2コマ堕ち的ハーレムエロす in ガルパン 作:槇村 a.k.a. ゆきむらちひろ
杏さんと柚子さんと、おしゃべりをしながらまったりと朝食タイムをしばらく過ごして。気がつけばもう午前10時前になっていた。
迎えに来たはずなのに、ミイラ取りがミイラになったと笑いながら。身づくろいをして、3人揃って杏さんの部屋を出る。新学期が始まる前に、生徒会がやっておくべきことがいろいろとあるらしくて。今日も今日とてお仕事だ、と、杏さんは笑いながら言う。
「時間は問題ないの?」
「平気平気。手続きやら書類やらがくるのは、ほとんど午後からだからね」
「やることがいっぱいって言っても、対処しなきゃいけないことがひっきりなし、ってわけじゃないから」
いつぞやオレが「生徒会はブラックか」とか言いまくってたけど。杏さんと柚子さんが言うには、今は仕事量も緩くなっているらしい。よく分からないけど、生徒会室の中が切羽詰まっていたりはしていないようなので、オレとしてはひと安心だ。
まぁ、きつかったり疲れたりしたなら、何か差し入れをするとか、オレの出来る範囲で癒してあげようなんて思っていたりする。
「じゃあ今日は根詰めて頑張らなくちゃ!」
「いやいや小山、それは本末転倒でしょ」
「でも疲れ切ったところで俊一くんが、がんばったね、とか言いながら撫でてくれたりして、甘えさせてくれるんだよ? 癒し効果抜群だよ?」
「染み渡りそうだなぁ、とか思っちゃう自分にびっくりするよ」
間違った方向で気合を入れる柚子さんに、それに突っ込む杏さん。でも最終的には、ふたりしてオレに甘えようとしてくる。
年上のお姉さんたちが両サイドにはべりながら、彼女たちの方からベタベタしてくるのがすごく嬉しい。オレも際限なく甘やかしてあげたくなってしまう。
柚子さんと杏さんに挟まれ、おしゃべりをしながら歩く。目的地はそれぞれ違っていて、ふたりは生徒会室のある校舎へ。オレは自分の住むアパートへ戻る。その分かれ道に差し掛かったところで、もう一度、柚子さんと杏さんをそれぞれハグした。
「俊一くん。今日は何か予定があるの?」
「特にこれといってはないかな。みほちゃんとまほちゃんが吶喊してきそうな気もするし」
「昨日はわたしが独り占めしちゃったからねぇ」
「今日の生徒会が終わったら、わたしも行くからね!」
「分かった。あんまり根詰めないようにね」
夕方過ぎの訪問を約束されて、オレはふたりと別れる。揃って手を振る柚子さんと杏さんを、こちらも手を振り返しながら見送った。
「さて。帰りますか」
彼女たちの姿が見えなくなったところで、オレも足を動かす。
自宅に戻ったら、ひと眠りするか、それとも本でも読むか。何をするにせよ、さっきも言った通り、みほとまほがやって来るような気がする。
一昨日に視察から帰ってきて、昨日はなんのかんのでほとんど杏さんと一緒にいた。まほは視察に同行していたからまだしも、みほは「俊一成分」なるものが足りないとか言い出すんじゃなかろうか。
まぁ、そんなことを言いながら抱き着いてくる、みほも、まほも、姉妹揃ってとても可愛い。スキンシップを求めてくるのは、オレとしてもすっごく嬉しいので。オレ成分が足りないというなら、いくらでも補充してあげようじゃないか。
ニヤつきそうになる顔を鋼の意志で抑えつけながら、オレは自宅までのたいして遠くもない距離を歩く。
と、その途中で。
「そういえば」
ふと思い出して、スマホを取り出す。
メールをひとつ書いて、送信。帰ってから改めて連絡をしようと思い、また歩き出したら。
「うわっ」
スマホの着信音が鳴った。
相手を確認して、つい顔がほころぶ。
メールを送ったばかりの、アンチョビさんからだった。
「もしもし」
『メールを見たぞ。どうした?』
電話口から聞こえる彼女の声が、はしゃぐようにウキウキしてるのは気のせいじゃないと思う。相手がオレだから、という連想も、気のせいじゃないと思いたい。
「朝からごめんね。でもアンチョビさん、レスポンス早すぎでしょ」
『う、迷惑だったか?』
「いや、全然。むしろめっちゃ嬉しいよ」
アンチョビさん大好き、と。電話越しにキスをするように唇を鳴らす。
『ばか、からかうな』
「かなり本気で言ってるんだけどなぁ」
『うぅ。それはそれで反応に困るぞ』
スマホ片手に歩きながら、イチャつくように言葉のやり取りをする。もちろん、歩きながらでも構わないんだけど。出来れば腰をすえてからお話をしたい。アンチョビさんの声も落ち着いて聞けるしね。
「アンチョビさん、今、電話しても平気?」
『問題ない。むしろ大歓迎だぞ。朝から声が聞けたしな』
「ありがとう。そう言ってくれると、嬉しいなぁ」
電話ひとつで、声を聞いただけで喜んでくれる彼女に顔がほころぶ。オレの方も、アンチョビさんの声を聞いただけでウキウキしてしまう。相思相愛だね。
とはいえ、メールを送って即座に電話が掛かってくるとは思わなかった。こちらから電話をしてもいいか、って確認するだけの内容だったんだけど。
「今、ちょっと外に出ていてさ。家に戻る途中なんだけど、もう5分くらいしてから掛け直してもいいかな?」
『む、そうなのか。ちょっと焦り過ぎたか』
「あはは、気にしなくていいよ。むしろ反応の速さに愛を感じたね」
『う。いやまぁ、その』
「恋人との電話のやり取りっていうのに、アンチョビさんの乙女心がくすぐられたのかな」
『くっ。そうだ、悪いか!』
「いやいや、全然悪くないよ」
むしろありがとうございますって感じ。待ちきれずに電話を掛けてきたアンチョビさんを想像すると、ニヤついてしまいそうだ。
「じゃあ、ちょっとしたら掛け直すから。せっかく電話をくれたのに、ごめんね」
『ん。分かった。あと、気にしなくていいからな』
『……電話の約束をして、掛かってくるのをソワソワして待つっていうのは、アンチョビさん的にはアリ?」
『……アリだな』
「やっぱり可愛いなぁ、アンチョビさん」
『おいっ、おおせら』
オレはくすくす笑いながら、返事を待たずに電話を切った。アンチョビさんが真っ赤になって、スマホに向かってしゃべりかけている姿が目に浮かぶ。可愛い。
そんな想像をしつつ、歩くことしばし。オレの部屋に到着する。
鍵を開けて、部屋に入り。ソファに腰を下ろしてから、アンチョビさんにリダイヤル。
掛けるなり、またノータイムで電話がつながった。
「もしもし」
『待ちかねたぞ!』
「アンチョビさん大好き」
『ちょっ、いきなりなんだ!』
負けじとこちらも、ノータイムで言葉のスキンシップを叩き込む。不意を突かれたらしいアンチョビさんが、声をうわずらせて叫んできた。
「ごめんなさい。アンチョビさんの反応が可愛くって、つい」
『大瀬良、お前な。そうやってからかうのもほどほどにしろ』
「あ、ほどほどならいいんだ」
『揚げ足を取るんじゃない!』
「じゃあ、好きとか可愛いとか言うのを自粛すればいい?」
『いや待て、それはそれで困る』
反射的に出てきたっぽいアンチョビさんの言葉。それを聞いて、つい笑みがこぼれてしまう。電話の向こうにもそれが伝わったのか、なんだかふてくされるような声が聞こえてくる。
『大瀬良、そういうところだ』
「うん、ごめんね。調子に乗らないように、努力はするよ」
アンチョビさんの可愛さに耐えられなくなったら、自然に言葉が出てきちゃうかもしれないけどね。その時は諦めてもらおう。
でだ。
電話をしようとしたのは、奇しくも好意の表し方云々とも通じること。柚子さん、杏さんと話した、これからの接し方についてだ。
「もうすぐ新学期が始まるでしょ? で、五股男なオレは、同じ学園に4人の恋人がいるわけで」
『あー。いろいろ言われそうだな』
「そうそう。オレ自身は何を言われても気にしないんだけどさ。杏さんたちが何か言われちゃうのは申し訳ないから。どうしたもんかね、って話をしたんだけどね」
『ふむ』
「いっそ大っぴらにして、節度を守りながら堂々とイチャつこうぜ、ってことにしたんだ。周りを気にして仲良くできないのは、なんか違う気がするし。オレはもう、みんなを手放すつもりはないから」
『ある意味感心するくらい、お前は欲求に素直だよな』
「もちろん、アンチョビさんも手放さないよ?」
むしろ遠距離恋愛になってしまっているアンチョビさんにこそ、会えないなりに密なコミュニケーションを欠かさないようにしなければ。もっと好き好きと言い続けて、想いを太くしていくのだ。
『くぅ……。身悶えるほど恥ずかしいのに、それ以上に嬉しいと思っている自分がいる』
「好意はしっかり伝えて、応えていかないとね。口にしなくても伝わってるとかいうのは、ヘタレの甘えだよ」
『大瀬良の場合は、少しヘタレた方がいいような気もするがなぁ……』
アンチョビさんが、電話の向こうで少し溜め息。
確かに、向けられた好意に対してそれ以上の好意を素直に返してきたから、五股なんて状況になってしまったところはある。
「言いたいことは分かるし、オレも少なからず納得できるんだけど。でもヘタレだったら、アンチョビさんと恋仲になれなかったよ」
『そうなんだよなぁ。今さら好意を表に出すのを自重されても、なんだか大瀬良っぽくないよな。逆に気持ち悪いかもしれん』
「アンチョビさん、言い方。言い方選んで」
なんてことを言いながら、お互いに笑い合う。
うん。こういうくだらないやり取りとか、いいよね。気負わない会話とかが気軽に出来るのは楽しいし、相手が気を許してくれている感じがしてすごく嬉しい。
でも、電話を掛けた理由とはズレているので。残念だけれど、今日のところはこれくらいで切り上げることにする。
「でさ、好意を伝える云々にも関係するんだけど」
『話が戻ったな』
今度は茶化すことなく、話を進める。
杏さんたちと話した通り、五股だろうが当人たちが納得してるんだから、普段からイチャついて幸せを噛みしめようぜ、みたいなことになったことを伝える。
「アンチョビさんは別の学校だから、残念だけどイチャイチャするのに差が出来ちゃうでしょ。だから、ウザくならない程度にメールとか電話とかをいっぱいやっていこうと思って。改めて伝えておこうかなと」
『気になる男子と、毎日のように電話やメールをやり取りする……。いいな。恋人っぽくていいぞ』
アンチョビさん、自分の中にある乙女の階段をまたひとつ踏みしめた様子。それくらいならいくらでもやりますよ。アンチョビさんの乙女ポイントは、全部オレを相手にしてクリアしてもらうからな。覚悟してもらおう。
というか、乙女なアンチョビさんを前にして自重なんて出来るか?
無理だろ。
可愛い、好き好きと言わずにいられる自信はない。
そもそも我慢する必要ってないよな?
「前言撤回。アンチョビさん、可愛い。大好き」
『いきなりなんだ!』
「やっぱり積極的に好きとか可愛いとか言っていくことにする。こういう感情を抑え込むのはさ、無理だと思うんだ」
これが顔を合わせて、ハグしたりして直接触れ合えるならいくらか抑えられると思うけど。場所が離れていて、声と言葉でしかコミュニケーションが取れないなら、密度を上げていくしかないでしょ。
「そういうわけだから、自重するのは取りやめになりました」
『いや、そんな当たり前のように言われても』
「オレがアンチョビさんのことを好きなのは、当たり前のことだよ?」
『……くぅ。私はどう反応すればいいんだ』
電話の向こうから、恥ずかしさで悶えているのが丸分かりな声が聞こえる。拒否反応みたいなものが感じられれば、もちろん無理強いするつもりはない。恥ずかし過ぎて死ぬ、とか言うなら、仕方なく自重しようかという思いはある。少しくらいは。
「恥ずかし過ぎるから嫌だ、って言うなら。残念だけど抑えるよ?」
『卑怯だろう、そういう言い方は』
確かにおっしゃる通り。我ながら質が悪いと思うけど、かなり自覚して口にしてる。アンチョビさんが、本当に恥ずかしがってるけど、本気で嫌がってるわけじゃないことも伝わっているから。
ヘタレじゃないオレは、あえてそれを口にしていくのだ。
「でも、嫌じゃないよね?」
『……嫌じゃ、ない。むしろ嬉しいぞ』
「オレも嬉しい。大好きだよ、アンチョビさん」
『私も、好きだぞ』
アンチョビさんが、小さな声で返事をしてくれる。聞き取れるかどうかの小声から、彼女の照れがこれでもかと感じられる。可愛い。
くそぅ、どうしてアンチョビさんを抱きしめられないんだ。今すぐアンツィオ高校に乗り込んで、思い切りハグしたい。力いっぱい抱きしめたい。
「よし、決めた。ゴールデンウィークになったら、またアンツィオに行くから」
『はぁ!? いきなりどうした大瀬良!』
「だってアンチョビさんが可愛くて仕方ないから。抱きしめたいしキスもしたいから、会いに行く」
いきなり放り込んだオレの言葉に、アンチョビさんは困惑しきり。そんな彼女から、5月に入ってから学園艦が帰港することを聞き出して。自分の中でアンツィオ行きを決定させる。
「もちろん、戦車道の隊長として忙しいだろうから。アンチョビさんの予定に合わせるよ。オレを振り回すつもりで、都合よくスケジュールを組んでいいからね」
『大瀬良……』
予定が立ったら連絡ちょうだい、と告げる。
電話の向こうのアンチョビさんは、どこか熱っぽい声を漏らしていた。遠距離恋愛の恋人がわざわざ遠征して会いに来てくれる、というシチュエーションが、彼女の乙女心にヒットしたらしい。喜んでくれるなら、これくらいのことはえんやこら、というやつだ。
『楽しみにしてるからな!』
「オレも楽しみだよ」
明るくてノリノリなアンチョビさんの声に、オレもウキウキしながら返事をする。女の子との約束って、なんだか嬉しくなっちゃうのはどうしてなんだろうね。
他にも恋人っぽい約束とか、取り決めとか、いろいろ話す。
おはよう、おやすみのメールを送ろうとか。
会ったらアンチョビさんの料理が食べたいなぁとか。
改めて『ローマの休日』ごっこをしようとか。
電話越しのやり取りだけど、アンチョビさんのまぶしい笑顔が簡単に思い浮かべることが出来て。オレも自然と笑顔になっていた。
―続く―
恋人の予定をあらかじめ押さえておく男。
槇村です。御機嫌如何。
お話がしばらく大洗オンリーになるので、
アンチョビさんを少しフォローしておきたかった。
聖グロ勢は練習試合があるからね。そこでまでおあずけです。
次回は西住姉妹とイチャつきます。