2コマ堕ち的ハーレムエロす in ガルパン 作:槇村 a.k.a. ゆきむらちひろ
戦車道についてとか、他愛のない話とかをしつつ、イチゴパフェを間に挟んだ攻防を繰り返していたら。アッサムさんの携帯電話にメールが届いた。
送信元はダージリンさん。杏さんたちとの話がもう少しで区切りがつくというもの。時間を決めて合流しようということらしい。
オレとアッサムさんの方も、やっていることは結構グダグダになりかけていたから。切りも良かろうということで、ふたりして喫茶店を出る。
その頃には、アッサムさんも柔らかな表情を見せてくれるようになっていた。
品よく笑ったり、容赦なくツッコミを入れてきたり、ツッコミ返したら言葉に詰まって睨みつけてきたりと。いやもう、ずいぶんと親しい感じで接してくれるようになったと思う。
喫茶店を出て、オレとアッサムさんは並んで歩き出す。向かう先は聖グロの校舎が並んでいる一角。そこで杏さんが、まほとダージリンさんを相手に戦車道についてレクチャーを受けているんだとか。そこへ出迎えに行くわけだ。
……それにしても。
「どうかしましたか?」
「いえ、なんでも」
並ぶとよく分かるけど、アッサムさんって思ったよりも小柄だよね。彼女の頭が、オレの口元くらいの位置になる。大きなリボンのせいなのか、もう少し大柄なイメージだったけど。いや、大柄っていうのは言葉が悪いか。
ともあれ。横でスタスタ颯爽と歩いていても、オレの歩幅だとすぐに追いついてしまう。ほんの少しだけ、歩幅を狭めて、足の運びをゆっくりめにする。すぐ横手でリボンがぴこぴこ揺れるのが、なんだか見ていて微笑ましい。
歩きながら会話を続けるオレとアッサムさん。
話のネタは、やっぱり戦車道のこと。主に1年を通した戦車道のイベントについてあれこれと、アッサムさんに教えてもらっている。
「まず目標となるのは、やはり全国大会ですね」
7月から8月に開催される戦車道の全国大会。新興チームとなる大洗学園は、そこへの出場が当面の目標になる。
と言っても、地方予選みたいなものがあるわけでもないようで。参加そのものは申請すれば問題なくできるのだという。もちろん、勝てるかどうかは別の問題になるけれど。
「詳しいことは知らないんですけど、20年くらい前は大洗学園でも戦車道をやっていたそうなので。設備だのなんだのは最低限揃えられるんじゃないですかね」
「まったくのゼロから、というわけでもないのですね」
「ウチの生徒会長は、前準備とかはきちんとやるタイプなので。万端とはいかないまでも、そこそこ形にはなるんじゃないかなぁ、と。願望含みで思ったりしますが」
もちろん、いろいろ大変なんだろうってことは分かる。みほとまほをどうにかして抱き込めないか、って考えてたらしいし。学園にある物や情報を掘り起こしたとしても、20年前のものが今でも役に立つものかどうか。
「そもそも、大会に出るなら戦車は何輌くらい必要になるんですか?」
「そうですね……。大会規約では、1試合の参加車輛数の最大が10輌から20輌。最低が5輌になっています」
「つまり、5輌以上ないと参加すらできないと」
「そういうことになりますね」
まほから聞いた限りでは、大洗学園には戦車が1輌ある。でもオレが知らないだけで、実はもっとあるのかもしれない。もしくは導入の目途が立っているとか。
「もし足りなかったとして。どこから手に入れてくるんだろうか」
「我々でも、新しい戦車の導入はひと苦労です。そう簡単に数を揃えられるものでもありません」
初期費用も維持費もすごそうだからなぁ。そのあたりは、アンチョビさんも嘆いていたような気がする。
でも大洗学園の場合、もっと根本的なところに問題があるよな。
「それ以前にウチは、人が集まるのかってところが……」
「新設ゆえの苦悩ですね」
7月に全国大会が始まるとして。4月頭に戦車道チームを立ち上げて、人を集めて、戦車や設備を形にして。3カ月で、試合ができるくらいまで持っていかなければいけない。
やるべきことは山盛りだろうことは、素人のオレでも想像できる。
「門外漢のオレに出来ることなんて、何もないな。せいぜい、練習で疲れてるのをどうやって癒して上げようかを考えるくらい?」
「ふふ。女性としては、恋人のそういう気遣いは嬉しいのではないでしょうか」
「じゃあ、アッサムさんだったらどうです? 例えば、戦車道の練習から戻ってきたら、恋人が紅茶を淹れて待っていてくれて。お疲れ様と労ってくれる。そんなシチュエーションは?」
「……いいですね。とても素敵です」
「もしも」を想像しているんだろう、少し遠い目をするアッサムさん。うっすらと笑みを浮かべている。思ったよりツボにくる想像だったのかもしれない。
でも、そうか。なるほど。銃後の守りじゃないけど、杏さんたちを陰からカバーするのもアリかもしれない。うん、考えておこう。
「戦車道の練習って、どんなことをするんです? 想像ができないんですが」
「そうですね……」
学校によって違ってくるでしょうが、と前置きをしてから。彼女は一例をあげる。
いわく。
戦車の中は狭くて、暗くて、視界もさほど開けていない。気持ちが鬱屈することもある。
砲弾や弾丸はそれなりに重く、力もかなり使う。撃ち続ければその分持ち上げたり下ろしたりという回数も増え、腕はすぐにパンパンだ。
先に言った通り、外は良く見えない状態。そんな中で戦車を操縦し、周囲をうかがい、相手よりも早く存在を察知する必要がある。
相手を見つければ、少しでも早く砲弾を装填。気づかれるより前に、気づかれても相手が打つより早く、正確に狙いをつけて倒さなければならない。
瞬間々々で最適な判断を下して、実行する。
それらを試合でも行えるように、練習を繰り返していく。
集中力を常に求められて、精神力の疲弊は著しい。
「自分で言うのもなんですが。例え練習でも、心身の疲れは相当なものですよ」
「戦車道女子ハンパねえな。本当に」
まぁ戦車道に限ったことじゃなく、どんなスポーツでも、いやそれ以外の何でも、楽しいからキツいこともやっていけるっていうのはあるよね。
なんてことを歩きながら話していたら。
曲がり角の向こうからいきなり人が飛び出してきた。
「きゃっ」
「うぉっ、とぉ」
出会いがしら、急すぎて反応もできず。避けられずにアッサムさんがぶつかってしまう。
小柄ゆえ勢いに流されて、倒れそうになったところを間一髪抱き留めた。
咄嗟に手を伸ばしたオレの大手柄。と思う間もなく。オレも相手のぶつかってきた勢いに巻き込まれる形で、アッサムさんを抱えたまま倒れてしまった。背中から思い切り、ドカッと。
「いっ、つぅ……」
「平気ですか大瀬、ら、さん?」
アッサムさんの気遣ってくれる声が、途中で変なアクセントに。
どうしたのかと思えば、お腹に柔らかな感触。
仰向けになったオレの上に、彼女が尻もちをつくような体勢になっていた。
「すみませんっ!」
慌てるアッサムさんの声。身じろぎした際に押しつけられたお尻の柔らかさが、お腹から伝わってくる。これだけでもう、倒れた痛みとかはどこかへ行ってしまった。さらに、制服のスカートから薄い青の下着もチラリと見えて。こちらこそすいません。
顔を赤くして、謝りながら、オレの上から勢いよく立ち上がるアッサムさん。ほんのわずかに密着した感触が離れていく。ケガはないようで、良かった良かった。
でだ。
ふたりして倒れてしまった原因。飛び出してきた人だけど。あちらの方も、同じように倒れてしまったようだ。しかも抱えていたバッグから荷物をぶちまけてしまったみたい。
こちらは役得もあったせいか、ちょっとだけ申しわけない気持ちにもなりつつ。オレも立ち上がって拾うのを手伝おうと。
したんだけど。
「そこのひとーっ。その人を捕まえてくださーいっ」
「待つんですのーっ!」
曲がり角の向こうから、声を上げながら駆けてくる女の子が、ふたり。
何事だと思いつつ、彼女らに目を向けてから、ぶつかった人に再度目を向ける。
オレよりも少し年上、おそらく大学生くらいの男の人。ぶちまけてしまったものを、必死になってバッグに詰め込んでいる。だが、そのどれもこれもが、どう見ても女物。下着があったのは気づかないふりをした。
「アッサムさん」
慌てる男。
荷物は女物。
捕まえろと声を上げて追ってくる女の子たち。
つまり?
「話を聞いてから、ですね。念のため」
言わんとするところを察してもらえたようだ。
キリッとした表情で言葉を返すアッサムさん。凛々しくて、頼もしいね。
そんな彼女が声を掛けようとしたら。
男は、いきなり走り出そうとする。
「逃がすかよ」
咄嗟に手を伸ばして、男の手をつかんだ。
状況だけ見ればもうアウトだけど、何か事情があるのかもしれない。
そんな感じで極力好意的に捉えようと思ったんだけど。
目の前に、拳が飛んでくる。
「ぶはっ」
「大瀬良さんっ!」
この男、問答無用で殴ってきやがった。オレの頬を拳が捉えて、振り抜かれる。
痛ぇなこの野郎。
でも逃げようとしていたせいか、腰の入っていないへなちょこパンチだった。痛かったけど効きはしない。
野郎は続けて殴り掛かってくる。腕を上げてガード。2発も食らうほどボンクラじゃない。
殴り返してもいいけど、それだとコイツと同じ土俵に立つことになってしまう。
だから押さえつけるだけにした。
殴ってきた腕を取り。
関節をねじって。
力を流すようにして振り回し。
ずざっ! っと音を立てて。男を地べたに倒して見せる。
咄嗟に出た、流れるような体回し。小学校の頃に習ってた合気道が陽の目を見たぜ!
「大瀬良、さん?」
傍から見たら、あっという間に鎮圧したように見えたのかもしれない。アッサムさんが、すごいびっくりした顔をしてる。声を上げて追いかけてきた女の子たちも、急展開に驚いたのか目を見開いていた。
「アッサムさん。一応そのふたりから事情を聴いた方が」
「え。あっ、そうですね」
再起動を果たしたアッサムさんが、女の子たちに話しかける。
いわく。ふたりは聖グロの新入生で、学園艦に乗艦した際にたまたま隣り合っただけだとか。乗艦手続きをほぼ同じ時間に終えて、ひと息入れようと荷物を下ろして、飲み物を買おうとした。その少しだけ目を離した隙に、ふたり揃って荷物を持ち去られたという。
「置き引きですか」
「そうなんです。距離は取られましたけど、持ち逃げする姿は見れましたので。声を出して追いかけたんですけど」
「逃げ足が速くて、追いつけなかったんですわ!」
この男が持っていたバッグふたつは、彼女たちのもので間違いないようだ。アッサムさんとぶつかって散乱してしまったけど、欠けた物はないみたい。ただ男が焦ってバッグに詰め込んだおかげで混ぜこぜになっているらしい。
「てことは、置き引きの現行犯ってことでいいんですかね」
「そうですね。このまま警察に突き出すことになるでしょう」
「それじゃあ、っ、とぉっ」
警察と聞いて焦ったのか。「間違えただけだ」とか「俺は知らない」とか、支離滅裂にわめき出す。言い訳にしても今さら過ぎるだろソレ。
しかも暴れ出したせいで、極めていた手が緩んでしまった。拘束が解けてしまい、置き引き男は腕をふり回す。
そこで一撃、男の肘が、腹にめり込んだ。
「ぐふっ」
「大瀬良さんっ!」
やりやがったなこの野郎。
一瞬、息が詰まって。オレの腕から力が抜ける。その隙に逃げ出そうとする置き引き男。
逃がすわけねぇだろ。
腰をひねって、その場で回転。ふり回した腕が、男の下半身にぶち当たる。
イヤなところに当たったんだろう。男が背中を見せながらよろけた。
そこへさらに追撃。膝裏に軽く蹴りを入れてやる。それだけで男はさらにバランスを崩して、膝をついた。
あとはもう簡単だ。
「あらよっと」
腕を取り、後ろ手に回して締め上げる。再度、地べたを舐めさせた。今度は少しきつめに抑えつけながら、おまけに後ろから首もつかんでやる。
ここまでしてようやく、置き引き男の抵抗がなくなった。と思った途端にまた暴れ出したり。そのつど力を込めて抑えつけたりする。
あー。まったくもう。
「アッサムさん」
「はいっ」
「警察、早く呼んでください」
意識してなかったけど、結構荒っぽい声が出た。
通り魔に肘鉄くらったようなもんだから、イラつくのはしかたない。
でもアッサムさんにそれを向けるのは、違うよね。
いかんいかん。
反省反省。
気持ちをクールにして、声を荒げたことを謝る。
アッサムさんは一瞬ポカンとした顔をして。
手を口に置いて、くくく、と。笑いをこらえるように身をよじらせた。
……そんなにおかしなこと言いましたかね?
「いえ、なんでもありませんよ」
なんだか楽しそうに、スマホを手にして警察に連絡を入れるアッサムさん。
置き引き男を組み伏せながら、少しだけ憮然とするオレだった。
騒ぎまくる置き引き男を、警察が来るまでどうにか抑えつけて。無事に引き渡すことが出来た。それから、どんな経緯で捕り物になったのかを説明するために派出所まで同行する。
どうして他校の男が女子校の聖グロにいるの? みたいな話にもなった。置き引き犯が男だったから、怪しむのも無理はない。そのあたりはアッサムさんが客人だと説明し、保証してくれたので揉めずに済んだ。ありがたくて涙が出そう。
そのおかげもあって、事の経緯を冷静に聞いてもらうことが出来た。
喫茶店でお茶した後に歩いていたら、置き引き男とぶつかって、女物の荷物をばらまいた。怪しいと思ったところで、持ち主の新入生ふたりが合流し、荷物が彼女たちのものだと判明。相手が逆ギレしてひと悶着となり、押さえつけるに至った。
とまぁ、こんな感じの流れ。
オレとアッサムさん、荷物を盗られた新入生ふたりからも話を聞いて。
ようやく解放された。
「うぁー。終わったー」
思ったよりも長い時間引き留められたため、強張ってしまった身体を伸びをしてほぐす。オレが捕まったわけでもないのに、この開放感はなんだろうか。
ちなみに、置き引き男の件はすでにダージリンさんに連絡済みだ。さすがアッサムさん。抜かりがない。
そこから伝わったんだろう。まほと杏さんから気遣うようなメールが届いていた。
こういうの、嬉しいね。
これからそちらへ向かう旨を返信。詳しいことは顔を合わせて話をすることにする。
オレがそうしている間に、置き引きに遭った女の子ふたりが、アッサムさんに礼を言っていた。なんだかふたりともテンションが高い。ひょっとするとアッサムさんが言っていた、戦車道目的で入ってきた子たちなのかもしれない。
なんてことを考えていたら、彼女たちはオレのところにもやってきた。頭を下げながら、揃ってお礼を言ってくる。
「あのっ。本当にありがとうございました」
小柄で、おっとりとした雰囲気の女の子。少し幼い感じのお嬢さんとでも言おうか。
編み込んだ髪を左右でお団子のように丸めて、後ろ髪にまとめている。髪色に引っ張られたのかもしれないけど、笑顔がお日様を浴びたオレンジみたいな印象。つい頭を撫でてあげたくなる。
「取り戻せて良かったですわ。ありがとうですの!」
もうひとりは、これまた違ったタイプ。勢いをつけてグイグイ来そう。
赤毛というか濃いピンク髪の、ウェーブが掛かったボブカット、とでも言えばいいんだろうか。真ん中分けにした、アッサムさんとはまた違うオデコちゃん。髪色に負けない明るい雰囲気で、お嬢様というよりも、下町で男友だちと駆け回っていそうな感じ。オレ、そういうの好きだよ。
「なんと言うか、乗艦初日から災難だったね」
オレはふたりの感謝を受けて、お疲れ様とばかりに労う。
本当に、災難だったと思う。夢や希望でいっぱいの新たな女子校生活が、変な男のせいで、学校が始まる前からケチがついてしまった。まぁ、盗まれた荷物が無事で、犯人も捕まったっていうのが、不幸中の幸いだとでも思うしかないだろう。
あとは、そうだな。学校が始まる前に、優しくて頼りになる先輩と知り合えたと思えば。プラスにならないかな。
「どうだろう。ねぇ、アッサムさん」
「そこで私に振って、どうしろというんですか」
オレの勝手な言いように、アッサムさんは呆れ顔。でも少し笑ってるから、悪い気はしてないんだろう。そう思うことにする。
でも、オレンジちゃんはそれに乗っかってきてくれた。
「なるほど。そう考えると、結果だけ見れば悪くないと思えるかもしれません」
「もちろん、置き引き男に感謝する必要はこれっぽっちもないけどね」
「当然です。なんと言おうとギルティですから」
うんうん、と、オレンジちゃんはオレに合わせてうなずいている。
とは言うものの。アッサムさんと知り合えたのは、聖グロで過ごすにあたって本気でプラスになると思うんだよね。
「そうですわ! 憧れの聖グロ戦車道チームのナンバー2ですのよアッサム様は。もっと喜ぶべきですわよ!」
「あの、嬉しいのは私も同じなのですが。すぐ隣でテンションを上げられると……」
あぁ、分かる。醒めるというか、冷静になることってあるよね。
赤毛ちゃんのはしゃぎっぷりに、オレンジちゃんがついて行けなさそうにしてる。気持ちだけじゃなくて身体ごと寄って言い募る赤毛ちゃんを、オレンジちゃんは迫ってくる顔を押し返しながら防御している。
結構、遠慮ないな。赤毛ちゃんの方に嫌がっている様子はないから、問題はないのかもしれないけど。新しく出来た友人とのじゃれ合い、と見れば、微笑ましくもある。
とは言っても、いつまでもこうしているわけにもいかない。待ち合わせをしていたのに、大幅に時間が遅れてしまっているわけだから。
「とりあえず、これからどうするんですか?」
アッサムさんに尋ねてみる。
どうやら元の予定通り、ダージリンさんと合流することになるみたい。
「話を聞きたくてうずうずしてるみたいなんです」
「アッサムさんじゃなくて、オレから?」
「はい」
「……まぁ、まほちゃんと杏さんに説明するついでと思えばいいか」
「それで結構です。ダージリンのわがままに少しつき合ってあげてください」
アッサムさん、仮にも自分のところの隊長なのに扱いが雑じゃない? まぁ友人ゆえの気安さと考えれば、それだけ仲がいいってことなんだろうけど。
「それと、彼女たちのことなのですが」
どうやら置き引きに遭った彼女たちも、戦車道志望の新入生だったそうで。このままオレたちに同行して、ダージリンさんのところへ行くことになったらしい。
え、マジで?
オレンジちゃんと赤毛ちゃんが、期待に満ちた目をキラッキラにさせてこちらを見ている。
あれか。憧れの人に会う機会が早まって、期待で胸がドキドキみたいな。
彼女たちの態度が、聖グロの戦車道がどれだけ名高いのかを良く表している。すでに副隊長格の人に会って、直々に誘われたんだから、テンションも上がるだろう。
「入学前の新入生にも名前を知られていて、慕われるってのはすごいな。さすがですね、アッサムお姉さま」
「褒められるのは悪い気がしませんが。大瀬良さんの言い方は、どこかからかって楽しんでいるように聞こえてなりません……」
人聞きの悪いことを。結構な割合で本心なのに。
少しの割合でからかいが混ざってるのは否定しないけど。
話をずらしてごまかしてしまおう。
「でも、学年的にはお姉さまで間違いじゃないですよ?」
「……そうなんですか?」
「アッサムさん、3年生ですよね。オレは2年ですから」
「てっきり同学年だとばかり……」
まほも杏さんも3年だし、後輩が同行してるとは思わなかったのかも。特に学年は言わなかったし、つき合ってる云々もあったから。同い年だと思い込んでたのかな。
まぁ大したことじゃないよね。お姉さまって呼ばれるのも似合ってるしさ。
「でも、お姉さまはやめてください。お願いですから」
あれ。口に出す前に止められた。
オレの考えというか、ノリが読まれた?
まぁ嫌がる呼び方を続けて相手の機嫌を損ねるのは本意ではないので。
「分かりました。ごめんなさい」
「まったくもう……」
素直に頭を下げて、撤退である。
アッサムさんはそんなオレに、呆れと半笑いで応えてくれる。
こういう、肩ひじを張らないやり取りができるのは、嬉しいなぁ。
でも、力を抜き過ぎていたせいか。話を聞いていたオレンジちゃんと赤毛ちゃんまで、アッサムさんをお姉さまと呼び始めた。
「これからどころか、学校が始まる前からこんなにお世話になったんですから。私たちも親愛を込めて"お姉さま"とお呼びした方がいいかなと」
「憧れと親愛を込めての呼び方ですのよ。これからもよろしくお願いいたしますわ、アッサムお姉さま!」
邪気のない新入生ふたりに迫られて、じりじりと後退しつつ、アッサムさんが横目でオレを睨んでくる。うん、ちょっと悪いことをしちゃったかもしれない。
フォローに入ろうかなと思っていたら。
「助けてもらえたというなら、お兄さまもそうですわ!」
「……それってオレのこと?」
気がつけばオレの方にまで飛び火してきた。
「お前も巻き添えだ」みたいに、ニヤつかないでよアッサムさん。ツリ目のせいか、そういう顔が良く似合う。美人はどんな表情をしても、どこか可愛らしくていいなぁ。
なんて考えているうちに、赤毛ちゃんが標的をオレに変えて迫ってくる。
正直、年下の女の子に「お兄さま」と呼ばれるのは悪い気がしない。オレンジちゃんが良く出来た真面目な妹で、赤毛ちゃんが手の掛かる元気な妹、みたいな感じ。タイプは違うけど、どちらも甘やかしてあげたい気持ちにさせられる。
だからつい、目の前に来た赤毛ちゃんに心の声が漏れた。
「頭、撫でてもいい?」
「大瀬良さん、何を言って」
「構いませんわ!」
「ちょっ、貴女もっ」
いきなりのことに慌てるアッサムさんはひとまず置いておいて。
オレは許可をもらった上で、赤毛ちゃんの頭をしっかり撫でて、可愛がる。
よーしよしよし。
なんとなく、彼女の方も心地よさそうにしてる。
ひとしきり撫で回したあと、ぽんぽんと軽く頭を叩いて、手を離した。
赤毛ちゃんは目を細めて、「にひー」みたいな笑顔を向けてくる。
うん。無邪気な年下女子に懐かれるとか、実にいいね。
オレと赤毛ちゃんのいきなりなノリについてこれない、アッサムさんとオレンジちゃん。ただオレンジちゃんの方が、どこか羨ましそうにこちらを見ているような気がする。さすがにそれは自意識過剰か。
ひと悶着あったとはいえ、いきなり頭を撫でられて不快に思わない、赤毛ちゃんが天真爛漫なだけだろう。
でもこの赤毛ちゃん。やっぱりどこかヌケているようで。
「頼れるお姉さまとお兄さまに出会えて、わたくしの聖グロ生活はバラ色確定ですわ!」
なんてことを嬉しそうに、声高に言ってきた。
いやさ、オレと知り合えたのを悪くないと思ってくれてるのは嬉しいんだけど。
「勘違いしてるみたいだけど、オレは聖グロの人間じゃないぞ?」
「マジですの?!」
いやいや。そもそも聖グロは女子校じゃないか。普通に考えれば、同年代の男がここにいるのはおかしいでしょ。
「言われてみれば。お兄さまはなぜ聖グロリアーナに?」
「あー。ふたり揃って"お兄さま"は確定なんだ」
オレンジちゃんにまで、「お兄さま」と呼ばれてしまう。
……なんかこう、いいね。
テンションが高い赤毛ちゃんに、マイペースなオレンジちゃん。妹系なふたりの様子と接し方に、ほんわかしてしまうオレ。
アッサムさんはひとり、頭痛を堪えるようにおでこに手を置いて、嘆息する。
軽くオレが聖グロに来た理由とかを話してしばし。
オレたちはようやく、待たせっぱなしなダージリンさんのところへ移動し始めた。
―続く―
次回、自覚のない静かなイチャイチャがダー様を襲う!
槇村です。御機嫌如何。
新入生ふたりを新たなお供にして、一行はダー様の元へ。
そんな流れとなりました。
ぶっちゃけるまでもなく、オレンジペコとローズヒップなのですが。
こんな感じで接点を作ってみた。
紅茶ネームがまだだから、呼び方は苦肉の策でこんな感じに。
もう今年が半分終わったことに驚愕する。
「なろう」のオリジナル小説、まだ文庫1冊分も書けてないのに。
でもガルパンの二次エロ小説は、すでに今年だけで10万字以上書いていた。
……それならまぁいいか。(いいのか?)
いつ終わるか分からない二次小説ですが、これからもよろしくお願いします。
オリジナルのエロ小説も新しくネタを組んだから、書き始めないと腐っちゃう。
いやぁ書くものがいっぱいだなぁ!