2コマ堕ち的ハーレムエロす in ガルパン 作:槇村 a.k.a. ゆきむらちひろ
オレとみほ、加えて武部さんに五十鈴さんの手伝いもあって、大量のひき肉からハンバーグのタネが出来上がった。あとは焼くだけである。
「というわけで、また武部さんの力をお借りします」
「まかせて!」
エプロン姿のオレと武部さんが、フライパンを手にして再び台所に立つ。やる気に満ちた武部さんが、ふんすと手に力を入れている。その仕草がなんだか可愛らしい。
さてさて。
ふた口コンロの左右に、それぞれフライパンをセット。左側にオレ、右側に武部さんが陣取って。山盛りになったハンバーグのタネを手分けして焼いていくことになる。
ちなみに、すぐ隣に立っている武部さんだけど。肩が触れそうなほど距離が近い。パーソナルスペース近くない?
友達の恋人だっていう気安さみたいなのがあるんだろうか。彼女は特に気にしていないみたいなので、オレも気にしないことにした。
ふたり並んで会話をしつつ、フライパンを温める。
そういえば、今さらだけど。
「武部さん、外で会った時はメガネ掛けてたっけ?」
「今になってそれ? 大瀬良くんが帰ってきた時にはもうしてたよ」
「あー。帰宅直後は、エプロン姿の方に目が行ってたから。メガネには気付かなくて、スルーしちゃってたよ」
「家庭的なイメージにやられちゃった? それともエプロン萌えとか」
「自覚はなかったんだけど。なるほど、エプロン萌えか」
「えぇ……。認められるとは思わなかったなー」
「エプロン姿の杏さんを見た時も胸キュンしちゃったし。否定できないな」
「それって、生徒会長? え、副会長だけじゃなくて、会長もなの?」
「あ、五股云々は聞いてても、相手が誰かは言ってなかったか」
呆れたような声を漏らす、メガネ姿の武部さん。少し顔を赤くしてる彼女に、ちょっとオレのあれこれについてざっくり話す。
オレが大洗に転入してきて早々、柚子さんを落としたというのは結構有名になっているので、割愛。その後のこと、柚子さんとイチャついてるうちに杏さんとの交流も増えていったとか、杏さんが憎からずオレのことを想ってくれていたとか、つい先日告白されたとか。いろいろと。
「なにそれ、恋愛漫画みたいな展開」
「そう言われると、確かにそうかもなぁ」
「友達の恋人が気になって、遂に告白とか。そんな話、本当にあるんだ」
「何股かけてるっていうのは杏さんも知っていたからね。武部さんが思ってるよりはハードルが低かったんじゃないの?」
「それって別の意味でハードルが高いよ」
「違いない」
恋バナと言ってもいいのかなコレ。ずいぶんとズレたもんだけど。
内容はともあれ、ぐだぐだな感じで会話をするオレと武部さん。
お互いに手元のフライパンを見ながらだからね。仕方ない。
そうこうしてるうちに、火も通ってきた。
ハンバーグの数はいっぱいあるけど、急いでもろくなことはない。生焼けになって、味も今ひとつとか。そんなことになったら目も当てられない。
「そろそろいいかな」
温まったフライパンに油を引いて、火は中火に。
熱くなってきたら、ハンバーグのタネを並べて入れる。
大きめのフライパンなので、1回に4つ焼くことができる。
片面に焼き色がつくくらいまでしばし焼く。
こんがりとした焼き色がついたら、裏返し。
弱火に落とし、ふたをして、じっくりと蒸し焼きに入る。
「フライパンふたつを使って、オレひとりで焼いてても事足りたような気がしてきた」
「できないことはないけど、焦がしちゃうんじゃない?」
「あー。それで慌ててたらフライパンにくっついて、剥がそうとしているうちにもう片方のフライパンが大惨事、みたいな」
「ありそうありそう」
フライパンを前にして、オレが他愛もないことを言えば。武部さんも同じように、のほほんとしつつも笑って言葉を返してくれる。料理に限ったことじゃないけど、一緒に何かをしながらおしゃべりとかしてると、共通する話題があるせいか、妙に通じ合うような感じになるよね。
心地良さを覚えていたのは、どうやらオレだけじゃなかったようで。
「誰かと一緒に料理するって楽しいんだねー」
「基本的なことが分かってる者同士だと、お互いツーカーみたいにテンポ良くできるのがやりやすいからじゃない?」
「決めた。わたし、恋人にするなら一緒に料理ができる男の人にする!」
キラキラした感じでそんなことを言う武部さん。エプロン姿で、火の掛かったフライパンを前にしてるっていう絵面で。なんだか微笑ましい。
「ハードル高いんじゃないかなそれ。同年代なら特に」
「理想は高くないと。自分を安売りしちゃダメだと思う」
この場合、安売りというより高望みと言った方が合ってるのでは。
というか、自分から台所に立つ男子学生がどのくらいいるのやら。
「大瀬良くんはできるじゃない。買い物だって自分から行ってるし」
「自分で言うのはなんだけど、オレはレアケースだと思うなぁ」
というかそもそもの話。武部さん、彼氏いないのか。モテそうなのに。
よく、手料理で相手の心と胃袋をつかむ、みたいな言葉を聞く。考えてみると、料理を振る舞うシチュエーションに持っていけるなら、すでにそこそこ親しくなってるよね。会ったばかりで一緒に料理するとか、今日のオレみたいな状況はそうそうないだろう。
となると。彼氏が欲しいっていうなら、料理よりは出会いとかに比重を置いた方がいいような気がするのはオレだけだろうか。激しく余計なお世話だけど。
「武部さんレベルの女の子なら、相手なんて引く手あまただろうに」
明るくて、ノリが良くて、可愛くて。
友達思いで、気遣いもできて、料理が得意。
レベル高過ぎだろ。
会ったばかりのオレでさえ、これだけいいところを挙げられる。
なんというか。みほの周りはレベルの高い女の子がいっぱいだなぁ。
オレはしみじみとそんなことを考えてしまう。
「……もしかして、わたし口説かれてる?」
「あれ、声に出てた?」
「出てたよ。何言ってんの!」
どうやら考えてたことが声に出てたようだ。
こういうこと多くないかオレ。気をつけないといかんな。
恥ずかしがっていやんいやんと身をよじる武部さんをスルーしながら、フライパンの火加減を気に掛ける。
彼女の方も、きちんと手元の料理を注意しているみたい。良くできた女の子だ。本当に、どうしてこれで恋人がいないのか分からない。
「恥ずかしいじゃない。やだもー」
「割と本心だけどなー」
こんな風に、ぐだぐだと会話をしてるんだけど。
その一方で、オレたちの後ろでは。
「俊一くんと沙織さん、なんだか新婚夫婦みたいだよ」
「沙織さんが、これまで培ってきた女子力を発揮してます」
みほと五十鈴さんがなにやら話してる。
こそこそとかそういうのではなく、すぐ後ろに立ってコンロを覗き込みながら。オレにも武部さんにも丸聞こえだ。
「みぽりん。自分の恋人を当てがって夫婦みたいとか、どうかと思うな」
「意外ですね。嬉しくないのですか?」
「華はわたしのことをどう思ってるのよ。確かに、料理とかいろいろ頑張ってきたのが活かせてるのは嬉しいけど。友達の彼氏にアピールするのは違うでしょ」
「あら。でも大瀬良さんは何人も恋人がいらっしゃいますし。もうひとりくらい増えても……」
みほもそうだけど、五十鈴さんがすごいことを言ってきた。
待ってくれ。オレは誰彼構わず手を出してるわけじゃない。
なんてことを言うと、なぜか武部さんがショックを受けたような顔をする。
「えっ。じゃあ男の子から見て、わたしって魅力ないの?」
「いやいや何言ってんの。むしろ武部さんはモテそうな気がするけど。その気になれば恋人のひとりやふたりはあっという間にできるでしょ。むしろ去年同じクラスだった男子生徒どもはどんだけ見る目がないんだと」
「待って。大瀬良くん待って。フォローする気持ちは嬉しいんだけと、わたしの心がえぐられてるような気がする」
いちいち反応が大きい武部さんに、オレもついつい乗っかってしまう。
さらに、みほや五十鈴さんまで絡んできて始末に負えない。
「沙織さん沙織さん。本気で俊一くんを好きになったなら、いつでも告白オッケーだよ」
「みぽりん、ちょっと! 恋人がさらに相手を増やすのを勧めてどうするのよ!」
「あ。華さんも、もしそういう気持ちになったら悩まなくていいから。恋人仲間と、俊一くんの美味しい料理が歓迎してくれるよ」
「なるほど。それは魅力的なお誘いですね……」
「おいちょっと待て。特にみほちゃん、なんでそうなる」
「華、ご飯に釣られるとかチョロ過ぎるよ!」
……武部さんじゃないけど、話をしながら料理するのって楽しいな。
だらだらとした会話のやり取りをしつつ、ハンバーグを焼いていくオレたちだった。
さて。ようやくご飯の時間だ。
結構な量のハンバーグを、それなりの時間を掛けて焼き上げた。
「お待ちどうさまー」
焼きたてのハンバーグが盛られた大皿をテーブルに置いていく。
ちなみに4人それぞれの作ったタネのハンバーグがひとつの皿に盛られて、4つの皿が並んでいる。個別にお皿を用意するんじゃなく、大皿から食べる分だけを自分で取る、というのが大瀬良家のスタンスだ。
なので、テーブルの中央に付け合わせの皿とハンバーグソースの入ったお椀があって、それを囲むように山盛りハンバーグの皿が4つある形になる。
みほと五十鈴さんは、すでにテーブル前に座っている。武部さんとオレも、同じようにテーブルについた。
座るなり、武部さんは取り皿と箸をみんなに渡して。
オレはお椀に少し多めにご飯をよそって、3人にそれぞれに渡す。
これで支度は完了だ。
「お腹いっぱい食べなー」
「いただきまーす」
「いただきます」
「はい、召し上がれ」
元気よく挨拶をしながら、みんながハンバーグに箸を伸ばす。
なぜか3人とも、オレがこねたタネの皿から取っていく。
おい、どういうことだ。
「俊一くんのだから」
「同い年の男の子が作った料理だよ。味が気になるじゃん」
「こんな機会はそうありませんし」
みほは、いつものことだ。熊本にいた頃から食べてくれてたし。
武部さんと五十鈴さんも、男の作った料理に興味があるみたいだった。
いやはや、嬉しいやら恥ずかしいやら。
苦笑いしつつ、オレはみほの前の皿からハンバーグを取る。
ご飯の上に乗せて、箸を通し。
割ったハンバーグから肉汁が溢れて、米に染みついていくのが堪らない。
ソースも何もつけないでそのまま、ハンバーグを口にした。
「うん。みほちゃん、美味しい」
「俊一くんのハンバーグも、もちろん美味しいよ」
みほのこねたハンバーグは、十分に美味しい出来だった。焼いたのはオレだけど、ひき肉をこねて形にして、空気抜きをしたりして形にしたのは、みほだからね。
「大瀬良くん、美味しいよ。すごくいい出来だと思う」
「大瀬良さん。すごく美味しいです」
どうやら武部さんと五十鈴さんにも、お気に召してもらえたようだ。
お褒めの言葉に「ありがとう」と返しながら、オレもふたりのハンバーグをそれぞれいただく。
うん、どちらも美味しい。
そう伝えると、武部さんも五十鈴さんも嬉しそうに笑ってくれる。
……なんだこれ。女の子に囲まれてご飯を食べて、微笑みながら自分の作った料理を褒めてもらえるとか。すげぇ幸せ者じゃねぇかオレ。
再びハンバーグを口にする。
うん、美味しい。
オレをはじめとして、みほ、武部さん、五十鈴さんとそれぞれがひき肉をこねたハンバーグ。形とか肉の固まり方とかが微妙に違ってるのも、個性というかなんというか、違った美味しさを出してるような気がする。
というか、同い年の女の子たちの手ごねハンバーグだからな。美味しいに決まってるだろ。やっぱり幸せ者だなオレ。
「あー、肉汁の染みたご飯が美味しい」
こう感じているのはオレだけじゃないようで。
みほは、元気よくおかわりをお願いしてきたし。
武部さんも、少し申し訳なさそうにおかわりのお椀を差し出してくる。
驚いたのは、五十鈴さん。すごく食べると聞いていたし、遠慮しなくていいとは言ったけど、すでにご飯を3杯おかわりしている。しかもハンバーグはもう5個も平らげていた。そして今6個目に箸を伸ばしている。
「すごい食べる、っていうのがどれくらいかは分からなかったけど。本当に良く食べるねぇ」
「でしょ? あれだけ食べてどこに消えるのか不思議なくらいだよ」
「でも料理する方からしたら、気持ち良く食べてくれる人は嬉しいんじゃない? 少なくともオレは嬉しい」
「それはそうかも。確かに華って、すごく嬉しそうに食べるから」
「オレも、みほちゃんとかまほちゃんが美味しそうに食べてくれると嬉しいし。また作ってあげたいと思わせてくれるよなー」
「分かる、その気持ち。わたしも、未来の旦那様が美味しそうに手料理を食べてくれるのを想像するだけで、嬉しくなっちゃう」
「作る方を信頼して、メニューをリクエストされるのも嬉しいもんだよ。今日も、武部さんたちと会う前に買い物した時、ハンバーグにしようって言ったら、みほちゃんが嬉しそうに声を上げて……」
「俊一くんストップ! やめてぇ!」
「みぽりんも意外と食いしん坊キャラだったの?」
「ちがっ、食いしん坊じゃなくて、俊一くんのご飯が美味しいだけなの!」
ぶんぶんと頭を振って、思わぬキャラ付けを懸命に否定する。
でもさ、オレの料理が美味しいって言ってくれるのは嬉しいんだけど。それだと食いしん坊を否定しているようには聞こえないんだけど。
話を振ってきた武部さんは、それ以上掘り下げてこなかった。
「そっか。みぽりんまで、華みたいな食いしん坊だったらどうしようかと思った」
「あら、沙織さん。わたくしをそんな風に見てたんですか?」
「いやでも五十鈴さん。ひき肉こねてた時のタネを見たら、否定はできないと思うんだが」
「……あのくらい大きいのは、やっぱり無理なんでしょうか」
「華、ハンバーグを焼くのと、ホットケーキを焼くのは同じじゃないよ?」
ここまでくると呆れるというか、感心してしまうというか。
どちらにしても、美味しそうに食べてくれるのは見ていて気持ちいい。
「こんなに食べてるのに、このスタイルはズルいと思う」
「確かに。華さんって、すごくスタイルがいいよね」
「あら。沙織さんも、みほさんも、素敵じゃないですか」
「わたしは、華みたいな細さが欲しいの!」
「もっと食べれば、華さんみたいに背が伸びるかなぁ」
なんだかスタイル談義になってきた。男が混ざるとロクなことにならないだろうから。オレは黙々と食事を進めるのみ。
最後のハンバーグを取ったら、五十鈴さんが「あっ」みたいな声を出したけど、全力でスルーだ。恨めしそうな目を向けても気に留めない。
というか、ごはんもハンバーグも、オレより食べてるじゃないか。
「本当に美味しかったんです。ついつい箸が進んでしまって」
「そうだねー。すごく美味しかったよ、大瀬良くんのハンバーグ」
五十鈴さんと武部さんに、改めて褒められてしまう。
うん、悪くない。むしろ嬉しいぞ。
「料理上手な彼氏とか、みぽりんがうらやましいー」
「あら、恋人に作ってあげるのが夢じゃなかったんですか?」
「一緒に料理する良さに気付いたの。料理のできる彼氏が欲しい!」
「そっか、俊一くんと一緒に料理を作るのも楽しそう。でも、杏さんと柚子さんには勝てないし。アンチョビさんも料理が得意らしいし。わたしとお姉ちゃんは……」
武部さんが、さっきも言ってたみたいに料理のできる恋人希望と咆える。
五十鈴さんは、マイペースに武部さんをいじり立てて。
みほは、なんだか苦悩し始めた。
前者ふたりにはひとまず触れないようにして、だ。
みほと、まほについては、料理に興味があるならこれから覚えていけばいいんじゃないかな。
「なんだったら一緒に台所に立って、教えながら料理をしてもいいし。新学期になったら戦車道もするんだから、負担にならない程度のことから始めるのがいいと思うよ」
「……うん、そうする」
「とりあえず今度、一緒にエプロンを買いに行こうか」
形から入るのも、その気になるにはいい方法だからね。
みほは「お揃いにする」と言いながら、なんだかやる気を出している。
「ん? 大瀬良くん。じゃあ、わたしが借りたエプロンは誰のなの?」
みほとオレの会話に、武部さんが挙手しながら混ざってくる。
うん、ひとり暮らしの男の部屋に、普通ならいくつもエプロンはないからね。恋人用のエプロンだと考えたのも無理はない。この場合は、みほのエプロンだと思ったんだろう。
確かに、恋人用のエプロンではあるんだけど。
「あれは、柚子さん用のエプロンなんだよ」
柚子さんは、よくオレの部屋に来て料理を作ってくれたりしてたから。逆にこれまで、オレが柚子さんに何か作ることがなかった。我ながらちょっと意外だ。
「通い妻じゃん! みぽりんじゃないけど!」
「おっしゃる通り。今言われて気がついた」
いやマジで。
そうか、おっとりした年上お姉さんが通い妻してくれてたのか。
台所に目を向けて、エプロン姿の柚子さんを思い返す。
……うん、顔がにやけてくるね。
でも今はやばい。女の子たちの前で緩んだ顔は見せられない。
とっさに顔を手で覆ってみせたけど、遅かった。
「俊一くん、何を想像したの?」
「にやけてた顔、隠せてないよー?」
「何を思い出していたのか、ぜひとも教えてほしいですね」
女の子3人が身を乗り出してくる。テーブル越しだから迫ってはこないものの、なにやら迫力を感じてしまう。
気がつけば、なんやかやと話をするはめになってしまった。オレとみほの馴れ初めだとか、オレの女性関係についてだとか。もちろん、生々しくない、差しさわりのない範囲で。
オレの目線からの色恋あれこれも気になっている様子。まぁ普通は、何人も恋人がいて、それを公言するような奴はいないだろうし。そんな男の言うことは、貴重と言えば貴重かもしれない。
特に、武部さんの食いつき方がすごい。みほとオレが、自然な感じでイチャついてるのがうらやましくて仕方がないのだという。
それを聞いたみほは顔を真っ赤にさせる。自分では意識してなかったことを他人から指摘されると、恥ずかしくなることってあるよなー。
「彼氏の部屋に出入りしてるところとか、すっごく距離が近く感じる!」
彼女の注目ポイントは、みほがオレの部屋の鍵を持ってることらしい。部屋に上がる時、すごく自然に鍵を取り出して扉を開けたから、みほの部屋に来たんだと最初は思ったんだとか。
「ちょっと前に、オレの部屋の合い鍵を渡したばっかりなんだよね」
みほだけじゃなく、まほにも、柚子さんにも、杏さんにも、もちろん渡してある。全員揃って、思った以上に喜んでくれた。みんな可愛い。
ちなみにアンチョビさんには、宅配便で発送した。「オレの部屋の鍵、いる?」って電話したら、えらく食いついてきた。またアンチョビさんの乙女心を打ち抜いてしまったらしい。可愛いなぁもう。
そんなわけで。恋人たちはみんな、オレの部屋の鍵を持っている。
武部さん的にも、「恋人の部屋の鍵」は乙女心をくすぐるようだ。
「ちなみにオレも、みほちゃんの部屋の鍵はもらってる」
部屋の隅にある机を指差す。そこには鍵をまとめたキーホルダーが。みほとまほの部屋の鍵も、一緒になっている。
ちなみに杏さんからも部屋の鍵をもらった。柚子さんは住んでいるのが学園の寮なので、さすがにもらってないけど。
「まぁ、鍵をもらったからって、勝手に上がり込んだりはしないけどね」
「それはそうだよ。わたしもお姉ちゃんも、あらかじめ許可をもらってるか、いるって分かってる時しか使うつもりはないし。普通はチャイムを鳴らしてからお邪魔するしね」
「当たり前といえば、当たり前のことなんだけどね」
イチャイチャするし、デロデロな関係ではあるけれど、なぁなぁというわけじゃないから。そこらへんはちゃんと、節度とか良識とかにのっとっているつもり。
……今のオレが節度とか良識とか言っても説得力ないな。
「というかさ。武部さんの言う通い妻してるのって、どっちかっていうとオレの方じゃない?」
「うっ」
「あ、責めてるわけじゃないよ。オレ自身は、みほちゃんやまほちゃんに頼られたり甘えられたりすると嬉しいし。可愛くてもっと甘やかしたくなっちゃうし」
「はうっ」
みほが再び、声を詰まらせた。
しかも二度。
おそらくそれぞれ違う意味で。
最後は照れた顔をしてうめき出した。
「みぽりん、可愛い!」
「本当に、大瀬良さんが大好きなんですねぇ」
友達ふたりにとどめを刺されて、みほが轟沈した。
恥ずかしがって下を向き、なんだかうにゃうにゃ悶えてる。
うんうん、可愛いぞ。
「大瀬良さんは大洗に転入される前から、みほさんとお付き合いをされてたんですよね」
「そうだね。熊本にいた頃から」
「つまり恋人を遠いところに残した状態で、副会長に手を出したことに」
「港ごとに女を作る、ってやつだ!」
「五十鈴さん、武部さん、言い方。反論はできないけど」
笑顔の五十鈴さん。乗っかってきた武部さん。どちらも遠慮ないな。
まぁ、陰口をたたかれるよりは何倍もマシだけどね。
「悩んでらしたみほさんと、みほさんのお姉様に寄り添っていたとお聞きしましたから。心の支えになる方がいるというのは、うらやましいです」
「私の場合は、俊一くんが見守ってくれてるっていう心強さがあったから。そのおかげで思いきれたし。でないと、もっと落ち込んでたと思う」
「副会長も、辛い時に励まされたっていうのが切っ掛けらしいじゃない。いいなぁ、わたしもそういう出会いが欲しい!」
五十鈴さんが、本当にうらやましそうに言い。
みほが、しみじみと熊本時代を振り返り。
武部さんが、テンション高く「彼氏が欲しい」と咆える。
そして今度は、みほからオレとのあれこれの話を聞き出す流れに。
……みほちゃんや。ノリノリになるのはもう、この際止めないからさ。せめてオレのいないところでやってもらえないだろうか。
いたたまれなさを感じながら、いそいそと食事の片づけを始めるオレだった。
―続く―
やべぇ、さおりんとの掛け合いが書いてて楽しい。
槇村です。御機嫌如何。
本当に、駄弁っている様子を描いているだけだった。
ただもうちょっと華さんと絡む会話を入れたかったんだけど。
後でちょっとフォローしていこうかな。
今年中にもう1話くらいは更新したい。
がんばれオレ。