超クール。まさかのストレートな返しに、ダージリンさんが硬直する。直球過ぎて反応しきれなかったみたい。
そして、まほの返しはまだ続く。
「話すのはいいが、盛大な惚気話になるぞ? ここまで来た当初の目的が終わってから、満足いくまで語ってやろうじゃないか」
「え、ちょ」
「杏もまざるか?」
「確かにその方がいいかもね。やることを終えてからの方が、学園艦を降りるギリギリの時間まで惚気られるだろうし」
さらに杏さんが参戦。言葉に詰まったダージリンさんをほったらかしにして話が進む。
というかさ、ちょっと待って。さっさと仕事を終わらせてから、残り時間全部使って恋バナしようぜ、って言ってるように聞こえるんだけど。ダージリンさんは引きつり顔で、アッサムさんも驚いている様子。
そんなふたりを眺めていると、両腕に抱きつかれる感触。言うまでもなく、まほと杏さんだ。
「想像している通り、相手は俊一だ」
「加えてわたしも、大瀬良くんと恋人同士なんだよね」
まほはほんのりと、杏さんは少しいたずら気味に、笑顔を浮かべる。
一方、ダージリンさんとアッサムさんは驚天動地みたいな顔になっていた。公認二股みたいなことを言われたら、そりゃ驚くよな普通は。実際には二股どころじゃないんだけど。
なんかもう、すいません。
「よし。そうと決まれば、やることを早々に終わらせてしまおう」
「あー。西住さん、気持ちは分かるんだけどさ。さすがに生徒会長としては、ちゃちゃっと終わらすとは言えないかな。やるべきことはきちんとやっておかないとね」
「む、それもそうか。いささか逸っていたようだ。杏、済まない」
「いやいや、わたしも気持ちは分かるからね。でも、そうかぁ。自分から惚気を語りに行くのか。想像したこともなかったけど、それもいいかもねぇ」
なんだか訳の分からない方向に盛り上がってる、まほと杏さん。
違うよ。違うだろ。
「ふたりとも、お願いだからちょっと待って」
「おっ、と」
「うわっ」
落ち着けとばかりに、ふたりの首に腕を回して、押さえつけるように引き寄せる。
妙な方向にテンションが上がっても、他の人はついていけないから。仲間内ならともかく、それ以外の人がいるなら少しは自重しようよ。
みたいなことを、ふたりに顔をくっつけながら説得する。ほら、惚気すぎたせいで、まほの友人関係が微妙になるとかは避けたいし。
「後で何をするかは置いておいて。まずはきちんと視察なり説明会なりを真面目にやろうよ。ほら、杏さんも今は生徒会長モードで」
「分かってる、分かってるって」
「普段と変わらない軽さが、今は少し不安になるのはなんでだろう」
「あはは。締めるところはちゃんと締めるよ。西住さんと違って浮かれてばかりじゃないから」
「待て、杏。私が浮かれてばかりとはどういうことだ」
「え、自覚なかったの?」
「あーもう、ふたりとも。止めてよして落ち着いてー」
なんてことを、ダージリンさんたちを置いてきぼりにしてやってしまい。
それもどうにか落ち着いたところで。
「いやもうすいません。お待たせしちゃって」
「いえ、それはいいのだけれど……」
ダージリンさんに謝るも、どう反応すればいいものか戸惑っているように見える。
あ、これはあれだ。他人の目を気にせずイチャついて、困ってる人の反応だ。
いかにもわざとらしく、大きめに咳をして。スルーしようぜと促してみる。
彼女の方も、とりあえず場の流れと空気を換えようと思ったのか。息を継いでから、オレに話を振ってきた。
「ん、んんっ。ところで。大瀬良さん、でしたわね」
「あ、はい。なんでしょう」
「聖グロリアーナは女子校なので。申し訳ないのだけれど、さすがに校舎の中までは殿方を入れるわけにはいかないのよ」
「確かに。そりゃそうですね」
うん、それはごく当たり前のことだね。
それじゃあ、港周辺を適当にぶらついて時間を潰そうか。
と、思ってたら。
「でも、案内役が同行した上で、指示に従ってもらえるなら、学園艦の見学を許可します」
「え、本当に?」
いかが? と尋ねてくるダージリンさん。いいんですかそんなことして。
ナビゲーター役がついて堂々と女子校を散策できるとか、オレとしてはむしろ願ったりかなったり。断る理由がない。ふたつ返事で了承し、お願いした。
「では、このアッサムに案内役をさせますわ」
「は? ちょっとダージリン」
「お願いね、アッサム」
「あなた、まさかこのために私を連れてきたのではないでしょうね」
「それこそまさかよ。殿方が一緒とは聞いてなかったのだし」
……なんだか揉めてるんだけど。あれか、基本的に仲は良好だけど、立場では上のダージリンさんが奔放とか愉快犯とかそんな感じで、サポート役のアッサムさんが振り回される。みたいな関係なのかな。
どうしよう。ますます杏さんと柚子さんの関係とダブって見えてきた。
「ん? どうしたの大瀬良くん」
「いや、なんでもないです。えぇ」
杏さんの顔をチラ見して。何か感づかれる前に視線を外した。
何も考えてませんよー。
「ひとまず、オレたちの方は落ち着いたけど」
「今度はあちらの方が揉め始めちゃったねぇ」
「ダージリンのことだ。半分くらいはからかってるんだろう」
でもそれって、される方は結構面倒だったりするんだよなぁ。
なんて風に、大洗にいる柚子さんを思い返しながら。
ちょっとした言い合いになっている、ダージリンさんとアッサムさんを眺める。
変にこじれないといいけど。
少し不安になるオレだった。
―続く―
賑わう横浜の街を、両手に華で堂々と歩くストロングハート。
槇村です。御機嫌如何。
せっかくだから『~最終章 第2話』公開日に更新しとこうかなぁと思い立って。
本当に、会っただけで終わらせてしまった。
ダー様の口調って書くの難しい、と思うのはオレだけだろうか。
最初期は「高飛車」って設定もあったからさ……。