※この作品はR-18です。

2コマ堕ち的ハーレムエロす in ガルパン   作:槇村 a.k.a. ゆきむらちひろ

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48:ときめきのアクシデント/スズキ&ツチヤ

 ここまで来たらオレだって止められない。全員ハグという状況になってしまった切っ掛けのスズキさんも、ハグしてしまうぞ。

 笑顔で手を広げると、彼女は緊張したのか少し身を強張らせた。

 でも、表情は怖がっているようには見えない。たじろいで逃げようとする様子もなかった。

 

「大瀬良君、身長っていくつくらい?」

「えー、っと。176、いや、5かな」

 

 スズキさんいわく、自分は168cmあるという。同年代の女子と比べると背が高い方で、周りの女友達は彼女よりも背は低い。クラスメイトの男子を見ればそれ以上の背丈は見掛けるだろうけれど、特に意識したことはなかったという。

 で、今の状況。目の前に立っているスズキさんは、オレを少し見上げていることに気がついて、なんだか新鮮な気持ちになったらしい。

 

「そもそも、面と向かって男子と話すことがなかったからね」

「まぁ、大洗学園は今でもほとんど女子校状態だしねぇ」

 

 照れたようにはにかみながら、スズキさんはそんなことを言って。オレの方は、噛み合っているような、いないような言葉を返す。

 オレの勝手な今のスズキさんの印象だけれど。なんというか、強いて異性と交流することがなかったから、自動車部の仲間と同じような感覚でオレにも接しちゃったのかもしれない。「なんでもする」って最初に言い出したのもスズキさんだったし。

 で、正面からオレと向き合って、身長差に気付いたら、何か違うぞって感じたのかも。

 ともあれ。オレ的には女の子をハグできるのはすごく嬉しいので。

 

「スズキさん、行くよー」

「はうっ」

 

 ゆっくりと。

 驚かせないように。

 スズキさんに抱きついた。

 抱きつくといっても、それほど密着しているわけじゃない。手のひらで彼女の身体に触れないように、手を返して、甲を向ける。

 スズキさんは割と無防備なまま抱きしめられた。身体の間に手を入れたりもしていないので、胸の膨らみがオレの胸板に当たってしまう。

 彼女の背に回した手に力を入れず、添えるだけにして、少し腰を引く。肩だけが触れるようなつもりで、ゆるくスズキさんをハグする。

 

「なんだろ。女の子として気を使われてるのが、すごい新鮮」

 

 ……想像してなかった言葉を、スズキさんが返してきた。

 自分からハグしたいと言っておきながら、オレが極力、嫌悪感の少ないだろうところに触れようとしていることに気付いたっぽい。そんなに気を回すなら「ハグしたい」とか言うなよ、って話だけど。

 オレの棚上げ思考は置いておいて。

 続けて彼女は訳の分からないことを言う。

 

「ほら、わたしってあんまり女の子っぽくないから」

「え。そんなことないでしょ」

 

 何言ってんだこの人。

 スズキさんいわく、女子にしては背が高いし、短髪のくせっ毛だし、色黒だし、車いじりが好きだし、などなど。

 言っていることは、確かにその通り。でもそれが女の子らしくないっていうのは、違うんじゃあるまいか。

 なんてことを耳元で囁いてから。中途半端なハグを止めて身体を離す。スズキさんの顔は、褐色肌でも十分に分かるくらいに赤くなっていた。

 

「すっごい、ドキドキした」

 

 自分より大きな人に包まれる、という感覚が初めてのことらしく。少しときめいてしまったという。そう言ってもらえるのは嬉しいけれど、弱みにつけ込んで抱きつくようなことをして申し訳ない、という気持ちにもなる。

 

「でも男の子って、副会長みたいな女の子が好きなんじゃないの? わたしなんて真逆じゃない」

「いやいやいや。そんなことないでしょ」

 

 本当に、何言ってんのこの人は。

 柚子さんがモテそうっていうのは分かる。だからってスズキさんがモテなさそうっていうのは飛躍し過ぎじゃないか。好みは人それぞれだろうけど、少なくともオレは、スズキさんが女の子っぽくないとは思わないし。むしろ美人さんじゃない?

 スズキさんに限ったことじゃないけれど、車いじりが好きっていうのも、別にマイナスイメージを持つ理由にならないでしょ。逆に、打ち込める趣味とか興味とかがあるのはいいことだと思う。まぁ、押しつけられたら困るけどさ。

 

「えーと、その、うん。なんていうか……。ありがと」

 

 あれ。またオレは思ったことをそのまま口にしてたみたい。

 目の前のスズキさんが、赤くなった顔で自分の頬を抑えている。恥ずかしそうにしているのが可愛らしい。

 

「同年代に車いじりを肯定されたのって、初めてかも」

「確かに。女子からも男子からも、変わり者扱いされてたかな」

「あれだよね。車の話が合うのって学園長くらいだったし」

 

 ナカジマさん、ホシノさん、ツチヤさんも、反応して何やらしゃべり合っている。ひそひそ声どころじゃないボリュームだから丸聞こえだ。彼女たちも、スズキさんと同じく赤面してるっぽいのは気のせいか。

 

「さて。最後はツチヤさんだ」

 

 腕を広げながら、少しお道化た感じで口にする。

 連続ハグの最後のひとり、ツチヤさんが自分からオレの前に立った。でも、ツチヤさんの表情は少し暗くなっている。

 さっきまで、ナカジマさん、ホシノさん、スズキさんがハグされている時には、いろいろと感想というか合いの手というか、そんなものを入れていたけれど。いざ自分の番になって、どうしてこんなことに、みたいな思いが湧いてきたのかもしれない。無理もなかろう。

 なんて思っていたんだけど。ちょっと違ったみたい。

 

「危ない目にあわせちゃって、ごめんなさい」

 

 ツチヤさんは、何度目か分からない謝罪をしてきた。

 4人にそれぞれ謝られるたび「気にするな」と言っている。でも特にツチヤさんは、あの時にハンドルを握っていたというのもあって、気に病んでいるっぽかった。

 

「コーナーを攻めるとか調子に乗ってなければ、驚かせることもなかったと思うし。スピードをもっと落としてたら。後はドリフトじゃなくて普通にコーナリングしてればとか……」

「何度も言ってるけどさ。オレ自身は、自分が勝手に転んだと思ってるんだよ。実際、ツチヤさんが運転する車とはぶつかってないわけだからさ」

 

 しゅんとした感じで気落ちしているツチヤさん。そのせいか、身長が少し低めな彼女がもっと小さく見える。オレは自分の膝に手を置いて、腰をかがませ、ツチヤさんと同じ目の高さになってなだめようとするけれど。どうにも聞き入れてくれない。

 しょうがないな。

 

「ツチヤさん」

「わぷっ」

 

 他の3人と同じように、ツチヤさんもハグしてしまう。

 といっても、抱きしめるのとはちょっと違う。頭を抱え込んで、よしよしとあやすような形。オレの胸元にツチヤさんの顔を押しつけて、心音を聞かせる体勢。恋人たちには大層効いていた、相手を落ち着かせるための必殺技だ。

 

「正面にドリフトをキメた車が出てきたのは確かにびっくりしたけど、ツチヤさんはちゃんと左車線を走ってたでしょ。なら、反対車線で勝手に転んだ奴のことに罪悪感を覚えることないって」

「……そうかなー」

「そうだよ。少なくとも今回のことは、そうだと思うよ」

 

 気に病む必要はないんだと、なだめてあげる。ツチヤさんの頭をわしゃわしゃと撫でながら。

 

「そんなに気にするんだったら、今度からはもっと前方注意を心掛けよう、ってことでいいんじゃないかな」

 

 ツチヤさんの頭を抱き寄せて、心音を聞かせながら。今度は優しく、落ち着かせるように、彼女を撫でる。髪を梳く。

 と、そこで。まるで恋人たちにしているのと同じことをしてると気付いた。慌ててツチヤさんの頭を離す。

 ちょっと馴れ馴れしくし過ぎたな。手のひらで抱きしめちゃったし。

 そう思って謝ったら。

 

「え。あ、気にしなくていいよ。うん。平気、平気」

 

 オレのことを見上げながら、ツチヤさんは慌てたようにそう言ってくる。笑顔を向けてくれてるけど、少し赤くなって、照れたような顔をしてる。おぉ、可愛らしい。

 なんて考えていたら。いきなりツチヤさんがオレの上着を引き寄せて。自分から、オレの胸元におでこを押しつけてきた。それから、ぐりぐりと、頭を左右に振って擦りつけてくる。

 

「分かった。もうぐじぐじしない」

 

 ありがとう大瀬良君、と。

 ツチヤさんは、何か吹っ切れたような笑顔を浮かべた。

 笑みを浮かべると糸目になる、そんな顔がまた可愛くて。

 ついつい、彼女の頭を撫でてしまった。

 

「おぉ、ツチヤがデレたぞ」

「どうしてあんなに堂々と恥ずかしいことができるんだ……」

「それってツチヤのこと? いや、どっちもかな」

 

 とまぁ、そんなやり取りをしたりして。自分たちが切っ掛けで事故らせてしまったと思い込む自動車部の4人を、いきなりハグという罰ゲーム的なことで罪悪感を感じさせないようにしつつ。お互いさまという感じで手打ちにした。

 実際にオレは、対向車線の彼女たちの車に勝手に驚いて自爆しただけ、と思ってる。話の流れで強引にとはいえ、可愛い女の子4人とハグできたから。こちらは得しかしてないし。

 さらにスクーターの修理まで請け負ってくれた。四輪と二輪の違いはあれど、エンジンで動く車輌には違いない。だから任せておけと、ナカジマさん、ホシノさん、スズキさん、ツチヤさんが揃ってやる気になっていた。オレの方がもらい過ぎなくらいなんだけど、4人とも譲ろうとしなかったので、お言葉に甘えてスクーターの修理をお願いした。

 したんだけど。

 いや、張り切ってくれる気持ちはすごく嬉しいんだけど。

 張り切り過ぎるのも正直、困るわけで。

 

「スクーター、直ったから取りにおいでよ」

 

 スクーターをあずけて数日後、ツチヤさんから直接声を掛けられて。自動車部が根城にしているという、彼女ら以外にはあまり使われていない車庫まで引っ張ってこられた。

 ちなみに、この時に初めて、ナカジマさん、ホシノさん、スズキさんが先輩だということを知る。同級生はツチヤさんだけだってことに少し驚いた。4人揃って随分とフランクな関係っぽかったから、全員同級生だと思ってた。思い込みはいかんな、うん。

 それはさておいて。

 ツチヤさんに腕を引かれて、自動車部の皆さんがたむろしている車庫に到着すると。

 

「お。大瀬良君、いらっしゃーい」

「よくきた。生まれ変わった相方に驚け」

「これで大瀬良君も、大洗の風になれるよ」

 

 出迎えてくれたのは、妙にテンションの高い、ナカジマさん、ホシノさん、スズキさんの3人。さらにここまで連れてきてくれたツチヤさんも加わって、修理済みらしいオレのスクーターを囲んで仁王立ちする。なんなのこのノリ。

 ツッコミどころはあるけれど、ひとまずスルー。

 で、そのスクーターなんだけど。外側を見た限りではしっかり直ってる。すっ転んだせいで至るところが割れてたし、ミラー部分とかブレーキとかもひしゃげていたはずだから。壊れていたようには全然見えなくて、素直にすごいと思う。

 

「本当に、ありがとうございます」

 

 いや本当にありがたい。嬉しいなぁ。

 心から礼を言って、頭を下げる。

 ところが、ナカジマさんが勢いよくストップを掛けてきた。

 

「礼を言うのはまだ早いよ。このコに乗ってみないことにはどんな案配か分からないし。まだ手直しが必要かもしれないしね」

 

 言われてみれば、確かにその通り。それじゃあ早速と。自動車部の4人に促されるままに、愛車たるスクーターにまたがる。

 目に見える範囲には、壊れたようなところや傷は残っていない。あの半壊したスクーターとは思えないくらいだ。

 キックスターターを出して、足を掛け。思い切り踏み込む。

 

 ドルンッ

 

 一発でエンジンが掛かる。おぉ、すげぇ。

 ……気のせいかな。エンジンの勢いが凄くなってない?

 不思議に思って、ナカジマさんたちに目を向ければ。4人ともすっごくわくわくしているような顔でオレを見てる。なんだその期待に満ちた目は。

 

「気をつけてね」

「大丈夫。制御しきれると信じてるぞ」

「運転はやっぱり乗って慣れるのが一番だよ」

「風になれるぞー」

 

 なにやら不穏な声を掛けられる。意味が分からないぞ、どういうことだ。具体的に言ってくれ。

 仕方ない。とりあえず、走ってみよう。

 シートに座り、ヘルメットを被って。

 スタンドを外し、アクセルに手を掛けて。

 少しだけ、エンジンをふかす。

 

「どわっ」

 

 アクセルを軽くひねっただけ。なのにエンジンは想定外のパワーで回り、スクーターは勢いよくウイリーする。

 オレはその場で派手にすっ転び。乗り手を放り出したスクーターは、ウイリーしたまま走り出して、すぐに転倒した。

 なんだコレ。スクーターのパワーじゃねぇぞ。

 呆然としているところに、慌てて駆け寄ってくるナカジマさんたち。

 

「大瀬良君! 大丈夫?!」

「ケガは、ケガはしてないか?!」

「どこか痛くしてたら無理しないで言って?!」

「また車に乗せて病院に!」

 

 ちょっと待ってくれ。

 彼女たちにしても想定外のことだったのか、駆け寄るなりケガの心配をしてくれる。同時に、異常はないかとオレの身体のそこかしこをぺたぺたと触ってくる。

 身体を起こしてくれて、オレの様子を窺うナカジマさん、ホシノさん、スズキさん、ツチヤさん。本気で気遣ってくれているのは伝わってくる。

 ありがたい。いやね、ありがたいんだけどさ。

 

「なんだよ今の。なんだアレ」

 

 この原因は、あの修理したって言うスクーターのせいだよね?

 いきなりアクセル全開にしたわけでもないのに吹き飛ばされるってどういうことなの。暴れ馬なの? エンジンがフェラーリにチェンジしたの?

 女の子に怒鳴るのはいかがなものか、という自制が辛うじて働いたものの。実際には静かにキレていた。自動車部メンバーは、なにやらバツの悪そうな顔をしている。

 

「いやー。修理ついでにスペック以上のものに仕上げようって張り切っちゃってさ」

 

 ナカジマさんは半笑いでそんなことを言う。

 気持ちは嬉しいけどさ、仕上げって言葉のベクトルが物騒な感じがするのは気のせいかな。お願いしたのって修理だよね?

 

「ただ元通りに修理しただけじゃ申し訳ないからな。エンジンのオーバーホールからグレードアップまで、しっかり手を入れたんだぞ」

 

 ホシノさんはどこか誇らしげだ。

 気持ちは嬉しいんだけどさ、オーバーホールって必要だったの? それはいいとしても、グレードアップってどういうこと?

 

「私たち4人が、大瀬良君のために技術と知識を総動員したからね。スクーターとは思えないポテンシャルを秘めた自信作なんだよ」

 

 スズキさんがものすごく満足げに言う。

 気持ちは嬉しいんだけど、そのポテンシャルとやらを教えてもらえなかったから放り出されたわけで。乗る前に詳しいことを教えといてくれよ。

 

「スクーターの皮を被った狼だよ。もし大瀬良君が走り屋に勝負を挑まれても、そこらの中型バイク程度には負けないスペックになってるんだ」

 

 ツチヤさんが身振りを入れつつ興奮気味に言う。気持ちは嬉しい……嬉しい? とにかくオレのことを思って言ってくれてるんだろうけど。そういうのは実際に乗る前に行ってくれ。あとこの学園艦の上じゃあ、ツチヤさんたち以外の走り屋っていないんじゃなかろうか。

 

「気持ちは本当に、ありがたいんだけど。違う。違うでしょ」

 

 最初こそ、心配が先だったのか神妙にしていたけれど。気がつけばスクーターがいかに生まれ変わったのかを熱弁し始める。

 なんだか、怒るのも馬鹿らしくなってきた。

 でも、これだけは言っておかないといけない。

 あのスクーターを、元に戻せと。

 

「オレは別に、スピードを追い求めるとか、風の向こう側へ越えていくみたいな衝動はないから。変なパワーはいらないよマジで」

「こんなスペックなのは他にないから、走ってて気持ちいいいよ?」

「軽く吹かすだけでひっくり返るスクーターなんて、どう扱えと。じゃじゃ馬もいいところでしょ」

「でもほら、乗りこなせるとカッコイイだろう?」

「これまで乗りこなせてた、普通のスクーターがいいです」

「せっかくだからさ、乗りこなしてみようとは思わない?」

「わざわざ改造してまで、オレをどうしたいのいったい」

「わたしたちみたいに、夜風を切って走る、大洗の狼的な?」

「本当に狼になって襲ってやろうか」

 

 これはあれか。修理させてという気持ちは純粋にあったけど、スクーターをいじっているうちに趣味の方に振り切れちゃったみたいな。

 でもあのアクセルの軽さは問題あるでしょ。怖くて乗れんわ。

 

「そういうわけだから。ノーマルなスクーターに戻してください」

「えー」

「えー、じゃない」

 

 かんべんしてくれ。

 ツナギ姿とはいえ、駄々をこねる4人の女の子に囲まれる。言葉だけだとなんだかときめくシチュエーションだけど、中身は「自分たちが改造したスーパーパワーなスクーターに乗れ」というもの。わけが分からない。

 

「あんまり駄々をこねると、また罰ゲームよろしくハグしちゃうぞ」

 

 埃を払いながら立ち上がって、そんなことを言いつつ4人を諫める。 その途端、ナカジマさんたちは顔を赤くさせた。

 オレとしては、パワー過多な改造をさせられたスクーターですっ転んだせいで、いささか気持ちがささくれ立っていたのは否めない。軽い気持ちで、ちょっとダークな気分もありつつ、そんなことを口にしてしまったんだけど。

 

「ちょっと待って」

 

 ナカジマさんが発した待ったの声。

 それからなぜか、場の空気が明後日なものへと変わっていく。

 

「大瀬良君。ということは、ハグされればあのスクーターに乗ってくれるってことなのかな?」

「……ナカジマ。お前は何を言ってるんだ」

「待ってホシノ。ナカジマの言ってることは一理あるよ」

「むしろわたしたちから抱きついたら、大瀬良君も乗るしかなくなるんじゃないかな?」

「「「それだ!」」」

 

 それだじゃねーよ。

 声を合わせるナカジマさんたちに思わず突っ込みを入れてしまう。

 

「大瀬良君は、私たちみたいな女でも抱きつかれたら嬉しいんでしょ? 私たちはあのスクーターに乗ってもらえて嬉しい。両方嬉しくてウィンウィンじゃない」

「いやいやそれはおかしいでしょ。確かにナカジマさんたちをハグできるのは嬉しいけどさ」

 

 でもあんなじゃじゃ馬スクーターに乗るのは嫌だよ。ナカジマさんたちだって、改造スクーターの試乗相手ができるのは嬉しいかもしれないけど、オレに抱きつかれるのは嫌なんじゃないの? それならウィンウィンどころかプラマイゼロじゃん。むしろマイナスじゃない?

 

「全然知らない男ならともかく。大瀬良が相手なら、それほど……」

「嫌ではないかな。テストドライバーの伝手ができるって考えれば、むしろ私たちの方がプラス?」

 

 照れた顔でそっぽを向くホシノさんと、ニコニコ顔で妙に打算的なことを言うスズキさん。ハグされてもそれほど嫌じゃない、って思われているのは素直に嬉しい。

 でも。でもさ。

 

「いいからいいから。とりあえず抱きつかれちゃおうよ」

 

 なんだか悪戯を仕掛けるような笑みを浮かべて、ツチヤさんがにじり寄ってくる。自分の言ってることが、セクハラオヤジと大差ないことに気がついてないんだろうか。

 でも正直、内心でむっちゃ悩む。なまじ4人とも可愛らしいから、そんな風に迫られるとその気になってしまいそう。

 ひと思いに抱きしめて、あの改造スクーターに翻弄されるか。それとも頑なに、ノーマルなスクーターとの平穏を求めるか。

 と、悩んでいる間に。ナカジマさん、ホシノさん、スズキさん、ツチヤさんが揃ってすぐそこまで迫っている。

 

「おいちょっと待て。強制はよくない。というかこれセクハラだろ!」

 

 迫る彼女たちを見て、オレは吠えながら逃げ出した。

 

「あっ、逃げた!」

「くっ、女にここまでさせておいて」

「往生際が悪いぞっ」

「追えーっ!」

 

 ナカジマさんたちも、理不尽な声を上げつつ追い掛けてくる。

 かんべんしてくれ。

 

 

 

 ……そんな風に、愉快な追いかけっこがしばらく続き。結局、彼女たちとのハグ1回ずつの代わりに、その場限りのテストドライバーを引き受ける羽目に。

 言うことを聞かない改造スクーターの乗りこなしに悪戦苦闘し、最終的にまた御しきれず放り出されたため。

 もうスクーターは直さなくていい!

 こんなじゃじゃ馬くれてやらぁ!

 なんてことを叫び、半ギレ。

 スクーターをほったらかして帰ろうとするオレを、慌てたナカジマさんたちが謝りながらなだめに掛かるという結末に。

 それ以降オレは、ナカジマさん、ホシノさん、スズキさん、ツチヤさんたち自動車部の面々と、そこそこ親しい付き合いをするようになった。

 恋人が複数人いると言っても、驚かれはしたけれど、反発みたいなものは受けなかった。全員ハグする、なんて女にだらしないところを見せてたんだから、「今さら何を」という感じなのかもしれない。

 ……喜んでいいのだろうか。

 

 

 

 ―続く―




自動車部とのワチャワチャしたやり取りが書きたかった。
槇村です。御機嫌如何。


自動車部の4人との馴れ初めを全2話でお届け。
ツナギ姿のまま彼女たちをハグしたかった。それが発端だった
うまく書けていたかは、ちょっと自信がない。
これからも騒々しいやり取りを書いていくつもり

次回はエロが書きたくなったので、柚子&杏回の予定です。


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