※この作品はR-18です。

2コマ堕ち的ハーレムエロす in ガルパン   作:槇村 a.k.a. ゆきむらちひろ

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65:小さなごほうびⅡ

 大洗学園の戦車道がスタートした授業初日。まさかの戦車探しから始まったわけだけど、その日のうちに4輌も戦車が発見された。

 ……自分で言っておきながら、本当かよと突っ込まずにはいられない。

 とにかく。学園艦中を駆けずり回ったであろう戦車道履修の女の子たちを「お疲れ様」と労わる。それが今のオレの役割になる。最初に戦車を発見して戻ってきた、みほ、武部さん、五十鈴さん、秋山さんのグループの労をねぎらっている間に、次々と戦車発見の連絡が入ってきて。各グループが戻ってくるたびに、オレはシュークリームを振る舞うのだった。

 

 

 

 

 

 

「お疲れさまー。甘いものをどうぞー」

 

 2番目に戻ってきたのは、バレー部チーム。磯辺さん、近藤さん、河西さん、佐々木さんの4人。お疲れ様と言いながらシュークリームの入ったタッパーを差し出すと、たいそう驚かれた。

 

「すごいなこれ。大瀬良の手作りなのか」

 

 シュークリームを手に取って、まじまじと眺めながらそんなことを言う磯辺さん。珍しいものを見るように、大袈裟に掲げたりするのはどうなの。そんなに意外だったかね。

 

「すごいです先輩。わたしこういうの作ったことないから、憧れます」

 

 ものすごくキラキラした表情で、素直に感嘆の声を上げる近藤さん。そう思い切り褒められると気分が良くなってしまう。いいね。頭を撫でてあげたい。

 

「ということは。大瀬良先輩がバレー部に入ってくれたら、部活が終わるとこんな風に労ってもらえる……?」

 

 ちょっと待って佐々木さん。自分たちの欲望でいっぱいなことを口にするんじゃない。もしそういう状況になったら、気遣ったりするのはやぶさかじゃないよ。でもそんな扱われ方をされるって分かってるなら、入部する気になんてならないぞ。

 

「ちょっと、さすがにそれは申しわけないでしょ。でも大瀬良先輩、こういうお菓子も作れるとか、なんでもできるんですね」

 

 河西さんがツッコミを入れてきた。他のメンバーに比べてちょっと気遣いを見せてくれるのがありがたい。あと素直に褒められると嬉しい。ありがとう、とスマイル付きでお礼を言っておいた。

 

「じゃあ、おやつは我慢するからバレー部に入ってくれ」

 

 じゃあってなんだよ。意味が分かんねぇぞ磯辺さん。

 

「戦車道でも一緒なんですから。これはもうバレー部も一緒になるしか」

 

 いやいや、そんな可愛くあざとく迫られてもやらないからな近藤さん。

 

「可愛い後輩がこんなにお願いしてるんですから。少しはなびいてくれても」

 

 みんな可愛い、っていうのは認めるけど。だからって、ちょっとチヤホヤされただけで落ちると思うなよ佐々木さん。

 

「入部してもらえたら嬉しいけど、確かに無理強いってのはちょっと……」

 

 あー、前の時もそうだったけど、フォローしてくれるのはキミだけかもしれないよ河西さん。感動した。今度、彼女だけにクッキーとか作ってあげよう。

 そんなことを言ったら、河西さんはちょっと顔を赤くしながらも喜んでくれた。磯辺さん、近藤さん、佐々木さんは「えこひいきだ」と抗議してきたけど。

 

「勧誘を控えてくれれば、同じ扱いをしてあげるよ」

 

 そう言ったのを聞くなり、4人は顔を寄せ合って何やら話し合い。すぐに元に戻った。何事だいったい。

 とりあえず今はバレー部云々は止めて、手にしたシュークリームに集中することにしたようだ。実際、疲れもそこそこあるらしいし。

 

「思ったよりハードだったので。疲れた身体に甘いお菓子が染みます」

 

 河西さんが、シュークリームをぱくつきながらそんなことを言う。ちょっと凛々しい顔立ちの娘なので、洋菓子の甘さに表情を緩ませているのを見ると、可愛らしいと思ってしまう。

 というか、ハードってどういうことだ。

 

「戦車を見つけるのに手こずったってこと?」

「私たちが見つけたのは、崖下なんです」

「はぁ?」

 

 オレの疑問の声に、近藤さんがあっけらかんと答える。想像していなかったワードが出てきて、ちょっと戸惑った。崖で見つかった?

 

「学園艦に、崖なんてあった?」

 

 いくらでかいとはいえ、船の上だぞここは。そんな自然味溢れる場所があったのか。まだまだ知らない場所がある大洗学園。それでも、数ある学園艦の中ではサイズが小さい方だっていうんだから驚かされる。

 

「というか、よくそんなところにあるのを見つけられたね」

「大変でしたよ。気分はもうクライマーでしたから。バレー部なのに」

 

 佐々木さんいわく、切り立った崖の中腹に戦車が引っ掛かっていたそうだ。すぐ側まで降りていって確認するために、身体を張ってクライミングしたんだとか。

 

「うわ。大丈夫だったの?」

「なんとかなったぞ。そこは根性でやり通した」

 

 いかにも脳筋なことを言うのは、磯辺さん。ぐっ、と腕に力を入れながら、大したことじゃないと胸を張る。実に彼女らしい。でも、オレが言いたいのはそういうことじゃなくて。

 

「崖の上り下りとかしたわけでしょ、その恰好で。ケガとかしなかったのか。気付かないうちにどこか切ったとかさ」

 

 崖をクライミングして戦車捜索とか、今の彼女たちの服装でやるようなことじゃないと思うんだが。磯辺さんは体操服にスパッツだし。近藤さん、河西さん、佐々木さんはバレー部のユニフォームを着ていて、短パンだから脚を出した状態だ。岩肌とかで肌を擦ったり切ったりしかねないだろ。

 割と本気で心配する。どこか痛めたところがあるならすぐ保健室に行った方がいい。アザとかできて痕になったら大変だと、強めに勧めた。というか、今すぐ行け。

 

「んー。戦車道チームのマネージャーもどきとしては、ケガとかに備えた救急箱なんかも用意した方がいいんだろうか」

 

 後で杏さんに話してみよう。うん。

 ひとりで納得していたら、さっきまでとは違って静かになったことに気付く。どうしたのかと思ったら、バレー部4人組がなんだか嬉しそうな顔をしてる。本当にどうした。

 

「わたしたちを心配してくれたんだろ? それが嬉しかっただけだ」

 

 なぁ、みんな、と。話を振る磯辺さん。それに応えて、近藤さん、河西さん、佐々木さんも、「ありがとうございます」と言いながら頭を下げてくる。

 ……気を悪くしてないならいいか。素直にお礼は受け取ることにしよう。

 

 

 

 

 

 

 次は、個性強すぎな歴女チームの4人。杏さんたち生徒会メンバーに見つけた戦車の話をしていると思っていたら、4人揃ってオレのところへやってきた。もちろん、彼女たちの労をねぎらう。

 

「お疲れさまー」

「なんでお前さんが戦車道の授業にいるんかの? 大瀬良」

「正直、未だにオレもよく分からん。強いて言えば、恋人に頼まれたから?」

「やれやれ。犬も食わんとはこのことか」

「いやー、そんな風に褒められても」

「全然、褒めちょらんからな」

 

 このグループで唯一の顔見知りである、おりょうさんに話し掛けた。向こうも慣れたもので。お互いに軽口を叩き合う。一番最初に顔を合わせた時に、恥ずかしい思いをしたからね。今さら取り繕うこともなかろう、そんな風に考えている。

 おりょうさんと初めて会ったのは去年、そろそろ期末試験の勉強をしないとなーっていう頃。思うところあって時代小説を書き始めたばかりのオレは、両親のお下がりのノートパソコンを図書館に持ち込んで、カタカタとテキスト打ちに励んでいた。

 で、場所が悪かったんだな。コンセントに差し込んでいた電源アダプターのコードに、たまたま通り掛かった彼女が足を引っ掛けてしまった。

 バランスを崩してよろける彼女。

 その勢いでコードが引っ張られて。

 ノートパソコンがどんがらがっしゃん、と相成り。

 

「のおおおおおおおおおーーーーーーーーっ!」

 

 図書館中に響かんばかりの悲鳴を上げてしまったオレ。

 血の気が引く思い。あの時は寿命が縮んだよマジで。

 幸い、テキストデータもノートパソコン自体も破損は免れた。

 オレの大声と狼狽振り、実際に吹き飛んだノートパソコンを見て、おりょうさんはその場で平謝りしてきた。でも後になって考えてみると、図書館の、人が通るようなところに電源コードを横切らせていたオレの方がどうかしてると思う。

 ともあれ。テキストデータも無事だったので、おりょうさんに当たるような無様な真似をせずに済み。ペリー来航直後を書いた2万字がー、というオレの叫びから幕末という共通点ができて。オレとおりょうさんはちょくちょく話をするようになった。書いた時代小説を読んでもらってツッコミを入れてもらったり、彼女の知識によるネタの補強とかもしてもらったな。その節は大変お世話になりました。

 そんなこんなで、おりょうさんとはそこそこ交流があるわけだけど。他の3人とは初対面だ。シュークリームを差し出しながら、自己紹介をする。それぞれ左衛門佐、エルヴィン、カエサルと自分のことを呼ぶのを見て、なり切りスゲェなと素直に感心してしまう。

 

「なるほど。おりょうが言っていた小説家の卵とは君のことか」

「ふむ。おりょうから男の話が出てきた時は驚いたが」

「趣味が通じる相手となれば、手放すのは惜しかろう」

 

 幸いにも、歴女チームメンバーの反応はそんなに悪くなかった。

 傾向は違えど同じ歴史好きの同士がいるということで、おりょうさんの話に上がったらしく。名前を聞いていたらしい。そいつが別の意味でも有名なスケコマシ野郎だということは知らなかったみたいだけど。

 というか、後者の噂の方はまったく興味がなさそう。ディープな歴史ネタを振ってもついてこれることの方が、彼女たちにとっては重要なようだ。うん、分からんでもない。

 とはいえ、おりょうさんとはたまたま幕末ネタという興味が被ったわけだけど。話してみると、他の3人とは微妙にズレがあった。

 

「戦国大名が割拠する時代は、小説でもなんでもネタの宝庫じゃないか」

「あー。そのあたりだとオレ、興味あるのは南北朝時代なんだよねぇ」

 

 左衛門佐さんは、戦国史フリークらしい。でもオレが幕末の次にネタを掘っていこうと思ってる時代は、ちょっと違うんだよね。

 ……南北朝期って、戦国時代に入るか?

 あと、杉山さんって呼んだら怒られた。

 

「近代も面白いぞ。時代が近いがゆえのロマンもあるしな」

「分かるんだけど、現代から一番近い歴史知識はオレ、日露戦争なんだよ」

 

 エルヴィンさんは、第二次世界大戦期が専門分野とのこと。でもオレの中の歴史年表は、明治時代で足踏みしてる状態だ。大正、昭和は、正直なところ疎い。

 彼女も、松本さんと呼んだら「エルヴィンだ」と強く訂正された。

 

「わたしの場合は、他の3人と比べて時代が違い過ぎるか」

「あ、でも塩野七生さんの本は好きだよ?」

 

 カエサルさんは、そのソウルネームの通りローマ史が専門だとか。オレも興味がないわけじゃないんだけど、個人的にはちょっと守備範囲が遠くなる。某ローマ人の物語も、文庫本を数巻だけ読んでそのままなんだよなぁ。

 もちろんと言うべきか、鈴木さんと呼んだら睨まれてしまった。

 ともあれ。

 歴史好きという共通点のおかげか、初対面の3人とも思ったよりフランクに話をすることができた。オレが噂のスケコマシ野郎だと分かっても、引かれるとか毛嫌いされるとか、そういった反応は見られない。ありがたいことだ。ちょっとばかり、カエサルさんの目付きが険しいような気がしたけども。

 

「でもさ、なり切りが激しいというか、思い入れが強いというか。そんなおりょうさんたちから見ると、オレの書いてるものって受け入れにくいんじゃないの? かなり荒唐無稽だけど」

「そうでもない。個人的には、時代小説でも歴史小説でも、目くじらを立てるつもりはないぜよ」

「司馬遼太郎でも山田風太郎でも、ばっちこいってことか」

「なるほど、それは分かりやすい」

「ローマ史を山田風太郎っぽく書くとかどうだ?」

「……あれ? カエサルさん、それ面白くなりそうなんだけど」

 

 それからしばらく、歴史モノ談義が続いて。妙な盛り上がりを見せてしまう。いやー、小説ネタももらえたし、楽しかった。

 

 

 

 

 

 

 最後は1年生チーム。澤さん、山郷さん、丸山さん、阪口さん、宇津木さん、大野さんの6人組という、一番の大所帯だ。

 なんでも彼女たちは、まず図書館で大洗学園の戦車道についていろいろ調べてみたらしい。それであたりをつけてから、戦車捜索に出たんだとか。すごいな。

 分からないことはまず調べよう、っていう姿勢は個人的にすごく好き。当たり前かもしれないけど、素晴らしいと思う。えらい。

 話を聞くなり、オレが手放しで褒めちぎったら。彼女たちは少し顔を赤くしつつも、はにかんでいた。

 ……素直に褒めるのって、そんなに照れくさいと思われるんだろうか。

 

「オレの手作りだけど、抵抗がなければどうぞ」

 

 変な空気になるも嫌なので、気を取り直し。お疲れさまという気持ちで、1年生6人にシュークリームを差し出す。途端にぱっと表情を変えて、喜色満面になる面々。反応は上々だった。

 

「わっ。これ、先輩が作ったんですか」

「え、すごーい」

「……おいしそう」

「わーい、シュークリームだー」

「もちろん、いただきますー」

「先輩ありがとー」

 

 驚く声あり、喜ぶ声あり。めいめいに反応を見せながら受け取ってくれた。口にして美味しい美味しいと言ってくれるのを見ていると、ほっこりしてしまう。

 にこにこしているうちに、彼女たちはあっという間にシュークリームを平らげてしまって。ごちそうさまでした、と、揃ってお礼を言ってくれた。おぉ、礼儀正しい。気分が良くなって嬉しくなる。また何か作ってあげなきゃ。

 

「えっと。大瀬良先輩、でしたよね。男の人なのに、どうして戦車道に?」

「あ、それは確かになんでかなって思った」

 

 甘いものでひと息つき、落ち着いたところで。彼女らから質問攻めにあう。

 まず当然な疑問を振ってきたのは、澤さん。他の面々も不思議そうに、うんうんとうなずく。

 そんな1年生たちに、戦車道チームのマネージャーみたいなものになったことを話す。合わせて、少しおどけながら、恋人にお願いされてやることになったことも。

 ひゃー、みたいに、1年生たちがはしゃぐように声を上げる。本当に盛り上がるんだねぇ、恋愛ネタって。

 

「はーい、しつもーん。朝の下駄箱でカノジョとイチャついてた噂の人って、先輩のことですかー?」

「その相手って、戦車を運転してた3年の先輩ですよねー?」

「ちょっと、あゆみも桂利奈もぶしつけ過ぎるでしょ」

「えー。でも気になるしー」

「梓も興味あるんじゃないのー?」

 

 いきなり、山郷さんが元気よく手を上げながら噂の確認をぶっ込んできて。

 阪口さんも乗っかるように、その相手のことまで窺ってくる。

 ちょっと慌てたように、澤さんがふたりを止めに入るけど。

 宇津木さんが、ゆるい声で興味津々なのをアピールし。

 大野さんが、止めようとした澤さんを巻き込もうと躍起になって。

 彼女たちの横で、丸山さんはじっと見つめている。

 後輩の女の子6人が迫ってくるのは、なかなかの迫力がある。オレも思わずたじろいでしまった。話のネタが恋愛だから食いついてきたのかも知れないけども。

 

「あれ? でも大瀬良せんぱい、副会長とお付き合いしてるんじゃないんですかぁ?」

「あ、その噂はわたしも聞いたよー」

 

 宇津木さんが、ふわふわした声音で尋ねてくる。ちょっと小首をかしげるしぐさに、なんだか素直に応えてあげたくなるような気持ちになってしまうぞ。まぁそもそも答えに困るようなことは何もないんだけど。

 またそれに大野さんが言葉を重ねてきた。あー、1年生にまでオレのスケコマシ云々の話が広がってるのか。はえーなー、噂が出回るのって。

 

「ってことは、戦車に乗ってた西住先輩は?」

「もしかして、そっちもカノジョとかー」

 

 阪口さんが、ストレートな言葉を漏らす。ただ純粋に疑問に思っただけみたいだけど。それに対して、山郷さんがからかうようにおどけてみせる。でも、それが正解なんだよなぁ。

 そんな4人の後ろで、澤さんは顔を赤くしながらオロオロしていて。丸山さんはなにやらジッとオレを見つめている。……丸山さん、さっきから何も言わずに凝視してるけど。どうしたんだいったい。

 それはそれとして。

 彼女云々の話は、隠すことでもないので堂々と言う。柚子さんも、まほも、オレの恋人だと。もっと言えば、みほと杏さんもそうだと。さらに他校のアンチョビさんのことにも触れる。

 さっきよりも大きい声で、きゃー! と。一同は大騒ぎだ。

 ……なぜだろう。不思議なくらいに「フケツです」みたいな反応がない。そりゃあ嫌われないのは有難いけど、いいのか本当に。オレの常識というか良識というか、そんなものが揺らいできそうだ。

 

 

 

 

 

 

 各グループからの連絡を受けて、戦車の回収に駆け回っていた自動車部メンバーが戻ってきた。クレーンやレッカーを操りながら、ガレージ前に次々と戦車を並べていく腕前に惚れ惚れする。すげぇなー。

 

「4人とも、お疲れさまでした」

 

 もちろん、彼女たちにも労いの声を掛ける。ある意味、ナカジマさんたちが一番働いていたようなものだし。

 

「いやー、事前に戦車をいじってたおかげでやりやすかったなー」

「どこにフックをかませばいいかとか、引っ張る時に意識するサイズ感とか」

「いきなりだったらもっと戸惑ってたかもしれないね」

「スムーズにいったよね。まほさん、ありがとー」

 

 ナカジマさん、ホシノさん、スズキさん、ツチヤさんが、いい仕事をしたとばかりに爽やかな顔をして言う。まぁ確かに、みほやまほと一緒に戦車をいじっていたから、いろいろな前情報を頭と身体で把握できていたんだろうけど。聞いたところでは、崖下とか池の底とかに放置されてた戦車もあったらしいのに。どうやってここまで持ってきたんだろうか。

 ……まぁ、4人とも笑ってるし、ケガをしているようにも見えないので。深く考えたら負けなのかもしれない。

 あと自動車部メンバーも、別口で戦車を発見したらしい。

 

「戦車の回収に行く途中だったからさ。それはまた後で取ってくるよ」

 

 ナカジマさんが、シュークリームを手にしながらさも簡単そうに言う。そんなホイホイできることなのか? 回収された戦車に目を向けながら、そんなことを思ってしまう。

 

「別に難しいことはしてないからな。クレーンで持ち上げて、補助の車輪を噛ませて、牽引車で引っ張ってるだけだから」

「大きくて重いから、大変そうに見えるけど。搬送だけなら普通の車とたいして変わらないよ」

 

 ホシノさんとスズキさんも、さも当たり前のように言ってくる。いやいや、オレみたいな門外漢からしたら、それがもうすごいことに思えるんだけど。というか、女子高生がクレーンを持ち出して動かせるってことに驚き。少なくともオレにはできないことなので、素直に「すげぇ」と思ってしまう。

 

「まぁ扱うモノが違うとはいえ、わたしたちはそういうのに慣れてるからさ」

 

 ツチヤさんいわく、好きこそものの上手なれ、みたいなことらしい。……言いたいことはなんとなく分かるけど、合ってるんだろうかそれで。

 

「でもまぁ、なにかあったらケガじゃ済まないだろうし。気を付けてね」

 

 いやもう本当に。オレは労いの意味も込めて、4人にもうひとつずつシュークリームを渡す。ナカジマさんも、ホシノさんも、スズキさんも、ツチヤさんも、諸手を挙げて喜んでくれた。

 うん。可愛い女の子たちの笑顔が見れると、作った甲斐があったと思えるよね。また何か作ってあげなきゃ。

 ……あれ? 結局、戦車道のためにお菓子を作るのは決定事項なのか。作ること自体は苦じゃないし、女の子たちが美味しそうに食べてくれるのは嬉しいから。まぁいいか。

 

 

 

 

 

 

 いろいろとありながらも。まさかの戦車5輌発見、4輌回収という大成果を得て。記念すべき大洗学園戦車道の初回授業は終わった。探し回った女子たちは、なんのかんので疲れたんだろう。三々五々に解散していった。

 さて。ガレージ前に残ったのは、生徒会の3人と、自動車部の4人。加えて、まほとオレだ。ちなみに、みほは新しく友達になった秋山さんと、武部さんと五十鈴さんも加えて、寄り道しながら帰るらしい。友達と学校帰りに寄り道だ、なんて大はしゃぎだった。うん、良きかな。

 みほの微笑ましい姿を見送ってから。オレの方はまだもうちょっと居残り。

 

「杏さんたちも、甘いものを召し上がれ」

 

 他の面々と同じように、シュークリームを振る舞う。

 杏さんと柚子さんは大喜び。まほも表情を緩めていた。可愛い。桃ちゃん先輩も少し柔らかな顔になって、素直に受け取ってくれた。うん、みんな満足してくれたようで何よりだ。

 自分の作ったお菓子で、こんなにいっぱいの女の子が喜んでくれるとか。すっごいウキウキするね。これは作りがいがあるというもの。思わずにやけてしまう。

 

「とりあえず明日は、回収した戦車の掃除だね」

「でも、動くのかな。20年モノなんだよね?」

 

 杏さんは満足げに戦車を眺めているけど、柚子さんはいささか不安げだ。20年も野ざらしになってたっていうんだから、それも当然だろう。

 

「ガレージに残っていたIV号戦車が直せたからな。程度の差はあるだろうが、おそらく他の戦車も直せると思うぞ」

「これまで自動車部は目こぼししてたんだ。どうにかして直してもらう」

 

 でも、今の大洗学園で一番戦車に詳しいだろう、まほが、問題ないという。一方で、桃ちゃん先輩が「関係ない、とにかく直せ」と無茶ぶりをしてくる。

 

「河嶋。そういう無理を通すような言い方は良くないぞ」

「うっ」

 

 そんな生徒会広報様に、圧を掛けるような真似はよろしくないと、まほが苦言を呈した。多少は思うところがあったのか、桃ちゃん先輩が言葉を詰まらせる。……ひょっとすると、黒森峰女学園の戦車道を率いてきた、まほの無意識な圧に屈したのかもしれない。

 

「確かにナカジマたちならできるかもしれないが、それが当たり前だと思ったら大間違いだぞ。黒森峰でも、修理やレストアをしようと思ったら、それなり以上に時間や手間が掛かったものだ」

 

 ごくごく真面目に、まほが戦車修理の常識を説く。やっぱり、ウチの自動車部4人のスキルは目を見張るものがあるらしい。

 まほいわく、直した戦車を目の前にして整備の腕をプレゼンすれば、戦車道をする学園やチームの奪い合いが起こるだろうとのこと。引く手あまたってやつだ。

 

「正直なところ、ナカジマたちがよければ、好条件を出して黒森峰に引き抜きたいくらいだ」

 

 だから粗雑に扱うんじゃないぞ、とばかりに、まほが桃ちゃん先輩をにらみつける。当人はにらんでいるつもりはないかもしれないけど、桃ちゃん先輩の方は迫力に押されて腰が引けていた。

 まぁ、これでナカジマさんたちのすごさが少しでも伝わって、アレやれコレやれと無茶ぶりをされなくなったらいいなぁと、しみじみ思った。

 

「だが明後日までに直してもらわないとまずいんだぞ。先ほども言ったが、明日は皆にそれぞれ戦車を綺麗にさせる。その後に自動車部は、明後日の放課後までに全車両を動かせるようにしてもらわないと困る!」

「いやいや、桃ちゃん先輩。それはさすがに無茶が過ぎるんじゃないかな」

「明後日には、戦車道連盟から教官の方が指導にいらっしゃるんだ。戦車が動かないと何もできないじゃないか!」

 

 怯みながらも、桃ちゃん先輩が言い返してくる。でもなぁ。やっぱり無茶だと思うんだけど。つまりは約半日で、4輌の戦車を直せと言ってるんだぞ。たった4人で。

 オレは抗議の声を上げたんだけども。

 

「んー。まぁ、なんとかなるんじゃないかな。」

 

 ナカジマさんが、まさかの許諾。無茶ぶりをあっさりと受け入れた。

 なんでも、みほとまほも交えて直した戦車修理の手応えを元に考えると、動かす程度ならひと晩で修理可能だと見込んでいるらしい。もちろん、故障や傷みの具合によるそうだけれど。マジかよ。

 

「4輌とも全部、軽く見た限りでは大きな損傷はないっぽいから」

「たぶん、ひと晩あればどうこうできるレベルだと思うよ」

「学園艦の上で放置されてた割には、潮風の影響もそれ程ないみたいだしね」

 

 ホシノさん、スズキさん、ツチヤさんも、それぞれ問題なしと言い切った。すごい自信だ。かっこいい。

 そんな自動車部の4人を見て、桃ちゃん先輩は満足そうにうなずいてるけど。まほがさっき言った通り、ナカジマさんたちだから可能なことなんじゃないかなぁと思うんだけど。自動車部の4人が嫌がってるわけでもなく、むしろ楽しそうなのが救いというか幸いというか。

 どちらにせよ。ナカジマさん、ホシノさん、スズキさん、ツチヤさんは、明日は夜通し作業するのが確定したわけだ。

 なにか夜食でも作って差し入れをしてあげようかな。

 そんなことを考えるオレだった。

 

 

 

 ―続く―




ようやく、本編第2話の前半に到達。
槇村です。御機嫌如何。


ご無沙汰しております。いやマジで。
月に1話の更新も怪しくなってしまった。まさに不定期更新。
書きたい欲はあるよ。ネタもある。
だからせめて月に1回は更新したい。したんだが……。

次は柚子さんの白ビキニ回だよ。
何が起こるかはお楽しみに。


※誤字指摘ありがとうございました。
「カエサル」が「カサエル」になってたよ……。

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