※この作品はR-18です。

2コマ堕ち的ハーレムエロす in ガルパン   作:槇村 a.k.a. ゆきむらちひろ

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西住姉妹と自動車部の4人が駄弁るだけです。



53:ガールズ・トーク/みほ、まほ&自動車部

 修復された戦車が校庭の片隅を走り回り、乗り込んだ俊一が大はしゃぎ。操縦する西住姉妹と、直してみせた自動車部の4人を手放しで褒め称え。前者を笑顔にさせて、後者を照れで思い切り赤面させてから。俊一は彼女たちの作業場であるガレージをお暇した。

 彼を乗せて走らせはしたが、これはあくまでも動くというだけのことで。車体の耐久性であるとか、砲がきちんと機能するかだとか、もろもろの動作の微調整だとか、確認すべきことはまだまだ山のようにある。

 みほとまほ、ナカジマ、ホシノ、スズキ、ツチヤの自動車部4人は、気を取り直して戦車の整備に取り組みだす。戦車道の知識と、自動車整備の技術を、互いにすり合わせ、あれやこれやと声を掛け合いながら戦車をいじる。

 西住姉妹の戦車に対する造詣の深さが、自動車部4人が持つ車輌全般に通じる技術と知識に乗る。彼女たちの「できること」が噛み合って。20年以上前の戦車を、より自然でスムーズな動きができるように蘇らせていく。

 それが楽しくて楽しくて。

 気がつけば、時間はもう夕方過ぎ。空は暗くなり始めていて、校庭には灯りが点いている。学園敷地の端にあるガレージの中では手元が見えづらくなっていた。

 

「もうこんな時間か。早いな」

「楽しいことに集中してたら、そんなのいつものことだよ」

 

 車庫内のガレージに戻した戦車、IV号戦車D型の履帯部分を覗き込んでいたまほが、身を起こして大きく伸びをする。同じ部分に手を突っ込み、レンチを繰っていたナカジマは、彼女の言葉に笑いながら応える。

 

「暗くなってきたことだし、そろそろ切り上げるかー?」

「お腹もすいてきたしねー」

 

 戦車の向こう側から、ホシノとスズキが声を上げた。まほとナカジマがいるのとは反対側の履帯部分をいじっていたふたりにも、まほの声は聞こえていたようだ。

 

「修理を急ぐ必要はないんでしょ。続きはまた明日にしようか」

 

 そういいながら、ナカジマは締めた箇所のゆるみを確認して、手にしたレンチを差し出す。まほは、ごく自然にそれを受け取り、工具箱へとしまい込んだ。

 

「ツチヤー。みほさーん。そろそろ上がるよー」

 

 ナカジマも立ち上がって、屈みっ放しだった身体をほぐすように大きく伸びをしつつ。戦車の上の方へと声を掛ける。まほ、ナカジマ、ホシノ、スズキが履帯周りをいじっている間、みほとツチヤは戦車内部に入り込んでいた。

 ナカジマの声が聞こえたのか、みほの声が戦車の中から返ってくる。

 

「お姉ちゃーん。ちょっと砲塔動かすから、気をつけてー」

「ん、分かった。ホシノ、スズキ、砲塔が動くから気をつけろ」

「はいよー」

「りょうかーい」

「ふたりともー、動かしていいよー」

 

 ナカジマが返事をするなり、砲塔が動き始める。ゆっくりと、右へ、左へと、砲身を大きく振る。

 

「ふむ。思ったよりスムーズになったな」

「軋むような音も聞こえないし、これで問題ないかな?」

「実際に撃ってみないことにはなんとも言えないけど」

「平気だと思うよ?」

 

 動く砲身を見上げる、まほとナカジマ。戦車の反対側にいたホシノとスズキも移動してきて、つぶやきに参加する。

 砲塔や砲身の金属が劣化しているかと思われたが、幸いそういうことはなかったようで。戦車用砲弾の実射はまだできていないが、無事動くようになったことに一同は安堵する。

 

「よーし。砲塔周りはきっちり動くようになったねー」

「ツチヤさん、お疲れ様」

 

 砲塔部分のハッチが開き、中からツナギ姿のツチヤが這い出てきた。それを追い掛けるように、ジャージにTシャツ姿のみほも姿を見せる。

 ツチヤはツナギの上着を盛大にはだけさせて、みほはTシャツの襟元をつかんで風を入れようとする。ふたり揃って汗をぬぐいつつ、胸元を扇ぎながら涼を取ろうとした。

 

「戦車の中って、思った以上に暑くない? 今はまだしも、夏場なんて暑さでのぼせちゃうんじゃないかな」

「今の戦車はそうでもないよ。それなりに冷暖房もついてるし」

 

 戦車の中という密室の暑さにツチヤが辟易とし。

 それを受けて笑いながら、みほが現行戦車のエアコン事情について語る。

 

「この戦車は20年くらい前の構造そのままだから。車輌の修復だけじゃなくて、そういう装備の追加も考えないとダメかも」

「まずはエアコン設置が急務かなー」

「それでも快適とは言い切れないけどね」

 

 汗まみれは勘弁してというツチヤに、苦笑いで同意するみほ。

 仲良さげにやり取りするふたり様子を見て、姉のまほは微笑ましさに表情をゆるめていた。

 

 

 

 

 ひとまず今日のところは切り上げるということになって。ガレージの隅にある詰め所のような部屋へ入る。彼女たちはそこを更衣室にして、ジャージやツナギに着替えていた。それぞれが作業していた服を脱ぎ、タオルで汗をぬぐいながら、あれこれ会話を交わす。

 その内容は、今日のうちに進んだところについてがほとんどだった。

 とはいえ、戦車の修理は急いでやるべきことでもない。早く直るに越したことはないが、突貫作業をせねばならないというわけではなかった。

 ならば、戦車について基礎を学びながらの方が、効率がいいのではないか。西住姉妹はそう考える。

 そして機械いじりが趣味な自動車部の4人も、経験者から詳しく教われるのなら大歓迎。むしろいろいろ教えてくれと迫る勢いだった。

 

「お姉ちゃん。俊一くんに渡すつもりだった教本とか、あるよね」

「そうだな。手取り足取り戦車道を教えるつもりだったが、アッサムに先を越されてしまったことだし。ナカジマたちに渡してしまってもいいか」

 

 仕方ないなと、残念そうに言う姉に、妹は苦笑しきり。

 戦車道についてほぼ知識のない俊一のため、懇切丁寧に教授すべく、関連書籍やら資料やらを大量に用意していた西住姉妹。しかし視察に行った聖グロリアーナ女学院で、触りだけとはいえアッサムに先を越されてしまっていた。

 まほは、それが面白くなかったようで。未だにぼやいたりする。

 そんな姉の姿に、みほはまたおかしくなって、笑ってしまいそうになる。

 妹の目から見ても、黒森峰にいた頃、まほは感情を表に出すことは多くなかった。それが自然とできている今の姉の姿に、嬉しさを感じてしまう。

 妹・みほがそんなことを考えていることには気付かずに。まほはナカジマと話を続ける。

 

「元々は俊一のために用意したものだが、戦車道関係の本や資料がそこそこある。良ければ持っていくか?」

「いいの? 戦車の仕組みとかちょっと勉強しようかなと思ってたから、すっごくありがたいけど」

「構わない。こうして修理も手伝ってもらえてることだしな」

「じゃあ、分からないところがあったら、そのつど教えてもらえるかな」

「それくらいはお安い御用だ」

「本職の指摘をもらえるのは心強いよね」

 

 ホシノとスズキも加わって、思わぬ申し出に喜ぶ自動車部の面々。機械の面ではともかく、戦車道という面では彼女たちも無知同然だ。戦車に対する知識について、まほとみほが博識で頼りになることは身をもって感じている。そんな彼女たちが選んだものなら、役に立つに違いない。

 

「じゃあ、このまま受け取りに行っちゃってもいいかな?」

 

 善は急げとばかりに、ナカジマがそんなことを言ってくる。

 まほにしても、断る理由はなく。じゃあ皆で私たちの部屋まで来るか、と誘うことになった。

 

「……お姉ちゃん。大変だよ」

 

 そこで、みほはあることに気付き、愕然とした表情になる。

 一体何事かと思えば。

 

「わたし、お友達を部屋に呼ぶなんて初めてかも」

 

 本気で漏れ出たのは、そんな言葉。

 妹の言うことに、まほもはっとした。

 思い返してみれば、彼女もそんな記憶はない。

 西住姉妹が黒森峰にいた頃、学園艦ではふたりとも寮住まいだった。西住流、という名前を背負っていたこともあって、気軽に誰かを部屋に招くといったことはしたことがない。熊本の実家、西住の屋敷ならなおさらだ。

 

「みほ。私もたぶん、初めてだぞ」

「すごい。普通の学生みたいだよ、お姉ちゃん」

 

 まほとみほは手を撮り合って喜びを見せる。姉は静かに。妹はひと目で分かるくらいの笑顔で。

 ナカジマ、ホシノ、スズキ、ツチヤの4人は、西住姉妹のはしゃぐ姿に少し戸惑い気味だ。少し前までいたという黒森峰ではどんな学園生活を送っていたのかと。

 とはいえ、迷惑だとは思われていない、ということは分かる。

 それならいいかと、自動車部の4人はいろいろとスルーすることにした。

 

「どうせなら、お泊り会でもするか?」

「じゃあそのまま戦車道教室をしてもらおうよ」

「わたしたちも車トークで夜明かししたりとか、よくあるしね」

 

 言い出しっぺのナカジマに乗っかるようにして、ホシノもスズキもツチヤも言葉を続けてくる。

 手をつないだままの西住姉妹が、改めて彼女たちに顔を向けてきた。

 

「お泊り会!」

 

 ことに、みほが強い反応を見せる。目をキラキラとさせながら。

 いわく。

 

「お泊り会なんて、仲のいい友達みたい!」

 

 それを聞いて、ナカジマたちはまたも苦笑い。

 この娘は今さら何を言っているのか、と。

 

「私たちはもうとっくに友達のつもりだったけど」

「車と戦車の違いはあっても、機械いじりの話ができる相手は貴重だ」

「むしろこちらの方こそ、仲良くしてほしいよね」

「もちろん、まほさんもだよ?」

 

 笑いながら軽い口調でそんなことを言う、新しい友達を前にして。

 みほとまほは、まぶしいくらいの笑顔を返した。

 

 

 

 

 

 西住姉妹と自動車部の面々は、車庫周りの後片づけをしてから学園を出た。

 大洗学園の生徒は、ほとんどが学生寮に住んでいる。学園艦上に自宅があったり、学園直営ではない賃貸アパートなどを借りて通学している生徒も中にはいる。けれどそれは全体から見てみるとごく少数だ。

 ナカジマもホシノもスズキもツチヤも、揃って寮住まいだ。クラスメイトなども皆そうで、付き合いのある中では寮外生はほとんどいない。俊一は数少ないそのひとりだが、部屋の前まで行ったことはあるものの、中に上がったことはさすがになかった。

 

「だから、寮以外で暮らしてる人の部屋って知らないんだよねー」

 

 友達と一緒に下校し、歩きながらあれこれと他愛のない話をする。

 ナカジマたち4人にしてみればいつものこと。

 けれど、みほとまほには初めてに等しいことで。

 みほは嬉しさを表に出し、まほは少しばかり足取りを軽やかに。形は違えど、ふたり揃って浮ついた姿を見せている。

 お泊り会になるということで。まずナカジマたちが寮へと帰り、着替えなどのお泊りに必要なものを用意する。その後に西住姉妹の部屋へ向かう、という手はずだ。

 西住姉妹と自動車部メンバー、6人でおしゃべりをしつつ連れ立って歩く。

 みほ、ナカジマ、ツチヤが何かと会話を交わし。

 まほ、ホシノ、スズキがその後ろで相槌を打つように言葉を挟む。

 そんな賑やかなやり取りを、彼女たちは交わしているうちに。

 気がつけば、みほとまほが住む小規模なマンションに到着した。

 

「おー。なんだか豪華じゃない?」

「学生向けというより、家族向けな感じだな」

 

 しっかりした造りの建物を見上げながら、ナカジマとホシノがそんなことを口にする。

 自分たちの部屋の前に立ち、まほがカギを開けて。ナカジマたち4人も促されるままに玄関をくぐり、友人宅への初訪問を果たす。

 

「ふたりで住んでるからかもしれないけど、結構広いね」

「寮以外の誰かの部屋を見るのって初めてー」

 

 スズキとツチヤが、興味深げに室内を見回しながら言う。ナカジマとホシノも同じような反応だ。もちろん、部屋の主に失礼にならないように気をつけながらだが。

 そこへ。

 

「ただいま! 飲み物とおやつ、買ってきたよ!」

 

 みほが遅れて、外から勢いよく戻ってきた。にっこにこの笑顔で、両手には中身の詰まったスーパーのビニール袋を掲げている。

 帰宅途中、友達をもてなす飲み物やら食べ物やらが何もないことに気付いた彼女。そこで、ひとり別れて買い物に行ってくると言い出した。

 じゃあ全員で行こうか、と、一行は行き先を変えようとしたのだが。みほが、自分が行ってくると言って聞かなかった。

 いわく。

 お友達を家に招く準備をするワクワク感を味わいたい。

 どんな飲み物やお菓子を出せば喜んでくれるかって考えるのが楽しい。

 などなど。

 みほがものすごくキラキラした目で言ってきたので、任せることにした。

 意気込む妹に、まほは「なるほど」と素直に感心し。

 一方でナカジマたちは、そこまで気負わなくてもと思ってしまったが。

 

「じゃあ、座ってくれ」

 

 少し広めの丸テーブルの前に座るや否や、みほが買い物袋から紙コップとジュースの大きなペットボトルを取り出す。ウキウキしながら人数分の飲み物を用意して、それぞれの前に差し出した。

 その横で、まほも、妹が買ってきたおかしを開けてテーブルに並べていく。かいがいしい姿に、ナカジマたちはついつい微笑ましくなってしまう。

 

「なに、こんな風に誰かが遊びに来るとか、集まって駄弁るとか、そういうのは滅多にないの?」

「……なかったな。黒森峰にいた時は、戦車道一辺倒だった。西住流の娘として見られることの方が多かったから、普通の友人付き合いというのが難しかったのもある」

「戦車道の流派の家元、だっけ」

「黒森峰は西住流戦車道のお膝元、と言っても過言ではないからな。流派家元の娘、となれば、気軽に接するのは難しいだろう」

「はー。大変だねぇ」

「黒森峰の外になら、戦車道絡みでもそこそこ知人はいるんだがな。そういったしがらみを気にせず人付き合いができそうなところは、大洗にきて良かったと思える点のひとつだな」

「こっちに来てまだ何日も経ってないのに、すっごく満喫してるよね」

 

 そんな会話をしつつ、まほとみほは戦車道に関するあれこれを取り出す。

 次から次へと積み上げられていく関連書籍や資料の類。想像以上の数にナカジマ、ホシノ、スズキ、ツチヤは面喰ってしまった。

 とはいえ車いじりの延長からきた興味から、彼女たちはさして抵抗なくそれらに手を伸ばす。自然と読み込んでいき、気になったところは遠慮なく質問してくる。やり取りにも熱が入ってきて、どんどん盛り上がっていく。

 西住姉妹も、こと戦車に関することなら誰よりも熱が入る。

 ナカジマたちが揃ってやる気満々で、戦車とは少々異なる視点やアプローチから質問やツッコミが飛んでくるのは、自動車部所属という点ゆえか。みほやまほも楽しくなってしまう。

 気がつけば、6人は時間を忘れて戦車談義を交わしていた。

 そうこうして、それなりに時間が過ぎた頃。

 

 ピロピロリンッ

 

 着信音が響く。

 音を立てたのは、みほとまほのスマホだ。

 

「……お姉ちゃん、メール来た?」

「あぁ。柚子と杏から、動画付きで来たぞ」

 

 先ほどまで楽しげに戦車談義をしていた西住姉妹が、いきなり真顔になってスマホを見つめる。いきなりの変わりように、ナカジマも、ホシノも、スズキも、ツチヤも、何事かと訝しんだ。

 

「え、どうしたの。何かあった?」

 

 代表するようにナカジマが話し掛ける。

 西住姉妹はそれに答えず、手にしたスマホをそれぞれ操作していた。

 顔を見合わせる自動車部の4人。杏と柚子、生徒会長と副会長からメールが来たと聞いただけなので、その内容は分からない。もしかしたら修理していた戦車について、なんらかの注意や通告でも受けたのではないか。そんなことを思いめぐらせ、いささか不安を覚えてしまう。

 ほどなくして、なにやら音が漏れてきた。

 届いたメールに添付されていたという、動画だろうか。

 

「えっと。それは私たちが見たり聞いたりしても、平気なのか?」

 

 恐る恐るといった風に、ホシノが西住姉妹に尋ねれば。

 みほとまほは無言で動画をいったん止め、アイコンタクト。

 真剣な顔のままうなずいてから、手招きをする。

 今度はナカジマたちの方が困惑してしまう。なんだなんだと。

 4人は誘われるままに、ふたりの背中から覗き込む。ナカジマとツチヤは、みほの手元を。ホシノとスズキは、まほの手元を。

 再生された動画は、どちらも同じもの。

 エプロン姿で台所に立つ俊一が、映っていた。

 

「ん?」

「……なにこれ」

「もしかして、大瀬良君かな?」

「そうっぽいね」

 

 火をかけながら鍋の中身を掻き回すエプロン姿の俊一。

 振り返りながら「また撮影してるのか」と苦笑する俊一。

 テーブルを拭いて、お皿やスプーンを用意する俊一。

 カレーの入った鍋をテーブル中央に置いて、全員分のご飯をよそう俊一。

 ご飯にたっぷりカレーをかけて、いただきますをする俊一。

 カレーライスをスプーンですくい、口に入れるも少し熱がる俊一。

 はふはふ、と口の中で少し転がして熱を逃がそうする俊一。

 味と辛さに満足したのか、少し微笑む俊一。

 嬉しそうにカレーを食べ続ける俊一。

 そして、カレーを食べながらも撮影を止めない柚子と杏を叱る俊一。

 

「撮るのはいいかげん止めて、あったかいうちに食べなさい」

 

 はーい、という素直な返事が動画内から聞こえて。

 ほかほかご飯にカレーをたっぷりとかけた、カレーライスが映り。

 改めて「いただきます」という声が聞こえてから。

 動画が終わった。

 

「……」

 

 6人ともしばし、再生の終わったスマホの画面を見つめたまま動かない。声を漏らすこともなく。唾液なのかヨダレなのか、何かを飲み込むような音が少し聞こえただけだ。

 

「これって、いわゆる飯テロってやつ?」

「聞いたことはあるな。美味しそうな画像やら何やらを見せつけて、空腹を煽ってくるっていうやつだ」

「なるほど。これは強烈だね」

「お腹が鳴りそう……」

 

 口々につぶやく、ナカジマ、ホシノ、スズキ、ツチヤ。さも恐ろしい何かを見せつけられたかのように、その声に力はない。ただ揃って、自分のお腹をさすっているのは共通していた。

 一方で、スマホを手にしたままの西住姉妹は。

 

「今日は、カレーだったのか……」

「柚子さんと杏さんが、俊一くんのカレーをふたり占め……」

 

 ものすごく絶望したような顔をして、力のない声を漏らす。一緒に動画を見ていた自動車部の4人が「そこまでか」と突っ込んでしまうくらいに、力を落としている。

 というよりも、実際に手を床についてうなだれていた。

 

「ねぇねぇ、ふたりとも。大瀬良君のカレーって、そんなに美味しいの?」

「ものすごく美味しいよ!」

「実に美味だ」

 

 何気なく聞いたスズキのひと言。みほとまほは、それに反応して勢いよく顔を上げる。少し腰の引けるスズキたちを気にすることなく、拳を握りながら、恋人の作るカレーがいかに美味しいかを主張し始める。

 いわく。

 俊一の作るカレーは少し辛さを抑えた中辛が基本で、とろみは強め。

 具だくさんだけれど、形が崩れるくらいに煮込んだものを好む。

 旨味が濃縮されていて、とても美味しい。

 さらに意識してやや硬めに炊くご飯との絡みが最高。

 つい食べ過ぎて困ってしまう。

 そんなことを、ちっとも困っていなさそうな笑顔で熱弁する。

 さらに「美味しいのはカレーだけじゃない」とばかりに、俊一の作る料理がいかに美味しいかを語り出した。

 みほは、身振り手振りも交えてテンション高く。

 まほは、噛みしめるように強く深く。

 いささか押され気味ではあったものの、ナカジマたちはその語り口に大いに食欲をそそられた。美味しそうなカレー動画を見た後だからなおさらだ。

 昼間には俊一お手製のシュークリームをご馳走になっている。あれも非常に美味だった。それを思い出して、ナカジマも、ホシノも、スズキも、ツチヤも、口の中に唾液が溜まってくる。

 

「熊本にいた頃も、俊一くんが、お義母さんとお義父さんのご飯を用意することも多かったらしいし。ほっとする家庭料理、っていうのかな」

「そうだな。私たちがお邪魔してお義母様方と話をしている間に、食事の用意をしていたこともあった」

「あ、ごめん。ちょっといいかな」

 

 俊一の食事話から、なにやら惚気に変わりそうになって。

 少し気になるところがあって、ナカジマが思わず話の腰を折る。

 

「今の話に出てきたお母さんお父さんって、もしかして大瀬良君の?」

 

 ナカジマが問い掛ければ、まほが答える。

 もちろんそうだ、とさも当たり前のように。

 

「ということは、まほさんもみほさんも、大瀬良君のご両親と面識が?」

 

 ホシノが尋ねてみれば、みほが答える。

 面識どころか自分の方がいろいろと良くしてもらっている、と。

 

「もしかして、姉妹揃って恋人だって、公認なの?」

 

 スズキが驚いてみせれば、まほがその通りとうなずく。

 もちろん俊一のご両親だけだが、と、なぜか誇らしげに。

 みほは、お母さんが知ったらどんな顔をするだろう、と苦笑した。

 

「恋人っていうより、もうお嫁さん寸前なんじゃ……」

 

 ツチヤが少し呆れたような声を漏らすと、まほが言葉を返して胸を張る。

 私はそれでも一向に構わない、と。

 みほはみほで、姉の言うことに迷いなく何度もうなずいている。

 西住姉妹はふたり揃って、ものすごく嬉しそうな顔をしていた。

 みほは、頬に手を当てつつ、満面の笑みを見せて。

 まほは、目元を緩め、薄く微笑んで。

 その表情が、ナカジマたちにはとても可愛く、綺麗に見えた。

 

「ちなみに柚子も、俊一のご両親に紹介されてるぞ」

「杏さんとアンチョビさんは、さすがにまだだけどね」

 

 自動車部の4人はさらに驚く。

 そもそも何人もの女の子と同時にお付き合いをするというのが、普通の感覚では信じがたいこと。しかも女の子側が納得づくというのだからなおさらだ。

 その「普通の感覚」というのは、ある意味では俊一自身が一番持ち合わせていると言ってもいい。こんなに魅力的な女の子たちに好かれて、次々と手を出してしまっていいんだろうか、という気持ちは彼の中に常にある。

 もっとも、最近はそれも呑み込んだ上で開き直っていた。

 複数人の女の子と同時に付き合っている。

 何股男だのスケコマシだの言われることは受け入れている。

 外から何を言われても「好きなんだから仕方がない」というスタンス。

 その分、恋人たちにふさわしい男であろうと常に意識している。

 

「俊一は、自分がもっといい男にならないと釣り合わないと言うが」

「そんなことないのに。むしろわたしの方が釣り合ってるか不安だよ」

 

 彼女たちへの接し方も、俊一は自分よりも恋人たちを優先する節がある。

 優しく甘やかしてくれて、粗雑な扱いをしない。

 彼女たちのやりたいことや考えていることを優先してくれる。

 でも間違っていると思ったことは、きちんとたしなめる。

 

「依存してる自覚はあるけど、受け入れてくれるのが嬉しくて……」

「私の場合は、初対面から噛みつかれていたな。今考えると新鮮だ」

 

 恋人たちが第一といっても、自己主張がないわけではなくて。

 何人も恋人がいるのだから、むしろ我は強すぎるくらいだろう。

 強引に押せ押せで迫ってくることもあるが、決して粗暴ではない。

 相手への好意を隠さない。程度の差はあれ、これは恋人に限らない。

 しっかりと言動で表に出して、恋人たちに愛情を注いでくれる。

 しかも全員に、偏らないようにしながら、存分に。

 その分とても独占欲が強い。

 けれど拘束しようとは思っていない。

 

「俊一くんのことばかり考えてるわけじゃないんだけど。ちょっと息をつく時とか、自然と俊一くんのことが頭に浮かぶようになっちゃってるね」

「そうだな。俊一のことを考えると、心が温かくなってくる」

 

 俊一は「キラキラな王子様」というような目立つタイプではない。

 けれど、勉強も運動もそれなり以上にできる。

 合気道の経験者で、いざという時に恋人たちを守る素地もある。

 これは聖グロリアーナ女学院で実証済みだ。

 趣味は、映画や音楽鑑賞、読書とありきたり。だが割と広めで雑食。

 戦車道一辺倒だった西住姉妹にも、多少なりとも影響を与えていた。

 他人の好きなものを尊重するスタンスは、このおかげかもしれない。

 元女子校ゆえに女の子が多い学園内でも物怖じせず。

 男女問わず温和に接して、いろいろと気遣いも欠かさない。

 杏いわく、「女性関係以外は相当高レベルな男の子」。

 

「俊一くんも自分で言ってるよね。肝心なところがダメだから、女子が仲良くなったらいけない奴だって」

「言っていることはもっともだ。だがな、みほと私は、俊一がいいんだ」

「お姉ちゃん、ずっと言ってるよね。ちゃんと自分も構ってくれるなら、俊一くんの恋人が何人になっても構わないって」

「独占したいというよりも、独占されたい気持ちの方が大きいんだ」

「そうそう。あと、わたしのことを好きって言ってくれるのは、すっごく嬉しいんだけど。わたし自身が、俊一くんのことが好きっていう方が重要かなって」

 

 いきなり始まった、俊一に対する盛りだくさんの想いと惚気。満面の笑みで繰り出される言葉の勢いに押されて、ナカジマも、ホシノも、スズキも、ツチヤも、ただ聞き役に徹することしかできなかった。ふたりの惚気を自分に置き換えたのか、4人揃って顔を赤くしていたが。

 友人たちの想いは他所に、西住姉妹のマシンガントークはまだ続く。

 

「私としては、俊一にメロメロになる女が増えるのは一向に構わない。もちろん、本気で俊一のことが好きなら、の話だが」

「でもお姉ちゃん。それはわたしたちがベタベタしてたらいいんじゃないかな。何人も恋人がいるのはちょっと、って思って、深入りしてこないような気がするけど」

「なるほど。普通なら、何人目の恋人、なんて見られるのは避けたいだろう。確かにそれはありそうだな」

「恋人かぁ……。わたしも、俊一くんに飽きられないように頑張らないと」

「何を言ってるんだ、みほ。お前はむしろ1番目の彼女だろう」

「それは俊一くんと出会った順番だよぅ。恋人として魅力があるかって言ったら、わたしなんてむしろ5番目だし」

「本当に、何を言ってるんだ。そんなことはないぞ? むしろ私の方が」

「そんなことないよ。お姉ちゃんはわたしから見ても素敵だし」

 

 いやいや、いやいや、という感じで言葉を交わす西住姉妹。

 気がつけば、姉妹でお互いの良いところを挙げ始めた。みほは姉を、まほは妹を褒め称えて、そちらの方こそ俊一とお似合いだと譲り合っている。

 困惑するナカジマ、ホシノ、スズキ、ツチヤの4人。話が惚気から始まり、俊一の恋人事情になって、まほとみほの姉妹愛トークへと変化した。何を見せられているんだろうかと、4人はついて行けずに傍観するばかり。

 だが、いきなり話の矛先が変わる。

 

「そういうわけだからな。ナカジマたちが俊一に好意を向けたとしても、私たちは一向に構わないぞ」

「わたしとしてはむしろ、仲間が増える感じがして嬉しいなぁ」

 

 はぁ?

 揃って声を上げてしまう、ナカジマ、ホシノ、スズキ、ツチヤ。言葉の意味が呑み込めたのか、4人は赤くした顔をさらに真っ赤にさせて、「いやいやいやいや」と盛大に手を振りながら慌て出した。

 

「だが、お前たちが俊一のことを話す時は、顔がにやけてるぞ?」

「ハグされた時も、たぶん俊一くんは触らないようにとか気を使ってたと思うけど。俊一くんに心を開いて、ぴったり密着しながら強く抱きしめられると、すっごく幸せな気持ちになれるよ?」

 

 みほとまほが言う、俊一の気遣いに心当たりがあったのか。ナカジマも、ホシノも、スズキも、ツチヤも、思わず言葉を詰まらせる。

 冗談交じりではあるものの、年頃の女の子が自分から「抱きしめてもいいぞ」と言えるような相手なのだ。それなり以上の好意があると見られても不思議ではない。

 本気で抱きしめられたらどうなるのか。想像すると、彼女たちは不意にゾクゾクした感覚に襲われた。

 彼女たちにしてみれば、出会いは最悪だった。そのせいもあって、俊一に対して負い目と言おうか、申し訳なさや引け目のようなものを感じていたのは事実。だがそれなりの付き合いを経て、彼の人となりと接しているうちに、仲良くなることができている。

 俊一としては、自動車部の4人が罪悪感で落ち込むのを見て、「気にするな」とあれこれフォローしていただけ。彼がどう思っていたかはともあれ、彼女たちにとって癒しになっていたのは事実でもある。

 大洗学園は元女子校で、男子生徒の数が圧倒的に少ない。学園生活を送るにあたって、まったく異性と接することがない、ということも往々にある。

 ましてやナカジマたちは自動車部という、趣味に全振りしたような活動にのめり込んでいたこともあって、男子生徒の知り合いがまったくと言っていいほどいない。俊一が唯一と言ってよかった。

 4人とも、俊一のことを頭に思い描いてみる。

 出会いは、自分たちの車に驚いて転んだ、ほぼ交通事故の危うい現場。

 その後も、明るく優しく接してくれた。

 機械いじりという、女の子にしてはコアな趣味にも理解を示し。

 わがままを言っても、聞き遂げてあげようという器量がある。

 でも限度を越えたら、きちんと怒ってたしなめることもする。

 そんな、同年代の男の子だ。

 半ば女子校の学園に通う、異性に免疫のないナカジマ、ホシノ、スズキ、ツチヤたちが、彼と親しく接してきて、好意を向けずにいられるだろうか。

 

「無理強いはしないさ。俊一以外にも男はいる、と言われれば反論できん」

「でも、俊一くんみたいないい男はそうそういないと思うけど、ね」

 

 その気があるなら、俊一の新たな恋人仲間として受け入れる。

 第1、第2の恋人、みほとまほは、笑顔でそう言ってきた。

 自分が、俊一の恋人になる。

 ナカジマ、ホシノ、スズキ、ツチヤの全員が想像してしまい。

 火照った自分の頬を手で押さえる。

 

「確かにさ、好きか嫌いかって言われたら……」

「嫌いじゃないぞ。うん。いやむしろ、あー……」

「こう、照れくさいというか、ふんぎりがつかないというか……」

「みほさんたちがうらやましい、っていうのはあるかなー……」

 

 赤面しながら、わたわたと慌てる4人。

 みほとまほはそれを見て、これは脈ありと嬉しそうに笑みを浮かべた。

 

 

 

 ―続く―




タイトルの通り、女の子オンリーでお送りしました。
槇村です。御機嫌如何。


なんとか、月をまたぐ前に更新できた。ギリギリセーフ。
……おかしいな。最初はこの半分くらいでまとめるつもりだったのに。
もっとスリムにできると思ったけど諦めました。

スマホを手にした女子校生6人が、
キッチンに立ちながらぼやく男の後ろ姿と、
カレーが並ぶ食卓を映した動画をじっと観賞する。
なんだこの絵面は。

なお作中にある戦車の冷暖房云々の描写は、あくまで私の想像です。
実際はどうなのそのあたり。

次は別の女の子と出会う日常回の予定。
10月中に仕上げられるといいなぁ……。


※誤字のご指摘、ありがとうございました。


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